GROW LANSER
〜彼の地を貫く光の槍〜
3rd pierce 故郷からの迷い猫 前編



  「うにゃにゃ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」

   まるで猫の鳴き声のような叫びが、
   晴れた空に響き渡った。

   「猫かしら・・・?」

   「でも、いったいどこから?」

   モニカとスレインは少々警戒しながら、
   左右前後見回してみるが、
   誰かがいる気配はない。

   「上のほうから声がしたわね。」

   「なんや、空飛ぶ猫でもおるんか・・・?」

   「いたら一度解剖してみたいもんじゃな。」

   アネットとヒューイが手をかざして、
   声のしたほうであろう上空に目を向ける。
   ビクトルがやたらマッドな事を口にするが
   みんなは無視する方向にしたらしい。
   その発言にツッこむ人間は一人もいなかった。

   「この声・・・まさか!?」

   ただ一人、この声に心当たりがあるのか、
   ひどく驚きながらも遥か上空を見上げる男。

   「ウィーラ!!!」

   「はいは〜い♪お呼びですか?マスター」

   「「「「な、な、な、な・・・・・・」」」」

   突然彼の髪から飛び出してきた
   薄緑色で半透明の小人。
   急な展開に自体が飲み込めず、
   口を水を求める魚のように
   パクパクと開閉している。

   「緊急事態だ。飛ぶぞ!!!」

   「は〜い♪あれですね。」

   ウィーラが瞳閉じて刹那
   身体がうっすらと輝きだした。
   その様子を見届けてから、
   ジージャンを脱ぎ捨て、言葉を紡ぎ始めた。

    大気に住まう青空の王者
   烈風纏いしその姿勇ましき
   韋駄天の如く天地を駆けん
   汝に宿りし大いなる風の祝福
   蒼天の大地へと導かん

       グ リ フ ォ ン ・ プ ル ー ム
   聖鳥獣の刃翼

   「な、なんだ!?風が・・・。」

   突如祠門を中心に風が巻く。
   周りのみんなは腰を低くし、
   急激な突風のため目の辺りを
   腕などで覆い彼の様子を見守っていた。
   その刹那、瞬きをした一瞬のうちに
   彼の背からは雄大な翼がその姿を現していた。

   「うそっ・・・?つ、翼が・・・!?うわ!!!」

   そしてしゃがみこみ、勢いをつけ、
   声のした方へ文字通り飛んでいった。

   一方、その声の主はというと・・・

   「うっにゃ〜、どうしよ。魔法使おうにも
    ここで本なんか出したら落下運動で
    取り出す前に私が落ちちゃうし・・・。
    あきらめて神様にお祈りでも捧げようかな。」

   とても絶対絶命のピンチとは考えられないほど
   のほほ〜んと目を閉じ、考え事をしていた。
   傍目には怖いから目を瞑っている、
   としか思わないだろうが・・・。
   少々幼い顔立ちにブロンドの髪のツインテール。
   その結び目にはリボンがなびいている。
   白のブラウスに、黒いワンピースを着けている。
   スカートの丈は足首しか見えないほど長い。
   さらには、指輪やネックレスなど、
   いくつかの装飾品を身につけていた。
   もし、ショーウィンドウの彼女がまじっていたら、
   等身大の人形とししか思わないだろう。

   「ふわわわ?なになに!?」

   考え事をして目を閉じていたせいか、
   突然の浮遊感に戸惑う少女。
   そんな彼女に向けられた第一声は
   少々残酷さが入り混じったものだった。

   「あんまり物騒な事言うと、本気で神様に捧げるぞ。」

   「お、おにいちゃん!?」

   落ち着いて自分を抱きかかえている人物を
   よく見ると、見知った顔が目の前にあった。

   「おうよ。っていうかなんでお前が・・・
    記憶も消したはずだが?エリス。」

   「ホントにホント・・・?」

   おそるおそるというような感じではあるが、
   本人はもう確信しているようだ。
   この人が自分の捜し求めていた人物であると。
   その瞳からは今にも涙が溢れ出しそうだ。
   だが、やはり本人の口から答えを聞かないと
   不安で仕方ないのであろう。

   「マジメに本気だ。」

   そっけないようではあるが、
   彼女にとっては期待に満ちた、
   十分な回答であった。

   「おにいちゃん!!!」

   感極まって祠門の首に抱きつくエリス。
   そんな彼女に、ウィーラは声をかけた。

   「やほ〜♪エリスちゃん、元気〜♪」

   「あ、ウィーラ?久しぶり。
    あれ、他のみんなは・・・?」

   いつも祠門の周りを浮遊している精霊たちが
   見当たらないことの気づき、彼女に尋ねる。

   「マスターの髪の中にいるよ〜。
    なんか、この世界のマナバランスが崩れてて
    悪影響が出ないように〜ってことで。
    それにしても、私のことも覚えてるのね。」

   祠門がエリスの記憶を消した経緯を知っている
   ウィーラは、自分の事も覚えていることに驚いた。
   彼はもし思い出したとしても、記憶が断片的になるように
   保険をかけて細工までしたのだ。
   それにもかかわらず、彼女はすべてを思い出した。
   まさに恋心、乙女の想い、恐るべし、である。

   「モチのロンだよ♪他のみんなのことも覚えてるよ♪
    それにしても、なんか感じる限りものすごく荒んでるね。
    下級魔法出しても、マナの影響で
    中級魔法ぐらいになっちゃいそうだよ〜。
    それにしてもまったく、お兄ちゃんったらひどいんだから
    記憶消してさっさとどこか行っちゃうなんてさ。」

   「そ、それはお前のためを思ってだな・・・。
    まあ、とにかく、再開の挨拶も難しい話も後にして、
    とりあえず下りるぞ。
    待ち人も話し聞きたくてうずうずしてるだろうし。」

   「うん!!」

   嬉々として祠門の首に腕を回し、
   しっかりとつかまっている。
   それを確認するや否や、すぅっと
   落下していった。



   「お、帰ってきたで。」

   「ホントに空を飛んでるな・・・。」

   「・・・・・・(フェザリアン・・・ではないわね)」

   「あの羽根本物かしら・・・。」

   「それに、一緒に出てきた
    小人みたいなのも気になるの。」

   各人が疑問を口にしたり、考え事をしながら、
   注目の人物の帰りを待っていた。
   その彼の姿が近づいてくるのを確認すると、
   再び彼の周りに集まった。

   「ふう、待たせた。
    知人が危なく墜落死するとこだったよ。」

   「それよりも、アンさん早う自己紹介してくれへんか?
    名前もわからんて、これから先、不便やろ。」

   もう待ちきれませんとばかりに、
   早めの自己紹介をヒューイが促す。
   たしかにこれ以上厄介ごとが重なれば、
   自己紹介するときには日が暮れているかもしれない。
   2度あることは3度あるとも言うし・・・。

   「それもそうだな。俺の名前は
    生成 祠門。よろしくな。」

   「セイナリ・・・。あなた、東国の人?」

   現在祠門はこの世界の西方の国にいる。
   現実世界で言う西洋のような国だ。
   それとは反対に東国とは、
   日本のような独特の文化を持っていて、
   姓名も東国特有のものだ。

   「まあ、そういうことになるのかな?」

   「なるのかな?って、あんさん自分の事わかってるんか?
    それに、シモンってえらく男前な名前やな。」

   当然のように聞き返すヒューイにみんながうなずく。
   祠門とエリスは、あ、やっぱりといった顔をしている。

   「あ〜、言っておくが、俺はれっきとした男だぞ?」

   「・・・・・・な、なにぃぃぃ〜〜〜〜!!!」

   しばし熟考の後、ヒューイから出てきた言葉はその一言だ。
   まあ、世の中そんな人も何人かはいるだろうが、
   実際に出逢ったら、こんな感じになるだろう。

   「しんじられないわ・・・。」

   「女にしか見えないわね・・・。」

   「男装した麗人にしか見えんぞ。」

   女性陣と老人は、半ば関心、半ば衝撃といった感じだろうか。
   女性人にいたっては、かなりダメージが深刻そうだ。

   「てっきり女性かと思ったけど・・・。」

   じ〜っと、みんなの視線は祠門を向いている。

   「と、いわれてもな・・・。」

   「うん、お兄ちゃんはお兄ちゃんだよ。」

   祠門がちろっとエリスのほうを見ると、
   エリスは満面の笑顔で応えた。

   「そういえば、そこのお嬢さんは?」

   「あたし?あたしは
    エリスリナ・ロイセリューリア・フレグランス。
    エリスって呼んでくれるとうれしいな♪」

   「わかったわ、エリス。
    わたしはアネット・バーンズ。
    アネットって呼んでね。」
 
   「私はモニカ・アレンよ。
    よろしく、エリス。」

   先に女性陣が自己紹介する。
   やはり年頃の女の子同士、気が合うのだろう。
   アネットとモニカは彼女の身に付けている装身具に興味を示し、
   エリスはそんな二人を見て、あとからお話しする、ということになった。

   「わいはヒューイ・フォスターや。
    ヒューイ、ヒューちゃん、好きに呼んでかまわんで。」

   「わしはビクトル・ロイド、しがない研究者じゃ。
    よろしくの、嬢ちゃん。」

   「うん、みんな!!よろしく♪」

   向日葵のような明るい笑顔を振りまき、
   今度は何者にも邪魔されることなく、
   彼らの自己紹介はつつがなく終了した。


TO BE CONTINUED






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