完全にタイミングを逸してしまった雄真は、

   少し離れ、状況の推移を見守るほかなかった。

   勢いよく飛び出したはいいものの、準の手前、

   このとき雄真はちょっぴり恥ずかしかったとかそうでなかったとか。




はぴねす!
〜Magic & Fairy Tale〜
Tale1 バレンタインイヴ
魔法使いの弟子




   「女の子に意地悪なんて、最低の男の子がすることよ?」


   「なんだよ、おまえ。」


   「返してあげて、お姉ちゃんからもお願い。」


   「カンケーねーだろ、ババア!!」


   「あら、口が悪いわね、そんなことじゃモテないぞ〜」



   男の子の罵倒にもめげず、何とか説得する女の子

   普通、『ババア』などと言われたら怒り狂いそうなものだが、

   かなり寛大な心をお持ちなのか、なお説得を続けている。



   「あら、あれ、春姫ちゃんじゃない?」


   「準、いつの間に・・・・・・っていうか、知り合いか?」


   「違うわよ!神坂春姫ちゃん、知らないの?」


   「だから、誰だよ」



   本当にいつの間にか雄真に接近していた準。

   どうやら彼女は準の知っていて人物かつ学園の人がほとんど知っているらしいが、

   雄真にはとんと心当たりがなく、それを聞いた準はひどく驚いていた。



   「呆れた、瑞穂坂学園のアイドルを知らないなんて・・・・・・!」


   「アイドル?うちの学園にそんな奇特な方がいらっしゃったのか?」


   「何変な言葉遣いになってんのよ、そうじゃなくって・・・・・・」



   どうやら雄真は

   学園のアイドル=芸能界で活躍しているアイドルと勘違いしているらしい。

   もちろん瑞穂坂学園にはそんなたいそうな人物はいない。

   しかし、神坂春姫はそれを有り余って、学園では有名らしい。





   「ほら、もう返してあげなさい。」



   限度と言うものを知らない子供たちほど残酷なものはない。

   事態がひどいことにならない前にと春姫は説得を続けているが、

   男の子たちは一向に考えを改める気はないらしい。



   「へへ〜ん、や〜だよ!ば〜か、ば〜か!」


   「けんじ、パスパス!」


   「おっけー!」


   「いい加減にしないと、お姉ちゃんも怒っちゃうよ。」



   ほとほとそんな気はない、というよりも言葉にするがそんな気すらない。

   そこが問題なのだが、そこが春姫の長所であり短所である。



   「ふん、誰が返すもんか、たかし!!」


   「え?・・・・・・あ!」



   けんじが春姫に対抗するためか、天邪鬼な態度をとる。

   たかしにチョコの入った箱をパスするが、

   けんじが少しコントロールをあやまり、たかしが取りこぼす。

   そして箱は後にこぼれ、不幸にもたかしが小石に足をとられ、

   箱を下敷きにするような形で、たかしが倒れそうになる。



   「頃合かな?・・・・・・って、ヤバい!!!」


   「は〜い、いってらっしゃ〜い♪」


   「ああ!!行ってくる!!」



   けんじが箱を投げる直前でそろそろ出ようと思っていた雄真だが、

   箱の軌道を見て、次に起こる事態を予想した。

   準もそれを感じ取ったのか、笑顔でそれを見送る。

   その瞬間、雄真の姿が消えた。





   「あっ、いけない!!!」


   「っ!!!」


   「わわ!!!!」


   「ああっ!!!」



   さまざまな悲鳴が飛び交う。

   春姫が叫び、しまったと言うような顔をするけんじ。

   躓き、背中から倒れるたかしに、

   悲鳴をあげることしか出来ない箱の持ち主の女の子。

   誰もが最悪の事態を想像する中、その出来事は奇蹟に近かった。



   「ふむ、間一髪だな。」



   まばたきの間にいつの間にか雄真が立っていた。

   右の手にはチョコのはいった箱を、

   左の手にはたかしが襟首をつかまれて宙吊りになっていた。



   「こら、ダメじゃないか。こんなことしちゃ」


   「う、うるさい!!さっさと放せ!!!」


   「とりあえず、俺が捕まえたからいいが、そのまま倒れてたらどうするつもりだったんだ?」


   「うっ・・・・・・」



   確かにやりすぎたと言うことを自覚しているのか渋い顔をするたかし。

   雄真の質問にも詰まることしか出来なかった。



   「まあ、度が過ぎるとよくないことがこれでわかったろ?」


   「う、うるさい!!!」


   「もうこんなことするなよ?」


   「ふんっ、誰がお前の言うことなんかきくもんか!!!けんじ!!いこうぜ!!!」


   「あ、ああ!!!」



   意地を張って、雄真の忠告など聞く気はない様子だ。

   それでも諭すように雄真は言うが、聞くことはなく

   たかしはけんじを呼んで公園から去っていった。



   「まったく、最近のガキどもは・・・・・・」


   「あ、あの〜・・・・・・」



   おそるおそる、といった感じで女の子が声をかけてくる。

   助けてくれたのはわかるが、どう対応していいか困っている様子だ。

   もちろん、雄真の手にはバレンタインチョコがおさまっている。

   それに気づいてか、雄真も女の子に向き直り、謝りながら箱を手渡す。



   「ああ、スマンな。ほら、ちゃんと無事だぞ。・・・・・・あ。」


   「???どうしたの?」



   渡すときにふと感じた違和感。箱がくねくね曲がるのだ。

   男の子たちから取り返したときは細心の注意を払い、衝撃を吸収しながら手元におさめた。

   だとしたら男の子が投げたときに折れたとしか考えられない。



   「非常に言いにくいんだが……開けてみないとわからんが

    もしかしたら中身が割れているかも……。」


   「ええ〜〜〜っ!!!?」



   チョコレートを受け取り、世界が突然崩壊したような悲鳴を上げる女の子。

   しかし、恋の神様は純情な女の子の願いを無下にはしないらしい。

   ふと、雄真が女の子から目をはずすと、春姫が近寄ってきていた。



   「ねえ、ちょっとだけそれ、お姉ちゃんに貸してくれないかな?」


   「・・・・・・え?」


   「ね?」


   「・・・・・・うん、でも、どうするの?」



   さっき投げたりしたせいか、よく見るとどことなく包装が崩れているような感じがする。

   女の子はもう元には戻らない箱を渡すと春姫に尋ねた。



   「おまじないをするの。」


   「おまじない?」


   「そう、おまじない。だから、少しの間だけ、目をつぶってくれるかな?」


   「・・・・・・」



   そういって女の子は目を閉じる。

   どことなく祈っているようにも見受けられる目の閉じ方に

   春姫は微笑みながら言葉をかける。



   「ふふっ、じゃあお姉ちゃんがいいよって言うまで、そのままにしててね」


   「・・・・・・うん」


   (・・・・・・いったい何を?魔法か?だが、むやみに使ったらいけないんじゃ・・・・・・)


   「・・・・・・ソプラノ」


   (やっぱりか・・・・・・)



   この状況でマジックワンドを持っている彼女が何をするのか

   雄真は春姫が何をしようとしてるのか予想していた。

   しかし、このあと彼女によって紡がれた言葉は予想だにしない出来事だった。



   「エル・アルダルト・リ・エルス・・・・・・・・ディ・アルンマルサス・・・・・・」


   (その呪文は!!!?)



   そう、最初のほうに紡がれた言葉は昔彼が使っていたものと同じだった。

   言ってみれば、彼と今は行方不明の産みの母親の最後のつながりと言っていいほどだ。

   そんな彼の驚きをよそに、無邪気な声は和やかな空気を醸し出す。



   「はい、もういいわよ?」


   「わあぁっ!!」


   「ふふっ、よかったね♪」


   「うんっ!」



   とてもうれしそうな女の子の無邪気な笑顔に

   雄真はしばしそのことを胸の奥にしまい、彼女たちの行動を眺めることにした。



   「好きな男の子にあげるの?」


   「・・・・・・うん」


   「そう・・・・・・その思い、大切にしてね♪」


   「ありがとう!お姉ちゃん!」


   (ちょっと顔に翳りが見えた が・・・・・・気のせいか?)



   二人の和やかな会話が繰り広げられる中、

   雄真は春姫の笑顔に一瞬だけ悲しみが混じったような感覚があった。

   またさっきのような笑顔なので、雄真はとりあえず気のせいということにした。



   「あと、お兄ちゃんも、ありがとう!!」


   「なに、何てことないさ。気をつけるんだぞ?」


   「うんっ!ありがとう!!またね!!お兄ちゃん、お姉ちゃん!」



   女の子は雄真にもお礼を言うと駆け出していった。

   雄真は転ばないよう注意するが、果たして故意の真っ只中にいる

   女の子にその言葉が届いているのだろうか。

   とりあえず届いている、ということにしておいて小さくなっていく影を春姫と並んで眺めていた。






   「ふふっ、ありがとうございました。

    ・・・・・・でも、突然現れたように見えたんですけど、あなたも魔法使いなんですか?」


   「いや、あれは純粋に体術だ。昔から格闘技を習っていて、

    師匠の速さ対策のために身に付けた技だ。

    それに、さっきの子供たちのこともこっちで片付けるつもりだったんだ。」


   「そうだったんですか?」


   「ああ、ものの見事にタイミングが君と合ってしまったからな。」


   「え?そうなんですか?それはすいませんでした。」


   「なに、謝ることないさ。こっちもまたタイミングを計りなおしただけだからな。」


   「ってことは最初から全部見てたんですか?」



   女の子が見えなくなると、春姫が雄真に話しかけてきた。

   瞬く間に現れたのだから、魔法かどうか気になっていたのが本音である。

   くりっとした二つの瞳が興味深そうに雄真を見つめている。

   雄真も質問に答えながら、春姫とさっきの出来事を反芻していた。



   「まあな、そろそろ連れのやつもこっちに来る頃だろう。」


   「か〜み〜さ〜か〜さんっ♪」


   「えっ?」


   「ほらな、タイミングだけはいいだよな・・・・・・。」



   まるでタイミングを図ったかのように少しはなれたところから準の声がこだましていた。

   春姫は自分のことを呼ばれて少しきょとんとしている。

   なにせ、春姫は準に見覚えがなかったのだから当然の反応であろう。



   「あなた、神坂春姫さんですよね?」


   「はい、そうですけど・・・・・・あの、えっと・・・・・はじめまして、ですよね?」


   「そ、はじめまして。あたし渡良瀬準、ヨロシクね♪」


   「・・・・・・ふふっ、はい、こちらこそよろしくお願いします、準さん。」



   準の猛烈にハイなテンションに引くことなく会話を交わす春姫。

   ただ単に準を女の子と認識しているだけかもしれない。

   そんな考え事をしている雄真であるが、準からの檄で現実世界に返り咲くことになる。



   「ほら、何ボサ〜っとしてるのよ、自己紹介!!」


   「そういえばそうだな、俺は小日向雄真、よろしく。」


   「・・・・・・」


   「ん?神坂・・・・・さん?どうかした?俺の顔になんかついてるか?」


   「い、いえっ、ごめんなさい・・・・・・そんなは ず、ない よね・・・・・・?



   改めて自己紹介する雄真。

   だが、春姫は彼の言葉をよそに先ほどよりもまじまじと雄真の顔を見ていた。

   雄真の言葉にハッと我に帰るが何かをつぶやく。

   そんな様子を少々観察していた準はこのままでは話が進まないと思い、

   強引ではあるが、話を変えることにした。



   「それより、さっきのことなんだけど、もう感動しちゃって!!」


   「そういえば、準さんも全部見てたんですよね・・・・・・。

    ・・・・・・そうですよね、私もです。あんなにちっちゃいのに、好きな人のために一生懸命で・・・・・・」


   「え?あ、あの、神坂さん?」



   自分の世界に入り、さっきの女の子を思い出す春姫。

   準は話題を振ったが、見当違いの反応されてちょっと困ってしまった。

   しかし、次の言葉を聞いて本当に純粋な心の持ち主だと、とても感動した。



   「あの子の思い、届くといいな・・・・・・」


   「・・・・・・うん、そうだね♪」



   彼女の唇から漏れた純粋な願い。

   その小さな女の子の恋の行方は今は神のみぞ知ることである。

   準も言葉で同意し、心の中でそっと女の子の恋がかなうことを願った。



   「それよりも、魔法のことなんだが・・・・・・」



   悦に入っているところを申し訳なさそうに雄真が話しかける。

   自分でもちょっとトリップしていたを自覚したのか、

   少々頬を染めながら、魔法のことについて話した。



   「あ、そのことなんですけど・・・・・」

   「なあに?」



   魔法については少々興味がある準は

   何か込みいった話が聞けるかと期待したが、

   実際はそれとは逆の禁止事項だった。



   「本当はむやみに魔法使っちゃいけないんです。

    だから、今日のこと、黙っていてくれませんか?」


   「え〜っ!?そうなんだ・・・・・・、ちょっと残念。

    だけど、神坂さんがそういうのなら秘密にするよ、ね?雄真?」


   「あ、ああ、それはべつに構わんが・・・・・・」


   「ありがとう」



   雄真も事情が事情なだけに、今回春姫が魔法を使ったことは胸に秘めておくつもりでいた。

   春姫の女の子へ親切心を無下にすることもないと思ったからだ。

   仮に言ったとしても、春姫の成績や性格なども考慮に入れて、

   厳重注意で済まされるかもしれない。

   雄真としてはほかに聞きたいことがあったのだが、

   唐突に進めれる準の言葉に聞けずじまいとなってしまった。



   「でも、こんなところで神坂さんに会えるなんて、ビックリよね〜♪」


   「特別実習に出ていたんですけど、先生にお買い物頼まれたんです。」


   「ってことは、これから戻るのか・・・・・・」



   彼女はお使いの帰りに事件の現場に鉢合わせたとのこと。

   まだお使いの途中なので、これから学校に向かわなければならない。

   それを聞くと、準はとても残念そうな声を上げる。



   「あ〜ん、残念だなぁ、これから一緒にお茶でも〜って思ってたのに。」


   「ごめんなさい、あまり寄り道もしてられないし・・・・・・

    それに、お二人のデートの邪魔しちゃ悪いですから、ふふふっ♪」


   「やだぁ、もう、そんなに気を使わなくていいのに〜。」


   「準、そこはデートじゃないですとツッこむところじゃないのか?

    それに、俺とお前は恋人同士という関係じゃ・・・・・・むぐっ!!」


   「いいからいいから、べつに照れないでも・・・・・。ね、雄真♥」



   春姫にはやはり準は女の子にしか見えないらしい。

   あからさまに誤解をしているが、準をはじめてみる春姫にとってこれはごく普通の反応だ。

   このままではまずいと思い、状況を打破しようと考える雄真であるが、

   ことごとく準に妨害され、一向に改善は見られない。



   「だから、そもそも俺とお前はそういう関係じゃ・・・・・・ぐっ!!!」


   「どうかしましたか?」


   「ううん、いえいえ、べつになんでも・・・・・・」



   しまいには足を踏まれ、実力行使されてしまう始末。

   アフターケアよろしく、すかさず春姫の問いにも答え、

   雄真が付け入る隙を与えることはなかった。



   「そうですか・・・・・・ふふっ、それじゃ、失礼しますね。」


   「え、あ、ちょっとま・・・・・・」


   「うん、まったね〜〜〜!!」



   そんなことをしているうちに、とうとう春姫が学校へと向かってしまう。

   引きとめようとする雄真は声を上げるが、

   それよりさらに大きい準の声にかき消され、春姫は公園から姿を消した。

   今の雄真は木枯らし吹きすさぶ風がお似合いである。



   「あら〜、いっちゃったね☆」


   「じゅ〜ん〜?“ね☆”じゃないだろ〜?」


   「いた、いたたたた。だからぐりぐりはんた〜〜い!!!」



   結局雄真が聞きたいことは聞けずにこの場はお開きとなってしまった。

   そのことも含め、誤解も与えてしまったため、雄真の機嫌はすこぶる最悪といえる。

   よって、お仕置き恒例のぐりぐり攻撃である。



   「学園の有名人に勘違いされた挙句、

    聞きたいことも聞けずじまいじゃないか〜。どうしてくれるんだ〜?」


   「たたた、ききたいこと?」


   「ああ、さっきの魔法のことだ・・・・・・」


   「なに?気になるわけ?」


   「ああ、かなりな・・・・・・」



   長年行方不明の産みの母の大事な手がかりだ。

   せめて生きているのなら手紙くらいよこしてもいいものだが、

   その気配すらなく、10年の月日が流れようとしているのだ。

   せっかく自分を産んでくれたのだから、生きているのなら会いたいし、

   できれば親孝行したいというのが雄真の心情である。



   「ああっ、ついに雄真にも浮いた話が・・・・・・」


   「言っておくが、お前の期待に沿うような類の話じゃないからな。」


   「ちぇ〜、つまんないの。彼女なら夢中になれると思ったんだけどな〜。

    えらぶったところがないし、女の子のあたしから見ても素敵だと思うのよね〜。」


   「・・・・・・言っておくが、つっこまんからな。」



   毎度おなじみの言葉が響くが、雄真はもうあきれるしかないのか、

   つっこむこともせずに、そのまま流した。

   準もそれを気にすることなく、そのまま流れるように会話を続ける。



   「彼女は一年生であるにもかかわらず、『Class B』の試験に受かっちゃったんだって。

    それになにより、ブライトネームももっているのよ?たしか『カルティエ』だったかな?」


   「ほう、一年でBなうえに、ブライトネームか・・・・・・。」


   「ねえ雄真。ホントに気にならないの?」


   「だから、そういった対象じゃないから仕方ないだろ?とにかく、もう帰るぞ。」


   「あ、ちょっと、待ってよ雄真〜〜!!!」



   準の妄想もとい、雄真恋人候補選びを途中で打ち切り、早々に公園を出て行く雄真。

   準もそれを追って公園を出て行った。

   つたない会話を交わしながら準を送り、雄真は帰路についた。





   「ただいま〜。」



   家に帰れば開口一番、聞こえてくるのは家族の暖かい

   お帰りなさいという言葉のはずであったのだが、今日は少し違っていた。

   仄かにチョコレートの香りが鼻をくすぐったのだ。

   もちろんいち早く帰ってきたすももがバレンタインのチョコを製作中なのであるが、

   雄真はそんなこと気にも留めることなく、のどが渇いたので台所へ向かおうとする。

   しかし、この雄真の行動を途中で静止する人物が現れる



   「すと〜〜〜〜〜っぷ!!!」



   それは彼らの育ての母である小日向音羽であった。

   雄真の胸元ぐらいまでの身長しかなく、一児の母にしては異様に若い。

   それでもなんとな〜くお母さんっぽいオーラがにじみ出ている。

   髪は後ろで束ねて留めており、服装は少し前に帰ってきたばかりなのか、

   普段のカジュアルな服装にもはやトレードマークといっていい

   学校のカフェテリア『Oasis』のエプロンを掛けている。

   そんな母がいきなり大声を出して自分の前をとうせんぼするのだから、

   雄真はひどくのけぞっておどろいた。



   「うわっ、なんだよ母さん。危ないじゃないか。」


   「ダメッ、今日は諸事情によりダイニングは立ち入り禁止なのよ!」


   「は?そりゃいったいどういう……」



   雄真が二の句を告げる前に事はどんどん運んでいく。

   どうやら今はどうしてもダイニングには行ってほしくないらしい。

   制作しているチョコを見られたくない事は明白だが、

   おニブな我らが雄真はそれを気にすることない。



   「夕ご飯は後で部屋にもって行くから」


   「いや、麦茶を一杯いただこうと……」


   「それもあとで持っていってあげるから!!」


   「ん〜、そこまでいうならまあ、いいけど……」



   そこまで隠そうとするところを見ると、好奇心をくすぐられるのが人としてのサガであると思う。

   もちろん雄真も例外に当てはまることなく、台所をのぞこうとするが、小さいながらも必死に妨害する。



   「だめっ、警告〜〜〜〜〜!!」



   再度雄真の前に立ちはだかり、台所を隠そうとする。

   それでも雄真はのぞこうとするのだから、音羽は最終兵器を発動する。

   もっとも家族の中でも親しか使えないフォービドゥンウェポンだ。




   「もしお台所のぞいたら、『お小遣い没収の上、一月食事抜きの刑だから』ね!」


   「かーさん、それ遠まわしに『死刑』っていっているようなもんだけど……」


   「命が惜しかったら、部屋でおとなしくしてなさい!!」



   遠まわしな言い方だが、学生にとってそれは死刑といっても過言ではない。

   もちろん雄真とていざというときの蓄えはあるが、とてもじゃないが、一ヶ月も保てるほどじゃない。

   守人としての仕事をこなして、一応給金としてお金はもらっているけれども、

   いつの日か自分のことが明かされたら使うということにしているので、

   いまでは一財産が口座にあり、もちろんそれはいまだに家族に知られてはいない。



   「親が子に向かって言う台詞じゃないよ……。

    わかった部屋でおとなしくしてるよ……はぁ。」


   「わかればよろしい。じゃ、あとで麦茶持っていくからね♪」



   かなりきつめの死刑警告をうけ、ため息をつきつつ部屋へと戻っていく雄真。

   階下では楽しそうに会話をする親子の声が響いてていた。



   「ふぅ、疲れたぁ〜〜……。」


   「お疲れ様です、マスター♪」


   「ああ、ありがとう」



   そういってベットに倒れこみ大の字になって寝そべる。

   精霊たちも雄真の髪の毛からひょっこり顔をだし、主の労をねぎらう。

   天井を見上げながら、雄真は先ほど出会った女性との事を思い出していた。



   「神坂春姫か……」


   「さっきの女がどうかしたのか?マスター」


   「いや、ちょっと使っていた魔法の詠唱が気になってな……」


   「えいしょう……?」


   「ああ。そうだな、いい機会だから見せておこう。」



   そういって二の腕あたりにはめているバングルのようなアクセサリーをはずし、魔力を少しだけ捻出させる。

   雄真の有する魔力は並みの魔法使いの5〜6倍という膨大な量の魔力を内包している。

   そのため、特殊なルーンを刻み込んだバングルで雄真自身の魔力を封印しているのだ。

   そうでなければ、魔力を察知できるものであればすぐにわかるほどの量が滲み出してしまうのだ。



   「エル・アルダルト・リ・エルス・ディ・ルテ・カルア・ラト・リアラ・カルティエ・ディ・アダファルス……」



   呪文を詠唱し終えると、雄真の指先には淡い炎がともっていた。

   2、3秒ほどですぐに消えてしまったが、乗せた魔力が少なかったためであろう。

   これには精霊たちも少しびっくりしていた。



   「マスター、詠唱魔法使えたんだな。」


   「まあ、昔のことだ。今は使い気ないし……」



   再びバングルをはめる雄真。

   しかし、雄真は気づいていなかったある精霊がパニックの最中にいることに。



   「マスー!!!わたをすてないでください〜〜〜〜!!」


   「どこをどうすればそんな結論なるんだ?イリス……。」



   どうやら彼女は

   自分は炎の精霊→マスターは炎系の魔法が使える→つまり自分は要らない

   という極端な結論に至ったらしい。

   もちろん雄真は昔の魔法を使う気はまったくないというのも聞いてはいない。

   そんなイリスの説得をするのは少々骨であったが、それが落ち着くと、

   今日の買い物のことや昔話に花を咲かせていた。



   「……とまあ、こういう経緯があって、師匠に弟子入りして今に至るというわけだ。」


   「マスターにもいろいろあったんだなぁ。」


   「はらん……ばんじょうなの……」


   「私のマスターをいじめるなんて……許せません!!!

    今度あったときは私が消し炭にします!!!」



   昔話のときは三者三様の反応を示していた。

   そして、先ほどの詠唱のことも含めて、自分の産みの親のことを話す。

   自分は産みの親が生きていればそれでよく、探す気はさらさらなかったが、

   こうも露骨に手がかりが出てしまっては多少は気になる、ということだろう。

   そのことも話し、ブラスが精霊魔法で探さないかと提案したが、

   いかんせん基本的な情報が不足しているため、断念せざるを得なかった。



   そのあともいろいろなことを話し合い、とっぷりと日が暮れた。

   いつものごとく、夜に訓練と称して公園に出かけ、

   高校裏の森に自らはった結界の様子を見に出かける。

   特にこの日は目立った動きもなく、鬼も出現することはなかった。



   家に戻っても、まだ親子二人の作業は続いていた。

   ダイニングに顔を出そうとしようものなら、母からの死刑警告が鳴り響き、

   部屋に戻れば階下から楽しそうな話し声がかすかに聞こえてくる。

   そんな微笑ましい日常のひと風景をBGMにして雄真は床についた。

   明くる朝に起こるわが身の災いに気づくことなく……。



TO   BE CONTINUED


    あとがきという名の座談会(シルフェニア出張Ver)

またこっちが早く仕上がるなんて……
なんて自殺行為をしているんだ?俺は……

は〜い、みんなの心のエンジェルハイロゥ♥
渡良瀬準で〜す♪ヨロシクね♪
今日のゲストは我らが母校瑞穂坂学園のアイドル
神坂春姫ちゃんですよ〜♪

え、え〜と、はじめまして。神坂春姫です

ところで、ゲームのデータがぶっ飛んだって
話を聞いたんだが……まじか……?

ま、まじだ……

ちょっと、それじゃこの小説どうなるんですか?

いや、別にどうもせんぞ?
プロローグだから流れかわらんし……まだな……

プロローグが終わったところからが大変というわけか……

まあ、そういうことだな

そこは月さんに何とかしてもらうってことで♪

というわけで、お便りのコーナーだ

ここでは皆さんがこの作品に送ってくれた
Web拍手に作者が答えてくれるコーナーです

感想掲示板に書いてくれた方には感想掲示板のほうで
返事をお返しいたしますが、御礼はここでも述べさせていただきます♪

ふむ、今回は少ないな……じゃあ、いくぞ

   イリス=イリヤ?(笑)

なんじゃこりゃ?

ふむ、これは俺も意味不明なんだ
いちおう二通りの解釈はできる

どういったことなんですか?

ふむ、ひとつは前話の間違いだな。
イリスをイリアと誤植してたんだな

なるほどなるほど。それでもうひとつは?

もうひとつはフェイトステイナイトのキャラだな
イリヤスフィールというキャラがいるんだが、
そのキャラと性格が酷似しているためこのコメントがきたのではないかと……

わからないんですか?
その、イリヤスフィールっていうキャラクターのこと

ゲームやったことないからわからん
まあ、これはないと思うがな……

じゃあ、つぎにいきますね

   おお!更新されてる!! 今回も楽しませて頂きました(^^)
   しかし、準にゃんのケーキなら喜んでもらうぞ! 思い切ってあたしとでも無問題だっ!
   そしてそして、とうとう春姫との邂逅シーンですが…普通に魔法課生徒みたいですね。
   ……いや、ここは意表をついて杏璃とか!? 
   次回の顔合わせに期待してます。さてさてどんな会話が交わされるのか??
   追記)今回のあとがきにオイラの入れたコメントが載ってて、ちとびっくりしましたわ(^^;

だそうです

また読みにきてくれたのか……
うれしいことだ

その期待にこたえるためにも
更新スピード何とかなりませんか?

少なくとも今月は無理
ノートパソコンも今は修理に出しているし……

帰ってくるのは2〜3週間後ですね

一応、自宅の自作PCで書いているが
研究始まるから忙しいのなんのって……

まあ、ちょこちょこでもいいから進めてください

でなきゃ書いている意味ないぞ?

善処いたします

次回はバレンタインデーのお話ですね

主人公の特権を使いたい放題だな、雄真♪

楽しそうだな……

そりゃあ、なんてったって
おいしい思いする分だけ苦境が待っているものでして……

激しく拒否したい
俺に平穏な日々をくれ……

主人公であるかぎり、それは無理な相談だな

あ、あの、小日向君。がんばってね……

ほら、春姫ちゃんのエールもあるんだから
がんばってもらわないとね♪雄真♪

おい作者……何とかしてくれよ……

さすがの俺でもそれは無理

そういえば、月さん。
読者の皆さんにメッセージはないんですか?

そうだな、それを忘れていた
掲示板に書き込みをしてくれている龍の子供さん
以下、読者の皆様方大変のお待たせしました。
以後精進してさらなる作品の向上にむけて
ガンバって参りますのでなにとぞごひいきのほどをm(_)m

さて、そろそろお開きの時間だな

バレンタイン最初のハプニングはすももちゃんです

うれしはずかしハプニング第一弾だな

第二段とかあるのか?

第二段はわたしもはじける
という話を聞いたのですが……

あたしはどうなの?

おまえはいつもはじけているだろうが……

それでは今回はこの辺で

ばいば〜い♪

某月某日
瑞穂坂学園魔法科女子寮前より実況中継



月(ユエ)さん への感想は掲示板で お願いします♪


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