『次は――麻帆良学園中央駅』

麻帆良を走る電車の車内に響くアナウンスの声。

「おっ?次で到着みたいだな」

平日のお昼と言う事もあり、学園内を走る車内は僅かばかりの人を乗せて走っていた。

「アァ、ソノヨウダナ」

そんな人の少ない車内で、赤い髪の少年――ルークと、1体の人形――チャチャゼロは目的地への知らせを受けて目を開いた。

「ふぅ、やっと到着か。しかし何時間も座ったままってのは相変わらず疲れるな」

徐々に速度を落としていくのを感じ、立ち上がると軽くストレッチをするルーク。

「コンナノモ我慢デキナイナンテルゥ坊ハオコチャマダナ、ケケケ」

「人の頭上で垂れているだけのチャコにだけは言われたくないんだがな」

「オッ、着イタミタイダゾ」

そんなやりとりをしている間に電車は止まり扉が開かれた。

「話をすり替えやがって……まぁ良いか。じゃあ行くぞ」

多少不満があったが、何だかんだで長い付き合いのルークは特に気にする事もなく、開かれた扉を出た。

「オウヨ。マズハジジイデモ殺リニイクカ、ケケケ」

「ははは……じっちゃんには会いに行くがそこまで物騒な事はしないからな?」

「ケッ、ツマンネェナァ」

「はぁ……ちゃんとエヴァの家にも寄るから大人しくしててくれよ?」

「早クシテクレヨ。酒ガ飲ミテェンダカラナ!」

こうして麻帆良へとたどり着いたルークとチャチャゼロは『じっちゃん』の元へと向かうのだった



魔法先生ネギま! ―深淵より呼ばれし者―  第10話



「失礼します」

扉をリズムよくノックし、ルークは一声かけて扉を開けた。

「失礼スルゾ」

チャチャゼロもルークの頭上から一声かけるといつもの通り垂れ始めた。

「ん?誰じゃ?」

ゆっくりと開かれていく扉を見ることも無く、中にいる人物は書類に判子を押すのに必死だった。

「お久しぶりです、学園長」

そんな対応に気にすることも無くルークは礼儀正しく一礼した。

「おぉ!ルークではないか。久しぶりじゃのぉ。元気にしておったか?」

それをチラッと確認した人物はその姿を見て驚き、そして喜びながらゆっくりと立ち上がった。

「はい、学園長もお元気そうで何よりです」

「これこれルークや。そんな他人行儀な喋り方はやめてくれんかの?せっかくワシとルークは家族なんじゃからな」

学園長の本名は近衛 近右衛門と良い、琴葉の父親なのである。

つまり、琴葉の息子として迎えられたルークは自動的に近右衛門の孫でもあるのである。

「相変わらずだな、じっちゃんも」

ルークは近右衛門の発言に普段どおり答える事にした。

「フォッフォッフォ、ワシはいつもこんな感じじゃよ」

そして久々の再会を楽しむルークと学園長。

この2人はルークが近衛家の養子に迎えられてから何度も会っているのだが、非常に仲が良い。

特に学園長にとってはお見合いという自分の趣味を活かせることもあり、色々と策を練っている様である。

「しかし本当に良くぞ来てくれたのぉ。ようやく琴葉の許可が下りたみたいじゃしのぉ」

「かあさんも中々許可を出してくれなくて大変だったけどさ、最終的には泣きながら許可してくれたんだ」

「フォッフォッフォ、そうかそうか。では予定通りこれからはこちらに住むという事でいいのかの?」

「そういう事なんだ。だからこれからよろしく♪」

「ふむ、では色々と手続きをせねばのぉ。しかし本当にいいのじゃな?
琴葉から聞いた話によると生徒として麻帆良に居る気はないとのことじゃが」

「勉強はある程度かあさんに叩き込まれたし、何をするにしても自由に動けるほうが良いだろうからさ」

「うむ、では例の案と合わせて準備させておくとするかの」

「よろしくお願いします」

「ふむ……しかし困ったのぉ。そうなるとルークの住居となる建物は改装中でまだ使用出来んのじゃよ」

「じっちゃん、それはどれくらいかかるものなんだ?」

「そうじゃのぉ、1週間といったところかの」

「1週間か……さすがにその間野宿って訳には行かないよな」

「ソレダッタラ御主人ニタノンデミタラドウダ?」

そこで今まで大人しくしていたチャチャゼロが提案をした。

「そうだな……じっちゃん、エヴァに一度頼んでみるよ」

ルークとしては自分の存在を知る人物であることから――

「そうじゃのぉ、まぁエヴァンジェリンなら事情も知っておるし安全かのぉ」

また学園長にとっても何だかんだで信頼できる人物であることから、チャチャゼロの提案はあっさりと可決した。

「じゃあ早速頼みに行って来るよ」

こうして、ルークとチャチャゼロは早速エヴァの家に向かったのだが――――

「う〜ん…………留守みたいだな」

「マァ当然ト言エバ当然ダナ。今ハ学校ニ行ッテルハズダカラナ」

どうやらエヴァは学校に行っており留守の様である。

「そういえばもう学校は始まってるんだよな。じゃあエヴァが帰ってくるまで適当に散歩しとくか」

知り合いとはいえ勝手にお邪魔するのは失礼と考えたルークは一度学園エリアに戻ろうとしていた。

「気ニスルコトハネェゼ。サァ入ッタ入ッタ」

しかし、チャチャゼロはそんなルークの気遣いを無視して扉を開けると入っていってしまった。

「お…おい、チャコ!…………う〜ん、まぁチャコもこの家の住人だしいいか」

そして結局は深く考えずにチャチャゼロに続くルークだった。

「ケケケ、ヤット酒ヲ飲メルゼ。ルゥ坊モ腹ガ減ッテルナラ好ニシテイイカラナ」

「たしかに腹は減ってるよな。よし、じゃあ何か作るか」

こうして、一応人の家という事を完全に忘れたルークはキッチンへと向かっていた。



そして時を同じくして、麻帆良学園中等部1−A

『マスター、何者かが家に侵入したようです』

『あぁ、わかっている。恐らくと言うか間違いなく私の知っている人物だ』

極々普通の教室内で行われている会話。

しかし、周囲の者はそれに気がつくことはない。

と言うのも、この2人が行っている会話は魔法を使った念話なのである。

『そのようですね。どうやらキッチンに向かっているようです』

『ん?キッチンにか?全く、あの坊やは遠慮と言うものを知らんのか』

『あっ』

『次は何だ?』

『もう1人がマスター秘蔵のお酒を持ち出したようです』

『な…何だとぉ!』

『いかがいたしましょう?』

『茶々丸はこのまま授業を受けておけ。私は馬鹿な従者にお灸を据えてくるとしよう』

『わかりました。ではマスター、お気をつけ下さい』

『あぁ、では行ってくる』

その言葉と共に、マスターと呼ばれた少女――エヴァンジェリンは教室から姿を消した。




「よし、出来たぞ」

そして場所は戻ってエヴァンジェリン邸。

キッチンに立っていたルークが料理を作り終えたようである。

「うん、我ながら上手く作ったものだ」

「ケッ、以前ノギリギリデナントカ食ベレルヨウナ料理ヲ作ッテタヤツトハ思エナイ出来ダナ」

「褒め言葉として受け取っておくよ。しかし前の世界じゃ全く上達しなかったんだけどなぁ。
やっぱり教える人が上手いと違うもんなのかな?」

ルークの料理の腕前――

それは琴葉と料理長他数名の数年に渡る英才教育の賜物であったりする。

「よし、じゃあ早速食べるとするか」

「ソウダナ、コッチモ2本目ヲ開ケルトスルカ」

そんなこんなで料理を終えたルークは食卓に作り上げた料理を並べ、チャチャゼロは1本の焼酎を空にすると2本目に手をかけた。

と、その時である――――

「貴様らぁぁぁ!人が留守の間に何をやっておるのだ!」

この家の主である、エヴァが怒鳴り込んできたのだ。

「おっ、エヴァ!久しぶり。しかし相変わらずちっさいな」

「久シブリダナ、御主人。シカシ相変ワラズチッサイナ」

しかし、そんなエヴァに対するリアクションは極々普通なルークとチャチャゼロ。

というかチャチャゼロの提案により、いきなりエヴァを挑発していた。

「貴様ら…………やはりお灸を据えてやる必要があるようだな…………」

そしてエヴァの怒りは頂点に達しようとしていた。

「まぁまぁ落ち着けよ。ほら、丁度料理が出来たところなんだ。一緒に食べようぜ」

「むっ……たしかにいい匂いだが…………これはルークが作ったのか?」

しかし、ルークの作ったであろう、料理の見た目・香りによりエヴァの怒りは多少静まった。

「あぁ、そうだぜ。かあさん達が俺に料理修行をしてくれてさ。かなり苦労したけど上達したんだぜ」

「ふむ……では頂くとしよう。しかし以前の様に不味かった時は…………わかっているだろうな?」

「おいしいから大丈夫だって。さぁ、食べようぜ」

「あぁ……それとチャチャゼロ。私のコレクションを勝手に飲んだのだ。覚悟は出来ているのだろうな?」

「ケケケ、マァ細カイコトハイイジャネェカ。サッサト食ベヨウゼ」

「全く…………まぁいい」

「よし、じゃあ今度こそ食べようぜ」

こうして、久々の再開を果たした3人はルークの作った料理を食べ始めた。

結果的に言うと、エヴァはルークの料理に満足し、何とか怒りを静めることが出来た。

さらに、チャチャゼロが開けた酒を飲む事で機嫌が良くなったエヴァは、ルークが居候する事にもあっさり賛成するのだった。

そして、エヴァは一度学園に戻る事となり、ルークは少し疲れたのか、後片付けを済ませると眠ってしまった。


そして、次に目が覚めると――――


「リク・ラク・ラ・ラック・ライラック・来たれ氷精・闇の精!闇を従え吹雪け常夜の氷雪!闇の吹雪!」

自らは上空に浮いた状態で魔法を詠唱するエヴァ。そして放たれた魔法がほぼ真下にいるルークに襲い掛かった。

「へっ、そんなの当たるか!」

それをルークは瞬動を使い、闇の吹雪が着弾する地点より一気に距離をとった。

刹那、その地点には巨大の氷柱が完成していた。

さて、現在の状況はというと、ルークとエヴァの模擬戦というか、結構真剣な戦闘が行われていた。

それは数分前のこと、昼寝をしていたルークが目を覚ますとそこはエヴァの作り上げた別荘の中だった。

そして目覚めた瞬間、エヴァが襲い掛かってきたのだ。

突然の事で焦るルークであるが、自分の実力を知るいい機会と判断し、正式に、ルーク VS エヴァが開始したのだ。

「今度はこっちからだ!」

エヴァが放った闇の吹雪により出来た氷柱を足場とし、ルークは上空へと飛び上がる。

「はぁぁぁ!瞬迅剣っ!」

そしてその勢いを活かしてルークは鋭い突きを放つ。

「ふっ、そんな直線的な攻撃に当たるものか!」

しかし上空にいるエヴァまでの距離が開いていた事から、エヴァは容易く見切るとあっさりと回避した。

「まだだっ!」

瞬迅剣をいとも容易く避けられたルークではあるが、彼の攻撃はここからだった。

まず虚空を蹴り、方向転換をすると再度エヴァに向かって瞬動を使用、一気に距離を詰め直した。

「喰らえっ!烈破掌!」

そして剣を持たぬ右手に気を収束させ、その塊をエヴァのボディーに叩き込もうとした。

「ほう、虚空瞬動は完全に物にしたようだな――しかし、氷盾!」

しかし、エヴァはマントに忍ばせていた試験管を取り出すと、それを媒体にして防御魔法を展開し、受け止めた。

「その力貰った!――砕け散れ、絶破烈氷撃!」

完全に受け止められたはずのルークの攻撃。

だがエヴァの使用した氷盾――つまり氷属性の力を利用しルークはFOF変化を起こした。

「なっ、私の魔法を媒体に技を変化させたか!?」

この攻撃にはさすがのエヴァも意表を突かれたのか、氷盾はルークが作り出した氷塊と共に砕け散った。

「よし、狙い通りだ!そしてこれでどうだ!魔神――っ!?」

そして無防備となったエヴァにルークはトドメとばかりに両腕に気を収束した。

正確に言うならば、右腕の拳、そして左腕に持つ剣にである。

つまり、右腕からは魔神拳、左腕からは魔神剣を同時に放とうとしていたのだ。

2つの気は収束し、今にも放たとうとしていたルーク。

しかし、突然嫌な予感がし、さらにエヴァを見れば不敵な笑みを見せた。

それによりルークはエヴァにダメージを与えられるかもしれないこの情況で技をキャンセルし、不測の事態に備えた。

そう、この判断は正しかった。

「ケケケ、コノ程度デオワレルトオモッテナイダロウナ?」

「げっ!?チャコか!」

それは突然であった――いきなり背後から気配を感じ、さらに風を切る音が聞こえたルークは咄嗟に反転し剣を構えた。

するとそこには巨大な剣を持ったチャチャゼロが背中にある小さな羽根を駆使し、浮遊するとこちらに切り込んできたのだ。

幸い構えた剣でギリギリ受け止めることに成功したルークであったが内心焦りまくりであった。

「こらっ!いくらなんでも今のはやばすぎるだろ!それに邪魔するんじゃねぇよ!」

チャチャゼロの斬撃の勢いを殺す事が出来ず、地面に落下していくルークはそんな状況でも怒鳴りつけていた。

今の攻撃は反応できたからいいものの、もし直撃を受けていたらただの怪我ではすまないほどの一撃だったのだ。

というか、死んでいたかもしれない…………

それにエヴァ1人だけ思っていたルークにとってチャチャゼロはいらぬ横槍を入れた様なものだったのだ。

「ハァ?ナニイッテルンダ、ルゥ坊。コレハ御主人トルゥ坊ノ模擬戦闘ナンダゼ?
御主人ノ従者デアル俺ガ参加シナイワケネェジャネェカ」

しかし、それはあくまでルークの思い込みであり、事実は何気に残酷であった。つまり――――

「って事はだ…………1対2なのか?」

「マァ、ソウイウコトダナ」

約600年の時を生きる元600万ドルの賞金首と、その片腕とも言える2人を相手にしなければいけないのである。

そしてさらに事態は急変し――――

「ちょっと待て!さすがに2人を――」

「ふっふっふ……はっはっはっはっは!まさかこの私が隙を作らされるとはな。面白い……実に面白いぞ!」

トドメを刺されなかったとはいえ、チャチャゼロがいなければ恐らくであるがダメージを負っていたかもしれない。

そんな状況にエヴァは焦るどころか、喜び、楽しんでいた。

「最近はタカミチも忙しいようでな、学園内に侵入してくる輩も私が弱体状態であるにも関わらず雑魚ばかりだった」

「お…おい……エヴァ?」

突如、笑い出したエヴァにルークは非常に嫌な予感がしていた――――もとい、確信していた…………

「しかしだ、ルークよ。貴様は今までの雑魚とは違う。そう――――貴様なら久々に本気も出せるだろう!」

どうやらいらぬスイッチが入ってしまったようである。

「ケケケ、ヨカッタナジャネェカ。コノ別荘内ナラアル程度本気ヲダセルカラナ。イイ経験ガデキテヨカッタナァ」

そしてメンタルシンボルで動けるようになっているとはいえ、供給量の関係で実力を発揮できなかったチャチャゼロにとって
この魔力の満ちた別荘内は非常にいい環境と言える。

まぁ要するに、ルークという存在はエヴァやチャチャゼロにとって、
『ある程度本気を出しても死なないだろうし遠慮なくやっちゃってもいいよね?(笑)』
的な存在として認められたという事である。

「やっべぇなぁ……エヴァだけでも大変だって言うのにチャコまで加わるのかよ」

そしてそれはルークにとって非常に面倒かつ大変な状況となりつつあった。

「ケケケ、ソンナコト言ッテルワリニ表情ハ楽シソウジャネェカヨ」

しかし、ルークもエヴァやチャチャゼロと同様、この状況を楽しみつつあった。

「京都じゃ派手な技は控えていたからな。ここなら遠慮なくぶっ放されし、何より相手が相手だ。
こっちだって本気を出せるいいチャンスだからな!」

ルーク自身も規格外の強さを手に入れつつある為、京都では全力での戦闘行為は極力控えていた。

だからこの状況はルークにとってもありがたいものなのである。

ちなみにだが、ルークが京都で派手な技の使用を禁じた理由の中には、彼の師とも言うべき女性が決戦奥義を放ち、
それにより荒野と化した庭を、寝る間も惜しんで修復する庭師の姿が哀れに見えてならなかったからという理由も含まれている。

「では遊びはこれくらいにして本気でいかせて貰うぞ。ルークよ、覚悟はいいな?」

学園結界の影響を受けないこの別荘内で、エヴァはやや劣るものの本来あるべき魔力を纏う。

「あぁ、遠慮はしないでくれ。こっちも本気で……はぁぁぁ!――――やってやる!」

ルークも全力で戦える様、オーバーリミッツを発動し気合を入れなおした。

「そうだ、それでいい。さぁ――いくぞ! リク・ラク・ラ・ラック・ライラック 氷の精霊59頭 集い来りて敵を切り裂け!」

「ケケケ、御主人モ最初カラ飛バシテイクツモリダナ。ナラコッチモ全力デイカセテモラウゼ!」

エヴァは早速魔法の詠唱を開始し、チャチャゼロは詠唱の邪魔をさせぬ為に、短刀を両手に持つとルークに向かって突進した。

「チャコには悪いが近づけさせやしない!――――唸れ烈風!大気の刃よ、切り刻め!」

しかしルークもエヴァ同様に魔法の詠唱を開始した。

ルークが使う譜術と呼ばれる魔法は、詠唱キーを必要としない素早い詠唱が可能である。

「チッ、魔法カ!?」

それを近くで見ていたチャチャゼロにとってルークの魔法は危険と判断し、素早く手に持ったナイフを投擲した。

「――――タービュランス!」

しかし、それは間に合う事も無く、ルークの譜術は発動した。

風を操り、小さいとはいえ強力な竜巻を作り出すとそれを自らの周囲に纏わせ、チャチャゼロのナイフを弾いた。

「ふっ、もしや私のことを忘れたわけではあるまい?魔法の射手連弾・氷の59矢!!」

しかし、結果的にチャチャゼロの役目は果たされていた。

エヴァは妨害される事も無く、魔法の射手を放つとルークに襲い掛かった。

「はっ、それも計算の内だ!喰らえ、貫く閃光!――翔破裂光閃!」

それに対しルークは、タービュランスで作り出した風の力を利用し、またもFOF変化を起こした。

光を纏った無数の突き――それはエヴァが放った魔法の射手に向けて放たれた。

そして2つの力が激しく衝突し、お互いの攻撃は消失した。

「ふっ、全くもって楽しませてくれる!ならこれはどうかな?」

エヴァは本当に楽しそうな表情を浮かべると、右腕に魔力を集中させた。

「そりゃどうも!こっちも色々と試してみたいからどんどんいくぜ!」

「オイオイ、2人ダケデタノシンデルンジャネェゾ。俺モイルンダカラナ!」

チャチャゼロも投げたものの弾かれたナイフを拾うと、構え直した。

そしてエヴァとチャチャゼロは特に合図を出す事も無く同時に動いた。

エヴァは右腕を振りかぶりつつ上空より急降下、チャチャゼロは軽いステップで正面から突撃していた。

「まずは私からだ――喰らえ!」

まずルークを射程に捉えたのはエヴァだった。

エヴァは純粋に魔力強化した右腕を振り下ろすと、ルークに襲い掛かる。

「はぁぁぁっ!」

それにルークも真っ向から受けてたった。

ルークも剣を強化し、何とか受け止めることに成功。

しかしエヴァは左腕にも魔力を纏うとそれで大地を抉りつつ強力な一撃を放つ。

「くっ!?さすがは元600万ドルの賞金首だな!」

さすがのルークもそれを受け止めきれず、バックステップでダメージを軽減させるのが精一杯だった。

「ケケケ、次ハ俺様ノバンダゼ!」

しかしそんなルークに今度はチャチャゼロが襲い掛かる。

エヴァの強烈な一撃とは違った鋭く、素早い攻撃。

「ちっ、さすがにまずい!?」

ダメージと体勢が崩れていた事もあり、ルークはそれを捌くのに苦労していた。

「サァ、イツマデ耐エレルカナ?」

一方のチャチャゼロは余裕の笑みを浮かべつつも、ナイフの鋭さは増すばかりで確実にルークを苦しめていた。

そして――――

「くっ、しまった!?」

ついにルークが防御に用いていた剣を手元より弾かれてしまったのだ。

「ケケケ、コレデオワリダ!」

焦りの表情を浮かべるルーク。

そんな彼にチャチャゼロはトドメとばかりに斬撃を繰り出そうとしていた。

「くっ、マズイ!?――――なーんてな!喰らえ、ノクターナルライト!」

しかしルークが見せた焦りは演技であり、ルークは隠し持っていたナイフを3本同時に投擲した。

「ケッ、小癪ナマネヲスルジャネェカ!」

だがそこは悪を突き進むチャチャゼロである。

ルークの放ったナイフをいとも容易く弾くと更なる攻撃を繰り出そうとした。

「へっ、本命はこっちだ!セヴァードフェイト!」

しかし、ナイフを弾く際に生じた僅かな時間を利用し、
ルークはバックステップで距離を取ると上空に飛び上がりまたも3本のナイフを投擲した。

「オイオイ、ドコニナゲテルンダヨ。ソンナンジャ――――ナッ!?」

その3本は直接チャチャゼロに当たる事も無く無残にも大地に突き刺さった。

しかし、それはルークの狙い通りであり、三角形を描くように突き刺さったナイフはそれぞれが反応を示し、
やがて結界のようなものを展開した。

「その技はチャコの前では見せて無いからな。さすがのチャコも意図には気がつかなかっただろ♪」

「チッ、俺ガ寝テイル間ニコンナ技ヲオボエテイタトワナ」

「昼寝ばかりしてるからだぜ。さぁ、これでトドメだ!――――聖なる槍よ、敵を貫け!」

約3年の時を過ごしたルークとチャチャゼロ。

しかし、チャチャゼロはルークを鍛える為に魔力の消耗を抑える必要があり、
省エネモード(要するに睡眠)に突入する日が非常に多かった。

ルークが先ほど使用した技はその際に身に着けていたのである。

まぁそれはさておき、結界により拘束されたチャチャゼロにトドメを刺すべく詠唱するルーク。

「――――ホーリーランス!」

動けないチャチャゼロの周囲に、光の槍が大地より生まれると、その全ての矛先が向けられた。

「コノ程度デ俺ヲトメラレルトオモウナヨナ!」

しかしチャチャゼロは容易く結界を切り裂くと慌てて光の槍が突き刺さるであろう地点より退避した。

「コノ程度ジャ俺ハタオセナイゼ?ケケケ」

隠し球を用いた戦術は失敗に終わり、ルークのピンチは続いた。

「いや、これで終わらせてやるさ!」

かに見えたが、ルークは自信満々だった。

「状況ハワカッテルノカ?武器ヲモッテイナイルゥ坊ナンテコワクモナントモナイゾ」

「ふっ、どこを見てるんだよ。武器ならここになるだろ♪」

チャチャゼロの指摘は武器も持たないルークなど怖くは無いというものだった。

ルークの戦術は剣を用いる事がメインであり、それは間違った事ではない。

しかし、ルークには武器が存在した。

「実はさ、こういうことも出来るようになったんだぜ!」

それは先ほどチャチャゼロに放った譜術で生まれた光の槍。

ルークはその中から1本を無造作に選ぶと、両手でしっかりと構えた。

「切れ味抜群の光の槍だ、受けてみろ!――瞬迅槍!」

槍を構え、脚に気を収束――――瞬動による高速移動、そして光の槍による一点突破。

「クッ!?」

2人の距離は近かった事からチャチャゼロは回避が出来ず、また譜術で生み出された刃の鋭さは想像を絶するものだった。

結果、攻撃を完全に受け止められなかったチャチャゼロはナイフを破壊され、かなりの距離を吹き飛ばされてしまった。

「…………チッ、マサカルゥ坊ニヤラレルトハナ」

そして上半身を辛そうに起こしたチャチャゼロは潔く敗北を宣言していた。

「ふぅ……何とかやれたか」

「…………コンナニモハヤクルゥ坊ニマケルトハ……俺モマダマダダナ」

「まぁチャコが万全じゃないから勝てたんだけどな。1年くらいエヴァに見てもらって無いから体にガタが来てるんだろ?」

「ケッ、ソレデモマケハマケダ」

そう、先ほどまでルークを苦しめていたチャチャゼロではあるが、1年程エヴァのメンテナンスを受けておらず、
体調(?)が不調だったのである。

そしてルークの最後の攻撃を受け止める際、体内に取り込んでいた魔力を全て使用し、肉体を守っていたのである。

そのおかげで本来なら腕などが飛んでいてもおかしくない攻撃を受けてもチャチャゼロは大きなダメージを負っていない。

しかし負けを認めたのは魔力が底を尽きたこと――――

そしてメンタルシンボルと周囲の魔力だけではルークと対等に戦う事すら出来なくなったからである。

本来はご主人のエヴァが魔力を供給すればいい話なのであるが、この別荘内でも完全な力を発揮できず、
自分に力を供給するだけで精一杯だったのである。

そして、そのご主人様はと言うと――――

「ふふふ、まさか万全では無いとは言えチャチャゼロに負けを認めさせるとは…………茶々丸、いい勉強になっただろう?」

「はい、非常に参考になりました」

現在の従者である茶々丸と観戦モードに入っていた。

絡繰 茶々丸――それがエヴァの従者の名前である。

チャチャゼロと同じく人ではない存在。

しかしチャチャゼロとは一線を越えた存在である。

2人の大きな違いは動力にある。

茶々丸は魔力を動力としない、電気も用いると言う科学技術の集大成とも言うべき存在なのである。

そして魔法を封印され、家事関係のスキルを持たない吸血鬼(約600歳)にとって非常にありがたい存在なのである。

と言うのも彼女は最近起動したばかりなのであるが、家事スキルを既に身に着けているのである。

尚、現在の茶々丸は戦闘能力が皆無であり、只今勉強中のようである。

「そうかそうか。さて、茶々丸よ、そろそろ終わらせようと思うのでな」

「食事の用意ですね。かしこまりました」

「ふふふ、では任せたぞ」

「はい、マスターもお気をつけ下さい」

こうしてエヴァは観戦モードを終了するとルークの元へと飛んでいくのだった。

そして

「さぁ、ルーク。チャチャゼロをそのままにしておくのも忍びないのでな、そろそろ決着をつけるとしようか!」

「こっちもいい加減疲れたからな。その話乗った!」

「せっかくだ、ルークの土俵で勝負してやろう」

そう言うとエヴァは自らの右腕に巨大な氷の剣を実体化させた。

「さぁ、貴様も早く武器を持て!」

「魔法剣か……ならこっちも同じ手で行かせて貰うぜ!――――雷雲よ、我が刃となりて敵を貫け!」

それに対してルークは詠唱を開始、彼の上空に雷の精霊が収束し始めていた。

そしてそれは剣の形へと姿を変え、ルークは両腕でしっかりと掴むと――――

「エヴァ、いくぜっ!」

「あぁ、こちらも全力でいかせてもらおう!」

お互いが巨大な剣を構え――――

「――――サンダーブレード!」    「エクスキューショナーソード!」

2つの力が激突したのだった。

お互いの威力はほぼ同格であり、凄まじい衝撃が起こり、周囲の物を弾き飛ばしていた。

そしてそれにより巻き起こる砂埃により視界が利かなくなった戦場。

砂埃はやがて風に乗って姿を消し原因を生み出した2人の姿が見えるほどになった時――――

「さぁ、こういう時は何と言えばいいかわかるな?」

「くっ、ま…参りました」

エヴァに背後を取られたルークが敗北を宣言していたのだった。



「だぁぁぁぁ!いいとこまで言ったのに悔しい!」

「ふふふ、そう簡単に勝たせてやるはずがないだろ?まぁ日々精進するんだな」

実践感覚の模擬戦闘が終了し、食事を共にするルークとエヴァは先ほどの戦闘について話していた。

「そういえば最後のあれは何だったんだ?突然背後に気配を感じたと思ったら既に食いつかれそうな状況だったんだけど」

「アレハ影ヲツカッタ転移魔法ノ一種ダナ。御主人ノ得意ナ魔法ノ1ツダゼ」

先ほどの戦闘、それを終了に導いたのはエヴァの影を用いたゲートであった。

エヴァは2つの力の衝突により視界が利かなくなったのを利用し、
気配を消した上でゲートを用い、ルークの背後に転移して彼の首に抱きついたのだ。

そしてルークの疑問に答えたチャチャゼロは日本酒を満足そうに飲んでいた。

戦闘終了後、エヴァが直ぐにメンテナンスを行った事で既に動き回る事は出来るようである。

と言っても完全ではなく、食事の後に大掛かりなメンテを予定しているようである。

「さて、食事も終わりだ。さて、チャチャゼロを診る前にルーク……わかっているな?」

「はぁ…………マジなのか」

「当たり前だ。先ほどの戦闘でかなり疲労してしまったからな。しっかりと補給させて貰うぞ」

「まぁ色々と試す事も出来たしな、ここは素直にやるよ」

「ふふふ、ではいただくぞ」

そう言いながらルークの背後から絡みつくように抱きつくと、エヴァは彼の血を頂く為に行動を開始した。

「はぁ……前は寝起きで奇襲されて血を吸われた訳だけど……まさか自分から差し出す日が来るとは……」

「あの時の味は中々忘れられない物だったぞ。ルークの血は私が知る中でも上位の品質だ」

「そ…それって褒められてるんだろうけどさ、嬉しくないよな……」

「貴様もまだまだ子供だな。この私がわざわざ抱きついてやるだけでも幸福な事だと言うのにな」

「う〜ん…………幸福なのか?」

「ルゥ坊、世界ニハ幼女ガ大好キデタマラナイ人種ガイルッテコトヲオボエテオクンダナ」

「なるほど、幼女なのが味噌なのか」

「ほう、この状況でそんなことを言うとはいい度胸だな。ならば私の魅力をたっぷりと解らせてやろうではないか♪」

「な…何をする気だ!?」

「ふふふ、子供にはわからないことさ」

「ちょっ!?くそっ!?離れない!?」

「まずは抵抗する力を奪わせて貰うかな。と言う事で血は頂かせて貰うぞ」

「だぁぁぁぁ!?」

「ナオ、コノ後何ガオキタカハ作者モ特ニ考エテイナイソウナンデナ、想像ニ任セルラシイゼ。ケケケ」

「そんな意味不明な発言で幕を閉じるんじゃねぇぇぇ!」

その後、貧血で動けなくなったルークに何があったのか…………それを知るのは当人達だけなのだった……

「だ…だからそういう意味深な発言で終わるんじゃ……ねぇ……よ…………がくっ」

「全く、やっと大人しくなったか。さて、何をしてやろうかな」

「ナンダ?大人ノ事情デ公表デキナイヨウナコトデモスルンジャナイノカ?」

「こう見えても私はルークがお気に入りなのでな。どうせやるなら全てを物にしてからの話さ」

「ホォ、サウザンドマスターニゾッコンダッタ御主人ニモツイニ春ガキタッケワケダナ」

「バ…バカな事を言うな!?誰がナギ如きにそんな感情を持つものか!?
それにルークはあくまでも素質と血の品質、そして様々情報から手元に置いて置きたいだけだ!」

「ハァ、全ク。御主人モアイカワラズ素直ジャナイナ」

「う…うるさい!茶々丸、ルークをベッドに寝かせておいてやれ。私はチャチャゼロを診てくるから後は任せる」

「はい、かしこまりました」

「さぁ、チャチャゼロ。さっさと終わらせるぞ」

「リョーカイダ」

こうして、ルークの麻帆良学園での1日目は終わりを迎えるのであった。






あとがき

ど…どうも、お久しぶりのズズでございます。
ははは…………遅れに遅れて本当に申し訳ありませんです。
前回の更新から既に4ヶ月経過しているという状況にお詫びのしようがございません。
学校は無事に卒業出来たものの、その後様々な出来事に巻き込まれて全く手をつけられませんでした(汗
最近になってようやく余裕が出来てきたのでこの度10話を投稿させていただきましたが
久々にPCと向き合うと中々上手くいかないものでして……かなり苦労しました。
ま…まぁ何とかこうして投稿できて私も一安心です(内容はともかくとしてですが…………

では気を取り直して、今回のお話はルークの能力その他諸々の紹介がメインと言った内容となっております。
頭も良くて料理もうまい・運動神経抜群で容姿端麗とますます完璧人間になりつつあるルーク君。
いくら非魔法関係者以外との交流の為とは言えやりすぎたかと思っておりますがその辺はご了承下さい。
そしてエヴァ&チャチャゼロコンビとの戦闘ですが…………ゴメンなさい……戦闘を表現するのが難しすぎます(汗
その反動か、最後の方は少し暴走してみましたがルークは無事ですのでご安心下さい(笑

では本日はそろそろ失礼いたします。
次の更新は何としても今月中に出来るように頑張りたいと思いますのでこれからもよろしくお願いします。
それでは、最後にここまで読んでいただきありがとうございました。
次回の更新でまたお会いしましょう♪




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