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あの子に好きって言いたくて! 第9話「流行りもの」
作者:悠一   2025/02/10(月) 17:54公開   ID:4c17BbrfZeo
文化祭の時に告白しちまったなぁ…でもなぁ…岩田さん可愛いし美人だし、周りの男子から嫉妬を買わないかな…
そんなことを朝の準備をしながら考えていた。そうこうしていると、教室に安西先生が来た。
「コロナがさ、今流行ってるらしいんだよね。みんな気を付けてね。テストも近いんだから。」
コロナか…。全く迷惑なもんが流行っちまってるぜ。俺も、ここにいる全員、コロナで迷惑を被ったであろう。
そういえば、俺の中学時代の同級生の鈴木健一が「オレさ、コロナが5類に移行した翌日から、マスク外して学校に行ってるんだ。」とメールで送ってきたな。恐らくマスクするのが嫌だったんだろう。一方の俺は、ちゃんとマスクをしているが。
「おう文也、お前プロスピってやってるか?」
クラスメイトの柴崎彰夫がそう話しかけてきた。プロスピというのは名前と「野球のゲーム」ということしかしか知らない。
「これ、お前にやるよ。」貰ったのは阪神タイガースの選手のカードだった。阪神と言えば今一番調子に乗っている球団。岡田彰布監督率いる選手たちは「アレ」に向かって突き進んでいる。まあ「334」は野球に詳しくない俺でも知っているが…

と、冗談は置いておいて、俺は家に帰って「プロスピ」というものを調べてみた。プロ野球スピリッツA、Appストア、Google Playストア、Amazonアプリストアより配信されているスマートフォン専用のプロ野球ゲームだ。カードの選手のことも調べた。近本光司という選手だった。
阪神の選手の名観を見ていると、ここら辺の出身の選手がいるらしい。確かに苗字はこの街に多い苗字だな。岩田という苗字の投手もいる、好きな子と同じ苗字の選手がいるという話を聞くと、阪神を応援したくなった。

翌日、俺はいつものように大橋・柴崎と、大橋の席で話していた。
「翔がいないんだけど。どうしたの?」
俺は大橋にそう話しかけた。
「伊東、コロナになったらしいぞ。お前も気を付けなきゃな。」
俺は驚いたのと同時に、少し怖くなった。ああ、まだコロナは依然として強い感染力を持っているのか…と思った。
一方そのころ、伊東は自分の部屋にこもり、うつ伏せの状態でベッドに横になっていた。
「翔大丈夫?」母親のそんな声が聞こえる。翔は「うん大丈夫」と言いつつ、おもむろにスマホを起動させた。開いたのは金髪ツインテールのベストを着用した美少女。
「シアかっこいいし可愛いよ…シア様のツインテールをモフりたいよ…」
そう言いながら翔は毛布をかぶり、ゴソゴソと動き始めた。
「シアさん…俺、今病気にかかって大変なんだよ…そんな時でも、俺はシアさんの可愛さとカッコよさに癒されっぱなしだよ…」
普段はクールな優等生キャラを演じている伊東には、アニメキャラに性欲を向けるという裏の顔があったのである。
「ああ…こんなとこ、高中先輩にでも見られたら人生終わりだなぁ…」
高中紀子、軽運動部の一つ先輩。身長は161cmと平均より少し高いがどこか可憐な印象を与え、誰が言ったか「軽運動部のマドンナ」。もちろん伊東も高中には「憧れ」という感情があるため、高中の前では実際以上に爽やかなイケメンキャラを演じているのである。

3日後、俺たちは隣のクラスの出入り口近くで駄弁っていた。そんな中、大森がこんなことを言った。
「なあ若林、うちのクラスでコロナが頻出してるんだよ。」
「2組も?うちらのクラスでも、コロナ感染者が二人出た」
「一人は伊東だろ?伊東咳とかで大変だろうな今頃。もう一人は誰?」
「斉藤美緒、伊東と一緒に黒板係をやってる子。」
そんな中、大橋が横槍を入れてきた。
「伊東がうつしたんじゃねえのか」
「んな馬鹿な。」「さすがに不謹慎だろ。」
柴崎と俺がそう突っ込んだ。
「冗談だよ。」
「それにしても不謹慎だよ。」by柴崎。

しかし、その翌日からうちのクラスでコロナが頻出した。昨日まで不謹慎な冗談を飛ばしていた大橋が、その翌日にはクラスの明るい女子だった加藤紗香さんが、木曜日には加藤さんと仲が良かった染谷と、染谷といつも一緒に居る親友の岡が、金曜日には染谷の隣席の戸塚と、陽キャ男子たちのリーダーだった森岡大翔が、そしてとうとう、俺までコロナになってしまった。

僕が自宅待機になって二日後、伊東からメールが送られてきた。
<若林、体調大丈夫か?
染谷から聞いたんだが、今日からうちのクラスは一週間学級閉鎖だってよ。>
1組は学級閉鎖になってしまったらしい。理由は聞くまでもない、クラスターが出たせいだ。
高校に戻った俺は授業に追いつけず、休んでいた日のノートは隣の席の安本さんのを写メらせてもらった。安本さんには本当に感謝しかない。本当にありがとう、安本さん。
「安本さん、ありがとう。安本さんのおかげで助かったよ」僕はそう言った。
「どういたしまして。
前にも言ったでしょ?私、木本先輩に優しくしてもらって、あんな先輩になりたいって思ってるの。」
「俺にとっての安本さんは、安本さんにとっての木本先輩ですよ。」
「ありがとう。嬉しいな」
安本さんはとても優しい。安本さんがいなければ、俺の勉強生活は詰んでいただろうな。僕も誰かに優しくしたいな。

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