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あの子に好きって言いたくて! 第7話「夏休みの終わり」
作者:悠一   2025/01/04(土) 22:19公開   ID:4c17BbrfZeo
「ああ、夏休みが終わっちまう…」
俺はそう言いつつ、8月の後半を謳歌していた。高校に入って初めての夏休み、楽しいもんだよな。
何を思ったか、俺はネットでぼっちざろっくを見返していた。文化祭の練習で延々と聞かされて嫌いになりかけたが、やっぱり喜多ちゃんは歌がうまいし、可愛い。あんな子が身近にいたら、告白しないわけがない。


夏休み最後の日は、どうしても眠れない。夏休み終わりにはかりゆし58の「オワリはじまり」を聞くのがここ数年のマイブームだ。そんなこんなしているうちにもう「午後」が「午前」に変わっていた。
ああ、眠らなきゃな。明日は学校だ。これ行ったら、明日は土曜日、また休める。そんなサボりたい心が俺の心にあった。
校長の長々した話を聞き、教室に入る。
教室で、隣の席の安本さんに話しかけられた。
「若林君おっはー。夏休みの宿題終わらせた?」
「うん。何とか。早めに終わらせて良かった。」
安本さん、俺みたいな陰キャにも優しくしてくれる。マジで聖女もいいところだ。
安西先生の話が。校長の話は好きじゃないけど、安西先生の話は癒されるから好き。

階段では、同級生の戸塚諒が2組の相沢千春に絡まれている。
「リョーちゃん、今日も一緒に帰る?」
「最近いっつも一緒に帰ってるよな。」
「だって小学校のころから一緒でしょ?当然のことよ」
諒はただ苦笑いするだけだった。

理科室では生物部の面々(染谷、顧問の飯塚真由美、副顧問の石橋駿太、3年生の高橋みゆきと川島理名)が集合し、文化祭の出し物に関する打ち合わせをしている。
打ち合わせは数分で終わり、先輩二人は帰り、石橋もテニス部の見回りに行った。石橋は生物部副顧問とテニス部副顧問を兼任している。
「染谷、二人きりになったね。準備室での二人きりの時間よ。」
「早めに終わらしてくださいね。でも、楽しみです。」


翌週から、学校が本格的に始まる。今まで以上に出し物の練習が苛烈を極める。ぼざろ地獄とはまさにこのことだ。
でも、俺が軽音部に入ったのは、「ぼっち・ざ・ろっく」が原因だったなぁ。ぼざろを観てなければ軽音部には入らなかった。

練習が終わって部室から出る。軽音楽部の部室は体育館裏の階段を上がった物置小屋みたいなところにあって、俺も体験入部の時は驚いた。
ここ最近は文化祭練習で忙しい。いわゆる「地獄の文化祭練習」だ。最近の部活で唯一楽しいのは渡部と雑談をすること。内容は色々あるが、多いのはアニメの話やここ最近の出来事、お互いの中学の話だ。
「なあ真也、俺もうぼざろが嫌になってきたよ。」
「俺もだよ。」
「ちょっとそこの二人。何話してんの?」小川先輩の声が。
「あ、すいません…練習が辛いって、二人でちょっと…」
「辛いの?気持ちは分かるよ。俺も正直ぼざろ聞き飽きたわ。
でも、俺らの発表楽しみにしてる人は沢山いるんだよ。分かるよな。」
小川先輩は優しいし尊敬できる先輩だ。小川先輩を尊敬しているのは、僕だけじゃないはずだ。
「4時45分になったので、部活終わり。後片づけだよ〜」
軽音楽部部長の佐郷鉄矢の声がする。部員(特に文也)にとって、練習の終わりを告げる佐郷の声は「苦しみからの解放」の瞬間だった。
地獄の練習を終えて、部室からぞろぞろと出てきた。
そんな時、ボブヘアを後ろに縛った眼鏡の女性―顧問の深田先生とすれ違った。
「若林君じゃない。本番成功しそう?」
「ええ。何とか。だけど、練習がキツくて…」
「1年生はみんなそう言うよ。でも慣れればなんてことないわよ」
「え〜?本当ですか〜?」
そんな雑談をしつつ、俺はチャリに乗って家に帰る。

時を同じくして、希実たちバスケットボール部は、練習の後片付けをしていた。
希実と、希実より少し背が高い一つ結びの美人―バスケ部の1期先輩の石川孝彩が、一緒にカゴを倉庫にしまっている。
「ノンちゃんは中学の時、大会出たことあるの?」
「うちは弱小でしたから、そういうことは…」
「そっか弱小だったのか〜」
「まあ、人数も私の代は少なかったですし。石川先輩のところはどうだったんですか?」
「私のところ?うちは大会1回だけ出たことあるよ、2年の時。負けちゃったけどね。」
「そうなんですか。出られるだけでも羨ましいです」

孝彩は、プレースタイルが似ている希実に目をかけている。希実の方も孝彩を慕っており、プライベートでも時々連絡する。そんな孝彩は、希実と中学時代の同級生だった染谷からも恋愛感情を向けられており、一度告白されている。
「染谷君元気にしてる?私振っちゃったけど、傷ついてない?」
「彰輝ですか?全然そんなことないですよ。石川先輩は本当に優しいですね。」
バスケットボール部は、今年こそ大会への出場を目指して、今日も練習している。

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俺、大森智也は、今日も隣の席の清原さんをチラ見していた。告白したい。メガネっ子がタイプなんだよ、俺は。山内先輩に優しくされて、めっちゃ良い思い出だけど、ひょっとしたらそれで俺の性癖形成されたのかもな。いや、絶対そうだ。

(俺は文化祭で清原さんに告白しようかな…でもなぁ…周りのやつらに知られると恥ずかしいしなぁ…)
そんなことを考えながら俺は夏休みを過ごしていた。
学校が始まり、当然ながら清原さんが隣の席にいる。脳裏に「告白」の二文字がチラつくが、そんなのは夢のまた夢だ。

電車の中。夏休み前まで散々俺をからかった山田がいる。山田に目を付けられないようにじっとしているが…通用するはずもなかった。
「トモくん久しぶり。私はトモくんが何考えてるかわかるよ。どうせ『あの子に告白したい〜』とかそんなこと考えてるんでしょ」
バレていやがる。山田さん、あんたはエスパーですか
「その呼び方やめてくださいよ。そんなに親しくもないのに…」
「あ、その反応可愛い〜ずっとトモくんって呼んでやろっと」
「も〜…」
「今度恋に関する特別授業してあげるから。明日教えてあげる」
俺はすかさずその話に飛びついた。火曜日が楽しみだな。
運命の火曜日、山田さんの「恋の特別授業」が始まる。
「いいかいトモくん、人間は初恋が一番記憶に残りやすいんだ。だから初恋の人を好きになってしまう。トモくんが好きなその清原って人も、優しくしてくれた地元の先輩に似てるからなんでしょ」
ああ、そんなこと言ったなぁ。
「まあ、いっそのこと告白しろ!私から言えることはそれが全てよ。」
結局告白か。俺だって告白したいよ。だけど、告白したら周りからなんて言われるだろう。同級生の男子に茶化されるのがオチだ。
山田さんはここ最近、俺の「人生の師匠」のような存在になってきている。ちょっと怖い担任の先生より、よっぽど話しやすい。


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■作者からのメッセージ
作中に出てくる「石川先輩」のフルネームはプロ野球選手と読みが同じですが、これには理由があります。特定されない範囲だとは思いますが、石川昂弥選手が在籍している中日ドラゴンズに、割と昔の選手ですけど先輩のモデルとなった人物と一字違いのOBがいるからです。
筆者は千葉県在住なんですけど、何の因果かその選手も千葉県出身なんですよ。先輩のモデルとなった方の苗字も割とありふれたものなんですけど、一応仮名にしておきます。

次はいよいよ文化祭です。
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