「…」
俺の名前は若林文也。陰キャだ。
俺はこの学校があまり好きではない。そもそもここ、地元の学生でも敬遠するような学校だ。なぜ俺がこの学校に入ったかというと、家から通える距離だったからだ。
俺の席は後ろの方だ。だが俺には楽しみは何もない。授業が退屈な時、窓の外を眺めるだけだ。見えるのは町並みだけだが。
そんなある日の休み時間。俺はいつものように外を眺めていた。
隣の席の女子が俺に話しかけてきた。
「ねえ〜、若林くんだっけ…?」
「あ、うん。どうしたの?」
彼女の名前は安本綾。端的に言ってすごく綺麗だ。まあ俺から見てなんだけど。
「若林くんってさ、好きな子いる?」
なんで俺にそんなこと聞くんだよ…俺は彼女いない歴=年齢だぞ…そう思いながら、「今のところいない」と答えておいた。
その次の休み時間。
「なあ伊東、俺クラスメイトに『好きな子いるか』って聞かれたんだけど」
「マジかよwで、なんて答えたの?」
「もちろん『いない』って答えた。翔はいるの?」
「俺も今のところいない。洋介は?」
「俺?俺もいねえw金髪、お前は」
「いるわけねえだろ。逆に何でいるって思うんだよ。」
大橋「俺たち、みんな彼女いないもんなw」
伊東「少しは希望を持て」
放課後の校門前、俺は矢島美愛に話しかけた。美愛は俺の小学校のころからの友人だ。美愛は美人だったが、小学校のころからずっと知っているから「高嶺の花」という感じはなかった。
そんな時、俺の後ろを体育館に向かう岩田希実が走っていた。彼女はバスケ部に在籍しており、「スクールカーストの最上位グループ」「学年一の美少女」といわれており、非常にモテる。クラスメイトでバレー部の森岡大翔が部活が終わった後、彼女に告白したと聞いたこともある。
「かっこいい…」
そう思い、俺は思わず見とれてしまった。
「お前どうしたんだ?」
伊東に声をかけられた。どうやら希実に見とれてしまったようだ。慌てて「いやなんでもない」と言った。
「それにしても、お前よく矢島に普通に話しかけられるな。」
「俺、美愛と小中とずっと一緒だからさ、そんなに高嶺の花って感じじゃないんだよ」
「へ―羨ましいな。でも矢島は彼氏いると思うぞ?
矢島は同じクラスの江原とめっちゃ仲いい。多分あの2人は付き合ってる」
俺は、「あの美愛が彼氏いるのか。」と思った。まあルックスはいい方だからな。モテるのも当然か。
美愛と別れて少し後、「2組って可愛い子いるの?」と大橋が言った。
伊東「2組で可愛い子っつったら、紺野とか相沢とかが思い浮かぶな」
柴崎「紺野さんか〜。紺野さんは確かに目がパッチリしてて可愛いけど、タイプじゃないかな…それに俺の友人が紺野と同級生で、友達の友達ってイメージだからなぁ…。相沢さんは名前しか知らないし…」
大橋「相沢さんはオシャレで制服の着こなしがいい子。」
柴崎「ああ、あの子か。顔と名前が一致した。」
だが、2組の女子の話をしているのに、大森の影が薄い。
伊東「大森、お前さっきからほとんど話してないけど、どうしたの?」
大森「いや大丈夫。」
伊東「ところでさ、大森は好きな人いる?」
大森「いや、いない」
柴崎「そっか〜いないのか〜。大森ってイケメンじゃんか。なのに女が寄ってこないのか。意外だな。」
大橋「そう言う柴崎は好きな子いるのか?」
柴崎「俺もいないかな。今のところは」
ーーーー
「もう11時か…寝よう」
寝室で家でケータイをいじっていた夜、布団の中で俺は考えていた。
「希実さんかっこよかったよなぁ。同級生だけど憧れる」
俺はそう思っていた。俺のその思いは翌日も、翌々日も、休みに入ってからも続いた。
そして俺は気づいた。
「この感情は、恋だ」