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あの子に好きって言いたくて! 第2話「それは恋だ」
作者:悠一   2024/11/21(木) 17:42公開   ID:4c17BbrfZeo
俺は岩田希実が好きなのか。気づいてしまった。でも告白は出来ない。俺はそんな度胸はないのさ。下手したらただ同じ空間にいるだけでも幸せ者と思わなきゃいけないのかもしれない。
月曜日に俺は学校に登校し、ただ普通に授業を受けていた。だけど授業中、つい岩井の方を見てしまう。なるべくチラ見しないようにしなきゃ。
チャイムが鳴った。休み時間が始まった。俺はまた伊藤・大橋・柴崎らのもとに行く。あれ?いない。どこに行ったんだ?
伊東たちは隣のクラスの方に行っていた。大森を問い詰めていた。
大橋「おい大森、お前なんで先週2組の女子の話に参加しなかったんだ?いつもならそういう話題に参加してるのに」
大森「あの時は…気分が乗らなかったからだよ。」
柴崎「本当は好きな人がいるからなんじゃないの?」
大森「いや、そんなことはない」
大橋「なあ大森、お前の席の隣って誰よ?男?女?」
大森「女。清原香澄っていう名前。ちょうど涼宮ハルヒの憂鬱に出てくる長門みたいな、ああいう感じ。」
伊東「顔と名前が一致した。で、その子のこと好きなの?」
大森「いや、そんなことない。何とも思わない。ただの隣席だから」

弁当の時間。安本さんが俺に話しかけてきた。
「ねえ若林くん、いつも一人で弁当食べてて寂しくない?今日私と一緒に食べる?」
僕は「あ、ありがとう」と言った。まあ僕と安本さんは隣同士だし、実質一緒に食べてるようなもんだ。
僕は安本さんに「安本さんは何か部活に入った?」と聞いた。安本さんは中学時代から水泳を習っていたみたいで、水泳部の先輩がいる美術部に行くんだという。
「水泳してるのに美術部ね…何するの?」
「漫画描くんだ。時々大会に出展したりする。」
予想と違った。
「その先輩の名前ってなんて言うんですか?」
「木本翔子さん。水泳上手くて憧れてたっていうか、今でも憧れてる」

僕は伊東たちのところに行き、安本さんが話していた先輩について聞いた。
「なあ伊東、2年のキモトさんって先輩知ってるか?」
そう言うと、伊東はやや怯え始めた。
「おいお前、その人のことどこで覚えたんだよ」
「どこでって、隣の席の安本さんとの話の中で出てきたんだけど」
「その木本っていうのは口の悪い不良だぜ?あの人非行とかはしてないけど怖い。」
「知ってるの?」
「ああ。中学校の頃俺陸部だったんだが、木本さんにクソほどシゴかれたんだわ。
当時の俺は陸上に憧れがあって入ったんだが、それが運の尽きだった。さっさと転部すればよかった。」
「関係悪いの?」
「いや、そういうわけじゃないんだが…」

その数日後、クラスメイトの染谷彰輝そめやあき岡野和樹おかのかずきが俺のところに来た。この2人はいつも一緒にいて、噂によれば中学時代からの知り合いらしい。
染谷「おい若林、お前希実さんのこと好きなのかよ。ほんと男はみんな希実のこと好きだよなぁ。」
岡野「俺は希実ちゃんと幼稚園の頃から一緒だったけど、あんなにかわいい子に近づけるわけないんだよ。俺ですら話しかけられなかったし。」
冷静に考えるとそうだよなぁ。いや、冷静に考えなくてもそうか。俺岩田さんと親しいこの2人ですら話しかけられないんだから。諦めよう。

一方の2組では、大森が考え込んでいた。内容は数学の授業に関することではない。
(誰にも言ってないけど俺、清原さんのこと好きだ。でも告白するの怖い…。あの人『大人っぽい人が好き』って言ってたよなぁ。そんなこと考えてたら授業が追い付かない…板書しよう)
通学電車の中、大森はなおも悩んでいた。
(今日も告白できなかったなぁ。でも告白するのは恥ずかしい。匿名でラブレターでも送ろうかな…)
そんな時、大森は電車の中で隣の席の女性とぶつかってしまった。
見た感じムチムチでエロいボディ。学生時代からずっとモテてそうな感じだ。
「あ、すいません…」
「いいのよ。」
どうやら電車の中でもずっと清原のことばかり考えて、ボーッとしていたようだ。
慌てて平謝りしたが、彼女は「いいよ」と許してくれた。痴漢扱いされるのも恐れたが正直ほっとした。
「君名前は?」
エロいお姉さんに名前を聞かれた。
「大森です。大森智也です」
「私は山田葉月。普通の会社員。よろしくね。」
どうも彼女は俺と同様、電車で通勤しているらしい。
「その顔は、悩んでる人の雰囲気だね。何か悩みあるの?」
そう尋ねられると、「あ、ちょっと…」と言った。
「どんな悩み?」
それ聞くかよ。さすがに初対面の人に恋の悩みは言えねぇよ。
「聴いてあげるから何でも言ってみ〜」
俺は少し悩んでから、同級生の女子に恋をしていることを白状した。
「で、どうしてその子のこと好きなの?」
「あの…からかわないでくださいね。
実は清原さんって人、優しくしてくれた地元の先輩に似てるんです。
僕小学校の頃、ずっと地味な存在でした。いわゆる陰キャですね。そんな僕のことを、家が近所だった先輩はいっつも気にかけてくれてたんですよ。山内先輩って言うんですけどね、優しくて好きでした。山内さんと同じ部活で、いっつも一緒にいた青木さんっていう人もまた美人で、好きでした。
今考えるとこれは初恋だったんでしょうね…」
「へぇ〜。君青春してんじゃん。いいね〜」
正直、自分の気持ちを聞いてもらえてうれしい。山内さんにはずっと優しくしてもらっていたし、恋愛感情もあった。


「で、その子に告白する気はあるの?」
そう山田さんに聞かれると、俺は「いや、告白する気はない。恥ずかしいし、もし清原さんに告白したなんてバレたら、俺の人生は終わる。それは本当に恐ろしい。」と答えた。
最後に山田さんに「誰にも言わないでくださいね」と念を押しておいた。
でもさ、絶対俺以外にもいるはずだよ。あの人のことを好きな男は。涼宮ハルヒの憂鬱でも、長門は人気だったしさ。
そうだ、せめて清原さんと話す時間を作ろう。それぐらいしても罰は当たらないだろう。
その翌日、さっそく僕は清原さんと話すことを決めた。
「あの…清原さん…」
「大森くんだっけ…どうしたの?」
ダメだ…緊張する…やっぱり緊張するよ。好きな子と話すのは。でも今更引くに引けない。
「清原さんってさ…学校楽しい…?」
何とか話せた…。
「うん、楽しいよ。大森くんは?」
「俺も。」
やっぱり好きな人と話すのは緊張するよ…。

思いを伝えられず悶々としている男は、若林だけではなかったのであった。


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■作者からのメッセージ
◆木本翔子
1級上の先輩で安本の水泳クラブの先輩。
口の悪い不良女子で、伊東をはじめとした後輩からは怖がられているが、非行はしていない。

◆清原香澄
隣のクラスの女子生徒。生徒会に所属している。眼鏡をかけており、大人っぽい雰囲気を持つ。

◆染谷彰輝・岡野和樹
男子生徒。希実と中学時代からの同級生。
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