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あの子に好きって言いたくて! 第4話「恋する想い、隠さなきゃ」
作者:悠一   2024/12/13(金) 22:55公開   ID:4c17BbrfZeo
4月の終わりごろ、僕はいつものように休み時間を過ごしていた。
そんなある日、伊東に声をかけられた。
「おう若林、来週球技大会があるぞ」
球技大会か。俺は運動が好きじゃないからなぁ…。サボろうかとも考えたが結局は実行しない。なんだかんだ言って、体育祭は好きだったし。
岩田さんと同じチームになれば、少しでも関われるかもしれない。そうなったらいいな、なんてくだらないこと考えて。
「俺以外にも恋愛感情を隠してる人もこの学校には居るんだろうな。」
同じチームになれたらいいな。なんてくだらない願望だ。十中八九叶うわけがない。そもそも、俺は彼女のことを諦めるんだ。「憧れるのをやめましょう」という言葉があるが、僕も岩田さんに憧れるのと、恋愛感情をきっぱり捨てる。いや、憧れという感情は捨てなくてもいいか。

その日の学食、俺は江原晴樹と同じ机に座ることになった。
「若林。あのな、お前、美愛と同中だよな。こんなこと聞くのもあれだが、美愛に恋愛感情とか、あったか?」
「なかったな。ずっと一緒のクラスだったから、イマイチ恋愛対象に見てなかったな。」
「そっか…惜しいことしたな。世が世なら、美愛と付き合うのは俺じゃなくて、お前だったかもしれないのに」

「惜しいことしたな。世が世なら、美愛と付き合うのは俺じゃなくて、お前だったかもしれないのに」晴樹のこの言葉が、頭の中でこだまする。
俺は中学時代は帰宅部だったが、美愛たち女子バレー部の面々とは親しかった。バレー部の顧問の先生も面白い先生で、好きだったな。

その日の午後のロングホームルーム、安西先生の口から席替えが発表された。
「そろそろ五月だし、席替えしよう。」
席替えか。誰の隣になるんだろう。
俺は4列目の右から2個目のところに自分の苗字を書いた。
「文也はここね。」
ふと岩田さんの方に目を向けると、岩田さん、じゃんけんで負けてしまったらしい。これが伏線になるとは、この時の俺はまだ、微塵も思っていない。
「じゃあ、全員の席が決まったからね。」
俺を含めたクラスの面々が、黒板を見に来る。
「…( ゚Д゚)」
新しい席を見て驚いたよ。なんと俺の隣に、岩田さんが座る。正直言って嬉しいが、心の準備ができていない…。
「マジか」つい、心の声が漏れてしまった。幸い、席替えの時の喧噪で俺の声は聴かれていないだろう。
好きな子と隣席になっても、俺には告白する勇気なんてない。明日から俺、どんな顔して登校すればいいんだよ…

放課後のこと。染谷彰輝は、いつものように生物部が飼っている魚や、植物の世話をしている。
部長の高橋みゆきに、感謝の言葉を継げる。
「高橋先輩。俺、生物部に入ってよかったです。」
「ありがとう。染谷くんはさ、なんで生物部に入ろうと思ったの?」
「いや、それは…純粋に…自分に合っている部活を探した結果です。」
「生物部、人数少ないから、来年はあなたが部長だよ。」
「分かっています。来年あたり、なんとしても新入部員を入部させますから。」
「ありがとう。じゃあ、私たち帰るね。」
みゆきと川島理名が帰った直後。
「ねえ、染谷。この後予定ある?」
「特にはありませんが…」
「理科の成績悪いでしょ。」
「あ、はぁ…」
「私と特別授業、しようか。」
「はい。」目を輝かせながら返事をする染谷。
2人は理科準備室に入っていくのであった。

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翌日のこと。自転車を持ち歩く伊東と、柴崎が。
「柴崎、お前部活なんだったっけ。」
「漫画部だ。」
「ああ、俺と一緒に黒板係やってる斉藤美緒の部活か。」
「そう。今日は部活ないけど、お前んところの軽運動部は?」
「うちも今日はない。」
「お互い暇か。どっかでなんか食べるか?」
「駅前に中華屋あるよな。俺、そこ入ったことないから、そこ行こうか」
「いいな。賛成」

【中華料理店で】
「ここのラーメンめっちゃ旨いな。ここ来て良かったよ。」
「確かにな。伊東、ありがとう。」
翔と彰夫は、とりとめのない話をした。
「そういえばさ、俺と柴崎の組み合わせってレアだよな。」
「お前の隣、だいたい大橋がいるからな。」
「洋介、今日は部活だからな。」
「確かパソ部だろ。なんかイメージと違うけどな…スポーツ系の部活のイメージがあるんだが。」
「ああ。アイツ、明るいイメージがあるが内面は繊細な奴なんだ。アイツとは小学校のころからの同級生だが、割と陰気な感じだったよ。」
「意外だな。」
「それに、鍵っ子なんだよ。洋介のお父さんは確か、東京に単身赴任してるとか言ってたな。共働きだから、授業参観にもそんなに来ないし。」
「そうなんだ。翔って休みの日、何してんの?」
「勉強だな。」
「やっぱそうか。」
「俺、来年は特進クラスに行こうと思ってるんだ。」
「お前なら、間違いなく行けるだろ。」
「そう言われると嬉しいよ。柴崎は、いつも何してんだ?」
「怖い話とか聞くのが好きだな。」
「怖い話か。何が好きなのか?」
「人怖系とか、未解決事件系のやつが好きだな。」
「ヤバいやつやんかお前w」
「ひっでぇなお前w」

大森智也はやはり、電車の中で清原への恋愛感情を想っていた。
(清原さん可愛すぎだろ…あの人眼鏡で可愛さを隠してる気かもしれないし、周りからどう見られてるのか知らないけど、あの人の可愛さを分かってるのはこの学校でたぶん俺だけさ…。)
そんなことを考えていると、この間のエロいお姉さん―山田さんがいる。案の定、俺に絡んできた。
「今日も元気かい?」
そう山田さんに聞かれると、俺は「あ、はい…」としか言えなかった。
「じゃ、恋の話聞かせてくれよ。」
俺の話を楽しみにしてくれるなんて…。でも正直、僕は山田さんが「人生の師匠」になる気がする。なんかそんな気がしてならない。
「告白なんか、できませんよ。僕にはそんな勇気はない。」
「お〜少年くん、告白するの怖いの?」
「まあ、怖いですね。親友の奥村や木戸に茶化されそうですし。」
それぞれ、奥村篤夫と木戸和明だ。奥村は俺と同じテニス部で、俺の親友。木戸はクラス会長をやっている好青年だ。
「でも、恐れていたら何もできないよ?」
「それは…言うまでもないことですが…告白する勇気は、俺にはないっすよ」
「そう。でも、気が変わったら、私に打ち明けてね。相談に乗ってあげるから。」
恋愛って、いいもんだよな。


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