倫哉の母・隆子が休暇を取ると言う。
「私のお母さん亡くなったのね、だからお葬式とかやる。倫哉は来る?」
「僕は来れたら行くけど、仕事が忙しかったら…ごめん、無理かも。
でもできるだけ行けるようにするから。」
倫哉の心には、15年前に亡くなった父親・今江弘樹のことが浮かんでいた。弘樹は所轄の刑事だったが、15年前にある事件の犯人を追っている途中、トラックにはねられてしまう。
運悪くその日は豪雨であったため救急車の到着が遅れ、救急車の中で倫哉達家族に見守られながら息を引き取った。
弘樹は15年前に殉職したことで、二階級特進で警視に昇進している。
携帯電話が鳴る。
「もしもし今江です。はい、すぐ臨場します」
◇
建設中のビルの下で転落死体が見つかる。
「被害者は警備会社社員で、このビルの警備員・清野篤夫さん、57歳。屋上から転落したようです」
被害者は警備の巡回中に足を滑らせて転落した事故だと断定される。
しかし豊原は転落した場所に油がまかれていた事や、清野の制服のボタンが取れかかっている事や、鼻血を出していた事も気になる。
◇
捜査会議、残されていた指紋から。清野は元刑事だった事が分かる。しかも、この上野中央署の課長代理・池内克也のかつての同僚だったようだ。
「池内さん。清野さんって、どんな人だったんです?」瀬戸がそう問いかける。しかし、池内は何も答えようとはしない。
刑事課長の森岡恵一が「死亡した清野篤夫は、おそらく事故死。それでほぼ間違いないだろう。」と言い、捜査会議は終了する。
今江は捜査の続行を頼むために、刑事課長室に乗り込む。
「森岡課長。事件の捜査を続行させてください。」
「駄目だ。あれは事故なんだ。これ以上捜査しても、それ以上のことは出てこない。捜査終了だ。
お前はまだ若いんだ。周りの言うことを聞いていればいいんだ。俺はそうやって、警察組織で生きてきたんだよ」
課長室から出てくる倫哉。
「もう、一人で行くしかないか…」
そこに後ろから背中を殴られる。豊原だ。
「あんた、まさか一人で動こうとしてないでしょうね…」
「…」
「図星だ(笑)あんたが何かしたら、私の責任になるのよ。少しは考えなさい。」それは豊原も協力するという意味だった。
◇
豊原が使用している覆面パトカー。運転席に豊原が、助手席に今江が座っている。
豊原は「清野さんが転落する前に誰かに殴られたんじゃないか?」と考える。
◇
2人は北川警察署時代、係長として池内と清野の面倒を見ており、現在は防犯パトロール員をしている矢野貴博に話を聞く。
池内と清野はとても仲が良かったと言う。
どうして清野は刑事を辞めたのか?
「それはな…」矢野は口を開く。
「5年前、指名手配犯を追っていた時、イケは犯人にナイフで刺されてしまったんだ。その犯人をキヨは射殺した。それが原因でキヨは警察を依願退職。それからだ。イケが誰とも組まなくなったのは。ずっとあの時のことが心に引っかかってたんだろうなあ。」
刑事課。荒っぽい強面の男性が乗り込んできた。
瀬戸「あのすいません…あなたは…?」
「北川警察署刑事課の新城紘一です。清野さんには世話になったので。何でも協力しますよ」
そこに森岡が来て「おいおい。あんまり無茶するんじゃないぞ。」と釘を刺す。何も言わない池内。
事故の夜、不審な人物が事故現場から逃げだしたところを目撃した人がいた。
目撃証言に合致する男が浮かんだ。
「男の名前は河西賢介、40歳。6年前にコカインの売人として逮捕されたが、証拠不十分で釈放となっている。」
池内は続ける。
「この河西という男、国会議員の山岸洋一が若手議員時代に愛人に産ませた隠し子だとか。山岸のバックには、元国土交通大臣の竹下祐二がいるという噂だ。まあ慎重にやれよ。」
豊原と新城は、川西を任意同行する。
「で、今度は何の容疑だよ。言っておくが、俺は何もしちゃいないぞ」
「容疑はもちろん、ヤクの売買……じゃねえぞ?殺人だ」
「さ、殺人…」
「お前、清野篤夫って男を知っているよな。」
「誰だよ。」
新城は清野の顔写真を机に出す。
「この写真の男性、6年前、お前を逮捕した刑事だ。」
「ああ、思い出しましたよ。だけど、名前なんか知らないし、なんなら今知ったよ。」
「ああ、そうか。お前、自分が殺した男の名前も知らなかったのか。」
「は?殺した?何のことだよ」
◇
【刑事課】
「河西のやつ、犯行を否定してる。だが奴に間違いないんだ。絶対に…」
「新庄、河西は何もしてないだろう。」そう言ったのは森岡だった。
「被害者は元刑事で柔道の有段者だ。あんなチンピラに殺されるはずがない。」
「だったら、誰が殺したんです?」新城はなおも食い下がった。
「真実はまだ分からない。河西がシロだということ以外は。」
新城も最終的には森岡の意見を聞いた。
もし被害者である清野が河西を追いかけたら、ますます転落した場所から離れてしまう。豊原も疑問に感じる。
清野の勤務先だった中居警備保障に行く今江と豊原。同僚の守原秀浩が応対した。守原は清野と年が近く、仲が良かった。
「清野さん。事件現場の警備を志願したんですよ。なんでか聞いても『仕事が好きだから』って曖昧な回答。
それにな。俺に同僚に保険会社を紹介して欲しいと頼んでたんだ。それで、コスモ生命保険を紹介したんです」
清野は5000万円の保険に加入していた。
清野の妻・那知は心筋梗塞で入院していました。
清野は那知の手術を希望していたが手術には高額な費用が必要です。
清野は手術費用の為に自殺したの?
豊原は事故現場を再現するために実験したいと言い出す。
もちろん上司は反対します。
費用がかかるからねー
土方が殺害された現場では石膏ボードが落ちていました。
当初は石膏ボードと土方が一緒に落ちたのかと考えましたが、実際は石膏ボードが先に落ちて、その後土方が転落しました。
どういうこと?
これで清野は河西に突き落とされていない事が判明した。
豊原は「清野は自殺したのではないか?」と考える。清野の死の真相が自殺だったことを公表するか悩む今江。
土方の事件の検証を木場に選んでもらう為にマリコさんは木場に自宅に向かいます。
転落死と自殺。
豊原さんはどちらを選ぶのか?
結局、事故の方を選ぶ豊原&今江。
那知は夫の死の真相を理解しているようだ。しかし今江と豊原は「我々の捜査により、事故だと判断されました。」と断言する。
◇
上野中央署屋上。今江と豊原が2人、たたずんでいる。
「あれでよかったんですかね…」
「いいわよ。たまには。優しいのが今江の良いところなんだから。
それに、私も一緒に居たわ。私も共犯よ」そう言って微笑む有子なのであった。