サラリーマン風の男の遺体が、上野中央署管内のマンション駐車場で発見された。
「スーツ姿の男ですね。」
吉本「免許証から、男の氏名は森本壮甫だとわかった。被害者の自宅マンションがここだそうで。」
瀬戸・吉本は、状況から事故と判断。
しかし、背後から「それはどうかな?」という声が。
現れたのは黒ずくめのスーツ姿の男と、少し着崩した濃紺スーツの男。
「東京地検特捜部の黒星です。」「同じく、伊原です。」そう言って、二人は名刺を差し出す。
〈東京地検特捜部 主任検事 黒星拓也〉〈東京地検特捜部 検事 伊原光介〉
吉本「東京地検特捜部の方が、どうして…?」
黒星「実は、この頃された森本という男が勤務していた藤崎商事は中小の商事会社ですが、この藤崎商事には、数多くの悪い噂があるんですよ。果ては暴力団と関係があるとの噂まで」
瀬戸「悪い噂というのは?」
黒星「今我々が調べているのはインサイダー取引です。」
吉本「インサイダー取引とは?」
伊原「国会議員の佐伯慎吾と癒着しているという噂がありまして」
黒星「そういったこともあって、我々は内偵を進めているわけです。この件の結論を出すのは、少し待ってくれませんか?」
◇
「と、こんなことがあったんだよ」瀬戸は今江にこう打ち明ける。
「ほー。えらいところと繋がっているかもしれないわけか…」そう池内も口をはさむ。
「えらいところというのは?」今江がこう質問する。
「佐伯慎吾っていや、悪い噂の多い議員だからな。セクハラ・パワハラの噂もあるが、数多くの企業と癒着し黒い人脈を築いてきた男だ。10年前にも、選挙区にある会社から政治資金を受け取り、それを収支報告書に記載しなかったという疑惑が持ち上がった。東京地検も追及したが、結局は…」
最終的には、森岡課長は事件性ありと考え、上野中央署に捜査本部設置を決断。
「この件はうちと、本庁の4係・13係が担当することとなった」
池内は、捜査本部の中に堀内正吾がいるのを見つけ、声をかける。
「おお、池内か」「ああ、堀内。久しぶりだな」
だが、この二人を尻目に、本庁と上野中央署の刑事は一触即発の事態に。
「所詮俺たちは、お客さんだからね」4係の宮森慧介がそうつぶやき、堀内が「宮森」と咎める。
進行役の席に座る森岡が「自殺、事件、事故、どの可能性も考えられる。現時点では真相は分からないが、調べてくれ。」
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翌日。出勤してきた今江は、豊原に刑事課に連行される。
「ちょ、なんですか…?」
「いいから。ちょっと見なさい」
そう言われて点けたのはテレビのワイドショー。
藤崎商事の藤崎清三社長が、奇妙な記者会見を開く。
『えー、先日遺体で発見された、弊社社員の森本に関する記者会見を開かせていただきます。
一部では、森本が汚職事件に加担しているのではないかという噂がありますが、根も葉もないことです。藤崎商事を代表して、言わせていただきます。森本はそんな人間ではありません。それを、承知してください。』
瀬戸「よく言うよって感じですけどね…。」吉本「全くだ」
そして、課長室から森岡恵一が出てくる。「今回の捜査は、本庁主導で行うこととなった。」
実は、本庁の刑事部長・中村貴徳のもとには、特捜部の戸村雅彦部長から抗議の連絡が入っていた。
やがてその抗議は池内にも向けられ、池内は捜査撤退と戸村に伝える。
だが森本の周辺を調べていた今江と豊原は、森本と親しかった嘱託社員の村沢邦明にたどり着く。村沢は大栄物産の元社員で、早期退職後に取引先の藤崎商事に天下りしている。大栄物産現社長の増宮彰夫は、あの佐伯慎吾と高校の同級生だった。
早速村沢がいる総務部に聞き込みに行くが、村沢は怯え切っていた。「あ、あ、あの…私を…守ってください…お願いします…」
今江は、豊原に耳打ちする。「こんな小心な人に、殺人なんかできないでしょう。村沢氏はシロですよ」
◇
一方の吉本と池内は、佐伯の議員事務所に行く。紳士的に応対する佐伯だが、池内は佐伯のボディーガードをしているマオカラースーツの中年男性を見て驚く。
「こりゃどうも池内さん」
「金森さん?」
「縁あって、佐伯さんに拾ってもらいましてね。本当に感謝してますよ」
「今回の事件に、あんたは関与してるんですか?」
「答えはノーだ」
「あんたはもう民間人だ。法を犯すようなことをしたら、容赦しませんよ」
「俺は伊達にサツのメシは食っちゃいない。あんたらの手口は知りぬいてるよ。やる時は抜け目なくやるさ」
車内。吉本が池内に質問する。「あの男は誰なんですか?」
男の名前は金森正。元丸の内西署の組織犯罪対策課刑事で、暴力団と癒着して懲戒免職になっている。金のためなら何でもやる男だった。そんな男が、なぜ佐伯の用心棒を。
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被疑者は三人上がっている。森本から金を借りていた高校の同級生・上原恭介、森本と付き合っていた剣道道場の同窓生・森下美佳、会社の上司で現場近くで目撃された徳本英文。全員が全員、犯行を否認している。
聞き込みに行ったとき、豊原の後ろから、男が近づいてきた。男の正体は村沢だった。「助けてください…僕、犯人を見たんです…」
犯人を聞こうとする今江だが、村沢は怯えて何も言えない。
車内。今江が、豊原に相談する。「どうすればいいんでしょうか…」
豊原はにやりと笑みを浮かべる。
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数日後、上野中央署署長の岩中大介が、記者会見で「被疑者が3人上がった」と発表する。
その日の昼休み、豊原は例のカフェで村沢と会っていた。
「せっかくの昼休みに、申し訳ありませんでしたねぇ。」
「本当ですよ。でもまあ、藁にもすがる思いなんて言われてしまうとね。話ぐらいは聞いてもいいかなと。」
「ちなみに、新聞はお読みになってらっしゃいますよね? 被疑者が3人挙がっているという記事」
「3人とも…否認…してますよね…。」
「しかし、犯人は3人のうちの誰かに間違いなく、つまり1人は嘘をついているんです。」そう言った豊原は、太ったパンチパーマの男、サングラスをかけたスキンヘッドの男、白髪交じりの中年の男の写真を見せる。村沢は反応しない。
「…もう時間なんで…帰らせてもらって…いいですかね?」
「ええいいですよ」豊原の顔には笑みが浮かんでいた。
店を出た村沢は、2人連れの3組と順にすれ違っていく。豊原もおもむろに立ち上がり、ガラス越しに彼の後ろ姿を店内から見つめている。
1組目、黒いコートを着た男性と、紺のジャンパーを着た男性。彼は目もくれずに通り過ぎていく。
2組目、男女の2人連れ。こちらも無表情で歩き続ける。
そして3組目。中年男性。
「!?」
すれ違おうとした時、村沢の足が一瞬止まり、表情も一変する。思わず目をそらし、硬い表情ですれ違う。その前に今江が現れた。
「いい天気。ご協力、どうも。」
「やはり驚きますよねぇ。突然、あなたの目撃した犯人が目の前に現れれば。ごく自然な反応です。」
後ろから豊原もやってきた。
「これにて面通しは終了。ありがとうございました。」
「面通しって?」村沢は未だに何が起こったのか気づいていない様子。
「あなたはここで、被疑者3人とニアミスをしたんですよ。」
全ては右京の策略だった。村沢とすれ違った人物とは、被疑者である上原恭介・森下美佳・徳本英文の3名(と刑事)だった。そして明らかに3人目…徳本に反応した。
つまり、事件の犯人は徳本であった。上原と森下に謝罪する刑事たち。そして徳本が連行されていく。
「さっきあなたが見せた3人の被疑者っていうのは…。」
「うちの署の悪人面を3人、用意しました。池内さん、いや、3枚目の写真の人に頼んで、岩中署長に被疑者の年齢や性別をぼかした記者会見を頼みました」
写真の正体は遠藤達也・江夏孝の刑事第二課、そして係長の池内をダミーに用いたのである。
「もう、命を狙われることは…」
「ありません。ご安心ください」
「そ、そうですか…」安堵でその場に崩れ落ちる村沢。
◇
取調室。吉本と徳本が対峙している。
「ギャンブルで金に困ってて…借金はなかったけど…」
「それで佐伯議員の汚職に…」
「はい…。最初は…軽い気持ちだったんだ…。だけど…」
「ついには、殺人まで」
「ああ…俺…ババ引いちゃったなぁ…。ついには人殺しに…ああ…」そう言って項垂れる徳本。
その日の深夜、池内と戸村が料亭で話していた。
「無事、事件が解決しました。後は、戸村さんたちの仕事ですね」
「ええ。必ず、落として見せますよ」そう言って笑う戸村。
数日後、徳本を汚職に引きずり込んだ大栄物産執行役員・
吉村康登と、藤崎商事の藤崎社長が逮捕された。政財界の汚職が明るみになると、マスコミは書き立てた。