短編『フェイトと仮面ライダーのとある散策』
(ドラえもん×多重クロス)



――大洗女子学園に潜入した仮面ライダー2号=一文字隼人。そこから少しづつこの世界の全容が明らかになってきた。


「フム。1945年8月15日までが基準か。日本の敗戦までに設計が終わっている戦車ならば大会に参加可能か。文字通りに大戦中だな」

本郷猛は一文字から連絡された報告を基にこの世界の全容を少しづつ掴んでいった。だいたいはたいていの世界の日本と同じような歴史を辿ったもの、学園艦などが存在するのが他の世界との違いだ。

「先輩、この世界は殆ど他の世界と変わらない歴史を辿ったようですね」

「ウム。だが、戦後も空母型艦艇の建造ノウハウが残されているのが軍事面での違いだぞ風見」

「ですね。戦後、たいていの世界だと1980年代末までこの手の艦艇の建造は国民受けが良くなかったですからね」

そう。学園艦に限らず、航空母艦に類する建造にはノウハウが必要である。そのノウハウを失った日本の自衛隊は戦後にあの手この手で建造しようと目論見、大戦の記憶が薄れていくにつれて少しづつステップを踏んだ。輸送艦→ヘリ空母→……という具合でだ。それを知る身としてはなんとなくであるが、感慨深いらしい。

「それで風見、バダンの動きはどうだ?」

「今のところは大丈夫です。ですが、油断はできませんよ。滝の奴から連絡がありました。」

バダンの大本であるナチス残党がこの世界にも潜んでいる可能性は十分にある。その辺をダブルライダーの親友であった滝和也の子孫の滝二郎から連絡を受けた7人ライダーは警戒しているのだ。

「ウム。大洗女子学園に一文字が潜入している。その報告を待とう。後は戦車道の大会の大会のタイミングで奴らが尻尾を出すかどうかだな」

「ええ。各地に散らばったみんなによればそれぞれ戦車師団を持っていた国を模した校風があるようです。一文字さんが行ってる大洗女子学園は例外だそうですが」

「今度オレも行ってみよう。面白そうだ」

「それじゃあいつらは俺が面倒みときます」




一号こと本郷猛は普段、ライダーの司令塔として振舞っている。だからこそたまには一戦士としての自分に戻りたいのだろう。風見は大学の後輩であるので本郷を諌める役目なのだが、本郷が不在の時は指揮をとる時も多い。そのため本郷に羽を伸ばしてもらうため、後輩達の指揮と統制を引受けた。










――抽選会で大洗女子学園は私立サンダーズ大付属高校と当たることになった。そこで一文字は大洗女子学園を追うことにし、学園艦内のマンションを借りて、レポしていった。学園での微笑ましい練習風景、そして友情。

「しかし……あれだけの車両で本当にやれるのかい」

サンダーズ付属と大洗女子学園の対戦日の数日前、一文字は練習を終え、自宅のマンションに帰るみほに尋ねた。大洗女子学園の保有車両は指で数える程度。車両も他の学校と比べて戦力不足の物が多く、W号や突撃砲などが最も頼りになるほうであるからだ。すると。

「ぜいたくは言えませんし、そこをなんとかするのが戦略のミソですよ」

……と、笑顔で発言するあたり、なんだかんだで戦車道の名門出なところが出ている。みほは状況に応じた戦術や戦略を即座に立てられる。そこが姉のまほが母にみほが再起したことを黙っててでも買っている才能である。豪胆さが身につけば実戦でも通用するだろう。一文字はみほに流れる西住流の血を垣間見た気がした。そして彼さえも思いつかなかった事を優花里が実行してしまった。それは……。












――その翌日


(あれだ……うわぁ〜ニミッツ級航空母艦の基礎設計でも使ってるのかな……大きいや)

秋山優花里はなんと仮面ライダー顔負けの行動力で大手コンビニエンスストアのサークルKサン○スのコンテナ船に潜り込んでいた。ちゃっかりサン○スの制服まで着込んでいるあたり抜かりはない。彼女はサンダーズ大付属高にまんまと侵入し、同校の制服に着替えて諜報活動を開始した。

「おお〜アレはm4のA1!おお、M4A2!!ああ、アレはM4A6と……ファイアフライ!ああ、いっ、一回戦がんばってください〜〜!!」

戦車庫で部員に見つかってもこの誤魔化しようである。隠しカメラを仕込んで偵察のために撮影している事が分かれば他のスポーツなら追い掛け回されてお咎めがあるだろうが、幸いにして戦車道についてはそれは合法である。最も、追いかけ回されることはあり得るだろうが。


「バレてませんバレてません……」

カメラに向けてニィと笑う。そこが彼女の意外な点である。小中学校を孤族に過ごしたが、あこがれであるみほのためならばたとえ火の中水の中。このような行動も何ら苦ではない。

「フリーディングが始まるようです」

戦車道チームが一軍から三軍まである裕福なチームらしく、大人数かつ大掛かりである。m4の76ミリ砲搭載型とファイアフライを主軸にした編成である。M4A3E2やM4A3E8がないのが大洗にとって不幸中の幸いだろう。

「今回はガンガン攻めていくわよ!今回はフラッグ戦で、完全な二個小隊は組めないから三両で一個小隊にするわ」

編成を通知するサンダーズ大付属のリーダー「ケイ」。校風がアメリカ式でオープンなためか、明るい雰囲気でフリーディングは進んでいく。

「あのぉフラッグ車のディフェンスは?」

「ナッシング!」

こうしてごく自然に情報を聞き出した優花里だが、この後すぐに正体が露見してしまい、逃げるハメになったが、帰りは船ではなく、あるもので帰った。それは……。

「乗れ!一文字さんから事情は聞いてる!」

「は、はい。ですがここは学園艦の上ですよ!?バイクでどーやって!?」

「心配ない!このクルーザーは水陸両用だからね」

「す、水陸両用ぉ!?」

学園艦の甲板部の道路上で彼女を待っていたのはなんと、仮面ライダーXこと神敬介であった。彼は先輩命令により一文字の仕事の使い走りにされたが、面白いのでノリノリであった。結果的には大洗女子学園に加担する形となった。

「メットはつけたね?飛ばすぞ!」


オートバイの域を超えたエンジンの爆音が轟く。戦車をも凌駕しているのではないかと思ってしまうエンジン音だ。その次の瞬間、クルーザーはあっという間に時速750qに加速し、学園艦の艦首に向けて疾走する。

「ひゃあああああ〜!?は、速すぎますよ〜!?」

「750キロだからね」

「な、750キロぉ!?ギネス級の速さじゃないですか!?どーいうエンジン積んでるんですか!?」

優花里が驚くのも無理ないが、21世紀当時のバイクは速度が時速300キロを上限とされている。その有に倍の速度を叩きだすバイクがあるなど聞いた事無いし、あったらとっくのとうにマスコミがスクープしているからだ。


「……知らないほうが幸せだと思うよ」

敬介はクルーザーの動力源についてそうはぐらかした。何せクルーザーは太陽エンジンという一種の核融合炉を積み込んでいるのだから知らないほうが幸せと言える。歴代仮面ライダー達のマシーンはRXに至るまで何かかしらもの凄いエンジンを積んでいるからだ。

「あ、前、前ぇ!落っこちゃいますよぉっ!」

「大丈夫さ。クルーザージャンプ!」

学園艦の艦首からタイヤが離れたその瞬間、クルーザーの後部につけられている水流ジェットエンジンが火を吹き、クルーザーを空へ飛び上がらせる。間髪入れずに空中で宙返りを行う。

「クルーザー大・回・転!」

「ひ、ひゃあああああ〜〜バ、バイクで宙返りしないで下さい〜!」



彼の十八番と言えるこの見事な運転で無事に着水し、平均速度700キロで海上を疾走し、大洗女子学園に送り届けられたとさ。その途中、優花里はこの一文字の後輩だという男性の名を尋ねた。

「あのぉ、お名前をまだ伺ってませんでしたよね?良ければ教えて下さい」

「おっと自己紹介が遅れたね。俺は神敬介。一文字さんの後輩さ」


そう言ってサムズアップをしてみせる敬介。吹かした自己紹介の仕方ではあるが、インパクト十分であった。この後、敬介と別れた彼女は慌てて動画を編集し、データをみほに手渡すために一苦労したとさ。
















――こちらはバダン。彼らに増援で送られてきたのはゲルショッカーが有していた怪人軍団。魂を持たず、獣性のみで従う、言わば人の形をした“ケモノ”。ヘルベルト・オットー・ギレ大将は暗闇大使から送られてきたこの増援に不満を漏らした。

「大使は何を考えておられるのだ?これではデリケートな攻撃ができん……」

暗闇大使が送ってきた怪人には人としての知性は殆ど無く、デリケートな行動は殆ど期待できない。大規模破壊には使えるだろうが、今回の任務には使えないからだ。

「だからその統制のために俺が来たのだ」

「わざわざデルザーのあなたが来られるとは……大使のご命令ですか?」

「いや大首領からの勅命だ。我らデルザー軍団は暗闇大使とは別の指揮系統で動いているからな」

ヘルベルト・オットー・ギレ大将が敬語を使うこのデルザー軍団の人物は仮面ライダーストロンガー=城茂の宿敵のジェネラル・シャドウである。彼は大首領からの勅命により、怪人軍団を統制すべく赴いたのだ。

「大首領はクライシス帝国を倒し、ライダー共と戦うことを望まれておられる。キングストーンを持つRXは厄介だからな」

そう。RXは太陽ある限り何度でも蘇る。しかもパワーアップを果たして。それがバダンにとっても最も厄介なのだ。

「ストロンガーの事は俺に任せてもらおう。ヤツとは因縁があるからな」

ジェネラル・シャドウはかつての戦いで超電子ダイナモを得たストロンガーに最終的に敗れ去った。それ故に雪辱を望んでいるのだ。

「それに新規にショッカーライダーを用意した。今回はV3タイプも製造してある。これは普通の改造で生み出したから理性はある」

そう。そもそも歴代仮面ライダーのボディの設計図の大半は組織に残されている。その内、新一号タイプとV3タイプを新規に生み出したと示唆する。

「前々から気になっていたのですが、何故ショッカーライダーなのです?ゲルショッカー時代に作ったのであれば」

ギレ大将の指摘の通り、ショッカーライダーは実際はショッカーの後継組織のゲルショッカーが実戦投入した。なので普通は“ゲルショッカーライダー”と呼ぶべきである。それをショッカーライダーと呼ぶ訳を。

「暗闇によればショッカーの末期頃にはプロジェクトが開始されていたらしい。それでゲルショッカーがより優れた技術でプロジェクトを継続させて生み出したとの事だ」

ショッカーライダーは量産型仮面ライダーと言える改造人間なのでショッカー怪人中最強のポテンシャルを誇る。そのためジェネラル・シャドウはショッカーライダーをショッカー最強の遺産と評した。今回は各世界から選りすぐった超人レベル(つまり本郷や一文字らと同等レベルの能力を持つ)の悪人を仮面ライダー型に改造したために真の意味でライダーを倒しうるポテンシャルを持つ。そのためそれまでのショッカーライダーとは一線を画する。


「これらを中核に戦略を組み立てる。機甲部隊の準備を行なっておけ」

「了解致しました」

バダンは地下で着々と準備を進める。彼らの戦力はゲルショッカー怪人、ショッカーライダー部隊、第5SS装甲師団の各種兵器。相当なものだ。そしてデルザー軍団の改造魔人であるジェネラル・シャドウ。栄光の7人ライダーと相対するに値する戦力だ。逆に言えばそれだけ悪の組織が戦力を用意しなければ強大無比な7人ライダーと渡りあえない事の証明であるのだが……、陸上自衛隊程度ならば軽くひねられる。その準備のために人員を少しづつ戦車道全国大会運営委員会に送り込み、入れ替わりを行なっている。作戦決行日時は……決勝戦の日だ。






――こうしてバダンは作戦のための準備を進める。蘇りしドイツ鉄十字の狂気は少しづつこの世界を侵し始めていた。伝説の七人の仮面ライダー達はこの脅威を討ち祓う事ができるのだろうか。敵は通常兵器の他に、ゲルショッカー怪人とデルザー軍団の筆頭格にして、ストロンガー最大の宿敵、ジェネラル・シャドウ。仮面ライダーストロンガーにとっての宿縁もRXにとってのシャドームーンと同じように、運命の再動の時が近づいていた。











――圭子は大洗町内にマンションを借りて、未来世界から持ち込んだ家具(PCなど)を設置して久々にジャーナリストとしての仕事をしていた。軍に戻ってからはジャーナリストとしては活動休止状態なので、本当に久々でった。

「ふう。ドラえもんからオールマイティパスの新品借りといて良かったぁ〜これさえあればどんな手続きもできるしね」

パソコンを立ち上げて文章ソフトを起動させて出版社に売り込む原稿を執筆する。この頃にはPCの操作に慣れたようで、キーボードはブラインドタッチで打ち込んでいる。手続きなどはドラえもんにねだってオールマイティーパスを用意してもらい、それで通している。事の発端はフェイトの調査に同行することになった時である。

――西暦1999年 12月 野比家

「ハイもしもし……あら圭子さん。お久しぶりです。はい、少々お待ちください……のびちゃん、お電話よ〜」

「はぁい」

玉子に呼ばれて電話口に出るのび太。圭子からの電話である。

「あ、加東少佐。お久しぶりです。未来世界には慣れました?」

「まあね。黒江ちゃんや智子達の家計簿見るのに苦労してるわ」

「ご苦労さまです。ところでなんでまたウチに電話を?」

「実はね。今度フェイトの調査に付き合う事になったんだけど、わざわざ時空管理局に戸籍とかを偽装してもらうのも悪くてね。もっと手っ取り早い方法ないかしら」

「それだったらいい方法があります。ドラえもんに電話代わりますね」

数十秒ほどでドラえもんが電話口に出た。


「もしもし、ぼくドラえもんです。話はのび太くんから聞きました。歴史上もっともチートなパスがありますよ」

「えぇっ!?何よそれ!?」

「オールマイティパス〜〜!!」

いつもの調子でそれを出すドラえもん。説明もつく。

「これはぼくの時代に発明された道具で、手続きさえ取って発行されれば、見せるだけでどんなところも、例えばスイス銀行の金庫の中や日本の首相官邸、ホワイトハウスの大統領執務室にさえノーパスで入れます。ただし期限はきっかり一ヶ月なんでその前に更新手続き取らないといけません。前にそれでのび太くんがえらい目にあってますから」

「あ、あはは……わかったわ。手続き取ってくれる?今度の土曜日に出発だから」

「分かりました。金曜に手続きとるんで木曜にうちの方へ来て下さい」

……というわけで未来世界の2201年の5月の木曜日に未来世界の住居を出発し、圭子はその過程で野比家に来訪し、のび太の両親の内、父親ののび助にも顔合わせし、(のび助は先の来訪時には会社の主張などで不在であり、圭子が来ていた時には会っていない)息子たちの交友範囲の広さに改めて驚いたとか。そういうわけで圭子は無事にこの世界に潜入できたのであった。


「とりあえずバダンの事は歴代のライダー達とフェイトが調べてるから今のところは大丈夫として……ヘタすると戦闘になるな……念の為に九七式自動砲とFG42自動小銃、FGM-148 ジャベリンの第五世代型(地球連邦陸軍が旧アメリカ軍時代から延々と開発を引き継いだ新型)を用意しといたけど使わない事を祈るしか無い。」

バダンとの交戦を想定してある程度の装備を持ってきているが、使わないことに越した事はない。対戦車ミサイルに対装甲ライフル、自動小銃を持ち込んで整備するのも一苦労なのだから。出来れば会いたくないというのが本音だ。だが、圭子のこの願いとは裏腹にバダンはこの世界の自衛隊ではどうにもならないレベルの戦力を用意し、七人ライダーと対峙しようとしていた。七人ライダーとバダンの戦いは間違いなく起こるが、問題はどの程度の規模か。それが読めないのであった。
















――大洗女子学園の面々はこの水面下での戦いにはもちろん気づくことなく、全国大会の準備を進める。みほは現有の戦力で立ち向かうための戦略を立て、その他のメンバーは大会に向けての練習を進める。様々な思惑が入り交じりながら、第六三回戦車道全国大会は始まりの日を迎えようとしていた。



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