短編『地球連邦軍の次なる戦争準備』
(ドラえもん×多重クロス)



――地球連邦軍は度重なる侵略に対処するべく、軍事力の再編に全力を注いでいた。惑星を破壊可能な波動エンジン搭載艦の増勢を進め、計画していた。


――呉 造船所

ここはかつて、呉工廠があった場所である。ジャパンマリンユナイテッドと呼ばれた民間会社が経営の危機に瀕した時、時の日本国防軍が敷地を買い取ったために、2201年には再び海軍工廠となっていた。また、この時代には、かつて戦艦大和を造船した造船船渠は復活しており、改アンドロメダ級の造船が行われていた。

「SFじみた船だな……しかし、大艦巨砲主義が23世紀に復活するとはな……」

「歴史の循環つーか、必然よ。宇宙時代になれば空飛ぶ戦艦作ろうなんて考えそうなことじゃない。でも、ここまで大艦巨砲主義時代の面影があるなんて思ってもみなかった」

篠ノ之箒と凰鈴音はISを改修するため、呉工廠を訪ねていた。真田志郎がここにいると聞いたからで、真田が来るまでに各所の見学をしていた。この内の第一ドッグで建造されているのが、改アンドロメダ級戦艦の4番艦である。既に艤装も相当に進んでおり、80%の完成度といったところか。実戦データが反映され、艦橋は幾分か形状が変わっている。主砲塔の数がしゅんらんよりも増大し、船体も更に大型化している。箒らが見ているのはこれだ。

「これって艦隊旗艦用に作られるんでしょ?その割に最前線で殴りあうの前提にしてるなんておかしくない?」

「昨今はミノフスキー粒子のおかげで艦隊旗艦だろうと最前線で戦うのが前提条件になってるのが大きいと聞く。それでこのような戦艦が重宝されるのだとの事だ」

「まるで第二次世界大戦みたいね……戦艦が使われるなんて」

「戦場の様相は1950年代くらいにまで退化したそうだし、宇宙だと砲撃戦もよく起こるから戦艦が復興したそうだ。かと言って、航空戦力の価値は低下してはいない。そういう事だ。どんなに高性能な兵器でもやられる時はやられるからな」

宇宙戦闘ではMSや戦闘機はすべて『航空戦力』の範疇に入る。地球連邦軍はジオンに比べてMSの研究は遅れたが、その運用法についてはジオンを上回った。ガンダムというフラッグシップ機を開発し、支援用MSや戦闘機を開発し続けたからだ。そして、MSはけして無敵の兵器ではないことは、ガンダム達の歴史の中に記録される敗北が知らしめている。箒はそれらをひっくるめて説明する。

「そうねぇ。スーパー系なアニメなロボットみたいなのでも負ける時は負けるしねぇ。あんたにしては謙虚じゃない」

「私自身、一年前の戦争で自分の力不足を嫌というほど味わったからな。揺るぎない力を渇望したことも一度や二度ではない……マジンカイザーやグレンダイザーのような力を、な」

「あんたらしいわねぇ。まぁアイツのためにってのはわかるけどね」

箒はマジンカイザーを初めとする歴代スーパーロボットの揺るぎない力に憧れ、欲した事を鈴に話す。鈴は箒の心情を理解し、頷く。箒が元の世界にいた時から何を求めているのかを知っている故だろう。全ては『織斑一夏の背中を守りたい』という願望を叶えたいが故。疎遠であった姉に頼み事をしてまで得た専用機も、この世界では力不足が否めなかった。そのため機体の自己強化の他にも、機体そのものの改修を行っているのが現状であった。

「でもISのアーマーを小型化できる技術がこの世界にあったなんて、驚きよ。MSとかの機動兵器に傾倒してる感じじゃないの」

「確かにな。だが、最近は銀河連邦に地球が加盟した影響で、その方面での先進国のバード星の技術が入ったから急激に研究が進んだそうだ。ISの小型化と改善もその副産物のようだ」

「ふーん。なんかパー○ンでもいそうな名前の星ねぇ」

「それは私も思った。だが、意外に近いそうだ。確か地球から……たったの5光年かな?」

「何よ、お隣さんじゃん。光の速さでたった5年ってことは……ワープすればすぐじゃない」

「ここでは民間船でさえ、フォールド航行やワープが普及しはじめてるからな。観光業もさっそく儲けてるらしいぞ」

「は、はは……何百年経っても人間って変わらないのね」

そう。宇宙大航海時代が幕を開けたと言えるこの時期、地球連邦は旧白色彗星帝国領のいくつかを編入。波動エンジンやフォールド機関の民生への普及も始まったため、個人単位での移民も行われ始めている。観光業界はそこに宇宙時代での商機を見出した事を察した鈴はため息をついている。町中の自分達も知る観光業者の広告に『プロキオン、ポルックス方面への観光は我が社へ!』と謳われているのには時勢を感じると鈴は思った。

「グルームブリッジ星系にはエデンって惑星があるし、この世界は大航海時代ね」

「宇宙のがつくがな。本当、SFのような世界さ」

「高度に発達した科学技術は魔法と区別がつかないものさ」

「真田さん」

箒はこの世界の高度な技術をSFのようだと言ったが、いつの間にか真田志郎が来ていて、補足を入れた。真田志郎自身、この頃には功績で高官へ昇進しているが、現場主義なのでヤマトに乗艦し続けている。

「波動エンジンやワープ自体、ほんの数十年前は机上の空論だったが、イスカンダルから概念図と設計図が送られてきた事で具現化し、ヤマトに載せられた。今では初期ヤマトとアンドロメダの中間ほどの性能のものが民生用に出回り始めたりしている。SFのような、というのは当たっているさ。ある程度昔に机上の空論とされていたモノも、今ではたいていは実現した。あとはダイソン球殻くらいなものだよ」

真田志郎がブラックホールを『エンジン』として利用可能なほどに進化した現時点でさえも未だ構想段階に留まっているものとして、かつてSFで定義されたダイソン球殻を上げた。理論的には現時点の文明は『作れないわけではない』とされるが、膨大な時間とコストから『現実的ではない』とされる。恒星の膨大なエネルギーをすべて利用するための発明とされるが、その膨大な熱に耐えられる金属が現時点では超合金ニューZαなどの一握りしかない上、とてもそんなダイソン球殻を作れるほどの膨大な量を確保はできないという点だった。

「たしか何かで見ましたけど、恒星のエネルギーをすべて使うための設備ですよね?」

「そうだ。だが、現状では建造すらできん。政治的事情があるからね。恒星をすべて覆うほどのものを作ることにスペースノイドが反発するだろうしね」

「なんでスペースノイドはアースノイドのやること為すことに反発するんですか?」

「スペースノイドには、アースノイドを『重力の井戸に縛られた者達』と捉える風潮がある。かつて、ジオン軍はその考えに染まった者がが多く、地球上の旧主要国の主要都市をいくつか消滅させた。それはジオンの罪だよ。だから戦争に負けるのだ」

真田はパリやシドニーがこの世から消滅したことで『緒戦の時点でジオンの戦争の大義は消えた』と捉えているようだ。実際、ジオン軍のエースの一人で、『荒野の迅雷』の二つ名を誇ったヴィッシュ・ドナヒューも『コロニーを落とした時点でジオンの大義は消えた』と言ったとの記録があるので、シドニーやパリを消滅させた事をすべてのスペースノイドが肯定しているわけではないし、それが原因でアースノイドが弾圧精神を強めたという歴史的結果がある。

――ジオンは何故、常に戦争に負けるのか?

その結果は既に一年戦争で示されていたのかもしれない。真田志郎のような聡明な人物ですら、罪であるとハッキリ断じるコロニー落としを行った時点でジオンは戦争に勝つ根を摘まれたのだ。

「真田さんはジオンが負けるのを見抜いていたんですか」

「小国でも大国を負かした例は古今東西見られるが、それは明確な大義があったり、大国の支援が受けられているなどの好条件だったりする場合が大半だ。第二次世界大戦の日本やドイツのように悪条件が重なると、どんな美辞麗句を並べた大義名分を掲げようとも悲惨な結末が待っている。ジオンの敗北は昔の日本に似ているよ」


ジオン公国はかつてのドイツ軍に習った部分が多いが、大日本帝国陸海軍的要素も多分にあると真田は言う。工廠内の工場に行く途上でのこの会話で、箒と鈴の二人はギレン・ザビが行った行為は後世に多大な禍根を残したのだと理解した。













――工場では、ISの研究が進められていた。元々未知の部分が多いとされるISであったが、基礎技術レベルが発祥の世界を超越する地で研究される事で、篠ノ之束の思惑すら凌駕するモノが生まれていた。まず、赤椿と甲龍はこの日の改修(ブロックVとの呼称の第三次改修で、今回は武装一式の出力強化などである)この日までに鈴の甲龍はベガ星連合軍との度重なる戦闘の結果、二次移行が起こっていた。これにより戦闘の上では赤椿に引けをとらない程度にまで性能差は縮まったという。(なお、二次移行が起こったという事で、当然ながら単一仕様能力も発現したのだが、その詳細は不明)

「箒、君のお姉さんが見たらなんと思うのだろうか。この光景を」

「う、うぅ〜ん……」

「まぁあの人のことだからテロ起こしかねないんじゃない?」

「姉さんのことだからやりかねん……黙っておこう……」

(この間は甲児からの通信に割り込んできて、あしらうのに偉い苦労したしなぁ。ISがかってに量産されてるなんて知ったら……)

箒は工場に並んだ連邦製ISを見て、そう思う。連邦製ISは束でも『解体』不可能(アーマーなどにバード星の技術が加わったため)なプロテクトがかけられ、カタログスペックでは赤椿レベルに達している。しかも武器は他分野で完成しているモノを宛てがっており、攻撃面では歩兵の延長上の武器が多い自分達の世界の量産型を超えている。なにせエース用の特注仕様では、ビームマグナムやバスターライフルやビームサーベル装備なのだから。

「そういえば、セシリアの奴がブルーティアーズの改修を頼んできたと?」

「ああ、通信でね。一応、向こうのイギリス政府に許可得てからにしてくれと言ったが、彼女は本気らしい」

「セシリア、いいところなしだったのよ、あたしが来る直前の戦闘で捕まりまくってね」

「あ、ああ〜……」

箒はセシリアの窮状に同情した。セシリアは代表候補生の面目丸つぶれなほどにバダンのサイボーグやロボットに対し微力であったと話す鈴から想像するに、国家のメンツ丸つぶれ。故郷の上層部は立腹であるのはわかる。セシリアとしては名誉挽回を望んでいるのだろう。

「どうするんです、真田さん」

「一応、君達の機体の記録を拾った上で、彼女からデータを送ってもらう。こちらの技術であれば改良できるやもしれんからな」

「ファンネルですか?」

「こちらでは既にサイコミュシステムも完成の域にある。それを使用出来れば利便性は増す」

元々、ブルーティアーズは試作機である故、欠陥もある。その是正に取り組むのは当然とも言えた。そんな時、真田のもとに通信が入る。IS学園からで、甲児の仲介でセシリアからだ。正にグッドタイミングである。

「真田さん、政府から承認が出ましたわ。これからブルーティアーズのデータをそちらへ送信します」

「分かった。それにしても偉く早いな……イギリスはこういう時はぐだぐだともめるもんだが……」

「それは誤解ですわ〜!ですが、即日で承認されるのはいくらなんでも早すぎると思いましたわ」

「何かあるんだろう。試作機のデータを取った後に当然なされるはずの事ができない状況が」

「そうですわね……普通なら試作二号機なりを作れば事足りるはずですし」

「それができないということは、試作二号機そのものを強奪されたのを隠蔽しているのか、それとも……」

「まさか……!」

セシリアには思い当たる節があった。自分のISに似た機体が。それが姉妹機だとしたら。まさかとは思うが、現実味のある話である。上層部の奥歯の奥に何かが挟まった言い方にセシリアは違和感を感じていたため、真田の仮定を否定しなかった。

「でもさ、セシリア。あんたのは中途半端な装備じゃない?狙撃戦得意なら特化したら?」

「上は汎用型を目指してるんですの。私にはどうにもできませんわ……あのνガンダムのようにはいきませんわね……」

セシリアは適正的に射撃戦で、接近戦は苦手である。鈴からの指摘に『図星』という感じの表情を見せる。ただ、鈴や箒に頼んで送ってもらった『νガンダムの戦闘記録』を視聴し、それに憧れている節があった。箒と鈴は『潜水艦の艦長にでもなったらどうだ?』と冗談めかして言っている。甲児達の定時通信で次第に未来での戦争の模様が伝わっていくと、さしもの千冬と束も息を呑んだ。モビルスーツや可変戦闘機達が宇宙を飛び回り、波動砲やコロニーレーザーなどの大量破壊兵器が宇宙を照らす。SFじみてはいるが、別の世界で確かに起こっている現実。代表候補生たちなどは一様に呆然としていた。そもそも次元世界の概念そのものに初めて触れ、しかも平行時空の地球があるという事自体が信じ難いというのに、更にSFのような戦争の光景が追い打ちをかけた。




――グレートマジンガーという『現物』も効果絶大であった。甲児がデモンストレーションも兼ねて、グレートを稼働させると生徒たちは最初は疑念の声を上げたが、やがて歓声に変わった。全長が25mあろうかという人型ロボットが人間と変わらぬ動きを見せ、その破壊力は戦略級。雷を自在に引き起こせ、地形をも変えられる絶大な破壊力を発揮するというのは、女尊男卑に染まっていたIS学園の生徒たちをも沈黙させた。ISは『無敵』ではないのだと否応なく示されたからで、千冬や束が事実を冷静に受け止めている事も抜群の効果だったという。普通生徒達への情報開示はここまでで、代表候補生レベルでMSなどの情報にアクセス可能とされた。ただし、それらも実質的には、襲撃事件の当事者として関係した者達に限られたという。




「νガンダムなどはサイコフレームとフルスペックのサイコミュシステムを積んでるからな。お前のBT兵器よりも完成度は高い。それを積んだとして、お前に扱えるのか?」

「これでも適正は高いですのよ!箒さん。本体と端末が別行動を取れるというのは魅力ですし……今のままでは防衛行動もままならないですから。それで模擬戦でえらい目にあいましたわ」

そう。襲撃事件の後にRX達にも指摘されたが、ブルーティアーズは攻撃端末の操作中の防衛行動ができないという欠陥がある。ロボライダーとの模擬戦ではボルティックシューターで瞬く間に撃墜され、ロボパンチを一撃貰ったという。ここまで箒が言った時、セシリアは重大な言葉のニュアンスに気付いた。『お前に扱えるのか?』というのは、『自分は使える』とも取れるからだ。

「それってどういうことですの?それじゃあなたは使えるとでも?」

「お前には気の毒だが、赤椿は展開装甲を応用すればファンネルを使えるんだ。別に追加装備も作られているがな」

「ぐぬぬぬ〜!」

セシリアはBT兵器を扱えるという自負があるが、箒も展開装甲の応用などである程度は使えるという点にアイデンティティの危機を感じたようだ。

「と、言うわけで真田さん。くれぐれもよろしくお願い致しますわ」

「分かった。任せておいてくれ」

真田の端末にブルーティアーズの機体データがアップロードされる。そして、重要事項の通達のために、通信の相手が千冬に代わる。

「真田技師長、織斑千冬です。そちらにシャルロット・デュノアを派遣することが決定されました。数日の内に出発させるので、受け入れ態勢の整えを」

「分かりました。しかし、よろしいのですか、代表候補生を二人以上、外部に派遣するなど」

「各国は実戦データが欲しいのです。篠ノ之博士が容易く全世界の努力を無にする次世代機を開発した事で、開発の方向性が固まりましたから」

「古今東西、そう言うことはよくあるものです。各国が実戦データを欲しがるのも無理は無いですが、姑息といえば姑息ですな」

――襲撃事件で『ISの世界』のISの開発ペースはむしろ促進された事が千冬によって示唆された。各国は通常兵器の開発ペースを戻す一方で、女性達の強い提言を無視できなかったのが伺える。だが、展開装甲などの第4世代に必須な事項が各国の技術力では未だ、『机上の空論』に等しいせいか、第三世代の改善が限界であるらしいのが伺えた。

「今回のデュノアの派遣は本人の希望もありましたが、フランス政府からの圧力も多分にありました。あの事件以後、IS学園への圧力は強まり、学園は政治的に辛い立場なのです」

「わかります」



――箒と鈴はため息を付いて、千冬と真田の会話を聞いていた。甲児がグレートマジンガーで暴れたということは、『男性でも強大な武器さえ持てば、ISに対抗できないわけではない』のを知らしめたからで国防に至るまでIS主体が根付きつつある世界に一石を投じたのは間違いない。そしてISは確かに強力ではあるが、万能ではない。それは各方面の実戦を生き残った自分達が一番良く知っているからだ。

「篠ノ之、凰」

「はいっ」

「お前らには苦労をかけるが、まだしばらくはそちらにいてもらう。織斑には私から言っておくが、アイツの事だ。そのうちそちらへ行きたがるだろう。その時は頼むぞ」

「分かりました!」

千冬は最愛の弟を別世界には行かせたくないという『姉』としての愛情と、仕事人としての自分との板挟みに悩んでいた。束はそんな様を楽しんでいる。クールビューティである千冬も素は『ブラザーコンプレックス』気味だ。それは一夏が6歳までの時期に、二人が両親に捨てられた事から来るもので、両親へ強い憎しみを抱いている節がある。

(アイツは私の妹なのか……?だとしたら……)

千冬が内心で気になることは、以前に弟が目撃し、実際に自分も数日前に対峙した『敵』。その顔は10代の頃の自分と瓜二つだった。正体を知っている素振りを見せた束を問い詰めていき、その名を吐かせた『織斑マドカ』という名を持つ少女。自分と似た顔を持つ者。束もあまり語らない正体。邂逅した後、千冬は内心で自分らを捨てた両親を罵りたい衝動に駆られたという。正体がどうであれ、だ。

――束の奴……いったい何を隠している?私もお互い様だが、あの女の正体を……。

一夏に『家族は私だけだ』と言っている辺り、両親へ憎しみを抱いている千冬。棄てられたのが多感な時期であった故に、傷も深いのが伺える。そして気になるのはファントム・タスクがナチス残党の影響を受けているのか、であるとばかりにRXに調査を依頼してもいる。謎が謎を呼ぶとは、まさにこういうことであった。この日は箒と鈴の機体にマグネットコーティングを施すのと、新武器のマッチングの調査などに費やされ、調整を終えた。






――こうして、シャルロット・デュノアの派遣が通達され、数日後に宇宙科学研究所へ着任した。これは休暇が終わればミッドチルダへ戻らなくてはならない箒と鈴の不在を守る者を置くという連邦側の思惑とIS学園の思惑が一致したためでもあった。


「箒、鈴!久しぶりだね」

「シャル!」

「まさかあんたもこっちに送られてくるなんてね」

「僕も志願はしていたんだけど、延び延びになってね。二人がいなくなった後の留守を頼まれたよ」

「と、言うことはアンタのISは改修しないの?」

「その予定はあるんだけどね、僕のは元からかなりいじくってるしね」

そう。シャルのIS『ラファール・リヴァィブカスタムU』は原型機が第二世代最後期の機体であるのと、元々がかなり改造されているのだ。ひとまずシャルは『様子見』という事で、保留にしたとの事。

「どう、この世界は?」

「フランスがかなり荒廃してるのには驚いたよ。パリが湖になってるなんて、見た時は自分の正気を疑った。だけど、この世界じゃ現実なんだよね……」

「ああ……聞いた話だと、フランスは統合戦争の折に完膚なきまでに敗れた挙句に、一年戦争のコロニー落としの影響でパリが消滅している。そのせいで反スペースノイド的風潮が強くなったらしい……お前には辛い話だろう」

「冷淡に扱われた挙句にパリが無くなったというのは何かのツケなんだろうね。フランスは傲慢に振る舞った事は一度や二度じゃないからね」

「お前……」

「いいさ。フランスに驕りがあったのは確かだからね」

シャルは自分なりにこの世界でのフランスの衰退を受け止めたようである。その辺りはポジティブらしい。やがて、話題はこの世界の状況に移る。一年戦争に始まる人類同士の戦乱期、宇宙大航海時代に伴う宇宙戦争……いずれもISが本来想定していた用途の一つである『宇宙開発』に合致している。宇宙開発が進行した事が、逆に戦争を招いたという皮肉があるのは三人としては複雑である。

「スペースノイド、か。宇宙生まれの人間からすれば地球はどうでもいい存在なのかもね…」

「だからアースノイドの反発を招いて、弾圧を受けるのだろう……ジオンやザンスカール、クロスボーンのような奴らはごく一部だからな」

「強引な手法でやっても結局は失敗するだけだって、もうナチス・ドイツや帝国時代の日本で証明されてんのにね」

「でも、なんでスペースノイドはジオンを支持するの?普通なら数十億殺してるんだから、他のサイドから総スカンされたって……」

「地球連邦政府が地球から宇宙を支配しているのを気に食わない連中はいくらでもいる。だからジオンの大義が魅力的に見えるのさ……馬鹿げている」

箒はジオン公国からネオ・ジオンに至るまで掲げられている大義に疑念を抱いていた。21世紀からすれば『地球連邦政府』というものは『人類の理想』のはずだったからで、それに対して不満があるからと言って、地球を核の冬にしようとしたのは許せないらしい。

「昔から反対勢力に魅力感じる人達は多いからね。そういう人達に限って、歳食うと体制側に回るのさ。誰だったかの格言にあるけど、年食っても反体制派に入れ込んでる人は革命家気取りの人くらいなもんだよ。昔の学生運動だって大半が語感の良さでやってたり、ファッションでしてたってのは有名だよ」

シャルも地球連邦に対して不満を持つ層は多いが、本当に世直しを考えているのは少数でしかないと考えているようだ。自分達から数世代ほど前に興り、時代の流れで下火になった学生運動の顛末を引き合いに出す辺り、人間、体制の反対勢力に魅力を考えるのは青年層周りの時期だけで、後は惰性で言っているか、革命家気取りの阿呆だと考えているようだ。例えば、日本での学生運動に参加した世代はなんだかんだで体制を支える側としてその後の人生を生きた者が大半であった。人というのはそういう生き物なのだ。

「意外にお前、シビアだな……」

「まぁ、家庭的に幸せな環境とは言えなかったからね…。女の子らしい夢と言われても、ピンと来ないんだ」

「そうだな……」

三人は何かかしら、家庭的意味で順風満帆とは言えない事情を抱えている。箒は姉が引き金で、鈴は両親の離婚、シャルは出自そのものが問題の発端である。だからこそ、女尊男卑の時代となっても、自分の信念を貫く織斑一夏に魅力を感じたのだろう。

「二人のこれからの予定は?」

「ISの調整を終えたから、荷造りしてるとこ。明後日には前線に戻るから」

「今、二人がこっちで戦ってる敵って?」

「一つはベガ星連合軍という異星人。これは博士から説明を受けたと思う。もう一つはナチス・ドイツの残党だ。残党と言っても、いくつかの世界の残党が徒党を組んでるようだがな」

「なるほど。僕が当面の間、戦うのは前者ってわけだね?」

「場合によれば先ほどのジオンの残党などとも交えるぞ。奴らは見境がないテロリストに堕ちた者も多いからな」

「二人はよく戦えたね?」

「改修や自己進化、移行とかをしながらやっとって感じよ。この世界の機動兵器の装甲はISの『素の火力』じゃ通じないくらい頑丈だし、『普通の兵器』でも核融合炉で動いてる。戦略級だとブラックホールで動いてるのがある始末。元の世界で振りかざされてるIS万能論なんて馬鹿げてくるわよ」

――この時期には、箒も鈴もISが『無敵の万能ツール』という考えは捨てていた。それは元の世界より圧倒的に優れた技術を持つ世界ではISも『数ある兵器の選択肢の一つ』としてしか捉えられていないし、実際に苦戦したのも多いからだ。地球連邦軍は自前で作っているが、年辺りの調達数は少数である。

「んじゃ、荷造り前にニュースでも聞くとしますか」

鈴が近くにあったリモコンを手に取り、テレビのスイッチを入れる。すると、始まって間もないようで、最初のニュースが流れる。

『宇宙軍は次世代型波動エンジンの開発に取り組んでいると発表しました。これはスーパーチャージャーで波動エネルギーを増幅させ、従来型の難点であった連続ワープを可能にし、ワープや波動砲使用後のエネルギー回復速度を増大させたもので、先の大戦中から実験が繰り返されているものです……』



――波動エンジンの改良は白色彗星帝国との戦争の時からの懸案で、白色彗星の渦に飲み込まれた艦がかなりの数に登った事例を重く見た真田志郎が戦後にプランを提出した。理論そのものはメカトピア戦争中には確立され、試作エンジンがギアナ高地でテストされているが、実際の所は芳しくない。それは試作エンジンの加速度が激烈で、人間が耐えられる限界をすぐに超えてしまうという欠陥が生じたからだ。そのため、早期の実用化は諦めている。

「波動エンジンって?」

「地球連邦の一部軍艦を中心に採用されてる恒星間航行用エンジンで、地球連邦軍の開発したエンジンの中では最も強力なものの一つだ」

「恒星間航行かぁ……なんかSFみたいな話だよ」

「地球圏そのものが銀河外縁部にまで広がってきてるからな。だからISを模したパワードスーツが宇宙開発用に売り出されたしな」

「ええっ!?」

「だいたいの機能は同じだけど、コア関連の構造を省いた廉価版って感じの奴よ。あたし達の機体に記録されてた打鉄やリヴァイブのデータを基に、数種類くらい作られて重機を一部代替する働き見せてるわよ」

「コアを省くって、よくそんな設計変更できたね」

「元々、下地になるパワードスーツの技術は一定の水準に達してたらしいのよ。それで他の星の技術が伝わって、更に技術革新が起こった。だから独自形ISも作れたらしいわよ」

それは民生用に作られたモデルたちの事だ。レビル将軍の意向で軍事用より優先して作られ、コアを省いたのが功を奏して軍事用より早く完成し、この時期にはある一定の数が流通し、各地の復興に使われている。ISを作るのにはパワードスーツ関連の技術水準が高くないと無理だが、『元々、一定の水準にあった』という事から、この世界の地球はISが伝わる以前から独自にパワードスーツの研究開発は行っていたのだと、シャルは目星をつけた。

――この日はシャルとの挨拶などで終えた二人。二人がミッドチルダへ戻るその前の日、シャルにとっての初陣がやって来た。









――翌日

『レーダーに反応!これはジオンの残党軍です!』

「奴らめ、もはや見境無くなったか!各員は戦闘準備!」

宇宙科学研究所は宇宙開発をそもそもの主目的をしている。本来、『宇宙開発が進行する』というのはスペースノイドにとっては喜ばしい事のはずだが、デラーズ・フリートのように、地球連邦の影響力増大を阻止する名目のもとにテロ行為を行うのがこの頃のジオン残党の行動に表れてきており、宇宙科学研究所であろうとも襲う辺り、見境が無くなり始めてきている証でもあった。


――研究所内に警報が響き、各員が戦闘準備に入る。デューク・フリードはグレンダイザーを発進させ、箒たちも戦闘準備に入る。

「先生、敵は何者ですか?」

「ジオン残党だ。機種はドワッジ、グフ・カスタムを中心に、後期型ザクで固められている」

「ドワッジ!?たしかあれは極東方面には回されていなかったはずでは?」

「公式記録上ではね。だが、調達担当者がちょろまかして極東方面に回したという非公式記録が発見されてね。どうやら本当だったようだ」

箒は『侮れない』と言った顔をする。ドワッジは一年戦争末期のジオン地上軍にとってのゲルググポジションに当たる機体で、ロールアウトが数ヶ月早ければアフリカ戦線はジオン勝利に終わったとさえ謳われるほどの名機。技術革新が進んだ現在では、装甲面のメリットはかつてほどではなくなったものの、機動力を含めた総合力は今なお高い評価を得ている。箒たちも何度かシミュレーションと実戦で対戦したが、苦戦させられた。ましてや今回はMS戦に関しては初陣であるシャルがいる。大丈夫かと考える。

(シャルのことだ。一発で慣れてくれると思うが……)

「出ます!」

まず、速度に優れる箒の赤椿が発進し、次いで鈴とシャルが発進する。シャルは箒と鈴の機体が以前の原型を留めつつも小型化されている事に驚く。

「どうしたのその機体!?随分小さくなってるけど」

「性能向上や運用面の問題などの理由で小型化改修されたんだ。歩行機能も追加されたから、このままで陸戦も可能になった」

「前よりパワードスーツの体裁が強くなったって感じよ。まぁ基本的には変わってないけど」

「すごいねそれは」

「とりあえず援護を頼む。私と鈴で突っ込む」

「OK!」

数分ほど飛行していると、ジオン残党軍を視認できた。MSの他に、マゼラ・アタック戦車、ドップ戦闘機の姿が確認できる。こちらは露払い的な別働隊のようで、通常兵器がメインだ。箒はシャルに援護を頼むと、鈴と共に逆落としでドップ戦闘機から落としにかかる。上空からの先制攻撃である。

「いけえ!」

挨拶代わりに穿千と龍砲を一斉射撃、数機ほど落とす。戦闘機としては奇異な形のドップだが、速度性能面は現在でも一線級。ISよりも高速である。それを活かしての一撃離脱戦法で、箒たちを追撃する。

「流石に未来の戦闘機だ。疾い……だけど機動力ではどうかな?」

シャルは元々の適応力が高いゆえか、ドップへの対処法もすぐに思いついた。速度面で太刀打ち出来なくとも機動力で勝負すればいいのだと。

「ええい!」

ドップの機体に取り付いて、アサルトライフルを直に打ち込んだり、エンジン部にナイフを突き立てるという荒っぽい戦法で対抗する。これはリヴァイブの速度性能ではとても追いつけないので、意表を突く戦法が必要と判断した故である。箒達との連携で、4機を落とす。そして、MS戦に入る。


「あれがMS……!」

――後期型ザク(F2型)の勇姿を空から確認するシャル。戦車に守られながら進撃する一つ目の巨人。兵器であることを示す戦車のそれを当てはめたような装甲、パイプなど、以前に映像で見たものと同じ特徴を持っている。MSという兵器を根付かせた最初の機体の派生型との事だ。箒から射撃武器は120ミリマシンガンというのを聞かされると素っ頓狂な声を上げた。

「120ミリぃ!?サイズ考えればそうだけど、一昔前の戦車砲クラスだよ!?」

「それがあれを名機足らしめた要因だ。戦車以上の攻撃力、戦艦並みの装甲、歩兵の器用さを兼ね備え、一年戦争の序盤は連邦軍を大いに震え上がらせた」

「戦争のお約束通り、中盤以降はカウンターパートが作られて、逆に落とされる側に回った。よくある『序盤は無敵、終盤は雑魚』な兵器よ、あれは」

「国家間の戦争って、いつの時代も似たような経緯を辿るんだねぇ」

「国家間の正規戦は第二次世界大戦でおおよそ完成されたからね。戦史家の間じゃ『一年戦争は第二次世界大戦を圧縮したような戦だった』と言われてるのよ」



――鈴の言う通り、歴史は繰り返すというが、戦争の様相も繰り返すものかどうかは定かでばない。ただ、ミノフスキー粒子が現れたおかげで、東西冷戦時に恐れられた『ボタン戦争』を過去に成り果てさせた事だけは歴史家を喜ばせたという。人型兵器の発達は核兵器が生まれた時に生じたボタン戦争という概念を滅ぼすために人が選んだ道かも知れない……。(核兵器もガンダム試作二号機やスタークジェガンの試作型に搭載されたりしたが、かつて程の地位を失った上、言葉の響きが忌み嫌われたため、いつしか反応兵器という単語で置き換えられていった。核兵器という単語は過去の名残り的概念として、デラーズ紛争までの時代に使われたモノを指すものへ変化していったと記録される。)




――さて、問題はシャルのリヴァイブでは、正面切ってMSの多重空間装甲を撃ち貫ける装備がないという事だった。主力戦車よりも頑丈な正面装甲を誇るMSはシャルの対物ライフルによる狙撃を物ともせず、その火力を投射してくる。

「これも跳ね返すなんて……参った。リヴァイブにはこれ以上の武器なんてないよ」

シャルはザクUF2型の120ミリマシンガンを避けながら、困った顔を見せる。火力不足で、足止めは出来ても、有効打を与えられないからだ。箒と鈴はまだマシな状況ではあったが、固有射撃武器はマゼラアタックは撃破できても、MSには力不足、いかんせんマゼラアタックも混ざっての対空弾幕を潜り抜けてまで接近戦を仕掛けるのは無謀に過ぎる。そこで宇門博士に連絡を取ると……。

『分かった。今からそちらへIS用のビームマグナムを射出する。うまく受け取ってくれ』と帰ってくた。射撃はシャルが最も得意という事で、シャルが受け取る事になった。

「ビームマグナムって?」

「元は新型のガンダム用に造られた、マグナムを使う銃を模したビームライフルだ。IS等のパワードスーツ用にダウンサイジング化されたものなんだが、当たればたいていのMSを貫くが、その代わりに取り回しが難しい。お前が使ってくれ」

「わかった。だけど、ビームなのにそこまで忠実に再現しなくても…」

「おおかた、開発チームに『ダー○ィハリー』のファンでもいたんだろう?」


――ビームマグナムはアナハイム・エレクトロニクス製戦術兵装では、ネオガンダムのGバードに次ぐ破壊力を有する。Gバードがネオガンダム専用であるのを除けば、反動にフレームが耐えられれば撃てるという汎用性を有するビームマグナムが最高位である。その反動に耐えるには相当なフレーム強度が必要で、ガンダムタイプ以外のMSでは一度撃つと肩のフレームが外れ、作動不良を起こすなどのマグナム弾を使う銃さながらの状況となる。ダウンサイジング化されてもこの欠点はある。シャルは射出されたビームマグナムが入ったウェポンラックををうまく受け取って、瞬時に組み立てた後に射撃体勢に入る。マグナムという語感から、同様の大型拳銃のような発射態勢が必要と判断。IS越しに、両手で銃を保持する。(ISが原型時、ダウンサイジング化後のどちらのサイズでも対応出来るように、選択式の組み立て式である)そして、念の為にPICを最大出力にした上で放った。

「――ッ!す、すごい反動だ……リヴァイブが軋むッ…!」

PICを最大出力にしてなお、リヴァイブの腕部には膨大な負担がかかった。フレームが軋み、撃った後は大口径のマグナム銃を撃った人間さながらの様相を見せるシャル。だが、相応の破壊力を発揮。ザクの超鋼スチール合金製の装甲を容易く撃ち抜き、余波で周りのマゼラアタックやMSを撃破する。初弾で当てたのはさすがだが、腕部に異常を示す警告パネルが出る。

「腕部動力伝達装置、動作異常……か。連射はできないな。だけど、コイツは威力がありすぎる……」


――地面を抉り、MSを一撃で倒す火力はサイズに比して異常とも言える火力に打ち震える姿はまさに歳相応の少女の姿だった。IS越しにガチガチと震える腕は、眼下に広がる残骸に、初めて『人を殺した』ことを自覚し、初めて恐怖する彼女の内心を表していた……。














――グレンダイザーは残党軍主力と戦っていた。ダブルハーケンを振りかざし、グフ・カスタムやドワッジ相手に一歩も引かない戦闘を見せていた。多少のサイズ差を物ともせず、刃を交えるMSとグレンダイザー。

『スペースサンダー!』

スペースサンダーの強力な電撃が放たれ、一機のドムを破壊せしめて沈黙させる。一撃でドム系を破壊するというグレンダイザーの威力にも怯む事無く、残党軍は挑む。ドワッジが一機、ヒート・サーベルをダブルハーケンにぶつけ、両断せんとする。だが、宇宙合金グレン製のダブルハーケンには通じない。温まるだけだ。そのままパワー差で押し返し、逆に斬り裂く。ドワッジの無残な屍が地面に倒れ伏す。


『ここから先を通りたくばこの僕を倒してから行け!』

デューク・フリードは啖呵を切る。(彼は一人称は僕と俺の一人称を使い分けている。僕を使うほうが多いが、偶に俺とも言い、特に場を仕切る時には俺を使う場合がある)

『吐かせ!』

ジャイアント・バズの至近距離からの射撃にもグレンダイザーは堪えない。装甲表面に傷もつかない。

『反重力ストーム!』

そしておもむろに反重力ストームでドワッジをまとめて浮き上がらせ、ダブルハーケンを投げて始末する。ドワッジはスラスターで抵抗したようだが、重力を操る反重力ストームには抗えない。残るはグフ・カスタムと護衛のグフらだけだ。

『ほう。さすがはスーパーロボット。部下たちを一瞬で始末するとは。やりおる』

『まだやる気か?』

『当然』

ヒートソードを抜刀し、構えるグフの一団。パイロットの個性か、構えは色々で、隊長格のみは剣術を嗜んでいるようなモーションを見せる。機体制御系をカスタマイズしているというのを暗示し、別格ということだろう。

『いいだろう』

こうして、開始された戦い。グレンダイザーのダブルハーケンとヒートソードがぶつかり合い、火花を散らす。援護に駆けつけた三人は巨大ロボット同士の剣戟に息を飲む。なにせ30mと20m級の巨大ロボットが鎌と剣をぶつけ合う様は実際の光景とは思えない。見慣れている二人も思わず『ポカーン』としてしまうものなので、シャルは尚更であった。

『ふんっ!』

『おっと!』

ヒートソードの赤熱化した刃をグレンダイザーは華麗に跳躍で避ける。言うならば時代劇の主人公にチンピラが斬りかかる構図やローマ時代の屈強な剣闘士が雑兵相手に戦いを思い浮かべていただけば分かりやすいだろう。グレンダイザーは30m、280トンの巨体ながら、MSと遜色が無い跳躍を見せる。スーパーロボットの大パワーが成せる業であった。

『とう!』

ダブルハーケンがグフの一機を上段からまっ二つにする。デューク・フリードはグレンダイザーの戦闘性能を遺憾なく発揮させる。陸戦ポテンシャルは歴代マジンガー(運用思想などでマジンガーに似通っているため、グレンダイザーは地球上ではマジンガー扱いである)

『ハンドビーム!!』

グレンダイザーの武装は最弱レベルのものでも連邦軍制式採用ビームライフル(量産機用)を優に超える。ハンドビームでもMS、それも一年戦争時のモノには十分すぎる威力。左腕のビームを正面の敵以外の機体に照射、中破させる。箒たちを守りつつ、デューク・フリードは間合いを測る。グフ・カスタムは優秀な兵士が操れば、グレートマジンガーにも引けをとらない格闘戦が可能だからである。

『ふふ、これはどうか?』

グフ・カスタムの持ち手が日本の剣術のそれになる。箒はグフ・カスタムの動きが日本の剣術になっている事に気づく。

「バカな、西洋の剣で東洋の刀でやる動きをやろうとなど……しかもヒート系の刀剣でだと!?」

よく見てみると、グフ・カスタムは剣道のすり足を再現している。ジオン脅威のメカニズムとでもいおうか、一年戦争中の機体としては運動性能が高い証であった。

「ロボットが剣道のすり足やるなんて……あり得ないよ……」

「いや、ここは戦艦が変形するような世界だ。すり足で驚いてたら心臓がいくらあっても足りんぞ、シャル」

「う、うん。だけど、ここまで人間の動きを再現できるものなの……?」

「ジオン脅威のメカニズムって奴よ。MSが出て初期の機体だってのに、まさかここまでとはね…」

――セミ・モノコック構造で作られた第一世代MSは一般に、ムーバブルフレームを持つ第二世代以降のMSより間接の自由度や可動範囲が狭く、人間の動きに比べて、機械らしいぎこちなさを薄くであるが、残す。人体同様の構造を持つムーバブルフレームが如何に革新的であったかがわかる。しかしながら、すり足などはその気になれば第一世代MSでも可能である。MSが如何に『歩兵の器用さを持つ』と謳われたかがわかる。

『さて、いざ参る!』

グフ・カスタムの動きは北辰一刀流のそれになる。MS越しとは思えない流麗な動き。デューク・フリードも歴戦の勇士。それを受け止めたりして防戦する。隊長格が死闘を繰り広げるのを邪魔させないために、他のグフ達がフィンガーバルカンなりを連射し、箒たちを撹乱する。

(人を殺した実感が湧いてくる……怖いっていうか……なんといおうか……だけどすぐに慣れちゃうもんなのかなぁ……第二次大戦に参加してた先祖もそう言ってたというけど…)

内心で人を殺したという事実に打ち震えるシャル。しかし人間というのは恐ろしい事に、戦争という非日常において、人を殺すということに慣れてしまうと、躊躇いが薄まっていくという闘争本能的側面がある。シャルはそれを自覚したのだ。しかし倒さなくては多くの人々がテロの犠牲になる。それだけは許せないと自分を奮い立たせた。


――果たして、勝負の行方はどうなるのであろうか?












――宇宙科学研究所近くで戦闘が繰り広げられている最中、ある報告を受けるレビル将軍。彼は頷き、一言いう。

「また戦争か……ヤマトがこの間、暗黒星団帝国の意図を挫いたら、すぐに報復に打って出るとは。狙いはヤマトか」

「時空管理局の探査艦が大規模艦隊のワープ航跡を察知に成功し、通告してきました。防衛準備を!」

「今すぐは無理だ。先の戦争で疲弊した地球圏にまたしての戦時体制への即時移行は自殺行為に等しい。緩やかに移行させていくしかない。それにワープで来られては、いきなりこの地球本星そのものを電撃戦で占領する事も有り得る。万が一を想定した規則などを明確化させておかなくてはならん」


レビル将軍はシビリアンコントロールをされている軍の建前上、規則を明確化しておかないと、政治屋が軍を叩く材料に使うと危惧し、大戦中から本土占領下における軍部の行動を事前か事後に承認する規則を整えるように動いていた。そして、それが政権に承認される見通しとはなったが、政治屋の気まぐれに翻弄されかねないため、根回しを行っている最中である。

「そのために例の案を大統領に?」

「そうだ。万が一が起こったら、軍は動けんままで占領される事もありえる。そのためだよ」

「なるほど」


「MSの更新はどうだね?」

「後期型ジャベリン及びジェイブスの配備はおおよそ40%に進行。ジムVやジェガンは適宜、後方地域に移しております」

「45%に行けばいい方だろう……事態が悪化すればそれどころではなくなる」

MSの世代交代は連邦軍の命題で、この時点でも未だにジムVが一部地域には残存している有様である。これは艦艇その他の兵器の数を揃える事が優先され、MSが遅らされた影響でもあり、ジャベリン・ジェイブスが実用化されたとはいえ、配備数は星の数ほど生産されたジェガンには及ばない。しかし有事即応部隊を優先して配備は進み、この時点で一般部隊にも機種転換訓練用機と実戦機が行き渡り始め、ジェイブスが2202年にも初期作戦能力獲得とされている。世代的には三世代が同居する形だが、これも度重なる戦争に寄る財政難の賜物とも言えた。数合わせとも言うべきか、ジェガンは今や性能不足ではあるものの、堅牢性と信頼性に関しては問題なく、近代化改修も数度行われている。その側面から、当面はジェガンの退役は伸ばされるだろう。

「将軍はジェガンにまだご奉公の機会があると?」

「昔、アメリカがアイオワ級を20世紀終わり頃までモスボール保存と復帰を繰り返させた歴史があるだろう?もしかしたら、ジェガンは我が連邦系MSでは最高傑作かもしれん」

「確かにそうですな、ジオンがザクなら、連邦はジェガンですな」



地球連邦系MSの中では量産性に優れ、そこそこの性能、整備性の高さなどを両立させたMSはジェガンくらいなものだ。ジム系MSはザク系MSに量産型分野の名機の座を譲ってきたが、ジェガンで初めて、名機の地位を得た。この頃には第一線でジェガンを運用する部隊は減ったが、練習機などに活用され、活路を見出していた。なおも第一線に残置する機体はスタークジェガン化されたりして運用されている。旧型でもスタークジェガン化すれば一線級の戦力となるからで、この時期にはジェガンを第一線で運用するのには必須とされていた。このように、連邦軍の屋台骨を支えているジェガンが円満退役できるのはいつの日であろうか……。












――日本 山本明宅

「お前もヤマト志望だと?玲」

「そうよ、明兄さん」

山本明。元・宇宙戦艦ヤマト・コスモタイガー隊副隊長の経歴を持つエースパイロットである。彼は今、重大な局面に瀕していた。それは軍に入隊し、自分と同じ航空畑を進む、従妹の同名異音の玲がヤマト配属を志願したというのだ。しかし、ヤマト配属にはハードルがある。実戦経験がなくても、ある一定の飛行時間や技能があれば配属されるが、古代の訓練の鬼ぶりは有名だ。山本はそこを心配した。

「お前の飛行時間は?」

「実機で700、シミュレーターで200、偵察任務100よ」

「まだ足りん。シミュレーターの難易度は難にしてるか?」

「ええ。そうだけど?」

山本家は原則的に美形が多い家系だ。山本明も、玲も端正な顔立ちをしており、軍内では人気撮り的意味でも活用されてはいる。二人が違うのは、瞳の色だ。玲の家は火星のテラフォーミングが初期の段階で火星に移民し、過酷な時代を生きた。火星には瞳が紅い者が生まれやすかった。植民惑星に生まれた者などに生じやすい言える赤い目はアースノイドの一部からのの侮蔑を産み、差別もされたが、宇宙開発も進んだ現在では偏見は根絶された。なので今では普通に過ごしている。

「今日から超難にしろ」

「は、はあ!?難の敵のレベルは実働部隊のベテランレベルなのよ!?」

「古代が求めるレベルは教導隊のエースからベテランレベルだぞ。ヤマトは単独での任務も多い。生き残るにはそのレベルをこなさんといかん」

玲は思わず目を点にして詰め寄る。彼女は訓練シミュレーターの難易度を高めで行っているが、ヤマト配属には激ムズは愚か、超難易度でちょうどいいと山本がいうものだから、驚くのも無理はない。しかしガミラス、白色彗星帝国との2つの戦いをヤマトで過ごした彼は、白色彗星帝国との戦いで頼れるベテランの多くが未帰還となった事で、艦載機人員の総入れ替えを余儀なくされた古代の苦境をよく理解している。なので、玲をヤマトに送るには更なる練度向上が必要だと悟ったのだ。

「今日から俺がびっしり鍛えてやる。いいな?お前が今いる航空隊の司令には言っとくから、教導隊に顔出していい。そこで曲技飛行とかやって腕を磨け」

「兄さん、いいの?」

「いいさ。お前が飛ぶのを見たいと、あいつは嬉しそうだったからな」


山本は玲の実兄で、戦死した明夫の仏壇に手を合わせながら言う。山本は身寄りを失った玲の法的後見人を引受け、彼女の軍入隊の際には手続きなどを手伝った。ちなみに玲が山本の事を「兄さん」と呼ぶのは、子供の頃からの事で、従兄という血縁関係と、子供の頃から世話になっていたなどの事が由来である。山本はこの時期には航空教導隊に転属しており、曲技飛行隊の任務も兼ねている(曲技飛行隊が戦乱で解散したため、教導隊がそれも兼ねるようになった)ために多忙ではあるが、玲を鍛えあげるつもりらしい。この日、山本は玲を伴って三沢基地に飛び、そこでシミュレーターと実機訓練をびっしりやらせ、練度向上に努めさせたとか。









――座標は銀河系近くの亜空間

「カザン司令、間もなく銀河系です」

「現在の座標は?」

「銀河系からおよそ5千光年の地点であります」

「よし、この近くに味方の移動要塞を呼び寄せよ。銀河系への足がかりとする」

彼らは宇宙戦艦ヤマトに戦いを挑んだ暗黒星団帝国。確かに彼らはヤマトに敗れ去ったが、リターンマッチと言わんばかりの遠征軍を派遣。銀河系へ迫っていた。その規模は膨大で、彼ら陸海空宇軍のおよそ80%にも達しようというものだ。では何故、これほどの遠征軍が必要とされたのか?一つは地球圏の人類の生命力を欲した事、もう一つは彼らの帝国を滅ぼすこと間違いなしのタキオン粒子文明を屈服させる悲願。彼ら暗黒星団帝国人は身体の内の頭部以外を次第に機械化して環境に適応してきたが、長年の間に種としての繁殖力や生命力が衰え、肉体的には末期的な状況へ陥った。それを解消するため、肉体的に頑健な地球人の身体を欲したのだ。地球連邦軍の切り札である波動砲、そして、宇宙戦艦ヤマトを恐れる故に大遠征軍を組んだのだ。だが、そんな彼らの行動は既に時空管理局を通して地球連邦軍の知る所となっており、互いに軍備拡大に努めていた……。




――来る、暗黒星団帝国と地球連邦の本格的衝突まであと300日……宇宙戦艦ヤマトの存在は、皮肉にもまたまた大規模戦争を呼び寄せるのであった。



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