短編『魔法少女達の奇妙な物語』
(ドラえもん×多重クロス)



――南光太郎=仮面ライダーBLACKRX。彼の協力でフェイトは時空管理局ではカバーしきれない領域の世界にも足を伸ばしていた。なのはAがBと雑談しているのと同時刻に、フェイトも同じようなことをしていた。


「あなたは私より、随分……その…口調とか違うよね?」

「まあ、色々あってな……」

この頃にはフェイトAは口調がどことなく武士道然としたものになっており、子供時代と変化がないフェイトBを当惑させていた。語尾が男性的なものになっているのもそれを際立たせていた。



「仕事で別の地球がある世界を探して苦労も多かったしな。気がついたらこうなっていた。世界は管理局の常識で推し量れないところも多かったし、技術で管理局を超えてるところもあったしな」

「ミッドチルダを超える世界か……。ありえないわけではないし、私もあるとは思ってたけど」

「アニメであったようなものが、『その通りに実現してる』世界だってある。マジンガーZやゲッターロボとかが本当に作られてて、それが戦争を終わらせた世界。私は13歳から14歳にかけてそこで調査をしていた。そこはその気になれば、次元世界を支配できそうな軍事力を持ちながらも、魔術も存在する特殊な世界だった」


フェイトAは語った。自分の来歴を。未来世界と出会って以後はミッドチルダも大揺れで、それ以後は立て続けにその気になれば次元世界そのものを支配できそうな世界をいくつも発見し、功罪入り交じるとさえ言われ、疎んじられたこともあった。一応は部隊で三等空佐相当扱いにされるまで上り詰めたものの、現在は派閥争いや出世とは距離を置いていたと。

「いたって?」

「ミッドチルダそのものが戦場になって、裏切り者も多数生じ、地上本部は混乱した。その過程で有能な者が指揮を取ったりする必要に迫られたんだが、ここで問題が起こった。相手が近代的な統制で動いてる正規軍だから、並半端な指揮じゃダメな事に気づいた。そこで普通の軍隊で正規の軍事訓練を受けた私達にお鉢が回ってきたのさ」

――フェイトAはフロンティア船団などで軍事訓練と実戦を経験していた。そのため、帰還直後に合同空戦部隊の分隊長に任じられていたと話す。

「戦闘機で空戦もするのも想定の内に入っている任務だから大変さ。帰ったら空戦を指揮するのは確実で、気苦労多いんだよ」

そう。フェイトAは気苦労多い生活を送っている。アフリカでてんてこ舞いしまくり、今度は再結成予定の501へ応援要請が出されたという多忙ぶりだ。そのためか、フェイトBに比べると、少し髪の色素が薄くなっている。手入れをする暇がなかったのだろう。

「なんか大変そうだね……」

「なのははあの通りだし、はやては経験不足な上に、戦場でアタフタたし、胃が痛む」

「ええっ!?」

「戦争の指揮をするってことは、自分の指揮で数千人から数万人単位の人間の命を左右することに繋がる。それと、銃弾飛び交う中で指揮するなんてあり得なかったからな……怯えるのも無理は無い」

「本当?」

「今は場数を踏んで、落ち着いたがな、初めての時は冷静な判断ができなくなってたらしいが、今は冷静に振る舞えるようになった。だが、気分のいいものではないとは言っていた」

「それはそうだよ。誰も戦争なんてするとは思ってないし、したくもない」

「そうだ。だが、戦争というのは自分達の都合で起きないものだし、やらなければ殺られるのが世界の原理だ。なんとも虚しいがな」

そう。誰でも初陣は怖いものだ。なのはAにしても、歴代のヒーロー達にしてもだ。はやても紆余曲折を経て、どうにか指揮能力を向上させてきているが、ストロンガーからの証言で、初めてナチスと遭遇した時には怯えていたとのことなので、現在は『殺し合いをしている』という自覚を持ち、割り切った上で指揮を取っている。それでもはやてとしては気分の良いものではないとフェイトにこぼした。はやては『人殺しの片棒をかつぐ事はしたくない』と言いつつも、戦争の現場指揮を取らればならない矛盾。管理局はかつての自衛隊のように、多くが公務員感覚で働いていた。それ故に、本格的な戦争での脆さを露呈してしまった。戦争に対して怖さを持つのは高級将校であろうと同じだ。それを分かっている故に、戦争という行為に嫌悪感を示すフェイトBと、逆にそれに長く身を置いたが故に戦時状況そのものに『慣れてしまい』、割り切ったフェイトA。環境の違いはこの二人を実質的に別人とした。フェイトBはそれを強く実感した。

(平行世界、か……。こんなにも違うものなのかな……)

「あなたはどうするの、これから」

「スカリエッティは間接的に母さんを狂気に染めるきっかけを与え、自分の探究心のために多くの世界を混乱させた。たとえ、私の知る『奴』と別人であろうが、叩き斬るまでだ」

「ち、ちょっとぉ!それはマズイって!?」

「奴の行った所業は許せん。母さんを狂わした要因に奴の作った技術があり、それがエリオを産んだ……。確かにそれが無ければ私やエリオは生まれなかったが、私達以外にも『あの技術』で誰かが、ある家の人物の替え玉として生み出されていたら?」

「そ、それは……」

「そういう事だ。だから『私が裁く』のさ。エゴとなんと言われようと、大切な家族を蘇らせたい一心ですがっても『できるのはマガイモノ』でしかないからな、あの技術は。自分の自我を否定される苦しみは私やエリオだけで十分だ……」

そう。フェイトもエリオ・モンディアルも親と信じていた者から見放され、捨てられた。プロジェクトFの根幹を生み出した元凶であるスカリエッティを殺したいという負の感情を持っているのがフェイトAの言葉から伺えた。法律で罰しようにも、フェイトAの世界では、最高評議会そのものが『内通者』であったらしいと、仮面ライダーZXから聞かされて、組織上層部に不信を抱いてしまった彼女にそのつもりは薄い。なのはAの懸念はそこにあった。













――分署からの通信に出たなのはAは開口一番、黒江の叱責を受けた。

『バッキャロー!!お前ら心配かけやがって!こっちは何週間も探したんだぞ!』

「わぁ!あ、綾香さん、怒鳴らないでくださいよ!耳が痛いです!どーやってここに!?」

『これが怒鳴らずにいられるかぁボケェ!いきなり消えちまうからこっちは大騒ぎで、光太郎さんに頼んでライドロン使って探してもらったんだぞ!』

「光太郎さん来てるんですかぁ!?」

「そうだ。ひとまず市内の公園に来い。そこに光太郎さんがライドロン隠してるから。状況を説明しろ」

「分かりました、みんなで行きます」

「それと心配させた罰として、げんこつ一発は覚悟しとけ」

「は、はいぃ〜……」


こうして、黒江と連絡が取れたなのはAは、二人を伴って外出した。はやてBに事情を説明した上で市内のとある公園で合流した。光太郎は三人の無事を心から喜び、いつもの笑顔で迎えた。黒江は喜び合う前に、修正のげんこつをそれぞれに一発かまし、師匠としての厳しさと優しさを垣間見せた。

「……お前なぁ、いくら無一文だからって別の自分の金を使い込む奴があるか?フェイト、スバル、お前ら止めろよ………」


「いやあ、あたしたちも無一文で転移しちゃったんで、流れに乗っちゃって」

「恥ずかしながら……」

「お、お前らなぁ〜〜……」

黒江は思わず頭を悩ます。三人が別の自分の金を使い込んだ。しかも主犯がなのはである。いくら自分自身とは言え、これは横領に当たるのではないか?頭を抱える。判断に悩んだ末に、通信で元の世界のはやてに連絡を取り、光太郎も交えて協議した。

「……う〜〜〜ん。こりゃなんかの罰則は必要ですわ」

「だろう?何か良いアイデアあるかいはやてちゃん」

「そっちにいるなのはちゃんの財産損失分をこっちの三人の数ヶ月分の給料で埋め合わせしした上で、三人が帰ったら懲罰を課す方向でどうやろか?」

「こっちは切羽詰まってるし、三人を独房に入れる暇はないぜ?」

「そうや、信濃と甲斐の甲板掃除はどうやろ?軍隊じゃ割りと見る軽めの懲罰やし、改大和型は300m級の長さがあるから、いくらあの三人が超人的体力でもキツイはず」

「小沢長官に言って、両艦合わせて600mになる甲板を三人だけで掃除させるのが良いだろう。期間は二週間くらいで」

「三週間にしましょう。金額がデカイ」

――というやりとりの末に、三人には介入行為を不問に付す代わりに、金を使い込んだという側面から責を負うということで、元の世界に戻ったら改大和型戦艦の甲板掃除をさせるという事で落ち着いた。そして、はやてからは『リボルクラッシュでも、石破天驚拳でもなんでもいいから大暴れしてこい』とのお墨付きは得たものの、大和型戦艦×2を掃除するはめになったのには、さしもの楽天家ななのはAもげんなりした。

「大和×2を掃除かあ……ギネスブックに乗りそう…あ、ダメだ。未来にはダイタロス級とかあったっけ……」

半分、虚ろになっている辺りはよほど堪えたらしい。しかしこの場合は自業自得である。そのため、そのストレスがスカリエッティへ向かったのはいうまでもない。


――この後、はやてから状況が伝えられた。状況的には地球連邦軍が公式に援軍を送ってきた事、ナチス側がレシプロ機に混じって、メッサーシュミットme262をちらほら出してきており、ヘリに被害が出始めていると。

「いよいよシュワルベが出てきたか……ただあれは対爆撃機用だから、そんなには使い道ないはず」

「恐らく、対爆と襲撃を兼ねてのものやろ。戦闘機にはもっと世代の進んだ機体をぶつけるのは確実や。でも日本軍系爆撃機には十分すぎる火力や」

そう。メッサーシュミットme262の火力は重防御を誇った米軍爆撃機をも一撃で撃墜可能なほどで、日本系の如何な爆撃機もその火力に無力である。たとえ富嶽であってもそれは例外でないのだ。

「扶桑の反応は?」

「未来からB-52の設計図取り寄せて、次世代爆撃機作るらしいんや。富嶽でも落とされるのがショックみたいで」

「まあ当然だろうな。レシプロ機はいずれジェット機に駆逐される運命だし」

「まぁ反発もあるだろう。速度重視になっただけで、ウチは一悶着あったような軍隊だし、急激にジェット機を揃えようとすればまた何か問題起きるだろうなあ」

黒江はジェット機という概念に抵抗ある者らがレシプロ機にしがみついて、最後に国を破滅に追いやる事を危惧していた。しかしもう嫌というほど第二次大戦の記録は伝わっているはずだし、たとえ烈風であろうが震電であろうが、ジェット機の前には無力であることは証明されている。このように、技術革新は時として残酷までに努力を無にするのだ。

(そいやなんかのSFでも、世代宇宙船を後の世の超高速船が追い抜いちまうなんて、悲観的予測や話がままあるな。レシプロからジェットの転換はそういうもんだな)

内心で技術革新が起こす悲劇に、そうした感慨をこめる。技術畑に身を置いている身としては技術革新を歓迎する一方、既存技術の洗練に力を注いだ者の報われない努力にも同情する。時代的に転換期の人間である黒江は、ジェット機に惚れ込んでいる一方、古き良きレシプロ機に哀愁を感じていた……。






――一行は機動六課へ合流し、事のあらましと、既に南光太郎=RXが一人、戦闘機人を倒してしまっていることを伝えた。なのはBは自らの損失をAの数ヶ月分の給料で補填すると伝えられると、流石に気まずそうであったが、この場合はAが悪いので、ひとまず話を受ける事になった。光太郎が戦闘機人を倒したという話には懐疑的な声が多く出たものの、RXへの変身を披露すると収まった。

『変…身ッ!』

毎度おなじみのポーズをバシッと決めて、変身をしてみせる光太郎。デモンストレーションを兼ねての行動だが、はやてBは仮面ライダーが実在した事に大喜びし、なのはBたちもこのインパクトには納得した。なにせ特撮物のヒーローがそのまま現実になったと同義であるRXは非現実的ではあった。だが、戦闘機人を屠ったと言われると、妙な説得力がある。

「あなたも戦闘機人なんですか?」

「いや、俺はそれとは根本的に違う。サイボーグ、俗に言う改造人間だ」

「改造人間?」

「後天的に何かかしらの方法で身体を人工物などに置き換えたりして強化する方法だ。俺は無理やり改造されたけどね。ミッドチルダでも研究はされたが、メンテナンスの問題などで頓挫したと聞いている」

「……!」


ティアナB、フェイトBなどは後天的に身体を改造するというところに驚愕し、また嫌悪を見せた。サイボーグという言葉を地球で聞き慣れたフェイトBも、倫理的に受け付けがたいようだ。

「改造って………」

「俺は世界の支配者候補として改造された。体にキングストーンという代物を埋め込まれて、ね。だが、自我を保った状態で脱走に成功し、仮面ライダーの一人として戦った。今のこの姿は、そこから更にパワーアップして生まれ変わった後の姿だ。だから『RX』なのさ」


「そのキングストーンというのはどういうものなんですか?」

「うーん。管理局の区分でいうとロストロギアに分類されるべき代物とでも言おうか…。ファンタジーでよく『賢者の石』ってあるだろう?あれを具現化したようなもんさ」

「ええっ!?」

「俺を改造した『ゴルゴム』という組織は5万年ごとに支配者を世代交代させていた。太陽の石と月の石をそれぞれ埋め込んだ者を争わせ、生きのこった者が二人の石を得た時、世界を支配できる力を得る。俺はその内の太陽の石を持つ『ブラック・サン』として改造されたが、同じく月の石を持つ『シャドームーン』として改造された男と争い合う宿命を背負っている」



――ゴルゴムが滅んだ後もシャドームーンは記憶を喪失しながらも生き延び、RX最大最強の敵として立ち塞がった。それは避けようがない宿命なのだ。


「そんなものがあるなんて……信じられない」

「次元世界には君らの考えが及ばないことなどいくらでもあるって事さ」

「ええ…」

フェイトBはRXの言葉に頷く。こうして別の可能性の自分が目の前にいる以上、納得するしかないからだ。

「取り敢えず、あたし達が吶喊して道を開く。後はお前たちの仕事だ。だが、RXさんの存在を感じ取って、シャドームーンが来ているやもしれん。そうなったら連絡してくれ」

「え?まさか世界を飛び越えるなんて……」

「キングストーンは奇跡を起こす。その程度は容易な事だ。注意してくれ」

「取り敢えず作戦を決めとくぞー」

「しれっと馴染んでません?あなた……」

「まぁ、お前らの師匠だし」

「流さないでください〜!」

(この人が別の私の師匠……?あの自由奔放なほうのなのはを手懐けてるから、腕は立つと思うけど……)


――黒江はこの時は現在日本人と変わらぬ服装であったが、それ越しからでも容易に鍛え上げた肉体が見て取れ、フェイトBは直感的に何かを感じ取った。黒江の処世術スキルは陸軍ウィッチではかなり上位で、持ち前の馴染みの早さも扶桑海で不興を買って(改変後の記録)なおも高く評価されており、505に教官として属した経験もある。智子と違い、航空士官学校卒(第50期航空兵科士官候補生)というエリートコースで将校になった経歴ながら、部下たちから慕われる大らかさを持ちあわせていたために、所属した部隊では常に高い人望があった。それはロンド・ベルでも発揮されており、正規の連邦軍人とウィッチ出身者とのパイプ役(2200年秋以後は未来世界にいた501勢全員がロンド・ベルに編入される事になり、ミッドチルダにいるハルトマンたちにも通達された)をなのはたちを探しに行く直前に命じられた)としても働きを見せる。これは彼女のスキルが高く評価されている証でもあった。



――ヴィータやティアナ、エリオ、キャロを中心に、RXや質量兵器たる、ISを持つ黒江への疑念が生じたものの、それはすぐに解消された。戦場で実際に力を見せたからだ。作戦は主に空が主な舞台だったが、黒江は持ち前の指揮能力でなのはAとフェイトAを統率し、その能力を発揮させた。

「さて、ひと暴れするかっ!レイジングハート、行くよ!」

なのはAのレイジングハートがカートリッジをロードすると、原型が残らないほどに変形していく。レイジングハートが西洋剣(フルブーストしたか、カイザーブレードのような形状になっている)となっていく様はなのはBを思わず硬直させた。Bの方のレイジングハートも思わず「why!?」と声を発するほどの驚愕を露わにする。

「……へ?な、何それぇ〜!」

「これが私が得た力の一つ、ソードフォーム。お前は驚いてないで、とっとと行って、ヴィヴィオ助けてこい!」

「う、うん……だけど不思議だね。あなたとわたしは同じ『高町なのは』のはずなのに、こんなにも違うんだもの……」

「人間、環境次第でいくらでも変われるってことさ。ここはあたしが引き受ける!」

なのはAはフルブーストしたソードフォームのレイジングハートで俗に言う『勇者立ち』を見せる。妙にサマになっているが、それは安易に砲撃に頼ることを止めた彼女の選択でもあった。

――少女期に目の当たりにしたヒーロー達の剣戟に憧れ、その力を欲した末にモノにした。それが幼いころよりも完成したこのフォームであった。



「おおおおっ!」

空戦型のガジェット二型を大上段から斬り裂く。ガタイが大振りなため、取り回しは難しいが、彼女の膨大な魔力の賜物で切れ味はライブマンのファルコンセイバーに匹敵する。また、なのはAは兄の恭也から刺突をある程度教わっていたため、それで周りのガジェットを撃破していく。旋回半径をガジェットを踏み台にしたりして短縮し、機動戦に対応するあたりは彼女の応用力であった。






――フェイトAはまずはおなじみのハーケンフォームで吶喊する。ガンダムデスサイズヘルに影響されたか、これで雑魚を落としていくのが彼女の戦法の一つであった。ちなみにこの時の彼女のバリアジャケットのインパルスフォームは、形状こそフェイトBと比較しても、それほど違いはない。しかしAのほうが若干、少女期の面影が濃く残っている。

「突撃あるのみっ!」

トップスピードはBに若干劣るが、それでも十分にトップレベルのスピードは誇る。それによって道を開く。

(この世界のはやては上手くやっているようだが、不安はある。綾香さんがフォローに回るから大丈夫だとは思うが……)

はやてBの指揮は確かに管理局の教練と照らし合わせれば『模範的』ではある。だが、それはイレギュラーな出来事が起きれば脆さを露呈する脆いものでもある。

(ヴィヴィオが出てくるまではいいが、シャドームーンが出てくればRXさんでなければ太刀打ち出来ん……奴が出てこないのを祈るしかないな。もし、万が一、『ここ』のなのはが激昂してスターライトブレイカーで倒した場合に月光でも浴びれば……)

フェイトAはシャドームーンを畏れていた。それはRXと同格の『世紀王』である事、そして万が一、なのはBが死力を尽くして倒した際に月光を浴びてしまえば『月の石』の力でRX化してしまう可能性を危惧していたからでもあった。RX曰く、シャドームーンのパワーはRXとほぼ同格にまで向上しているという。

――光太郎さんと同格のパワーを持っているあいつなら、『私』や『なのは』の同時攻撃を凌いで致命傷を与えるのも容易なはず……援護に行くタイミングを見計らっておこう。

フェイトAは幸いな事に『遊軍』である。公式記録には残らないし、周りはこの世界の自分と思っている。それを最大限利用するために『フリ』もしつつ、執務官として振る舞った。







――スバルAはティアナB達と共にヘリに乗り込んで戦場へ舞い降りた。服装はバリアジャケットだ。見かけはこの世界のスバルとほぼ変わりないが、纏う雰囲気が違っていた。

「スバル、そっちのあんたは何してきたのよ……?」

「……色々あってね。戦って……傷ついて……だけど強くなれた。こっちのティアもそうだよ」

「あたしも……?」

「うん。多分、こっちのティアも強くなれるよ」


スバルAはティアナが辿った別の道を示唆する。『パンツじゃないから恥ずかしく〜』な経緯はさすがに言えない(写真を見せない限り信じないだろう)故、ぼかした。ティアナはキョトンとしながらもやがて、言葉の意味を悟ったらしく、赤面する。

「な、何よ!あんたらしくないわね」

「エリオ達を頼んだよ。アルト、ハッチ開けて」

「ええ!?いいの?この高度だと……」

「あたしを信じてって」

「わ、分かった」

「あんた、どーするつもり!?」

「先手必勝、奇襲だよ」

スバルAはティアナに笑いかけると、ヘリから自ら降下し、そのままスーパーライダー閃光キックの態勢に入り、ノーヴェ達と戦闘を開始した。それは仮面ライダーと同等の肉体を得たからこそ可能な芸当であった。高度は通常ならたとえ戦闘機人であっても、着地の衝撃で脚部フレームがへし折れるのは確実な高さである。だが、スバルAはもはや普通の戦闘機人ではなかった。

「スーゥパーァァァライダーァァ……閃光キィィィ――ック!」

――沖一也から伝授された赤心少林拳をばっちり再現した動きでライダーキックを放つスバルの姿に、残りの三人も、敵であるノーヴェ達も呆然としてしまう。そしてその威力にも。斜め上からぶちかましたキックはノーヴェの想像を超越した威力を見せた。

「な、何ぃぃぃ!?馬鹿な……ただの飛び蹴りがここまでの……!?」

ノーヴェは閃光キックの直撃でシールドごと右腕部をへし折られていく事に己が目を疑った。肉片が飛び散り、腕部の金属フレームがへし折られる異音が響く。激痛にノーヴェは顔をしかめ、涙声になっていく。

「て、てめええ……!よくも!……よくも!」

「悪いけどノーヴェ。あたしはあなたには用はない。退かないのなら倒すまでだ」

「なっ……てめえどうしてあたしの名前を!?」

「それをいう必要あるのかな?」

赤心少林拳の構えを取りながら言い放つその姿は、スバルかしらぬ威圧感を醸し出している。赤心少林拳玄海流の構えはシューティングアーツのそれとは異質ではあるが、スバルAがBとは『別人』である事を妙実に示す好例であった。




――スバルAの身体は救命目的とは言え、仮面ライダー達と同等の肉体に改造された。フレーム、動力源に至るまでが改造人間のそれに変えられたがため、外見は15歳で固定化され、パワーも仮面ライダー達と同等になるなどの副作用はあったが、仮面ライダースーパー1同様に末梢神経系に至るまでが移植され、改造されたボディに適応したため、気も扱える。その結果、ノーヴェを圧倒して然るべきポテンシャルを発揮できるのだ。スバルAはこの世界の姉を救うべく、拳を奮う。

――赤心少林拳の極意は守る事――

沖一也=仮面ライダースーパー1の言葉を胸に、スバルは戦いを開始した。



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