短編『ジェノサイド・ソウ・ヘブン』
(ドラえもん×多重クロス)



――ラ號は西暦2000年には完成に至っていたが、当時の日本政府には引き渡されず、数百年後の地球連邦軍がようやく手にすることが許されたものである。それは連邦軍の神宮寺大佐の先祖に当たる、『神宮寺八郎』大日本帝国海軍大佐が『戦後の日本政府と自衛隊にはラ號を扱う資格無し』と遺言を残した事もあり、自衛隊はラ號を得ることは無かった。これは戦後日本にあった『戦前日本の否定』という風潮のせいでもあり、日本連邦の結成まで、その傾向は続いた。これは戦前日本に限りなく近い扶桑を取り込んだ事による、『意識の変革』であった。緩やかな国家連合を組んだ以上、日本から扶桑への過剰な干渉は出来なくなる。これを危惧した左派勢力は『扶桑を日本に近づける!』というのを名目で、連邦結成条約の条文にケチをつけ、軍事力の大幅削減を叫んだが、削減したとしても、扶桑の1000万近い軍人の雇用をどうするのか?という現実問題に明確な回答を出せず、軍事についての無知ぶりを露呈した。内務省の検閲を形骸化させるという、陽の効果が唯一無二の功績であったと言えるが、殆どは、扶桑にとっては害悪とさえ言われるほどの悪手であり、日本での審議の段階で潰れた提案も多い。ラ號が22世紀まで封印されていたのは、この時の左派の扶桑海軍の戦艦部隊の陣容へのケチの付け方が原因であった――


――西暦2000年の野比家、居間――

食事を終え、のび太は未来との通信用も兼ねたタブレットをいじっていた。日本連邦結成前後の時間軸のニュース記事を閲覧してみると。

「ん?何々、2016年のニュースだ。『連邦結成の軍事的シンボルに戦艦は必要か?』か。本当、近代化されてるってのに、バカだなあ」

のび太でも分かるほど、扶桑の戦艦は大和型戦艦からはかなり近代化されているが、野党はその事実を知らずにつっこみを入れ、防衛省に写真付きで指摘されるという茶番をした日が存在する。それを報じた日本の保守系新聞(2016年時点)のネット記事を見て、呆れていた。内容は『現代戦に戦艦はものの役に立たないんだし、国民的人気のある大和以外は、全て解体したらどうか』という、野党議員の提案を防衛大臣が一笑に付す一幕があった事の記事である。流石に野党議員も、大和が日本一(戦後の事だが)有名な戦艦であるのは、宇宙戦艦ヤマトの効果で知っており、大和を象徴的に維持すればいいだろうとする、比較的マシな方な提案ではあった。しかし、防衛省担当者が大和型からの超近代化を説明すると押し黙った。宇宙戦艦ヤマトの技術で超改造が施されて、現在の核ミサイルでは沈むことがないという事実だ。自衛隊の『最新鋭イージス艦が玩具のような性能の超兵器を積み込んでいる』というセールストークは誇張も入っていたが、宇宙戦艦ヤマトの技術というインパクトが大きかった。政府と与党の暗黙の了解として、扶桑側には自分らの子孫たちである『23世紀』から介入が入っている事が知れ渡っている。その事が野党に初めて知れ渡ったのだ。

「ん、扶桑の大和の写真だ。坊ノ岬に沈んで、ヤマトになる実物との比較写真も載せてる」

大和(扶桑バージョン)はFRAMU形態であるため、副砲が撤去されたり、砲塔がショックカノン規格になっており、強制冷却ジャケットも装着され、長砲身であるなど、素人目にも分かる違いだらけである。また、前史と違い、パルスレーザー砲塔が対空砲の更なる強化として備え付けられており、最終時大和と似ているが、どこか違う艦容になっている。近代化がかなり強力に推し進められたため、素人目にもわかるはずなのだが、政治家は軍事に無知なため、砲塔が多い大和らを時代遅れと評したのだろう。2016年時点でのニュースの様子がどのようなものか気になる。

「何見てるの?」

「2016年のニュース。この時代のニュースは分かりきってるしね」

「それっていいの?」

「孫とか玄孫に会ってるから、その辺は気にしてないさ」

この日は、のび太と調の二人きりで家に居た。ウィッチ世界はダイ・アナザー・デイ作戦の事務処理や戦争に備えた準備に追われていたからだ。菅野が来るのは、立場的に大尉ながら、前線の飛行機屋であり、もっとも気楽な立場であるからでもある。

「あ、そうだ。明日は菅野大尉が来るって」

「大尉が?」

「ダイ・アナザー・デイ作戦の事後の事務処理には無縁だしね、大尉は」

「あの人、出世には興味がないって、師匠の記憶にあったっけ……」

「大尉は綾香さん似で、戦えればそれでいいって戦闘狂だから」

菅野は黒江の側近として、この二度目のやり直しでは認知され、若き日の若本の後継的地位をも担っていると評される。大佐が最終階級であり、実戦肌のウィッチであり続けた菅野。グランウィッチ化に伴い、リーネから芳佳のバディ枠を分捕り、『宮藤は俺のダチだ』と公言している。リーネでは今の芳佳のパートナーは勤まらない事もあり、芳佳は前史以来の縁である菅野と組んでいるのだが、ダイ・アナザー・デイ作戦の直後、リーネが『芳佳ちゃんは私のパートナーです!』と宣言し、菅野をドン引きさせていた。その際の黒江の記憶を共有しているためか、菅野には同情的な調。

「でも、リーネさんって、なんで芳佳さんに強い好意を?大尉相手になんて言おうか……」

「ああ、それ。僕も聞いただけなんだけど、部隊で浮いてたのを、芳佳さんがどうにかしてくれたからってのは、シャーリーさんが言ってた。君も切歌ちゃんと似たような……」

「き、切ちゃんは……か、か、家族だし!」


黒江の持つコミカルさもいつしか感染ったらしく、野比家来訪後の調は以前より外交的になり、コミカルさも見せるようになっていた。それに伴って、表情も豊かになっており、赤面した際の態度も、黒江の素によく似ている。同調で得た人間性が知らず知らず、調に新しい可能性を与えていた。その証拠がシュルシャガナのギアの上からエプロンをしたままであったのに気づき、慌てて外す姿である。

「あ、すっかり忘れてた……。でも、なんだか不思議。今までは長くても数時間だったし、リンカーが切れる寸前になると、バックファイアが一気に来てたんだ。それが、半日以上展開しても普段着と変わらなくなった。これが聖遺物を超える事なの?」

「そうさ。聖遺物とヒトに差があるのなら、それを超えればいい。ドラえもん達の親友テレカや、聖闘士達の聖衣みたいにね」

「それじゃ神聖衣は……人が神と同じ領域に至った証?」

「そうだけど、ちょっと違うね。ぼくもドラえもんの道具で神様経験したけど、案外神様って身近な目標に出来そうだな、って感じたよ。創世セットで二個は地球作ったし」

「あれ、まさか本当なの?」

「ああ。数年前の夏休みの自由研究にね」

のび太は調へ、生年月日の関係で、親がいないところでは『年上』として徹してた。創世セットで巻き起こった冒険のことを話す。

「あの時は傍観者に徹してたから、珍しい経験だったよ。だけど、人間が宗教戦争起こすのが理解できたよ。神様には神様なりに苦労がある。ゼウスもアテナも、きっと似たような苦労を神代からしてきただろうし」

「自由研究で、天地創造なんて贅沢すぎる……」

「ハリウッドのあの映画みたいな出来事もいくつか起こってたらしいとは、しずかちゃんの談。僕は日本にあたる場所にいたから、欧州はしずかちゃんの担当」

「バベルの塔……私達の世界では、それで先史文明は破滅に突き進んでいったの。だからそのあたりは複雑なんだ」

シンフォギア世界では、統一言語を失った先史文明が殺し合って滅亡し、遺されたのがバビロニアの宝物庫であり、現在でそれに対抗するための手段として生まれた『兵器』がシンフォギアである。その為、黒江のように、純粋な平和利用に使用できるほどにギアを掌握し、制御できるのが羨ましいらしい。

「歌はね。強力な兵器にもなるし、平和をもたらす。リン・ミンメイさんの『伝説』や、『シャロン・アップル』の悪夢、FireBomberのプロトデビルン封印。大佐の記憶で知ってるでしょ?だから、『歌いたい調』があるなら、それを歌うんだ。まぁ、ジャイアンみたいに、音波兵器になるのもいるけど、あいつのことは忘れて。その気持ちにきっと応えてくれるさ」

「のび太君……ッ!」

のび太は的を射ている一言を言ってのけた。のび太はその優しさゆえに、周囲の好感を集め、慕われる。故障したドラえもんのために心から泣き、97年頃には、ロボット裁判所の裁判で無罪判決を勝ち取れるほどに、のび太は心優しい事が確定している。『優しさが人を救うとは限らない』とは、マリーダ・クルスの言葉だが、少なくとも皆と異なる道へ歩き出し、孤独感を感じていた調には何よりの暖かさとなった。感極まって、のび太に抱きつく調。心に感じていた、切歌やマリアなどの仲間と離れ離れになったことで抱いた空虚感が一気に溶けていくような暖かさをのび太に感じる。それほどにのび太は不思議な魅力を備えていた。のび太の暖かさに勇気をもらった調は、シンフォギアの完全掌握に成功する。ギアが奏でるメロディが『制御された』モノになっているのが完全掌握の条件である。一曲目は黒江が好んで聞いている、『ANGEL NIGHT〜天使のいる場所〜』だった。黒江がよく口ずさんでおり、感染ったのだ。(ちなみに、黒江は『一面の優しさは必ずしも向けた本人の為になるとは限らない。厳しく接する事も優しさからという事もある』と、ダイ・アナザー・デイ作戦の直後、後輩らに告げており、坂本も同意している。生まれ持った境遇から、厳しさではなく、無償の優しさを求めていた調には、のび太の対応がそれに合致していたのだ。のび太は優しさ、ドラえもんは厳しさの観点から、彼女を導く役目を担っていた)

「〜〜〜♪」

黒江が好んで聞いて、口ずさんでいるため、歌詞は自然と浮かんできた。歌っている時の調の顔はどこか晴れ晴れとしており、元の世界や古代ベルカでの事を吹っ切ったらしかった。本来の流れであれば、彼女の『先輩』になるはずだった雪音クリスのような茶目っ気のある仕草も見せ、彼女がもし、装者にならず、普通の女の子として生きたなら、こうなっただろうと思わせる姿を垣間見せた。

「んじゃ、次は僕が歌うよ。カラオケセット用意してたんだ」

「用意してたんだ」

「ドラえもんからスペアポケットはもらってるしね」

のび太は、『FLY AWAY』(TRY AGAINの原曲となった楽曲。バサラはこの曲をアレンジし、歌詞を変える事で『TRY AGAIN』を作った)を歌う。のび太にしては心憎いセレクトだった。

「〜〜〜♪」

(これって、師匠が好きなFireBomberの……。だけど、歌詞とアレンジが違う?)

のび太は歌い上げる。今の調に送る歌を。人生の先達として、友人としてできる最大のプレゼントを。のび太の優しい歌声もあり、心にジーンときたのか、胸に熱いものを感じた。歌詞をトチったが、歌いきった。そのお返しとして、調が歌ったのは『LEVEL5 -judgelight-』だった。これは黒江が御坂美琴から伝えられた歌で、自分が世を去った後の常盤台で伝えられていた曲の一つだとの事。。美琴は学園都市に愛想を尽かしてはいたが、後の時代に、自分のことを暗示している曲が伝えられていた事で狂気に堕ちる危機を脱している。歌詞は美琴が学園都市で感じていた絆を思わせるモノで、少なくとも、2030年代には既に存在したらしい。それだけ、常盤台在学中の御坂美琴は常盤台の支柱であった証であり、美琴の在学中の期間が常盤台中学の絶頂期であった事実の証明だった。その背景も汲み取って、調は決意を込めて歌った。歌詞が今の自分にもオーバーラップするからだろう。

「〜〜〜♪」(美琴さん、か。学園都市最強の一角とされてたけど、能力がノーマルの究極系に等しいから、SF色が濃い能力者には無力なのを気にしてた。だけど、守りたいもののために戦った気持ちに嘘偽りはない。自分の力が及ばない事に絶望もしてた……。だけど、必死に食らいつこうとしてた。私もそんな強さを持ちたい……!)

――美琴は地力が遥か上に行ってしまっていた、上条当麻に追いつこうと努力を重ね、暗部に落ちそうになるフラグもら乱立させつつ、なんとか正気に踏みとどまった。これは不信を抱いても、上条当麻に訪れる未来を比較的に早期に知った事、未来に希望はまだある事実を知った事で、時間軸的に、当麻が関わらせようとはしていない『魔術』関連の全てを知り、自分が黒江と共鳴したように、美琴はカールスラント空軍の次期空軍総監『グンドュラ・ラル』と共鳴し、魔法と縁がないわけでも無くなった事から、結果として、俗に言う『闇落ち』フラグを回避すると同時に、ラルの冷静さと駆け引きの上手さを身につけた。調も黒江と共鳴・同調する事により、感情豊かさと、黒江の『強さ』と『優しさ』を引き継いだ。それが共鳴/同調現象である。これは天命が同じ魂を持っている者、あるいは存在の位がより大きい者がある存在に成り代わった時に起きる現象で、お互いに何処かで影響し合う。美琴とラル、黒江と調のように、互いのとある側面がアイデンティティを侵さない範囲で影響を及ぼし合ったという点では、現象のいい見本である――


「のび太君、ありがとう…。ギアを完全に掌握できたのは、のび太君のおかげだよ」

のび太の一言が、シュルシャガナの完全掌握に繋がり、戦闘目的以外にシンフォギアを使えるようになった事へ感謝を述べる。超常の力であるシンフォギアを『完全制御する』には、青銅聖闘士以上に到達する必要があるという事実も併せて示された。元々が第二種適合者(リンカーによる後天的適合者)だった調が響ら正規適合者と同じ領域に立つには、人を超える『奇跡』が必要であることでもあった。

「いや、僕は手助けをしただけだよ。君が自分の殻を突き破る、ね。歌は希望にもなるし、絶望を振りまく破壊の権化にもなる。プロトカルチャーが残した『鳥の人』みたいな破壊、シャロン・アップルみたいな恐怖。君は何を歌いたいんだい?」

「私は希望になりたい。私だって、世が世なら『巫女』になってたはずだし、師匠が成り代わってくれなきゃ、今頃はフィーネの器に成り下がってたかもしれない。師匠がフロンティア事変と魔法少女事変を戦ってくれたのなら……、私はリン・ミンメイさんや、FireBomberのように――」

「その意気だ」

未来世界で希望をもたらし、のび太が引き合いに出し、調に『希望の光』を見せた伝説の歌姫『リン・ミンメイ』。彼女はゼントラーディ人にプロトカルチャー時代の遺伝子の記憶を呼び覚ます奇跡を起こし、ゼントラーディとの和解をもたらした。そのミステリアスな船団ごとの失踪も、彼女の伝説に華を添えている。地球でのサヨナラライブで最後に歌った『天使の絵の具』の映像は、正に歌姫に相応しいもので、23世紀以後の時代の女性歌手全ての憧れになっている。のび太が自分と同時代の歌手を差し置いて、彼女を引き合いに出したのは、『戦争を歌で終わらせた』功績によるものだろう。それはシンフォギア装者でさえ成し得ていない(雪音クリスが聞いたら血の涙を流すだろう)偉業。希望になりたいという仄かな願い。それを聖闘士なり、変則的に正規適合者に昇格してでも勝ち取りたいのだとのび太に告げる。のび太の偽善ではない真の『優しさ』が彼女に心を開かしたのだ。

「僕はね。自分が正義かどうかは解らない、でも、自分が正しいと思った事をする正義の味方で居たい。それが13年後くらいに生まれてくる僕の倅――ノビスケ――に誇れる事なんだ」

「分かるよ。師匠も、仮面ライダーBLACKRXや仮面ライダーストロンガーの背中を追いかけて、彼らみたいになりたくて、黄金聖闘士になったんだもの。今からでも間に合うよね――?」

「間に合うさ。その気持ちがあれば、未来を阻むモノはないさ」

のび太は年長者として、調を導く。ドラえもんが厳しさを担当するならば、のび太は優しさの側面から。彼女は黒江と出会い、同調/共鳴し、更にドラえもん達を出会うことで、翼を得ていく。たとえ、離れ離れになっても、片翼になっても飛べる。奇しくも、その境遇は、パートナーだった天羽奏を失いつつも、立花響、雪音クリスと言った仲間を得る事で、自らの羽を広げていった風鳴翼とよく似ていた。




――数時間後、お互いに風呂に入り、床についたが、家に二人きりでは寂しいと言うので、のび太は居間で添い寝をしてやった。(黒江からの言いつけにより、ギアは風呂に入った後に展開し直した)――

――時間が経過して、夜中の二時頃――

「おお、こりゃ……」

野比家に夜中についた菅野は、ものすごい光景を箒、それとタカオ(ついてきた)と共に目撃した。居間を見てみると、いつもの寝相の悪さで布団を蹴っ飛ばしているのび太の右腕を、満足そうな顔で手を握りながら、調がそばで寝ていた。シンフォギア姿なのはある意味ではシュールだが、世の男子が血の涙を流しそうな場面である。

「見ろよ、お前ら。のび太の奴……」

「世の男子が血の涙を流しそうな、美味しい場面ではないか」

「あの子も天然でスケコマシなのかしらね。起こすのは野暮だから、毛布をかけ直しておくわ。アタシなら、アンタ達と違って足音とか立てないで近寄れるし」

タカオが二人に布団をかけ直す。調は寝る前の事が嬉しかったのか、満足そうな寝顔だった。のび太の手を握って寝ているのは、おそらく無意識にしたのだろうが、のび太への好感によるものだろう。朝起きたらどういう顔を浮かべるのか、ある意味では楽しみな構図だ。

「直して来たわ」

「ご苦労さん」

「どうする?」

「二階へ退散しよう」

三人は二階へ退散し、こちらも床についた。翌朝、調が目を覚ますと、のび太の手を握って寝ていた事に気づき、激しく赤面しながら手を離す。

「は、はわわ……!も、もしかして、わ、私、私!?」

ギャグ漫画のような渦巻き模様の目になりながら、軽くパニックになる。そこへ。

「お、起きたみたいね」

「タ、タカオさん!?来てたんですか?」

「夜中についたの。朝食は作ったから、のび太を起こして」

「は、はい……」

エプロン姿のタカオ。青髪のポニーテール姿が映える。元々の容姿では、妹の愛宕に食われ気味なのを気にしているので、艦娘では珍しく、メンタルモデルとしての姿で通している。艦長経験者の猪口敏平と南雲忠一曰く、『偉いべっぴんさんになった』との事。

「あ、あの、料理は貴方が?」

「箒はまだしも、無頓着な直枝にはさせられないでしょ?アタシが一番マシだから」

「確かに」

頷く。料理の腕では、三人でタカオが一番マシであるからだ。タカオは妹の愛宕への対抗心から、『タカオ』としている事が多いが、これは自身のキャラが薄いのを大いに気にしての事で、確固たるキャラクターを持つタカオであったほうが目立つから、という考えもあった。



――こうして、野比家の朝は始まってゆく。箒は町内のカルチャースクールの剣道で体を動かしに行き、のび太は小学校へ。菅野も買い物へ行った。調も聖遺物を超えるというのはどういうことか気になっていたので、図書館に行き、伝説関連の本を漁りに向かった。そこまでにはギアのローラーを用いた。昭和の風情を感じさせるススキヶ原の初夏のある日のことだった――



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