短編『ジェノサイド・ソウ・ヘブン』
(ドラえもん×多重クロス)



――試合はなのはがアステノイド・キャノン、44マグナム(スクエアとも)を引っさげて参戦した事でジャイアンズが勝利をもぎ取った。誰も打てなかったからだ。アステノイド・キャノンの超パワーは手がつけられず、なのはが自分自身でホームランも打ち、調もガイちゃんの仇討ちとばかりに最後の打席でかっ飛ばしたのだ。最終的なスコアは七対五であった。勝利に沸くジャイアンズ。そこに某飲料水球団のスカウトがベンチにやってきて、『女の子四人、私が推薦するから、四年後のソフトボール五輪代表にならないか?と言ってきたのだ。なのはと箒は『仕事の都合』と言って断ったが、逆に調とガイちゃんは了承し、2004年と2008年の連覇に貢献したという。なのはと箒は、軍務などの都合で五輪の期間を留守にできないという都合があったからだが、ガイちゃんと調は『協力者』のカテゴリであったので、予定が空いていたからだ。


――試合終了後、帰宅するのび太達。(箒はアガートラームを展開し直していた)――

「しかし、まさかウィッチがいたとは」

「そもそも、ウィッチ世界と交わる以前から、ウィッチの存在は確認されてましたからね。戦中日本は知っていたけど、戦後日本は知らないらしいですね」

「何故だ?」

「多分、軍隊が無くなった時にその関連の書類は燃やしたんだろうし、大空襲で伝承の巻物は焼けたんでしょう。それで戦後は忘れ去られたんでしょう。それで、50年代の頃にはアメリカがキャ○テン・アメリカを作ろうとしたのと混合されてたみたいだし」

「ウィッチの軍事利用はできずじまいか」

「ストライカーの理論が伝わるの、あと5年は後の事だし、アメリカもその実験には失敗したらしいですから」

のび太がいうのは、戦中のアメリカがマンハッタン計画に並行して進行させていた『スーパーソルジャー計画』のことだ。アメリカはドイツが吸血鬼やヴェアヴォルフを戦力化しようとしたり、日本がウィッチの軍事利用を企てていたのを察知しており、そのカウンターとなるものを科学の力で生み出そうとしたのだ。日本が超人機計画を進行させていたのを名目に、実験はかなりの段階に進んでいた。のび太が掴んだ情報は一部に齟齬があり、実際には幾多の犠牲の果てに、その成功体が一人だけおり、戦線に投入されようとした矢先、日本が降伏する1945年の8月15日になってしまったために、計画が明るみになるのを恐れたトルーマンの指令で、何処かでコールドスリープさせられたのが真相だ。彼は『実在するアメリカンヒーロー』と言える存在だが、彼が姿を現すのは23世紀を迎えた後の事。ガトランティス戦役で復活した際、『胸にSマークの宇宙人ヒーロー』が地球の敵になるのを恐れた国防総省が発掘したのが『自分』であった事を告白した。Sマークのヒーローは23世紀には生存は不明であるが、彼の証言から『ガトランティスに滅ぼされた星の生き残りであること、アイデンティティが統合戦争終戦前までの米国人のそれであったので、日本と英国主体の地球連邦を信用していない面がある』ということが分かる。これは育ての親達の家の片方が統合戦争の敗戦で苦杯を嘗めた家柄(統合戦争では政権派の軍人や政治家を輩出していた)であった事が由来だ。彼が23世紀に生きる人物であるのなら、キャプテン・アメリカの実験の背景と矛盾しているが、彼が自分で起こしたタイムスリップのせいであると推測される。

「ただ、これはグレードがちょっと落ちる機密書類での記述ですから、本当は成功したかもしれません」

「成功していたのなら、何故誤魔化す?」

「計画が成功したのが遅すぎたのかも。日本が負けたのは、45年の8月15日。この日に成功したのなら、トルーマンが大統領選を控えてるから、非人道的な計画の発覚を恐れて、コールドスリープさせている可能性は充分にある」

「それは酷いよ、実験に耐えて、成功したら用済みなんて……」

「これが戦後の政治ってもんだよ。日本も自衛隊関連で旧軍人のことで揉めたからね」

戦後に、戦中の遺物は用済みとして処分された。これは連合国も例外ではない。スーパーソルジャー計画は闇に葬られ、彼のコールドスリープを以て、歴史の闇に消えたが、プロパガンダの漫画が定着した事で、伝説となった。戦後、日本に仮面ライダー達を皮切りに、次々とスーパーヒーローが生誕していった事は、アメリカの対抗欲を刺激させたが、暗部の露出を恐れた国防総省の反対で、彼の復活は見送られている。その結果、スーパーヒーローの聖地は日本という事になっており、歴代仮面ライダーやキカイダー兄弟、スーパー戦隊などが世界を守護していたため、アメリカ政府としては苦々しい感情を国防総省へ抱いており、これが統合戦争での敗北の遠因である。

「ただ、アメリカ。戦後のエージェントにどうも、ドイツや日本の研究を接収して独自に発達させた技術を冷戦中の頃に使ってたけど、ゴルゴほどの超人は作れなかったとか聞いたな」

「な、何それ!?」

「ゴルゴ13は時期によって、当人か、その後を継いだ彼のメモリークローンかに分かれるんだ。初代の出自は諸説あるけど、ロマノフ王朝の血を受け継ぐ、ロシア王位請求者の器たる男、あるいは2.26事件の青年将校の息子の一人だったとかというのが有力な説さ」

デューク東郷はいつの時代も35〜40代ほどの壮年の姿である。その理由は、90年代頃から、一定の年数でメモリークローンが役目を引き継いでいたからであり、そのメモリークローン製造に使われていた遺伝子に日本人の遺伝子が含まれていた事から、少なくとも日系であるのは確かだ。問題はもう片方の遺伝子であるが、ロシア系の遺伝子であることが有力視されている。その事から、ゴルゴ13(初代)であると推測されるのは、『グレゴリー・皇士・東郷・ロマノフ(ロマノフ王朝皇帝一家最後の生き残りの娘の子)』の後身か、『五島貴之』(2.26事件の青年将校の息子の一人で、母がロマノフ王朝の出)の二人のいずれかであろうと思われる。

「どっちの線でも、ロシア系の血は入ってる。あの人と戦って生き延びたのは、大人のぼくくらいさ」

のび太が成人する頃には、ゴルゴは三代目に代替わりしていたものの、のび太は戦って生還に成功し、裏社会でも一目置かれる存在になる。ノビスケを設けた後の話だ。のび太の自慢のタネがこの逸話だ。

「しかしだ、お前。何故、銃を持つと動きが良くなるんだ?普段は跳び箱の五段も飛べんというのに」

「リミッターカットみたいなもんですよ。後で筋肉痛や肉離れで動けなくなるし」

「う〜む……」

箒は納得がいかないようだ。実際、のび太は潜在能力が解放さえされれば、デューク東郷も一目置くほどの身体能力と頭脳を発揮し、この時点でも、海底鬼岩城の鉄騎隊軍団と渡り合って、五体満足で生還するほどの身体能力を持つ。その事は知っているので、のび太のリミッターカットの道具は銃なのは分かるのだが。

「でも、のび太君の咄嗟の判断力は凄いと思います。実戦を経験してきたつもりだけど、自然と体は動きませんし」

「それがプロって奴だよ。プロのハンターはいつでも銃の引き金に指をかけてるっーし、のび太は天性の才能があるんだよ。普段の生活だと分からないけど」

調とガイちゃんものび太の才能を高く評価しているようだ。のび太は戦時には活躍できるが、平時では才能を持て余すタイプの人間なのだ。

「そう言えば、のび太くん。武器は普段、何処にしまってるの?」

「机の何段目かの引き出し。ドラミちゃんに見つかると麻酔弾にされちゃうから、ダミーを置いてるんだ」

「ドラミちゃん、そういうのはいらん気づかいするしね」

「前、なのはちゃん用にガバメント置いといたら、ドラミちゃんから大目玉食らったしね。麻酔弾は効かない相手がいるから好きじゃないんだよね」

ドラミに、なのはに渡すつもりのガバメントが見つかり、大目玉を食らった挙句に、弾を没収された事がある。頼まれてストックしているものだとドラえもんが諌めたことで銃の没収は免れたが、弾はドリーム弾にされてしまった事がある事から、実弾は別の場所に置いている。ドラミは生真面目なところがあるので、付き合いにくいとのび太は言う。


――ドラミはロボット学校歴代最高の秀才であるが、それが災いし、有事には弱い。第三者として介入した『魔界大冒険』と『パラレル西遊記』では機転が効くところを見せたが、自分が当事者の場合は判断力が鈍る。のび太はそこを知っているため、皆にこう言った――

「銃弾だって道具だから、使い方次第で人が死ぬっていうのは包丁とかと変わらないよ。 使い方次第なんだよ。シンフォギアだって、聖衣だって、道具であるのには変わりないしね。ウチのママは明日に帰ってくるはずだし、ドラえもんが今日には帰るはずだ。タカオさんに作ってもらうのも悪いし、『グルメテーブルかけ』でも出してもらって、パーッと行こう。……あ、タカオさんですか?ドラえもん、帰ってきてます?」

さっそく、家に電話してドラえもんの帰宅を聞く。グルメテーブルかけのことを話題にする。

「えー、おさんどん楽しいのにー!」

「まぁまぁ。間宮さんと伊良湖さんのアイスおごりますから」

「決まりね」

これである。タカオは変身していても、間宮の菓子やアイスには弱い。のび太はそこを攻める。間宮の甘味類は主に艦娘が野比家へのお中元として送ってくる。特に長門がお中元として羊羹を送ってくる。ある日、玉子がのび助の会社の会長の接待のために羊羹を出したところ、元海軍軍人の経歴を持つ会長は、感動のあまり『野比君、これは儂が若い頃に食っとった間宮の羊羹じゃよ!!』と大喜びしたというエピソードもある。それを送った長門は2000年代半ばの国交成立前にも、『長門綾音』という偽名を用いて、野比家に滞在した事がある。長門や大和は偽名がすぐに思い浮かぶ方であるため、国交成立前の日本に度々、遊びに来ていた。(因みに、タカオは見かけが日本人には見えないので、『親が日本人』という偽装プロフィールを考えてあるとのこと)

「これでよし。タカオさんから伝言。……ドラえもんの奴、ロンド・ベルの慰安旅行企画に駆り出されたらしくて、天の川鉄道の観光列車の切符に並んでたみたい」

「団体で旅行するのに?」

「23世紀で頼んだわけじゃなくて、自分の時代で頼んだからだって。23世紀で頼めばいいのに」

ドラえもんは慰安旅行の幹事を引き受けたはいいが、なんと自分の時代の天の川鉄道で切符に並んでいた。ロンド・ベルが有事即応部隊であるため、23世紀では緊急呼び出しをくらうからとドラえもんが考えたからだ。

「23世紀だと、緊急呼び出しあるからなー。それがあっての事だと思うよ。でも、ドラえもん。よく並んでられるなー」

「あいつがアレに並ぶの二度目だからね、ガイちゃん」

ドラえもんは鉄道オタクではないのだが、天の川鉄道はヤドリ事件の折にドラえもんらに恩義があり、ドラえもんが切符を買いに来たという事が分かると、ドラえもんの紹介という事で、代金を割引してくれ、更にロンド・ベルの全員分の客室を確保してくれたという。(連邦軍は部隊単位での慰安旅行の文化が日本からの流れで存在しており、軍隊としては珍しいアットホームな文化がある)そのため、機動兵器中隊や当直規模での慰安旅行を交代で行うことを通告している(シナノ単艦だけでも、有に1500人は乗組員がいる。機動兵器部隊のパイロットだけで250人以上いるので、ドラえもん達はその中でも花形である、アムロ配下の中隊に身を置いている)。

「あたしら、一応、アムロさん配下の中隊にいる事になってんだっけ?」

「ロンド・ベルの中でもとびっきりに強い中隊だからな。特別編成中隊さ。大隊規模だし」

なのはやガイちゃん達は、ロンド・ベルの中でも最強格の中隊に属している。ガイちゃんは未来世界に移住し、連邦軍に入隊している。大空魔竜ガイキングの化身であるので、宇宙に生身で出られるというので、ロボットガールズチームTを誘い、ロンド・ベルに中尉待遇で在籍している。ZEROの転生であるZちゃんとはライバル関係である。親友の黒江(ZEROは黒江達を『少なくとも三人は冥土に送っている』)の事もあり、Zちゃんとは喧嘩してばかりである。ZちゃんはZEROとしての記憶は殆ど持ってはいないが、世界をいくつも滅ぼした事に罪悪感があるあたり、ZEROに僅かに残っていた善の理性が主体になって生まれた存在であるのが分かる。そのため、ガイちゃんと黒江はZちゃんをしつける事に心血を注いでいる。Zちゃんは最終時のZの能力を持っているが、トリプル、ザ・グレートの変身能力を持つガイちゃんが抑え役になっている。また、黒江とガイちゃんが雷で制裁を加えた影響で、サンダー系の攻撃を苦手にしており、それが抑止力になっている。

「クロガネ頭をしつけないといけなくてさ、のび太。ZEROに目覚められたら厄介だしなー。徹底的にしつけないと」

「ZEROに目覚めるのは、やめてもらいたいですからね」

「クロガネ頭の馬鹿なところがアレなら、アレがでないようにしないとなぁ。第一、どうしてあんなのが…」

「たぶん、甲児さんのどこかに『マジンガーZが忘れ去られる』事への恐怖があって、その恐怖から逃れようとしたZの悪の部分が誇大化して、どこかの世界の甲児さんを取り込んだのがZEROなんですよ。あの作戦の時、別の甲児さんは倒される事を望んでたって」

「それは言ってたなぁ……」

ガイちゃんはZちゃんにあるであろうZEROとしての側面の目覚めを恐れているらしかった。ZEROになれば、『檻から放たれた獰猛な肉食恐竜』と形容すべき状況になるのは目に見えており、それを抑制せんとしているのが分かる。

「ZEROじゃなく、カイザーに目覚めさせたら?」

「そっちにいくように仕込んでんだけどなぁ。どうも思考がZERO寄りでさ」

ZEROから生まれた存在であるが故、Zちゃんを『神を超え、悪魔も倒す』真の最強の魔神に目覚めさせるのは一苦労であり、圭子もレヴィの姿と言葉づかいで『Zよぉ、てめぇ自分勝手して敵を作りまくるのと義務にちょっと付け足し程度の労力で皆に好かれるの、どっちが得だと思うよ?お前は気儘に敵を作ってるみてーだけどそのうち甲児に見捨てられてもしらねーぞ?』と脅している。なお、圭子のこれはインパクトがあったようで、Zちゃんは圭子を『レヴィの姉御』と呼んでいる。圭子もレヴィの姿でいる事が多くなったため、『トゥーハンド』と呼ばれるのを好んでいる。レヴィの姿でいる事は『普段の姿じゃ世間体でできないことをやれる』という事で、中国系アメリカ人『レベッカ・リー』(レヴィの本名)を咄嗟にのび太の両親の前で名乗った事もある。また、調に銃を仕込むときも変身した状態で仕込んでいるため、ベレッタを護身用に渡していたりする。

「お、思い出した。調、後でのび太に銃を仕込んでもらえ。地下格納庫にシューティングレンジを作ったそうだから。綾香さんから引き継いだスキルを『死にスキル』にしとくのはもったいないぞ?」

「わかりました」

なのはが言う。のび太とドラえもんがトレーニング用にシューティングレンジを設けたと。拳銃、ライフル、散弾銃などに対応できる設備になっており、黒江から銃火器の知識を引き継いだが、体に覚えさせてはいないため、それを完全に使えるようにしろと言うことだ。本来、銃火器はシンフォギア装者では、雪音クリスの領分だが、成り代わっていた際の黒江はクリスに対し、VF-11Bのガンポッドを空中元素固定で形成し、彼女のミサイルの弾幕を迎撃し、一泡吹かせた事がある。その際にはバルキリーダンスも披露したため、クリスを完全に翻弄していた。また、扶桑軍仕込みの銃剣道でビビらせていた。

(そう言えば、師匠。クリス先輩にバヨネット付きのガンポッドでミサイル迎撃して、銃剣戦闘でもびびらせたなんて言ってたなぁ……。それで手加減なんだよね)

フロンティア事変で第三勢力として振る舞っていた当時、黒江はクリス、翼、響の三者をそれぞれ戦慄させる戦闘力を垣間見せた。クリスは銃剣戦闘で語尾が震えるほどビビったことは知られたくないらしいし、翼はエクスカリバーを一回、牙突を数回食らっているし、唯一、黒江が手加減したとは言え、響がまともな戦闘を行い、ローリングクラッシュをまともに受けても立ち上がろうとした。これが響が格闘技のスキルを持っていたがため、黒江(響は当時、調と認識していたが)にまともに抵抗し得たからである。黒江が本格的にシンフォギア世界で活動し始め、『シュルシャガナの少女』として、響達側に認識された頃の話だ。響は成り代わり前の調と相対した経験があるため、この頃には既に薄々と成り代わりに気づいていた。戦闘スタイルがその時と真逆である上、ギアのギミックも無しで三人全員を圧倒したからだ。(切歌は精神的に不安定になった影響で、マリアが目撃したそれを信じず、後に暴走してしまっている)

(切ちゃんには悪いことしたな…。イガリマの防御無視はエクスカリバーには通じないし、ましてや師匠は黄金聖闘士。切ちゃんがいくら絶唱を使っても、本当ならギアごと切り裂かれても当然の実力差。切ちゃん、本当なら成り代わりに気づいていて当然のはずなのに)

調は『背丈が違う差異』があったのに、成り代わりを察することが出来なかった切歌に落胆していた。黒江が叱る様子を第三者として『回想』すると、マリアの言葉にも耳を貸さず、絶唱を使い、黒江を葬ろうとした切歌に狂気を感じざるを得なかった。

『んなナマクラで魂ごと切り裂こうもんなら、フィーネだけでなくて、基の魂まで砕いちまうぞ!このバカヤロウが!!』

その光景が切歌への長年の『愛』(家族愛)に冷や水を浴びせた形ととなり、この時点では距離を置くようになり、のび太や黒江らへ親愛を見せるようになっている。切歌は成り代わりの真実を知ってからは、調の愛を取り戻そうと躍起になっていて、デザリアム戦役直前のこの段階ではギリシャで修行中の身であり、聖闘士になることで罪滅ぼしをせんとしていた。それが切歌なりの償いだろう。また、調と黒江の感応で、結果として自分の担うべきポジションを失った事も意識しており、調が親愛を見せるヴィヴィオ(主のクローン)、のび太(不在だった兄貴分ポジション)に対するライバル意識を持つ。調はヴィヴィオに対しては、オリジナルに当たる人物のオリヴィエの騎士であった事から、『臣下』として接しているし、のび太には『兄』としての姿を見、のび太の優しさにときめいたりしている。そのときめきの発露がこの日の今朝の『のび太の手を握って寝ていた』事だろう。

「どうした、調」

「い、いえ。なんでもないです。でも、箒さんの声を聞くと、何故か安心するんです。とても」

「ドラえもん曰く、マリアと私は同じ過去生を持つ同一の魂の転生体らしいからな。それもあるんだろうな。そんなに似てるか?」

「はい。私でも聞き分けにくいくらいに」

「う〜む」

「箒さん。私に付き合って、アガートラームを展開したままにしなくても」

「何、私も黄金聖闘士の端くれ。修行の一環と思えば、なんてことはないさ。それにガンクレイジーなケイさんを思えば…」

圭子がレヴィの姿でいる事を引き合いに出し、調に付き合って、アガートラームを展開したままでいると明言した箒。それを微笑ましく見ているなのは、のび太、ガイちゃんの三者。野比家に戻ると、ドラミとドラえもんが出迎え、件の圭子がレヴィの姿で酒を煽っていた。

「おう。帰ってきたか」

「ケイさん……いえ、レヴィさん。何してるんです、夕方から」

「お前らがいないから、ボトル開けてたところだ」

圭子としては酒を控えているが、レヴィとしては大酒飲みであるため、のび太達が帰って来た時にはボトルを半分開けていた。それでいて、酔う素振りを見せないあたり、マルセイユに付き合っていたおかげだろう。

「大丈夫ですか?」

「ボトル半分くれーで酔うほどヤワじゃねーって」

自然とレヴィになりきっている圭子。黒江と違い、演技にちょっとした凡ミスがないためもあり、どこまでが演技かわからない。むしろ今の言葉づかいが地ではないかと思わせるような素振りも見せている。

「ドラえもんとドラミ、それとタカオが準備を終えるまで、TVでも見てようぜ?のび太の親御さん達ももうじき戻るそうだ。お前らの服装はあたしがどうにか説明しとくから。ナオエは散歩中だ」

「は、はぁ」

のび太の両親が帰宅したのはそれから4時間後の夜八時頃。圭子はレヴィとして両親に挨拶をし、調はレヴィと菅野から『新入り』という形で紹介され、これまでの人生で一番に緊張したという。



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