短編『ジェノサイド・ソウ・ヘブン』
(ドラえもん×多重クロス)



――2016年に出来た国家連合『日本連邦』。その成立には2000年時点の日本政府との密約が大きく関わっており、ウィッチ世界で存命だった『小泉又次郎』議員と、日本にいた彼の孫である当時の首相とが交わした密約が始まりだった。その密約が連邦結成という形で具現化し始めるのは、次代の首相となり、扶桑との国交が公になった2006年の事。当時の時点で日本は、深刻化する少子高齢化社会やバブル崩壊で行き詰まった経済の打開策を見いだせず、かといって近隣国を刺激するような再軍備は国民が許さない。そこで、扶桑が有していた大日本帝国以上の強大な軍事力とふんだんにいる若者の活力に活路を見出し、2006年から数年かけて最終合意を待つのみになったが、2009年の政権交代で『一から精査のし直しと軍備条項の見直し』を鳩山一郎の孫がぶちまけたせいで混乱に陥り、それの尻ぬぐいを彼より二代後の首相が行う羽目となった。その首相は結局、扶桑での暴動に恐れをなし、扶桑の軍備に手を付ける事を取りやめたので、扶桑三軍は縮小も解体もされず、自衛隊と共存共栄する事になった。これは三軍を自衛隊に取り込めば、米露に危険視されるし、かと言って、日本に1000万人近い軍人を解雇して、その人数を養えるだけの財力はとてもないし、陸海空の膨大な装備を全て処分する金もないし、自衛隊と保安庁には、ウラジオから南洋を守護できるだけの兵力(人数)と装備もない。鳩山一郎が孫を咎めたのはこの点だ。変遷は鳩山一郎が怒ったために手直しさせた案が、『三軍を時間をかけて縮小させ、自衛隊に近い規模にして統合させる』というものだ。→『他国の要望により、軍は縮小しつつも一定の規模で据え置き、やがて統合させる』→『陸軍を大幅に減らし、空海を主体にした構成に改革して据え置き』→暴動により、『三軍はそのまま、ただし自衛隊と統合運用するための機関を置く』であった。この間に三人は首相が代わっている。連邦結成は、憲法9条二項を空文化するか、文章を直せば、日本は憲法を大幅改正せずに列強としての軍事力を取り戻せることを意味する。『日本連邦軍』が双方の統合運用時の組織とされれば、日本は労せず大日本帝国時代の軍事力を再び手中に収められる。そのための準備として、扶桑の軍学校の改組や青年将校らの再教育が徹底された――


――2016年にいた黒江は将補に昇進したが、それでも前線勤務だった。これは2009年度の通達の名残りであり、黒江は将補、次いで将の階級に登り詰めたものの、本来であれば将補の時点で基地司令か方面隊司令級の職責であるはずが、部隊長級のパイロットであった。これは背広組が『自衛隊の重要ポストは生え抜き自衛官のもので、旧軍人の栄達の引換券ではない』と駄々をこねたためだ。しかしながら、扶桑華族に列せられた黒江を身分不相応の役職にしておくのは大問題であるので、黒江には役職を超えた権限が特例措置として与えられていた。これは扶桑からの抗議を恐れた防衛省の防衛措置だった。自衛隊のナンバー1である航空幕僚長に選定されて然るべき階級に出世しながら、航空幕僚長の選定対象から除外されていた事が防衛不祥事になるのを恐れたのだ。それと、黒江が背広組から『旧軍のエースと言うだけで、瞬く間に出世した若造』と認識されていたためだ。後日、『対外任務統括官』という名のポストが新設され、黒江はそれに補職された。扶桑軍への言い訳代わりのポストではあったが、航空幕僚長とほぼ同等の権限が与えられていた。制服組としてはほぼトップだ。これは黒江の階級が扶桑で准将になっていたのとすり合わせし、尚且つ、実に若い年齢であることを考慮しての結果だった。その為、年齢不相応な役職と、外部から大いに問題にされた。だが、それまでの前歴は空自のトップエリートしか歩めないもので、ブルーインパルスの在籍経験もあるし、飛行開発実験団在籍経験もある。飛行教導群にも数年ほど在籍した。そこから出世で新ポストに任ぜられる事になった。将に出世しても幕僚長になれなくなった代価で、『定年まで搭乗員として飛ぶことを許可する』とされた。これは幕僚長のポストを生え抜き自衛官にこだわった防衛省の役人達の尻ぬぐい的措置だった。これは本来、青年と言える年齢で将になる事自体が想定外だった事、生え抜き自衛官の将官らをベルトコンベアの要領で幕僚長にしてきたため、それを優先したら、問題視されたのに驚いた彼らの苦し紛れの措置だった。また、通常のコースを辿らすのを嫌がった警察出身者へのあてつけだった。中堅将校でありながら将官(表向き、99年時に18歳の扱いであったため、16年度時点では30代扱い)である時点で破格であると彼らは思っていただろう。対外的には実質的にトップとなるポストであるため、太平洋戦争では、空自を思い切り、こき使おうと考える黒江であった――

「のび太。ということで、忙しくなるから、そっちに調を当面の間置いとく。ガイちゃんとなのはに手伝ってもらえ。それとタカオはいるか?愛宕に今、秘書してもらってるんだが」

「いますよ、かわります」

「頼む」

「何?」

「愛宕がそっちに行きたがってるから、鳥海に連絡取ってくれね?」

「摩耶じゃなくて?」

「メンタルモデル的意味で、摩耶はあれだろ……。鳥海なら無難だからな」

「分かったわ。鳥海に連絡入れておくわ。愛宕は変身すると子供だから、元の姿がいいわね」

「頼む」

黒江が電話をかけているのは、2016年の横須賀だった。2016年の横須賀は米軍に加えて、扶桑軍も駐屯しており、戦艦と空母が同居する光景が久方ぶりに実現していた。米軍は21世紀時点では日米安全保障条約を破棄するつもりは無く、以前と変わらぬ規模で駐留を続けていた。アメリカの安全保障維持の他、軍事大国化した日本の監視も兼ねていた。扶桑の戦艦が現れた対抗から、この2016年では『モンタナ級戦艦』(新。ズムウォルトの代替で建造)を新造し直してしまうほどの大盤振る舞いである。これは単純に、アイオワ級戦艦が老朽化し、現役復帰は困難である事から、その改良型であるモンタナを作り直したのである。ズムウォルトが高額化・機能の省略で存在意義が希薄になったので、超近代化がなされた扶桑の戦艦部隊へのカウンターが軍事的に必要となったのを理由に、モンタナを作り直したのだ。扶桑は12隻もの戦艦を維持しており、(加賀×2、紀伊×2、大和×4、播磨×2、三笠×2)それを日本が使えるのだ。更に超甲巡が量産されており、見栄えもそうだが、だいぶ見劣りする。アメリカが水上戦闘艦を戦艦という形で増加させたのは、それへの対抗であり、三笠型と播磨型が大陸間弾道ミサイルに余裕で耐えるという脅威の防御力を有するという情報から、戦艦の打撃力が抑止力として必要とされたからだ。また、機関の技術向上から、モンタナの原型設計時から更に出力が向上した機関を積めるため、30ノットを確保した。

「アメリカもこっちの戦艦を警戒してるみたいで、モンタナを作り直してきやがった。この分だと、原子力戦艦もあるかもな」

ロストテクノロジーと思われた戦艦の砲身だが、アメリカはアイオワ級の現役復帰時に技術維持のために砲身を作っており、21世紀時点の旧列強諸国では唯一、確実に戦艦主砲を制作できた。懸念された費用対効果は日本戦艦への抑止力という観点と、ズムウォルトの全機能実現よりも安価である事から、実現した。何より、戦前と同じ規模の戦艦部隊を有している日本へのカウンターを用意すること。それが優先された。また、後の反応兵器に繋がる『次世代型核兵器』の研究も行い始める。核兵器の陳腐化を恐れた欧米列強がこぞって研究した『次世代の核』。それは23世紀における反応兵器として存在する。最も、反応兵器は核兵器から対消滅兵器へ進化しており、この時代の研究との関連は減っているが。

「アメリカはなんで、16インチにこだわるの?」

「アメリカは大口径化より手数を優先していたからな。リベリオンみたいに次世代艦を大口径化するドクトリンはモンタナの頃になると無くなってるんだ」

「なるほどねぇ」

「それにあいつらはSHSを実用化していたから、遠距離で仕留められるって思ったんだろうな。まぁ、プロミネンスに耐えられるように改造したり、作ったから、今更なんだけどな」

「妙に自信あるのよね、米軍」

「戦後世界の秩序を担ってきた自負からだろ?あいつら、自分たちの兵器が世界一って信じて疑わないからなぁ。アナハイム社あるし、嘘でもないか?」

「この時代だと、まだ設立したてのIT会社じゃ?」

「そうなんだよなあ。大きくなるの、月に工場おっ立てた後だっていうしなぁ。ほんじゃ鳥海によろしく」

と、黒江は電話を終える。タカオも愛宕と鳥海に連絡を取り……。






――ガイちゃん、なのは、調の三者は、それぞれ昼の三時まで別々の行動を始めていた。ガイちゃんは市民ソフトボールクラブにスカウトされて試合に出場し、なのはは高校に行くといい(実際は卒業済み)、新宿へ映画を見に行き、調は沖一也に頼み込んで、稽古をつけてもらっていた。箒とタカオが家事を、菅野はドラ達と一緒に、家で留守番である。また、調は自分では気づいていないが、他人から見れば一目瞭然なほど、のび太に好感を抱くようになっていた。箒やガイちゃん、なのは、菅野の4人は調が寝ぼけて、のび太の寝床に入るのをはっきり目撃しており、のび太の優しさがストライクしたことを確認しあった。それは二人を起こす時、調がのび太の手を握っていることが二日連続だった事、寝言で『ダメ、置いて行かないで……一人にしないで…』と呟き、のび太があやすのに苦労し、助けを求め、アドバイスしてやったため、全員がこのことを知っている。食事の際には。


『取り合えず兄妹認定か?』

『だよねー』

『ありゃマジだぜ』

『どう見ても、ってのは語弊有るかも知れんがそんなところだろうな』

『そ、そんなぁ、勘弁してくださいよ、皆さん〜!』

4人に指摘され、慌てふためく調の姿が見られたとか。その事はレヴィ(圭子)の線から切歌に伝わり、切歌の怒りの導火線に火をつけた。切歌は魔鈴に帰省の許しを得て、ドラえもん世界に来訪すると、のび太が学校を終え、帰る時間を見計らい、(当時の時点ではまだ覚醒に至っていないので、ギアはのび太を視認した段階で展開する、ヒット・アンド・アウェイ戦法を取った)展開したが、既に百戦錬磨ののび太には感づかれていた。

「嫌な予感がするな。ショックガンをポケットに入れておいたけど……!?」

具体的な対応策はまるで考えていないが、ショックガンはポケットに入れていたのだが、その前に切歌から攻撃を受けた。

「うわぁ!?」

いきなり鎌が迫って来たので、咄嗟に避けるのび太。

「君は……もしかして!?」

「暁切歌。調の……友達デス!野比のび太、お前を……刈り取る、摘み取る、もぎ取る!」

腰の辺りで掌を上にガシッとなにかを掴む様なジェスチャーを見せる切歌。

「いやいやいや!?どうしてそうなるかな!?」

「問答無用デス!」

「逃げるが勝ち!」

のび太は持ち前のフットワークと逃げ足の速さでイガリマを振り回す切歌から逃げる。逃げモードとなったのび太は俊足そのものであり、切歌がバーニア込みで斬りかかるのを尽く避ける。

「ちょこまかと!これでどうデス!」

両肩のアーマーをワイヤーとして射出し、捕まえようとするが、これはのび太が咄嗟にポケットに入れていたひらりマントで回避する。

「ひらりマント〜!」

「ワイヤーが勝手に曲がった!?」

「ほっ、危ない危ない。今だ!」

ショックガン抜き打ちで取り出し、最大出力で放ってクラクラにさせた隙に全速力で逃げる。防護服には威力が落ちるが、隙さえ出来ればいいので、仮面の忍者赤影顔負けのスピードで逃走する。数分でショックから回復した切歌はすぐに後を追う。調への思いが成せる業か、まるでサイドワインダーミサイルのような追跡を見せた。のび太は駅前商店街の方面へ逃走したが、切歌はそれを捕捉し、追いかける。それを目撃した箒は事を察し、事もあろうに、のび太の速力を測った。

「ふむ。オリンピックアスリートも真っ青な疾さだな。……ん、あれが調の友達の切歌か。ニンジャスレ○ヤーのような形相になってるな。一応、知らせておくか」

アガートラームを展開し、調に事を伝える。調は『わ、分かりました!切ちゃんを止めます!』と大慌てになり、裏山から非常Σ式 禁月輪(一輪バイク状で突進する技)で飛び出し、ちょっど、のび太が路地で行き止まりにぶち当たり、追い詰められた場面を視認した段階で禁月輪を解除し、空中から割り込み、イガリマを空中元素固定で形成したショルダースライサーで切り払った。

「やめて、切ちゃん!」

「し、調……!?」

「のび太くん、今のうちに!」

「た、助かった〜!サンキュー!」

「逃がすものかデス!」

「切ちゃん!」

調はやむを得ず、流星拳を放った。超音速の拳であるので、現時点の切歌は防げはしない。頭に血が登っている切歌は、これでますます逆上した。

「調……どうしてあいつを庇うDETHか……。私が、私は……調に会いたいってずっと想ってたんDETHよ……、どうして、どうして!あんな冴えないギャグ漫画の主人公みたいな!?」

「なッ!?き、切ちゃん!そ、そういう関係じゃないし!!」

「DEeeeeeTH!!」

「のび太君は……」(ダメ、完全に逆上してるッ!なら、恥ずかしいけど……!!)

「のび太君は私の……『お兄ちゃん』なのッ!!だから、例え切ちゃんでも、私に温もりを教えてくれた人は傷つけさせないッ!!……来て!!エンペラァァァソォォォドッ!!」

両拳を胸の辺りで叩きつけ、片腕を天に掲げ、雷鳴を起こす。雷鳴は帝王の剣となり、具現化する。それを地面から引き抜き、パースを決めながら叫んだ。

「のび太君はお兄ちゃんみたいなものだからッ!!のび太君なら切ちゃんも受け入れてくれる!!だから、こんな事もうやめよう!!」

「そんな事、調の言うことでも、信じられるものかDEeeeeeTH!!」

「切ちゃんッ!……私の右腕に聖剣が授けられてるのなら、因果を断ち切って、勝利に結んで!!私の知る切ちゃんを呼び戻して!!」

調の持つエンペラーソードが黄金に輝く。切歌への強い思いが目覚めさせたのだ。右腕に宿りし勝利の剣を。

『約束された勝利の剣!!!エクス!カリバァァァ!!!』

黄金に輝く剣は暴走一歩手前の切歌のアームドギアごとイガリマのギアを一閃した。振り下ろす瞬間、調は泣いていた。エクスカリバーの攻撃を食らった切歌は気絶し、ギアが解除される。エクスカリバーに繋がりを断ち切られたからだ。切歌は黒江にもエクスカリバーでイガリマを防御され、一閃されているので、エクスカリバーとは相性が悪いらしい。

「切ちゃん……私、こんな形で再会したくなかったよ……」

「まあ、そう落ち込むな」

「箒さん……」

「こいつはお前に笑ってほしいがために、魔鈴さんのシゴキにも耐えていた。が、レヴィさんの遊びに巻き込まれたのが運の尽きだな。レヴィさんには私とマルセイユさんからよく言っておく。こいつは私が運ぶ。お前は先に家に帰れ」

「で、でも……」

「僕が引き摺りまわしたようなものだし、面倒みるよ」

「のび太くん……、ゴメン…、私が切ちゃんに……」

「なーに。こういうドタバタは日常茶飯事だから。さ、帰ろうか」

のび太は追い掛け回された後だというのに、気遣って戻ってきたらしい。のび太と箒の優しい微笑みに頷き、のび太と家に帰る。イガリマのギアは箒が召し上げ、レヴィに渡した。切歌は箒がのび太の部屋に寝かし、事情を教えられたレヴィ(圭子)は多少気まずそうであったが、すぐに切歌の横に控える。何か思いついたらしい。そして、箒にいたずらっ子のような表情で言った。

「反則スレスレなんだがコイツ(水鉄砲)の方が当たるところ限定出来るしべんりなんだ」

「リアル造形の水鉄砲なんか用意しちゃって……。普段の包容力はどこ行ったんです?」

と、呆れる。

「そういう文句は『ケイ』の時に言え。今のあたしは『レベッカ・リー』だ」

と、タバコを咥える。ケイとしてはタバコを控えているが、レヴィとしては吸うので、ここに違いが出る。そのため、ケイとしての彼女とは方向性が完全に違っていると言えよう。ケイとしては子供への影響を気にしたり、ティアナに止められているので、タバコは吸わないが、レヴィとしては地を出して演じているため、タバコを嗜む。それが圭子なりの切り替えスイッチなのかもしれない。


「にしても、調ちゃん愛されてるね」

のび太がナチュラルにとどめを刺しに来る。調は瞬時に茹でダコになってモジモジする。それをからかう菅野とタカオ。切歌が目を開けると、いきなり、明らかに堅気に見えない20代のお姉さんが目の前にいたので、飛び起きようとするが。

「こ、ここは!?あ、貴方は誰デスか!?」

「ストーップ、立つんじゃねえぞ?ベイビー、クールに行こうぜ?」

リアル造形の水鉄砲を額に突きつけ、その一言を言うレヴィ。雰囲気が完全にトゥーハンドとしてのそれなので、切歌は冷や汗タラタラである。それを隣の部屋から見ている調はアタフタしており、それを箒がたしなめていた。レヴィは完全に遊んでいるが、水鉄砲でハッタリをかまし、自分のペースに持ち込むのは大いに参考になる。彼女は培ったノウハウを大いに使える『ブラック・ラグーン』モードをたいそう気に入っており、普段はこのモードで固定するようになるのだった。

「大丈夫かい?切歌ちゃん」

と、すかさず額に手を当て熱を見るのび太。

「よかった、無事みたいで」

「殺されかかった相手の心配なんて馬鹿デスか?!」

と、毒気を自然と抜かされる切歌。レヴィとの連携は完璧であり、箒と調は連携プレーに目を見張るのだった。



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