短編『プリキュア、スーパーロボット大決戦』
(ドラえもん×多重クロス)



――スーパーロボットも参戦し、状況は再び急展開を迎えていた。――

「これぞ、甘美な瞬間よ。如何に貴様らと言えど、足手まといの子供達を守りながら、この軍団と戦えるかな?」

ブライ大帝が腕を動かすと、百鬼帝国の百鬼メカの大群と恐竜帝国のメカザウルス、機械獣の大群が地割れを起こして現れる。その中には大物も混じっていた。

『フハハ……かの方のおかげで我は肉体を取り戻した!』

『ヒュウ、どこぞの世界で戦ったガラダブラさんかよ、生き返っていたのか』

『兜甲児よ、かの世界以来だな。貴様も記憶を継承しているらしいな!』

『神話だとZ神に倒されたそうだが、今度はこの俺がZとGを超えるマジンガーでギタギタにしてやるぜ!』

『よほど俺たちに息の根を止められたいようだな、ガラダブラ!この俺が闇の帝王のところに送り返してやる!』

『ぬかせ!ここがどのような世界だろうと、我がミケーネの血肉としてくれ

『うるせぇよ!ミケーネなんざ、とっくに発酵しきった堆肥になってんだよ!その前のクレタ文明からも何千年経ったと思ってやがる、バーロー!!』

完全にプリキュアはガン無視で話が進む。と、ここで。

「あなた、名前は?」

「キュアフェリーチェです、ホワイト」

「フェリーチェ、機械神ってなんなの?」

「機械で出来た神に至るための人体の延長となるもの、でしょうか。少なく見積もっても、この時代から数世紀後の人類が生み出した機械仕掛けの神、俗にスーパーロボットと言われてます」

ホワイトにそう答えるフェリーチェ。マジンガーの説明であるが、MSやMF、VFが現れても、それらと隔絶した力を持ち、文明を破壊可能なほどのポテンシャルを持つ偶像崇拝も絡んだ超・人型ロボット兵器。説明としてはこれ以上ないほど簡潔だった。

「そんな、たった数世紀であんな代物ができるわけがないわ!アポロから50年近く経ってさえ、月面開発は机上の空論…」

「する必要がなかっただけですよ、アクア」

アクアにはそう返す。宇宙開発は『必要性が生まれた』以後の時代に飛躍的に発達し、波動エンジンが伝えられる前の段階でさえ、冥王星まで数週間程度まで行ける程度の能力に達する宇宙船は持てていた。それはのび太の世界の歴史が証明している。

「必要性が生まれて、目的が生まれて、技術は初めて進歩するのです。第二次大戦の航空技術が戦争で、1000馬力もない状態からジェットに7年で到達したのは有名でしょう?」

「確かにそれはそうだけど、それは戦争って状況が……」


「戦争、あるいはにらみ合いの時代は時として、技術を進歩させるのです。1939年の最新飛行機は1000馬力も出ず、スピードもそう早くは無かった。それが戦争の終わる1945年にはメッサーシュミットMe262が950キロを叩き出していた。技術は日進月歩と言いますが…」

フェリーチェ/ことはは大学時代は史学を専攻していた。のび太が度々、西部劇の時代に気分転換で行っていたためだ。ちなみに、大学でアメリカ史を受講した際の南北戦争に関するレポートはのび太がその辺りの時代によく行っていた事もあって教授が唸る出来だったとのこと。ことは曰く、『南軍の敗北チャートをまとめた』もので、わざわざ、ゲティスバーグの戦いを見に行ったらしい。

「貴方、く、詳しいわね」

「大学は史学科でしたから。この時代より数年後になりますが」

フェリーチェはちょっとアクアをからかう。フェリーチェが現役の頃には、本来はプリキュア5と共闘の機会は無かったのもある。実際、プリキュア5以前のプリキュアは魔法つかいプリキュアが現役初期の段階で共に戦ったが、それ以後はオールスターズ体制が崩れたのもあり、フェリーチェが加わって以後の魔法つかいプリキュアは、プリキュア5以前のプリキュアとあまり共闘の機会に恵まれていない。その事が黒江が入れ替わっているキュアドリームのメサイア・コンプレックスを刺激し、彼女の人生を狂わしてしまったりするため、黒江もそれを気遣っている。黒江が入れ替わっているのぞみは『絆を再確認する場所』としてのオールスターズ戦を心のどこかで求めており、HUGっとプリキュアの時代が終わると、その傾向が強まってしまったと自嘲している。時間が経過するにつれ、自分達の事が忘れ去られる事に強い恐怖を感じるようになってしまった事、想い人と結ばれなかったことでの虚無感も、のぞみがいた世界での長子との軋轢の一因である。黒江も自分の心を守るために二重人格になった時期があるが、のぞみは黒江のように、二重人格になるほど逃避する思考への誘導が無かったため、起きなかったし、なれなかった。それが彼女の悲劇である。

「一ついい?ドリーム、なんて言うか、らしくないって言うか…その…」

「その事は後ほどお話します。おそらく、5とフレッシュの皆さんはわかっているはずですが、指摘しないだけです」

ホワイトにフェリーチェはそう告げる。黒江は自重しない質であるので、バレている事は想定内であった。のぞみがダイ・アナザー・デイで『承認欲求の暴走による戦うことへの強迫観念』という形の暴走で周囲を振り回した事で、のぞみに降り掛かった悲劇を知ったフェリーチェは、それからはのぞみを立てる方向で立ち回っている。のぞみにとっては義父になる予定ののび太はそれを受け止めてやり、のぞみの虚無感をかき消した。まさにいぶし銀のメンタルサポートぶりである。

「どういうことなの?」

「全てはこの場を乗り切った後です、ホワイト。それと、ブルームとイーグレットへの感謝の伝言をMr.Nから預かっています」

「私達に……?そのMr.Nって誰なの?」

「知れば、誰もが驚くような人です。私の義理の兄であり、ドリームの結婚相手の義理のお父さんですけど」

『え!?』

ホワイトとイーグレットが同時にハモった声で腰を抜かした。そして、その一言でルージュががぶり寄りを見せる。

「ど、ど、ど、どういう事!?」

「それは後で説明しますから、落ち着いてください!」

「け、結婚相手は誰、誰なの!?」

「普通にココですけど」

「!?★※」

「その辺は俺が後で説明してやる。お前らはあいつのダチだから、事を荒立てたくはなかったんだがな」

「のぞみ本人はどこ?」

「この世界のあいつは一時的にどこかに飛ばされたと思う。本人は気がついてないと思う。一瞬のことだしな」

「ブラックたちの前だから、これ以上は言わないけど、終わったら、きっちりと説明してくださいよ」

「もちろんだ。誤解されて戦う羽目になるのは御免だしな。その時に俺と相棒の名前をカミングアウトするよ」

ルージュにそう言うと、黒江と智子は自身が転生を重ねていく過程で背負った『黄金聖闘士』の宿命に従い、大軍団にその身一つで突っ込む。

「あ、ドリーム、ピーチ!?」

『よく見ておくんだ、君たち。あの子達の本気だ』

鉄也の言う通り、黒江と智子はプリキュアの姿のままだが、本気を出した。自身の背負った看板の一つ『黄金聖闘士』としての本気を。

『ライトニングフレェェイム!!』

『ホーロドニースメルチ!!』

それは黒江達が長年に渡る研鑽でたどり着いた境地。ダイ・アナザー・デイ中には『メアリー・スー』、『最強系を気取ってる』とも謗られたほどの反則的までの強さ。炎を纏う電撃と氷の竜巻はブラックやホワイトですらも驚愕するほどの反則的な威力だった。

「嘘、炎を纏った電撃と氷の竜巻なんて…!?」

『あれこそが、あの子達が何十年、いや、百年単位の修行の果てにたどり着いたものだよ』

「教えてください、あの力は何なんですか!?」

『一種の壁を超えた者が成し得るものだ。シックスセンスを超えた領域の能力に目覚めし者のみが奮える力だ』

キュアパッションの切実な問いに鉄也は答えた。シックスセンスの先にある領域の力だと。シックスセンスが俗に言う超能力なので、それを超えた能力、『超々能力』と言うべきだろうか。黒江達は転生の繰り返しの効果もあり、黄金聖闘士としても、歴代の平均を上回る力を身に着けた。それとタイマンを張れるあしゅら男爵は充分に超人と言える。

『セブンセンシズ。古より神々を守護する闘士達の間ではそう呼ばれている』

「セブン……センシズ」

『神々が持つ力の一端であり、あの子達が長年の労苦の果てに手に入れたものだ。それを極めるうちに、人助けをしてゆく内に崇められるようになった後、あの子達は死を乗り越えてしまった。存在の位が人で無くなり、神域に至ってしまったというべきか。君たちもいずれ分かる時が来るだろう』

鉄也は死を超えた領域に達した者を『神』と評した。そして、強さは愛だとも説く。

『強さは愛だ。愛がなければ、人は獣同然だ。君たちは誰かの笑顔や幸せを守るために戦うのだろう?強さとは単純なものではない。俺も過去に実感した事だ。物理的パワーだけでは無い。心の、魂の、絆の力も強さの一部なんだ。そして、肉体と魂が磨き上げられた。その時こそが、神域に手をかけた瞬間になる人も物も魂が磨き上げられたら神域に至り、八百万の末席に座す権利を得る。そうした戦船(いくさぶね)の魂が人の形を持って人の想いから、肉体を得た者(艦娘)たちだっている』

鉄也は愛に飢えていた故に暴走し、過ちを犯しかけた。しかし、ジュンの愛を知ることで成長し、人として強くなれた。のぞみは子供が自分を憎んでいた事のショックで心を病んでしまったが、ココへの想いを断ち切れずにシングルマザーを通していた事、次女が若き日の自分の生き写しに育ち、立場も受け継いだ事が長女の中で負の感情となった事に気づいた時には、既に手遅れであった事などが不幸だった。仮面ライダーディケイドがその世界を調査した結果、のぞみの二人の子供はプリキュアとダークプリキュアに分かれて戦い、のぞみの引退後にその後を継いでいた次女が母親同様にシャイニングドリームに変身を遂げ、姉を倒したという悲しい結末を迎えたとの事で、のぞみはそれに強いショックを受けている。それがのぞみ自身を苦しめ、りんが記憶喪失になる事で、理性のタガが外れてしまうことになる。(ちなみに、のぞみの出身世界での長子はその後、魂がウィッチ世界に漂着し、中島錦の従姉妹『中島旋風』に転生しており、生前のダークプリキュアとしての能力に覚醒していた事が判明、のぞみは後に娘と再会し、戦い、『プリキュア・スターライトソリューション』で娘を浄化し、和解を果たす事になる)


「それじゃ、あの子達は」

『望んでなったわけではないが、彼女たちは誹りを受ける立場にある。不老不死、人智を超えた力を持ってしまえば、必然的にそうなる。君たちとて、それと無縁ではないだろう?』

黒江達はのび太とは親友の間柄だが、のび太がなぜ、野比のび太としての存在の不滅性を選ばなかったのかも知らず、『のび太を開放してやれ。お前らの道具にするな、都合のいい愛玩動物にしてるくせに』と罵る者は多い。だが、のび太はそれを『戯言』と一笑に付し、こう公言している。

『人は誰しも、危険をかえりみず…、死ぬと分かっていても行動しなくてはならない時がある。負けると分かっていても、戦わなくてはならない時があるものさ…』

と。のび太はこう断言し、黒江達の友で有り続けている。のび太の高潔さはあの宇宙海賊キャプテンハーロックも敬意を払うほどのものであり、彼が『彼にかすり傷一つ負わすな、無傷で21世紀に帰せ!』と部下に厳命するほどに崇敬されている。のび太の高潔な精神はキャプテンハーロックは愚か、クイーンエメラルダスも敬意を払い、のび太を最敬礼で迎えるほどに、30世紀人類にとっての指標とされている。キャプテンハーロックはダイ・アナザー・デイで参戦した際、こう述べている。

『のび太は漢だ。普段は頼りなく、力も無い軟弱者にしか見えないだろう、だが、一度(ひとたび)戦いに身を投じれば、彼ほど勇敢な不屈の闘士はなかなか居ない。それに、銃だけでは勝てる算段がつかない』

ハーロックをしてこう言わしめたのび太。のび太のその優しさと愛がのぞみとことはを救い、調がそれまでの全てをかなぐり捨ててでも、その身を彼に捧げる理由でもある。

『のぞみちゃんはMr.Nに救われたと言っていい。俺たちは、彼女が彼に仲介を頼んだことで事の次第を知ったんだ』

「つまり、私たちの知るのぞみとは別の…?」」

『そういう事だ』

『俺たちの背中を護れる女神が三人居るから、問題ねぇな、行くぜ!!』

『フッ、それ以外もその域に至れる奴らだ、問題無いだろうさ。続け、甲児君!』

『がってん!!』

『さて、鬼退治と洒落込むか!』

三機の最強のマシンがその力を示す。ゴッド・マジンガーは『ゴット・ブレード』を二本持ち、エンペラーもエンペラーブレードを二刀流。真ゲッタードラゴンは真・ダブルトマホークを担ぐ。彼らは光速の疾さで飛翔し、大軍団を向こうに回しての大立ち回りを展開する。真ドラゴンのトマホークが機械獣の胴体を綺麗さっぱりまっ二つに切り裂き、エンペラーブレードで十文字に切り裂くマジンエンペラーG、双剣突きから左右に振り払って真っ二つにするゴッド・マジンガー。振り払った先に居た他の機体も勢いでぶった斬っている。その勇姿は急転直下の連続で戸惑うプリキュアを奮い立たせる。

『グレートスマッシャーァァ!!パーンチ!!』

鋭利な刃をせり出した上で高速回転させて放たれるこのロケットパンチ。ドリルプレッシャーパンチの発展型で、ターボスマッシャーパンチの兄弟になる。空気を裂き、極超音速で相手を装甲ごと抉り取る威力を持つため、プリキュア達も思わず顔面蒼白になる。

「す、すごい……」

「あ、あれって…、ロケットパンチだよね?漫画でよく見る類の」

「それを強くしたら、ああなるの…?」

「相手の装甲を抉り取ってるよ、あれ…」

Gスマッシャーパンチはドリルプレッシャーパンチの系譜に属し、その破壊力はターボスマッシャーパンチより一部優れる。そのため、並の機械獣や百鬼メカなどは有象無象も同然である。ブルーム、ベリー、ブラックはそんな感想しか言えなかった。

『さあて、子供達にいいとこ見せるか、ゴッドサンダー!』

ゴッド・マジンガーがゴッドサンダーを放ち、最強のマジンガーの力を見せつける。フェリーチェが機械神と形容する通り、神の如き破壊力である。

「あたしたちだって、負けてられない!!いくよ!!」

「YES!」

プリキュア5の時代からしばらくの間、プリキュア達の間で用いられる『了解』を意味する用語は『YES!』であった。少なくとも、ハピネスチャージプリキュアの時代までは用いられていた事が確認されており、初期三代のプリキュアとの直接的繋がりを示す単語であった。キュアドリームが持ち込んだのが先輩後輩に広がり、ハピネスチャージプリキュアの頃までは使用されていた。(魔法つかいプリキュアとGO!プリンセスプリキュアも意味は理解できる)ダメージが残るハートキャッチを除いた面々が機械獣や百鬼メカと戦闘を開始する。彼女たちも『プリキュアとしての意地と誇り』がある。力が戻ったこともあって、乱入してきた軍団相手に退くつもりは微塵もなかった。

「あたし達を調べるんなら!」

「正々堂々と!!」

「真正面から来なさいよ!!裏でコソコソ調べるなんて、いけ好かないのよ!!」

ブラック、ブルーム、ルージュ(ドリームが黒江と入れ替わっているため、その代わりにルージュが代表として前に出ている)が中心となり、自身より遥かに巨大な敵に立ち向かう。その辺りは彼女達に巨大な敵との交戦経験があるからだろう。

「ドリーム」

「ルージュか」

「上手く言えないけど、あなたがのぞみの仕事の上司なら、伝えてほしいことがあるの」

ルージュは黒江(姿はシャイニングドリーム)の隣に降り立つ)。


「お前自身にも伝えておくよ。お前らは『セットでやって来た』からな」

「なんだか、ドッペルゲンガーに会ったみたいな感じよ、それ」

「平行世界同士の自分と会うなんて事は普通はありえんが、俺は経験がある。べつのお前とのぞみは部下だが、似たような事になると思う」

「こんな時に言うのもあれだけど、あなたの知ってるのぞみは、どんな風に生きてるの?」

「多分、あいつの可能性の中でもトップクラスに不幸を味わってきたと思う。あいつ自身が死んだ後、二人の娘がプリキュアとダークプリキュアに分かれて殺し合って、この姿に覚醒した二番目のガキが姉貴をその手にかけたっていう、な。」

「のぞみの子供が…!?」

「平行世界を自由に行ける友人の調べだ。のぞみは次女がその後を継いだんだが、それに嫉妬した長女がダークプリキュアに堕ちてな。最後は…」

「のぞみは…その事を?」

「錯乱状態になったよ。腹を痛めて生んだ二人の子供が戦い、最終的に妹が姉を殺めたなんて。そのショックで、一週間はベットから起きれんかった」

黒江はそれを伝え、のぞみは半狂乱になり、一週間はベットから起きれなかったと明言する。ルージュはあののぞみが半狂乱になり、一週間もベットから起きれなかった事に衝撃を受けた。

「Mr.Nが慰めてたよ。それ以来、あいつはN氏を慕ってる」

「N氏って誰なの?」

「お前も知ってる漫画界の大物だよ。昼寝大好き、あやとりと射的が趣味の…」

「え、なんか心当たりがあるけど、まさか……?」

「そのまさかだよ」

「またまた〜、じょうだ……?」

「ルージュ」

「え、え、え〜〜!?」

「お前、あいつの声が変わる前は子供だったから、記憶ねぇだろ?」

「し、失礼な!記憶ありますよ!夏休みにレンタルビデオ借りてましたって!」

「ラブのやつも地球戦隊ファイブマン見たって言ってるんだが?」

「あの子、それでプリキュアになったの、すんなり受け入れたって言ってましたよ」

「あいつ、もしかしてそれがプリキュアの力を?」

「多分。ベリーに確認とってないけど」

「どうりで、ファイブイエローのサインをツテで手に入れた時に、あいつがすごく欲しがったわけだ…」

「え、いるんですか」

「一言で言うなら、俺がいる世界、スーパーロボット大戦とスーパーヒーロー作戦がごちゃごちゃに混ざった世界でな。ツテがスーパー戦隊にあるから、もらったんだ。それをラブに教えたら、あいつ、狂喜乱舞でよ…」

「あの子、ダンス一辺倒だと思ったけど、意外にオタクなのね…」

「あ、そのラブ、スプラッシュスターの二人の技を撃ってたぞ」

「なぁ!?」

「しかも、のぞみと一緒に『スパイラルスタースプラッシュ』を撃ったんで、お前、頭抱えてたぞ」

「えー!?」

「どうしたの、ルージュ」

「ブルームか、ちょうどいい。実は種明かしだけど…」

説明が行われ、ブルームは腰を抜かす。


「あ、あわわ……のぞみちゃんとラブちゃんがあたし達の技を!?」

「しかも、お前らの精霊の力をばっちり実戦で使ってんだよ。俺も苦笑いだったぜ」

「そんな、あたしと舞のプリキュアの力は、二人とは違うもののはずですよ!?」

「俺だってわからん。二人の言い分だと、お前らが夢枕にたったら、撃てるようになってたってんだと。ばっちり前口上もしてたし。多分、同位体の居ない世界だから、一番波長の近い相手として、チカラを託す事になったんじゃねえかなぁ?」

「のぞみちゃんとラブちゃんがあたしと舞の力を…」

「ブルーム、お前、家がパン屋だっけ?機会があったら食わせてくれ」

「なんで知ってるんですかー!?」

「そりゃ、お前の後輩連中が部下だし。二年生でソフトボール部のエースで、ペットは猫…」

「わー!!みんなの前でそれはぁ!?」

「安心しろ、相方の方もあらかた…」

そこで、イーグレットが猛烈な勢いで突っ込んでくる。顔は真っ赤である。

「や〜め〜てぇぇぇ〜!!」

「い、イーグレット!?」

「おっと。気持ちは分かるが、こっちの説明聞いてくれよ、イーグレット。いや、美翔舞?」

「え……?」

「嘘、イーグレットの蹴りを指一本で…!?」

「何、軽いもんだ。パッションが受けてた説明は聞いてたろ?俺はセブンセンシズに目覚めているんでね」

イーグレットの蹴りを受け止め、落ち着かせる。

「あの説明はあなたのことだったの?」

気を取り直して、イーグレットが質問する。

「俺と相棒の事だ。のぞみとラブは俺と相棒の部下だ。だから、姿を借りてたんだ。自衛隊ってのは仕事が立て込むんだよ。たまには身代わり置いて、長く休まないとよ、労基に文句言われるんで、身代わりと交代したら、これだもんなぁ…」

「だから、プリキュアののぞみちゃんとラブちゃんと?」

「ちょうど非番があいつらだったのよ。オレ、本当は偉いから、労基関係ないんだがね」

「偉いって?」

「俺、将軍クラスなのよ。自衛隊の。だから、本当はそんな忙しくないんだけど、ヨーロッパでの仕事がここのところ忙しかったからな」

「将軍?20代で?」

「色々な特例なんだよ、俺と相棒は。おまけに本業は戦闘機パイロットなんだがね」

「戦闘機のパイロット?って事は航空自衛隊?」

「そうなる。イーグルドライバーだぞ、一応。それでいて、色々あって神様になっちまったから、苦労も多くてな。相棒は靖国の軍神の一柱の同位体だし、つるんでたら一緒に神の使徒から神様に昇格しちまったんだ」

黒江はある程度の身バレを話す。そして、その力の一端を見せる。

「さて、お前らに見せてやろう。俺の本当の力の一端を」

黒江はイーグレット以上の風を起こし、聖剣を持つ。風王結界を解除した黄金の剣をここで抜く。

「私以上の…風!?」

「お前ら、アーサー王伝説を知ってるか?」

「ケルト神話のあの…。で、でもそれは…」

「ところがぎっちょん、聖剣は確かにあるんだよ。『こうあってほしい』願いが紡いだ思いが具象化させた剣。その名も…」

「エクスカリバー……!?まさか!?」

「フルパワーでぶん回すのも物騒だし、属性の力で軽く行くぜ?ストライクエア!」

イーグレットが扱えるレベルを超越した暴風が吹き荒れ、ボトムが発生させていた暗雲の一切を吹き飛ばした。そして、黒江の手には黄金の剣が出現していた。伝説の通り、もしくはやや長めの刀身を持つ剣が。

「それが貴方の本当の力…」

「俺は黄道十二星座の山羊座を司る戦士でもある。アテナから授かった聖剣の霊格を実体化させたものがこれだ」」

「黄道十二星座…」

「それじゃ、ピーチになってる人も?」

「あいつは水瓶座だ。ただ、あいつは氷より炎向きでな」

ブルームに言う。ルージュはアイデンティティの危機を感じる。炎が得意と聞いたからだが。

『ブレイズ・エクスキューション!!』

智子が独自に編み出した必殺技『ブレイズエクスキューション』。『オーロラエクスキューション』を反転させ、劫火を繰り出すものとした独自技である。その手順はオーロラエクスキューションとほぼ同じで、構えも同じである。両手を組むことで水瓶の形を成し、放つのだが、本質的に温度のコントロールは高温も低温も基本的に同じものであり、炎と凍結は同じ属性に属していたと判明し、智子は炎を主力とする。その点では独自色が強い。

「炎を波動みたいにして打ち出したぁ!?しかも、とんでもない温度でぇ!?」

「お前、そこでアイデンティティの危機を感じるのかよ。あれで感じるのはまだ早いぞ」

「へ…?」

『塵一つ残さず消滅させてやる!!』

エンペラーの放射板がせり出し、普段より巨大なV字型になり、放射板が赤く発光する。エネルギーが徐々に炎になっていき、エンペラーの瞳が消える。

『光子力を炎に変える!!グレェェトブラスタァァァ!!』

それは一条の光となり、戦場を貫き、炎を起こす。それは形容しがたいほどの超高熱の熱線が巨大な光として戦場を走り、射線にいた全てを燃やし尽くす灼熱地獄を起こした。プリキュア達も唖然とする光景である。

「なっ、言ったろ?」

「何よ、これ…巨大ロボを跡形もなく溶かす熱線なんて…!?」

「あれが魔神の皇帝の片割れの力だ。機械で作った神って、よく言ったもんだろ?」

「あんなの作れるって、どういう世界なのよ…」

「それだけの力が必要にされる世界だよ。まだまだ序の口だ、あれを見ろ、お前ら」

「!?」

真ドラゴンが腕をドリルに、背中のウイングをモーフィング変形させ、巨大な双連ブースターとし、擬似的にゲッターライガーの形態を取る。そして、信じられないような空中機動(真ゲッターと名がつく物お得意の幾何学的な空中機動。慣性の法則無視である)を見せる。

『マイクロ秒の世界を見せてやる!!』

擬似的にライガーの能力を使っている状態であるために本調子ではないが、それでも時空戦士スピルバンの変身タイムを形容詞に用いるほどの速度を発揮。もはや、プリキュアでさえ理解の範疇を超える速さであったため、ドリルの回転する音、貫く音しかプリキュア達でもわからなかった。真ドラゴン・ライガーモードの速さは真ゲッター2さえも赤子同然の速さであり、全力機動はプリキュアも視認不可能なほどであった。

「今の……」

「見えなかった…。変身してるはずなのに…」

「あれが見えれば、お前らも神の使徒になれるよ。もう光速も超えてるからな」

「貴方は見えたんですか?」

「神の使徒(聖闘士)から神そのものになればな」

ブルームとイーグレットでも視認不能な真ゲッタードラゴンの動き。まさしく大決戦の狼煙であり、彼女たちが巻き込まれたものが何であるかの明確な証拠であった。黒江と智子がその真の力の片鱗を見せ、四人の『未来のプリキュア』が奮戦する中、『かくあるべき』スーパーロボットの破壊力に圧倒されるブルーム、イーグレット、ルージュだった。




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