短編『プリキュア、スーパーロボット大決戦9』
(ドラえもん×多重クロス)



――黒江たちがプリキュアと入れ替わって戦った『大決戦』。地球連邦の太陽系連合艦隊・第七艦隊も加わっての大乱戦に発展した。その中で百鬼帝国側に与した反連邦勢力はあるMSを投入した――

「おお、こいつは……馬鹿な!MSA-0120だと!?」

敵の一団の中に颯爽と飛来したそれは地球連邦/ジオンの双方の系譜には見えないが、MSである。ツインアイタイプに改造されているが、特徴的なゼントランじみた装甲形状から、黒江(この時はキュアドリームと入れ替わっている)はFAガンダムマークVのモニター越しとはいえ、合点が行った。

「な、なにそれ!?」

黒江の僚機である智子(この時はリ・ガズィ・カスタムで出撃。こちらはキュアピーチと入れ替わっている)も驚く。

「アストナージさんのツテで聞いた事がある。F90が採用される時に行われたコンペで、アナハイムが提出した試作機だ。コンペで完敗したから、社史からも抹殺されたと噂だったが、百鬼に与した連中に売りやがったな。ゼントランみたいな見かけだが、あれ、ペーネロペーの後継機だとよ」

「嘘ぉ!?」

MSA-0120は外観のみはコンペ後も公式記録に残されたため、ゼントラーディのパワードスーツみたいな外観だと揶揄される。だが、実際には技術的繋がりはなく、『ヘビーガンの小改良型である素体に異形の外部装甲を被せた』というもの。とはいえ、ペーネロペーの技術を小型化して組み込んだ事により、素はオーソドックスな小型MSのF90より高評価される一面もあった。開発スタッフの一部はこの機体を『ガンダムを超える龍』とし、ドライグと呼んでいたとの情報もある。だが、彼らの思惑はF90にコンペで完膚なきまでに敗北した事、ガンダムが連邦、ひいては地球人類の生き残りを賭けたイコンとしての役目を果たすようになる政治情勢に否定された。それに納得しないスタッフが(例によって)譲渡したと思われる。リック・ディアスの再来になるとも言われたが、非ガンダムタイプである同機は軍にとっても都合の悪い存在である事、コンペの当時は既に、サナリィはF91の素案をまとめていたので、連邦軍のガンダム信仰が採用を阻んだのも事実である。とはいえ、同機の想定していた装備のいくつかは、F91以降の各ガンダムに影響を及ぼしている。

「!」

同機はガンダムマークVに仕掛ける。黒江にとって、MSの加速は反応できないものではなく、機体側も反応速度などを(近代化改修で)向上させていたため、黒江の操縦に追従できた。そのため、MSA-0120は自身より旧型のガンダムタイプであるはずのマークV(フルアーマーであるので、余計に大柄)が機敏に反応した事に驚く素振りを見せた。

「いきなり接近戦とはな。昔、クロボンの連中がジムVにしたという戦法か。だが、そんなのは昔の話だ!」

黒江はMSA-0120と機体越しに剣戟を展開する。デザリアム戦役が迫る時間軸の時点では、小型MSのサイズ上のアドバンテージは過去の話であるのを証明するように、ガンダムマークVは(フルアーマーで諸性能が強化されたのもあり)体格差をものともせずに、サーベル戦を優位に運ぶ。

(わりぃな、のぞみ。お前の姿で戦わせてもらうぞ)

声色もきちんと、のぞみのそれに合わせているので、その辺は芸の細かい黒江。とはいえ、今回、姿を借りたのは偶然のことであったが。

「如何にメガブーストを使おうとっ!!」

MSA-0120は瞬間的にジェネレーターと推進力を強化する『メガブースト』という機構を持っていた。20世紀から21世紀までの時代に栄えていた『ドラッグレース』で使われていた『ニトロ』に相当するという。この機構の弱点は無理にジェネレーターとスラスターのパワーを強めるため、機体に負担がかかることである。機体に推進剤が一定量は残っていないと不発に終わる、切れた時のパワーダウンというリスクもあるなど、レシプロ戦闘機の『水エタノール噴射装置』よりも高リスクである。そこを攻めどころとした黒江はMSA-0120を調べるため、反則だが、機体越しに自身の持つ技を用いた。

「ビーム・サーベルを突き刺すつもりなんだろうが、読めてんだ。クリスタルウォール!」

MSA-0120がサーベルを突き刺そうとした瞬間、黒江は機体越しにクリスタルウォールを発動させ、サーベルを弾き飛ばす。次いで、機体越しのサイコキネシスで捕縛し……。

「さて、内部機構だけを壊させてもらうぞ。スターダストレボリューション!」

黒江は捕獲のため、機体の駆動系のみを破壊する手段『スターダストレボリューション』を放った。MS越しの一撃だが、一瞬の閃光が敵を貫く。敵はそのツインアイがチカチカと点灯を繰り返した後、糸の切れた操り人形のように倒れ伏す。

「あんたもやるわね。技を機体越しに撃つなんて」

「ものは試しだったがな。鉄也さん、雑魚を散らせますか?」

『やってみよう』

剣鉄也がマジンエンペラーGの『サンダーボルトブレーカー』を使い、百鬼メカと戦闘獣を蹴散らす。凄まじい光景である。

「ヒャア。相変わらずの凄さ」

「君の世界だが、混乱しているようだな?」

「ええ。多分、この分じゃ、太平洋で戦端が開かれても、混乱は続きますね。フランスは日本から革命の時の民衆の非道が伝わったせいで、共和制の大義名分が揺らいでますし、イギリスは財政が死に体で、宛には」

「イギリスは宛にせんほうが賢明だ。東洋に興味の薄い高官や王族も多いからな。東洋艦隊も、空母を持たないならば『張子の虎』にすぎん」

ブリタニアは散々な言われようだが、東洋艦隊はダイ・アナザー・デイ直後の時点で旧式の寄せ集めの陣容にすぎず、連合艦隊の一分隊以下の戦力と見なされている故の評価だ。ブリタニアは扶桑との同盟で地位を保っているに過ぎない事を、かの国の末端が認識し始めたのが1945年。ブリタニアと扶桑の主従関係の完全な逆転は太平洋戦争の最中の1948年である。東洋艦隊は二軍の扱いであったため、その増強に議論がされるようになったのも、ダイ・アナザー・デイの後。1930年代頃に比べれば格段に強化された陣容であったが、ブリタニア本国の財政難で解散の危機にあった。そのため、扶桑が否応なしに海軍力の増強を推進するしかないのだ。

「太平洋戦争の開戦、あと二年の見込み(この事件は1946年の発生である)なんすよ、引き伸ばしに引き伸ばしても。それまでに……」

「長引くだろうから、覚悟しといたほうがいいだろう。日本はミッドウェイ、マリアナ、レイテの事があるから、攻勢は避けるだろうからな」

「やれやれ。あれは日本海軍の戦略と戦術ミスだってのに。科学力の差はミッドウェイん時はあまりなかったしな」

「負けた事実は事実だからな。それを振りかざされては、扶桑海軍は何も言えんだろう。別の自分たちが破滅に向かうきっかけがミッドウェイだからな」

ダイ・アナザー・デイでもそうであったが、扶桑は他戦線から重要戦力を引き抜くことに反対だったが、日本がミッドウェイ、マリアナ、レイテの戦訓を叩きつけ、強引に戦力の集中を行わせた。それでダイ・アナザー・デイに勝ったため、日本連邦は重要戦線に重要戦力を全投入するというドクトリンを確立させ、山本五十六が軍令面で発言力を失う(史実での発言が軍令面での稚拙さを決定づけた形になる)きっかけとなった。代わりに小沢治三郎や山口多聞などが台頭したが、彼らは軍政面で難ありだったので、山本五十六は軍政では画然たる権威を維持した。

「五十六のおっちゃんは軍政は有能なんだけど、軍令がなぁ」

「太平洋の頃の日本海軍の指揮官の多くは戦略がダメだからな。戦術で優秀でも、な。それで、日本は参謀の排除に躍起なんだろう?」

「ええ。でも、近代の軍隊は参謀がいないと回りませんからね。有名な神がかり参謀なんて、レイテと大和の特攻で叩かれまくって、精神的に参ってますからね。日露戦争の秋山真之参謀みたいな天才はそうそう出ないってのに」

「参謀は嫌われやすい職責だからな。特に太平洋戦争の頃の日本軍の参謀ほど、後世に汚点を残した連中はいない」

剣鉄也も、日本で参謀という職責が嫌われる理由が『太平洋戦争の敗北』にある事は常識として知っている。戦後の戦争映画やドラマでの悪役は参謀なことが多かった。

「とはいえ、近代以降の軍隊は複雑だ。世間一般の思うほど、戦いは単純じゃない。俺だって、ミケーネと戦っていた時は幹部から先に倒したかったからな」

「幹部の連中は手駒がなくならねぇと、出てこないのが常だ。俺も、デーモンを殺しまくって、やっと親衛隊隊長の『ゴッド』……俺の同族のデーモンで上役だった……を引きずり出して、倒せたからな」

「デビルマン、妖獣ゴッドと?」

「ああ、ダイ・アナザー・デイが終わってすぐにな」

二人の前にデビルマンが降り立つ。体躯はマジンエンペラーとほぼ同じ28mで、マークVよりは大柄だ。

「あれ、以前はマジンガーZくらいの体格じゃ」

「俺はある程度は体格を調整できるんでな。20mないと、お前らと視線が合わんだろ」

デビルマンは実のところ、体格の調整はある程度は効く。デーモン特有の能力だ。

「デーモンは体格の調整効くんすね」

「高位のデーモンに限るがな。アモンは元々、幹部候補のデーモンだったから、能力を持っていたのさ」

デーモン族は無垢の状態から合体を繰り返す内に、能力を強化してきた。デビルマンの素体になった『アモン』というデーモンは人間タイプのデーモンが『ヤギ、コウモリと融合する』ことで生まれており、それと同じような進化を辿ったデーモンは複数おり、その中でも、アモンの元上司であった『ゴッド』は親衛隊隊長を務めるほどの強豪であり、アモンのことを知り尽くしていた。そのゴッドをダイ・アナザー・デイ直後に倒し、牧村美樹への愛を貫きつつも、以後は牧村家を去り、風来坊となっていると語る。

「風来坊か」

「なーに、サタンは俺のことを愛しているから、どこかの世界のようにはならんよ。俺がまだデーモンと戦ってるのは、ゼノンの意志だ」

「ああ、悪魔王と言われる」

「ゼノンはサタンが俺のことを愛してるのが気に入らんらしい。ゴッドを倒されたことがサタンに知られて、こっぴどく叱られたらしいぜ?」

「その妖獣……ゴッドだけど、あんたの同族?」

「ああ。俺の同族の長だよ。いけ好かない奴だったがな」

デーモン族にはアモンの同族も大勢いるわけだが、不動明はその中でも、『親衛隊隊長』に登りつめた戦士を倒した(アモンの潜在能力がゴッドを上回っていた)事により、悪魔王ゼノンはお冠である。

「デーモンにとって、俺は勇者の意識を乗っ取った大罪人だからな。サタンの意志とは関係なしに、俺とその仲間(デビルマン軍団)と戦うのさ。だから、俺は『デーモンハンター』を続けてるのさ」

この頃、デビルマンは明だけではなく、精神力の強い人間がデーモンを逆に乗っ取って生まれた者達も含む種族名となっている。64Fがダイ・アナザー・デイに勝てた理由の一つも、彼らの一員であるデビルマンであり、普段はヒンズー教の僧侶の集団『ボンズ・オブ・ヒンズー』が協力し、ティターンズの裏をかく戦法を提案してくれたおかげである。

「あんたの配下、どれくらいだ?」

「今は数万だな。戦争で精神力の強い人間が増えたおかげで、デーモン共も合体を躊躇うようになったよ。アジアに向かった一万のデーモンの殆どはデビルマンになったからな」

「なんで、ヒンズー教の坊さんと合体なんかしたんだろう?」

「あいつらに人間の宗教がわかるか?」

「確かに」

デーモンの内、哀れな事に、ヒンズー教の僧侶の一団と合体した者はデビルマン化した。この不祥事に、魔王ゼノンも頭を抱えただろうと、デビルマンはいう。その後もデーモンは無差別合体を実行したが、戦争続きで『タフな人間』が増加している時代の不幸か、尽くがデビルマン化したという。

「時代の不幸か、幸福かはわからんが、デビルマンが異常に増えた。デーモンもこれにたまげてな。おかげで、しばらくは大人しくしてたが…」

「百鬼と組んだわけか」

「ああ。ゼノンは俺にご執心でな。親衛隊隊長まで倒されたんで、サタンの怒りを買ったらしいんだが、俺を嫌うデーモンは山のようにいる」

「しかし、百鬼はなんのためにデーモンと組んだ?」

「お前たちに地獄を見せるためだろうよ、剣鉄也。巻き込んだ子どもたちはデーモンと戦わすな、地獄を見るぞ」

「ああ。そのつもりなんだが、お前が直接言ってくれ、抑えきれんそうだ」

「はぁ?」

「今、食堂に子供たちを集めているけれど、プリキュアの子達はなんていうか、正義感が強くてね」

「正義感だけで戦えるほど、連中は甘くはないんだぞ?近頃のガキは……」

智子からもそう言われ、ため息のデビルマン。とはいえ、プリキュアはほとんどが純粋に『自分たちの大切な何かを護りたい』という考えで動いており、説明を受けたら『黙ってはいられない』性分である。この時の戦いのプリキュアは第一世代のみなので、まだ戦いに覚悟が決まっている。

「でも、この時代はまだマシですよ?」

「お、フェリーチェ。って……お前。何持ち出したんだ!?」

「え、ちょうど、ガリバートンネルで小さくして、実験中のグレートガンバスターですけど」

「どこにあった?」

「しゅんらんの格納庫に」

「本当は300mだから、分離してても入んないはずだからな。それ。ガリバートンネルでMSサイズに下げて実験してたのか」

なんと、フェリーチェはしゅんらんから『グレートガンバスター』を持ち出していた。サイズはガリバートンネルで、大型のMSと同程度に下がっているが、威力はそのままである(初代ガンバスターよりも格段に強大)。本来はグレートガンバスターの操縦機『マイクロガンバスター』がそのサイズだが、グレートガンバスターの運用データが(機体の熟成のために)必要なので、グレートガンバスターそのものを小さくしていたらしい。本来は初代機より100mも巨大なマシンであるので、試験運用にも事欠くほどのパワーを持つ。

「ユング大統領の差し金か?本当は例の二人のために開発してたと聞いたからな」

「いや、書類を見ると、開発プロジェクト自体は初代の完成直後からだそうですよ」

「なにィ?本当か」

「ええ。グレートマジンガーをコンセプトモデルにしているところを見ると」

「操縦系は初代と同じか?」

「ええ。ダイレクトモーションシステム。要はマスタースレーブ方式なので、私でも動かせます。武器も使えますし」

バスターマシンのすごい点はマスタースレーブ方式で超弩級のマシンを操る点だが、流石にガンバスター系は初代の時点で200mを超えるため、地上では投入できない。ガリバートンネルはそんな問題の解決となった。機体の大きさを変えても、武器の威力は落ちないので、便利な戦力となる。

「バスターブレードッ!!」

マジンガーブレードと同じような形状の剣が脚部の装甲から射出され、それを構える。

「グレートなだけに、剣か?」

「トマホークだと思ったら、剣なんですよ。まぁ、剣は扱えないわけじゃないので」

「気をつけろよ。ガンバスター系はガタイがでかいのを小さくしてるから、むやみに武器を使うな。単位あたりの破壊力、真ゲッター以上なんだし」

「わかってますって」

フェリーチェはそのまま大型の翼竜型デーモンに牙突をやらかし、勢いよく、複数を串刺しして、スプラッタな光景を出現させる。牙突の動きを再現可能なあたり、グレートガンバスターの運動性能が高いことの証明である。

「あの嬢ちゃん、なかなかに面白いことをするな、お前らの教育か?」

「いやぁ、強くなりたいってんで、20年くらい仕込んでたら」

「おお、バスターコレダーを展開して、周囲を焼き払ってるぜ」

「みらいがみたら、泡吹くなこりゃ」

フェリーチェはやることが『ドワォ』になったためか、バスターコレダーを放ち、デーモンを念入りに焼き払う、デーモンの顔を握りつぶすなど、なかなかバイオレンスなアクションを見せる。更には脊髄をぶっこ抜く。

「うぉぉ…脊髄ぶっこ抜きかよ。誰だぁ、仮面ライダーシンのことを教えたの」

黒江もドン引きの脊髄ぶっこ抜き攻撃。バスターマシンの超パワーで行うため、デーモンも何の抵抗もできない。元々、宇宙怪獣が進化した『宇宙超獣』との戦闘を想定しているため、格闘時に発揮するパワーもシズラーとも桁違いであるが故だ。

「ははは、こんなの、ファンの連中には見せらんねぇな。ZERO、お前のせいだぞ」

と、この頃は敵であるマジンガーZEROへ愚痴る黒江。フェリーチェの駆るGガンバスターは更に、バスターコレダーの応用と言える大技に入る。

「バスターブレードサンダー!!」

バスターブレードを媒介に、バスターコレダーで起こした電流を放電し、デーモン族を一気に焼き払う。これがバスターコレダーの応用にして、進化したガンバスターの必殺技の一つだ。

「おお、ガンバスター系列もサンダーブレークのような技を使うようになったのか?」

「あんたがサンダーブレークを印象的に使ってきたおかげかもね、鉄也さん?」

「仮面ライダーストロンガーや、君も入ると思うがね。まぁ、今でも獣魔将軍の時の戦いのワンショットが語られるのは悪くはないが」

グレートガンバスターのコンセプトのモデルはグレートマジンガーである。かつての愛機が印象深く語られるのは悪い気がしないらしい、剣鉄也。


「さて、俺たちも行くぞ!子供たちに戦わすわけにはいかんからな」

「了解!!」

この世界にいるプリキュアたちにデーモン族との戦いは酷である。(デーモン族は基本的に、人間の価値観では『卑怯』、『悍ましい』手段も躊躇なく行う種族であり、故に、大いなる意思(神々)も滅ぼそうとしたほどである)こうして、デビルマンと共同戦線を組んだ四人は第七艦隊の支援を受け、戦闘の先陣を切るのだった。



――とはいえ、この場にいたプリキュア達は後代の者たちと比較してだが、『悪と戦う』覚悟と『悪を倒すこと』を比較的に割り切っていた世代の者達なので、自分達が庇護される側である事に反発していたが、自分たちの想像を遥かに超えた敵がおり、自分たちの知らぬ(異世界の存在であるので当然のことだが)スーパーヒーローやスーパーロボットたちが自分たちと別に存在し、彼らも人知れずに戦っていた事に衝撃を受けたのか、『力を持つ自分たちが座視していていいのか!』と、場が紛糾していた。しかしながら、戦いは自分たちでどうにかできるレベルを超えてしまっていることも事実だ。『超音速でメカが飛び交い、宇宙戦艦が隊列を組んで砲撃戦を展開する戦場にいていいのか?』と疑問を持つ者もいる。(キュアアクアやキュアミント、キュアベリーなどの頭脳労働/年長組)とはいえ、新人(この戦いにおけるキュアブロッサムとキュアマリン)もいる状況な上、自分達は力の消耗が極限に達しており、ミラクルライトも効果切れになり、通常フォームに戻っているが、変身を維持できているのが奇跡なくらいだと認識出来ているキュアアクアらは『今の自分らには、戦闘を続けられるだけのパワーがない』と口にするも、年少組は『どうにかできないのか?』と反論する。未知の後輩らが自分らに代わって、戦っているからだ――








――ダイ・アナザー・デイが終わった後、徐々に転生者としての技能に覚醒めたプリキュア達はこの戦いにおける仲間たちを守るべく、奮戦していた。彼女らは本来、この戦いには参戦していないはずであるので、この戦いに参戦していた記録のある大半のプリキュアと違い、パワーソースを侵されたことでのパワーダウンは起きない。つまり、彼女達は平常通りに戦えることを意味する。現役時代に用いていた技を用いる者、そうでない者に大別されたが、代の降ったプリキュアは基本的に手慣れた技で対応し、比較的に初期の世代かつ、先行して転生した者は転生後に身に着けた技能も活用した――






――転生や転移をした者はやってきた後に身に着けた技能がないと言われがちだが、実際には『新たに身に着けた技能に前からの技能を応用する』ことが往々にしてある。キュアハートやキュアラブリーの場合がまさにそれであった――


「プリキュアの道に思いっきり反してるけど、ハイパーメガカノン!!」

キュアハートは転生後に戦車道をしている関係で『乗り物の操縦技術』を持つ。それを応用し、MSに搭乗した。機体は強化型ZZ。なのはがミッドチルダに持っていった個体の予備機である。武装はジュドー機より重武装で、改良型のハイパーメガカノンを持つ。この武器は第一次ネオ・ジオン戦争前後から試験が続けられていたもので、連続使用性などを様々な技術で改良を施した第二世代のモデルである。プリキュアの道には反しているという自覚はあるが、逸見エリカとしての嗜好には合致するので、使わない手はない。技術発展でジェネレーターに負担がかからないようにされている(カノン自体にエネルギー供給用のジェネレーターが搭載された)のも大きいが。なお、この装備との兼ね合いで、背部バックパックのミサイルランチャーは片方が外されているため、ジュドー機とは形状に違いがある。青白い閃光が戦場を奔り、百鬼メカとデーモン族を蹴散らす。

「あらよっと!」

ダブルゼータはこうした乱戦での掃討に向いている。百鬼メカはゲッターG以降のゲッターロボとほぼ同格の体躯を持つので、MSは体格的に不利だが、装甲については『ガンダムタイプの火力であれば貫ける』(逆に言えば、ジム系程度では歯が立たない)ため、こうした光景は普通にある。連邦軍がガンダムタイプの運用に積極的になったのは、機械獣/戦闘獣/円盤獣(後にベガ獣)、百鬼メカにジム系の武器が通じないという現実問題への対処が大きかった。

「ハイメガキャノン!!」

ハイメガキャノンを続けて撃つ。ダブルゼータは軍の現場で『重装型』と呼ばれる。Z系は基本的に軽装である故の対比であろう。その強化型の強化型ZZは『重装改型』である。稼働時間が短い(ジェネレーターに負担のかかる装備が多いため、戦闘可能時間が短い)とされるため、乱戦で火器を乱射し、さっさと引き上げるのが、ZZの通常運用法と定められている。キュアハートもそうしたのである。ジュドーやカミーユ級の腕っこきでないと、ZZは長期戦を戦えないのである。

「よし、後はライフルをばらまいて…っと」

ダブルゼータの運用としては正しい方法である。本来、長期戦も想定されるべきだったが、ダブルゼータが新鋭機であった時代は基本的に戦闘が短期決戦であったりしたので、その傾向の強い機体の多い時代には問題にされなかった。問題になったのは、第四世代機の衰退した後の時代のことだ。

『自動操縦で帰投させるから、回収よろしく!』

キュアハートは自動操縦をオンにし、機体を回収するように頼むと、自分は生身での高速戦闘に移行する。元々、彼女はエンジェルモードの時点で飛べるが、到達高度に限度があった。パルテノンモードであれば、その限度がない。更に言えば、ZZはハイメガキャノンを撃てば、だいたいの役目を終える事を示している。

「さて、ここからは!!」

コックピットに持ち込み、機体を出る時に手に持って運んでいた『青龍偃月刀』を構える。ダイ・アナザー・デイ直後、地球連邦がジオンと反統合同盟の中国大陸にいた残党を掃討した際、現地の残党軍の司令官のコレクションルームから接収したもので、通説よりも前の時代の製造ではないかというもの。本来なら大発見だが、スペースノイド全盛の世の中では、地球で発掘された物は『宝物』扱いされないという珍妙な状況にあった。その関係で、その残党の掃討で功を挙げたキュアハートの手に渡り、ドラえもんの手で『武器としての使用に耐えられるように復元と強化』が施され、以後の彼女の武器となった。実戦で使ったのは、この時の戦いが初めてであった。


「はぁぁ!!」

デーモン族も『十字教的な洗礼処置』+プリキュアの力の加護のついた青龍偃月刀(銘は後に『冷艶鋸』と判明。その事から、かの関羽雲長の使っていたものでは?と囁かれているが、青龍偃月刀は宋代の発明だとされているため、詳細は不明)にはひとたまりもなく、彼女になすすべもなく薙ぎ払われる。まさに獅子奮迅である。笑いのプリキュアの渾名を持っていた彼女だが、デーモン族へは情け容赦は不要という事を聞いていたため、険しい表情で狩っていく。声色も普段の甲高いものではなく、低いトーンのドスの効いた声になっているのもあり、別人のような印象を受ける。

「おや、まだ息があったか」

デーモンの一体を地面に叩きつけた上で、頭部を握りつぶさん勢いで掴む。やられているデーモンは情けなく悲鳴をあげているが、意に介さない。この戦いぶりは中継されているため、色々と衝撃を(この場にいた多くのプリキュアに)与えた。不動明がこの後に『デーモン族は人間とは相容れない種族であり、倒すのみ』と教えるのだが、色々とプリキュアオールスターズに波紋を巻き起こす光景であった。



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