外伝その7



−ガンダムF91。フォーミュラ計画の集大成的MSであり、サナリィの誇った「ガンダムF90」の後継機である。
連邦軍は量産機にコストパフォーマンス重視を求めるが、F91の場合は、珍しくオリジナルにほぼ準じる性能を持つ、ガンダムタイプに連なる高級量産機という位置づけで量産機を開発した。だが、難点がある。それは機能として「質量を持つ残像」が削除されたことである。製造コストの問題もあり、量産にあたって過剰性能は廃されたがそれはF91の性能的利点を削ぐモノとしてエースパイロットには不評であり、連邦の腕利き自慢のエースパイロットらにはサナリィに直談判する形でMEPE機能を復活させる者が多かった。シーブックもその内の一人。オリジナルに搭乗した身としては量産型F91は物足りないのだ。そのため特別に機能的にオリジナルに準じる仕様に改修された機を用意したのだ。なので、シーブック機は事実上オリジナルと同等以上の高性能を誇る機体と言っても過言ではない。

「量産型の原型残ってないからねシーブックさんのF91は」
「量産型じゃ不満か……昔の部下を思い出す」
「昔の部下って?」
「アフリカにいるハンナ・マルセイユの事なんだが、アイツには本国が特別仕様機を用意している。それと同じか」
「俺たちはワンオフの超高性能フラッグシップ機が専用機みたいなもんだけど、量産型を使うときはカスタムされてんの」

バルクホルンはジュドーの解説にうなづく。連邦にとってフラッグシップ機であるガンダムタイプを事実上、専用機として使うのは専用機が本国から支給されているマルセイユと同じようなものだろうと量産型F91のシーブック用のカスタム機を評した。エースパイロットにカスタム機を与えるのはストライカーユニットとモビルスーツの共通点であった。モビルスーツの場合はかつてのジオン軍が量産機にエースパイロット用にカスタマイズを施した機体を与えたり、エースパイロットの搭乗を前提に新規の機体、もしくは高性能機を優先配備させた例と同様に連邦軍も高性能機や新鋭機をエースパイロットに優先配備させるのが慣例化しているが、バルクホルンはストライカーユニットもマルセイユがカスタム機を使用する場合もあることを差して「専用機が確保される場合がある」と言ったのだろう。

「超高性能のフラッグシップ機?お前たちのガンダムタイプの事か」
「ああ。初代ガンダムの『RX−78』以来、連邦軍はガンダムタイプを代々、旗印にしてんだ。今はシーブックさんがこの間使った「RX-93-ν2 Hi―νガンダム」が最新のタイプになるかな」
「Hi―νガンダム?」
「νガンダムを超える者って意味。そもそもあれの原型は初代ガンダムのパイロットだったアムロ・レイさん、俺の原隊の機動部隊の隊長なんだけど……が第二次ネオ・ジオン戦争の時にネオ・ジオンの総帥のシャア・アズナブルと決着をつけるために用意したνガンダムっていうガンダムなんだけど……Hi―νはその完成機っていうか、後継機にあたるんだ」

バルクホルンは映像で見た第二次ネオ・ジオン戦争で獅子奮迅かつ一騎当千の活躍を見せたあの白い機体、νガンダムの勇姿を思い出す。ネオ・ジオンのエース機を避けつけず、総帥専用機「サザビー」をも殴打で倒した。肩やシールドに描かれた「A」とユニコーンをモチーフとしたパーソナルマークが印象的な機体。それの完成型と言うことは、映像のあの機体はテスト機かなにかだったのだろうか。

「あのνガンダムはテスト機だったのか?」
「うんにゃ、あの時は戦況が切迫してたからね。テストもろくになしで、いきなり実戦に使ったわけ。あれの場合は実戦がテストがわりみたいだったんだ。整備班も苦労してたよ」

第二次ネオ・ジオン戦争時に完成したνガンダムはそもそもテストもろくにしないで実戦投入された急造の機体。なので、フィン・ファンネルの再充電が不能であるとか、機体のバランスが悪く、OSで重心移動に対応するためのプログラムも組まれたなどの問題点があった。それでコスモ・バビロニア建国戦争の時に戦後にエースパイロット用に造られた量産型と試作機を併せたデータでテストを行い、その末に生み出されたのがHi―νガンダムである。技術革新によるダウンサイジング化がなされており、νガンダムが24m以上の大型機だったのに対し、Hi―νは20m級に収まっている。フィン・ファンネルが翼のように装備され、Z系のモノを強化したロングテールバーニアスタビライザーを装備した事が原因だ。小型化によってνガンダムよりも小回りが効くようになったという。

「で、Hi―νはあの時が初めての実戦投入だったのか?」
「ああ。ロールアウトカラーにペンキを多少塗ったままだし、武器も前のνガンダムのものでの間に合わせだけど、それでも強力だよ」

この時のHi―νガンダムは後にアムロ・レイが搭乗する時とは差異が多くある。まずパーソナルマークが記入されておらず、カラーリングもどちかかというとまだ、後々のそれより薄い色合いであるし、原型機のνガンダム用のビームライフルで手持ちの火器が代用されていた。これはHi―νガンダム用に新造された専用火器の大半がまだ納入されておらず、代用品で実戦投入した事情がある。フィン・ファンネルに関しては装備されているが、大気圏内用の調整に手間取り、まだ封印されたまま。それでも最有力の戦力の一角に数えられるあたりはアムロ・レイの基礎設計の確かさが伺えた。

「あの長い大砲みたいなものは何だ?」
「ハイパーメガ・バズーカ・ランチャー。百式が使ってたメガ・バズーカ・ランチャーの小型強化型重火器。あれでネウロイをコアごとぶち抜くのよ」
「ネウロイを?モビルスーツで可能なのか。いくら戦艦以上の火力があるとはいえ……大型には再生力の高いタイプだっているんだぞ?」
「それを火力で強引にねじ伏せるらしい。ティターンズはそれでネウロイを落としてたらしい」
「何っ!?」

バルクホルンが色めき立つ。ティターンズがどうやってネウロイに対応しているのか。謎だったが、アフリカ戦線やウラル方面に行った艦隊の空母によれば「アッシマーやギャプランなどの高性能機の火力でコアを一撃必殺する、あるいはマラサイやバーザムにフェダーインライフルを持たせて地上から狙撃させる」方法が取られている例が取られている例が幾つか報告されているという。ただしこれらは応急的な手段だということが考えられ、ある時を境に方法を変えたらしいとのことだ。

「それはどういうこと?」
「ミーナさん」
「ミーナ」
「立ち聞きするみたいでごめんなさい。ジュドー君、今の話を一回してくれる?」
「OKです」

ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケがやってくる。501向けの火器などのチェックのために格納庫へ来たが、ジュドーとバルクホルンの話が耳に入り、話に加わった。ジュドーは先程の話をミーナにも話す。すると。

「なんでティターンズはモビルスーツでの攻撃から手段を変えたのかしら」
「多分火器の調整もあるからじゃないですか?モビルスーツのビーム兵器、特にライフルはエネルギー充填に専用施設がいりますし、銃身だって取り替える必要がある。製造施設があるにしても、この時代じゃ資源の採掘から始めないといけないですからね」
「それじゃもっと効率がいい方法が取られ始めたって考えたほうがいいわね。でもそんな急に……」
「ああ」
「あなた達ウィッチを動員したとすれば合点が行くってことです」
「あれ、シーブックさん。いつの間に」
「F91の整備をやろうと思ってな。それで……」
「でもシーブック君、彼らにウィッチ部隊を作れるわけがないわ。運用ノウハウも持っていないし、概念がないのよ?」
「捕虜にしたウィッチにそれをやらせれば良い。ウィッチだって千差万別、中には祖国の、軍のやり方に疑問を持つ者だっているはずです。それを利用すればいい。ネオ・ジオン戦争の時にそういう事はよくあった」
「…!!それじゃ私たちは戦友と戦うこともあり得るの……!?」
「はい」
「でも助ける方法は必ずあるはずだわ……あなた達だってそうだったんでしょう?」
「ええ。俺達もやったことですから、あなた達にできないはずはありませんよ」

それは第一次ネオ・ジオン戦争の時に多くの兵士が所属軍を変えていった事実があった事を踏まえた発言であった。ハマーンの起こした戦いでは、どの勢力も統制が甘く、裏切りや内通が横行した。中にはエゥーゴを裏切ってネオ・ジオンヘ寝返たもの、ティターンズの崩壊で、行き場を無くし、エゥーゴ所属となった兵士もいた。それを当てはめれば連合軍のウィッチもティターンズへ望んで所属した者がいると考えた方が至極自然である。
ミーナはその事実に愕然とした。だが、それを救うのがミーナたちの役目であるとジュドー達は言った。彼女らを救えるのは同じウィッチのみ。ミーナはそう信じ、友と戦うようなことがあっても自分が救ってみせると心に強く誓った。

 

 

-その翌日 

「フム。アフリカで反攻作戦か……向こうも大変だな」

−北郷章香である。彼女は本来、新型ストライカーユニットの501への輸送任務についていただけなのだが、裏で自らのために策動するトレヴァー・マロニー大将を警戒するウィンストン・チャーチル首相の要請や扶桑本国の山本五十六海軍大臣の指令により501にオブザーバーとして関わる事になった。

「先生とこうしてまた一緒に戦えるなんて……嬉しいです」
「ハハッ、まったくだよ」

坂本は幼き頃に北郷に鍛えられた。その頃に戻ったかの様に、普段の豪胆さは鳴りを潜めている。それをこっそり尾行している人物がいた。
ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケである。ミーナの前では見せていない、まるで子供のようにはしゃぐ姿に驚き、後をつけることにしたのだろう。

なお、北郷の歓迎会はこの日に行われ、ド派手に執り行われた。その時の様子を少し語ろう。
上層部の人間たちも複数参加したこのパーティーは大いに盛り上がったが、今回最も頑張ったのは他ならぬミーナであった。
豊田副武大将や小沢治三郎中将などの連合艦隊司令部の要員の前でミーナは得意の歌を披露した。ミーナが歌ったのはこの時代の歌であるが、
未来人も多数いるパーティーで歌うには盛り上がりに欠けた。場を盛り上げるべく、シャーリーが先陣を切った。(因みに今回のパーティーでは学生時代にバンド経験ありの赤城の搭乗員達が本式に演奏及び伴奏を担当しており、如何なる時代の歌でもOKである)

未来文化に馴染んだ面々は「ここからが本番だ」と息巻きながらポップミュージックを歌いまくった。

「フフフ、あたしの出番だな!」

マイクを持つなり息巻くシャーリー。ミーナはシャーリーの歌がどの程度なのかお手並み拝見と言った様子で椅子に座る。音楽が始まり、歌が始まる。するとミーナには聞きなれない未来的な(要するに20世紀後半以後のJポップ)メロディーが流れ、シャーリーが歌い始める。曲名は「only my railgun」だそうだ。

「〜〜♪」

シャーリーはこのパーティーが始めるまでの数日間、カラオケセットを使って秘密特訓を積んでいた。場をミーナ一人に持って行かれるのはどうにもシャクであるので、
歌唱力を特訓した。付け焼刃ではあるが、苦労の甲斐あって聞き苦しくない程度にはなった。そのため選曲はカラオケセットで一番ましな点数がたたき出せたということでのもの。ジャンル云々以前の問題であるが、とにかく場を盛り上げることには成功した。サビの部分ではほぼ全員がノリノリとなり、
そのままの勢いで歌を終えた。

「ふう……ハラハラドキドキしたよ」
「でも盛り上がりましたよシャーリーさん!」
「それ聞いて安心したぜ。次は誰だ?」
「オレだ」
「おー、何歌うんだよカンノ。お前もなんかやったのか」
「まっ、見てろ」

菅野がここぞとばかりにステージに立つ。曲は未来世界ではスタンダードな曲の一つとなっている「GET WILD」である。アレンジはご丁寧に女性ヴォーカルでアレンジした別バージョンだ。

「〜〜♪」

これまた会場は盛り上がりを見せる。ミーナはお株を奪われた格好となり、思わず「ぐぬぬぬ……」と唸ってしまう。元々歌手・声楽家志望であった彼女にとって、この事実は悔しいことこの上無かった。ましてや彼女は歌が得意だと自負していたので、当然であった。しかし彼女と言えど、いきなり最低でも40年は優に後の時代の音楽、しかも根本的にジャンルが違うポップ系の音楽を唄うというのは些か無理がある。この時のパーティーで最も悔しい結果に終わったのは他ならぬミーナ自身であった。(サーニャは好評であったため)
更に追いうちをかけたのは坂本が意外に歌が上手いという事であった。坂本自身も一か八かで歌ったのだが、存外、上手く歌えたとの事。坂本の場合は曲はよくわからないので、バックバンドに任せた。そのため何が演奏されるかは彼等のみぞ知ることであった。

「って、これかよっ!坂本さん歌えるのか……?」

歌い終え、席についた菅野は思わずそう呟く。曲は21世紀頃に流行ったアニメのEDテーマであった。曲名は「NO, Thank You!」。

 

坂本も自分の時代の音楽とは明らかに異なる、早く、そしてアップテンポなミュージックに戸惑う。

(こ、これは!!21世紀頃くらいの音楽ではないか!?くそぉ、1980年代以後の音楽などまだ一、二度しか聞いた事ないぞ……どうする!?)

坂本はミーナ達より先に20世紀末以降の文化に触れているとは言え、これには窮した。しかし連合艦隊の司令部の要人達や未来艦隊の司令部も同席しているこのパーティーで恥をかくわけにはいかない。
歌わなかったら扶桑軍人の名折れというモノ。

(ええい、ままよ!!)

必死に脳内の引き出しにある歌詞を思い出し、歌った。坂本の成長を心から喜ぶ北郷。もうこの時、坂本は何も怖くなかった。

「〜〜♪」

坂本にとって、普段聞き慣れた流行歌(戦後生まれの人々はこの時代の流行歌のジャンルを`歌謡曲`と思い浮かべるだろうが、
戦前戦中に当たるこの時期の音楽はジャズの要素が含まれ、俗に言う演歌とは全く違うのである。そのため戦前にジャズは無かったというのは戦後に生まれた印象論に過ぎないのである)
とは全く異次元と言えるポップミュージックに戸惑いを隠せないもの、北郷の笑顔に勇気づけられ、なんとか歌い終える。

「中々よかったぞ。頑張ったなぁ、坂本」
「あ、ありがとうございます先生!」

坂本は師の北郷の前ではかつて見せていた側面が顔を出すらしく、その笑顔はかつての扶桑海事変当時同様ものへ戻っていた。その笑顔は普段の豪快な性格しか知らないミーナ達を驚かせた。

(嘘っ……美緒のあんな姿初めて見たわ……付き合い長いけどあんな可愛い姿……!)

ミーナは坂本が垣間見せた少女らしさに「心にズギューンときた」」ようで、羨ましげな表情を見せた。

そして今度は坂本茂がマイクの上に立つ。ロックな音楽が響く。
20世紀末に人気を博した2人組の某音楽ユニットの曲である。曲のタイトルは「LOVE PHANTOM」との事。

「〜〜〜♪」

この曲で場は更にヒートアップするもの、ミーナはちょっと複雑そうであった。ロックに慣れていないせいもあるだろうが、いまいち乗りきれないのだ。

‐しょうがない事であるが、ミーナ達にとって、ロックは全く未知のサウンドである。そもそもの起源が戦後にアメリカ(この世界ではリベリオン)で勃興する音楽である。
そのため少なからず抵抗感があるのだ。(日本でも1960年代当時、ある年齢より上の世代には「騒音」、「バカ丸だし」などと罵られたという伝説が22世紀にも言い伝えられている)

‐例えば1960年代に歴史的に有名な4人組の某グループが来日した際のコンサートに行った当時の高校生は停学を食らうハメになったとの逸話が各地に伝わっているが、
それは「新しい文化」が受け入れられる過程には人々の抵抗がある事実の不変の表れでもある。

パーティが盛り上がる中、バルクホルンは戦線で猛者共をも苦戦させるジェット戦闘機について考えていた。世界各国の誇る最新鋭戦闘機の全てを一気に陳腐化させ、あの高速ストライカーである「ホーカー テンペスト」や「P−51H ムスタング」でさえ追従できないほどの圧倒的性能差。ティターンズが使用している中で、一番旧式である「BAC ライトニング」(イングリッシュ・エレクトリック ライトニングの事)や「F−104」でさえ有に音速を超えるスピードで飛行し、各部隊の精鋭ウィッチをたちまちの内に苦境へ追いやった。その空戦機動の数々は斬新であり、もはやこの時代の常識は通用しなくなっている。

「ジェット戦闘機……奴らは何故あそこまで強いのだ……ウィッチだって実戦は幾度も経験しているし、奴らはただ速いだけではないか……何故?」
「いや、そうじゃないぜ大尉」
「山本中佐」

バルクホルンに話しかけてきたのは赤城の戦闘機部隊の隊長である「山本明」であった。
501の面々の内、経験豊富な人員は少なからず自らの空戦技術に自信を持っているが、合同訓練ではコスモタイガーU隊やVF隊に土をつけられている。それはこの日の4日前の定時訓練でもそうであった。

バルクホルンはゆっくりと4日前のことを思い出す。

 

 

 

−この日から4日前

この日、501と艦載機隊の合同訓練が行われた。シャーリーや坂本、宮藤を除いた面々は訓練としては初めてコスモタイガーUやVFと相対したが、一般的なネウロイよりも遙かに高速を発揮する彼らの前に苦戦を余儀なくされていた。それは経験豊富なミーナやバルクホルン、エーリカ、エイラとて例外ではなかった。

「は、速い!クソっ、位置が予知できてもその前に機動を先読みされて避けられちまう!!」

エイラ・イルマタル・ユーティライネンはスオムス軍(フィンランド軍に相当)の最強の「無傷の撃墜王」である。
その力はニュータイプに近い感知系のもので、少し先の未来を予知できる。その能力を以てしてもコスモタイガー隊の面々に模擬弾を当てることができないという現状に焦りを見せた。

何故、エイラを以てしてもコスモタイガー隊が空戦の優位に立っているか?
彼女らと相対するコスモタイガーUとVF隊の面々は史上有数の航空戦である「フェーベ航空決戦」や「白色彗星帝国との本土防空戦」などを生還した文字通りの精鋭達であるのも大きく、大気圏内では翼面荷重の関係で`重戦闘機`と言ってもいいコスモタイガーUを高機動用バーニアを駆使し、凄まじい空戦機動を見せつける。

「背後を取ったからって安心するなよ!」
「なっ、んな馬鹿な!?こんな動きをするなんて!?」

コスモタイガーの一機がエイラの眼前で機首を上げ、スピードを落とす。失速かとエイラは思ったが、そうではない。機首を持ち上げ、後方に向けて一回転し、一瞬にしてエイラの背後を取り返したのだ。これはジェット戦闘機時代最高峰の空戦機動の一つ「クルビット」である。これはエイラにとっては『常識はずれ』もいいところで、予知できてはいたもの、そんな真似を本当に実行するとは思ってもなかったのだ。そこからさらにコスモタイガーの機銃掃射がなされる。エイラはなんとかそれを回避するもの、
普通の空戦での常識が通用しないジェット戦闘機時代の機動に舌を巻いた。

他にもVF隊と相対したルッキーニとハルトマンはVF−19Aの超絶的な機動性に翻弄され、機銃を当てられずにいた。

ガウォーク、ファイター、バトロイドと3つの形態を縦横無尽に使い分け、ジェット機としては驚異的な旋回半径の小ささで2人を追撃する。

「うじゅ!?あたしたちについてこれるの〜!?」
「聞いた話じゃジェットはレシプロより旋回半径大きいはずだよ〜!?」
「フッ、そんなのはVFには通用せん。エクスカリバーは伊達じゃねえんだよ」

エクスカリバーのパイロットは巧みに機体を操り、2人にぴったりと追従する。ジェット時代の空戦では格闘性能も時代を追う毎に向上し、
朝鮮戦争の頃には「F−86」が第二次大戦の遺物たちを圧倒するようになった。それから時代を得て、
極限に近く発展したVFにもなると、欧米の一般的なレシプロ戦闘機程度なら(運動性能重視の零戦などの日本軍機を除く)急旋回にも余裕で対応出来る。
模擬弾が装填されたガンポッドを連射し、ハルトマンらを圧した。

 

‐なにせ高速で弾丸が迫ってくるのだ。ネウロイのビームに慣れている2人もこれには肝を冷やす。模擬弾とわかっていても追いまくられると焦ってしまう。ルッキーニがその網にかかり、ストライカーユニットに弾丸が命中する。

「うぇっ!嘘ぉっ!こんなのありぃ〜!?」

思わず歯噛みして悔しがるルッキーニ。未来世界では機銃の照準器も精度がグンとアップしている。ミノフスキー粒子散布下であっても機銃の照準器は機構的に単純なので、それほど影響が出なかったせいもあるが、照準補正はほぼ自動で行われる。そのためすぐさま行動を起こさないと蜂の巣となる。弾速もこの時代の機銃を遙かに超える初速があるので、如何にルッキーニなどのエースであってもその速さに慣れていないと命中させられる。(これはアフリカ戦線でマルセイユが経験済み)それを指し示す一コマであった。

ペリーヌはバルクホルンと編隊を組んでいたもの、コスモタイガーらの銀翼の快音に切歯扼腕していた。
レシプロエンジンを前時代の遺物であるとばかりに高速で飛行し、2人をあっという間に追いぬく。

「そんなっ……この距離で追いつけるはずが……」

ペリーヌは愕然とした。安全距離を取っていたはず(Me262でもやすやすと追いつけないほど)なのに、一瞬で追いつき、あまつさえ更に追い抜いたのだ。
VF-25S(大隊長機用の先行配備機)の流麗なフォルムと速度に応じて角度が変化する可変翼に陽の光が反射し、その姿を美しく見せる。更に2人を驚愕させたのは変形であった。飛行機が一瞬で人型に変形するのだから驚きも当然であった。

「人型になっただと!!ZZといい……コイツといい……未来の兵器というのは一体どうなっている!?」

変形が当たり前である未来兵器。更にコストをかければ合体まで実現させている。その威力に改めて驚嘆するバルクホルンであった。

「さて、これで俺らの勝ちだな」

ガンボッドの模擬弾が2人のストライカーユニットに命中する。結果、初の合同演習で無傷であったのは扶桑のストライカーユニットを纏う面々(宮藤、菅野、坂本、北郷、シャーリー)だけであった。
欧米のモノを使っていた面々が翻弄された要因はどこにあるのか。北郷とミーナは帰還後のブリーディングでその理由を説明した。

「何故彼らに翻弄された者と、そうでなかった者とに差が出たのか?それはユニットの飛行特性の違いだ」
「特性の違い?」
「ええ。ジェット戦闘機はその速力と火力が脅威なの。私やバルクホルン大尉、ハルトマン中尉達が使っている欧州系のストライカーユニットは運動性能より速度性能を重視してることは皆、知ってるわね」
「はい」
「ジェット戦闘機はその上位互換的な側面を持つものが多いの。だから欧州やリベリオンのユニットでは相対的に不利なの」
「そういえばハンナも昨日電話で言ってたなぁ」
「何っ!?おいハルトマン、どういうことだそれは」
「その場じゃ言わなかったけど、昨日、ハンナから突然電話があっんだよトゥルーデ。言うとひっくり返ると思ってさ」
「何がだ?アイツから電話が来たくらいで驚く私ではないぞ」
「じゃハンナが部隊指揮官代行をやるハメになったって事は?」
「……はははっ、何かの間違いだろハルトマン。アイツが指揮官代行?冗談も大概に……」
「それが本当なのよバルクホルン。昨日上層部から通達が来て、正式にマルセイユ大尉が第31統合戦闘飛行隊の指揮官代行に就任したの。ロンネル将軍が決定されたらしいわ」

「なっ、なっ、なっ、何ぃぃぃぃぃぃぃっ!?」
「トゥルーデ……そりゃ驚きすぎだって」

バルクホルンはハルトマンの予測通り、天地がひっくり返るかの如く驚愕し、腰を抜かしてしまった。バルクホルンはカールスラント本国時代(当時は中尉)に少尉時代のマルセイユの上官であった。
当時のマルセイユは問題児としての傾向が強く、バルクホルンは当時、軍旗違反の常習者かつ命令無視も行うことはザラであった彼女に対し、
「個人として見るならば優秀だが、軍人としては問題が多すぎ、信頼するに値せず」と、辛辣な評価を下している。
その時の記憶からバルクホルンは「マルセイユが部隊指揮を代行する」事が信じられず、あまりの衝撃のニュースに混乱してしまったのだ。
ハルトマンも思わず飽きれてしまうほどに。

「さて、トゥルーデは放っておいて……。それでどうなの、ミーナ」
「え、ええ。欧州やリベリオンに対して、扶桑のストライカーユニットはその反対にとにかく運動性能と機動性を重視してるの。
そのため小回りの効き方が欧州やリベリオンのそれよりもいい事が普通なのよ」
「そうだ。扶桑では巴戦を重視していたからストライカーユニットは当然ながら機動性が良い。それは欧米的な戦法を前提に作られた陸軍のキ44やその後継のキ84、
局地迎撃用に造られた海軍の雷電でも同じだ。だから扶桑では巴戦用の空戦機動が考えられ、実行されている」

それは日本(扶桑)軍機特有の事情によるもの。教育法が長らく巴戦を重視したものであった故に欧米流の編隊空戦こそ導入されたが、編隊全体による一撃離脱戦法は
精鋭と謳われる陸海軍の一部部隊(ウィッチ・航空機部隊問わず)での実験か、個々の自発的な行動のみに留まっている。そのため、ウィッチも航空機搭乗員も、とにかく格闘戦での運動性能と機動性を重視しがちである。
それは採用機にも強く現れており、一撃離脱戦法を前提にした初のストライカーユニット「二式戦闘脚「鍾馗」の完成時には多くのベテランやエースが運用に懐疑的であったという
逸話が残っている「採用はしたが、いざ、どうなるか」と、心配されたが、使ってみたウィッチ(智子や黒江などのエースや巴戦の限界を悟っていたベテラン達や進歩的な若手など)からは大好評であり、その戦闘機版も難なく採用された。
だが、それは扶桑海事変で苦戦する機会の多かった陸軍航空部隊の話であり、海軍側は扶桑海、そして並行時空の太平洋戦争の戦訓にも関わらず、依然として巴戦重視の考えを捨てきれない。

例えば、零式艦上戦闘機(戦闘脚)の後継機「烈風」に格闘性能の充実を盛り込んでいた結果、速度と運動性能の両立が計画開始時最大馬力の「誉」を以てしても
不可能であること(実は烈風の試作機に使われていた誉エンジンは戦闘機・ストライカーユニット共に、工場での製作過程で、ある工場がミスを犯し、吸排気ポートや吸気系通路の鋳物が型崩れを起こした状態で製造したものであった。
性能はぐんと低下し`栄よりマシ`な程度の馬力しか発揮できない状態であった事が軍部に伝わるのは翌年の事であった)が判明し、急遽、誉の対抗馬「マ‐43」(ハ43)が積み込まれたら想定通りの高性能を発揮し、
今年(1944年)にようやく生産体制が整ったという有様で、数年ほど完成が遅延してしまった(西沢が未来世界で使っているモノはその先行生産機)。それは弊害であったが、良い点もある。
その運動性能は「木の葉落とし」、「捻りこみ」(陸軍ではツバメ返し)などの神がかり的なマニューバーを実現させられる事は大きな強みであった。

 

「木の葉落としやツバメ返しなどだが、これは扶桑のユニットに慣れた者でなければ出来ない。他の国とは思想が違う故、他国のウィッチからは扱いにくいと判断される事が多いんだ」
「そりゃそうだ。あたしもゼロよりは紫電や雷電のほうがまだ使いやすいと思ったしな……」

シャーリーは先の一件でP‐51Dを壊してしまい、またまた雷電と紫電を使っていた。そのため扶桑のストライカーユニットへの設計思想を読み取ったのだ。
この点はスピード狂かつメカ好きな一面のおかげだろう。シャーリーは宮藤に「扶桑で使うんなら紫電か雷電だな」と言っているとか。

 

−と、言う訳である。バルクホルン達もこのブリーディング後は状況に応じて他国のストライカーユニットを使用するようになり、宮藤が初陣で使った試験装備も連邦軍空母内の艦内工場にて生産体制が整い、配備される事になった。

 

この日の夜のこと。エイラ・イルマタル・ユーティライネンは援軍の持ち込んだモビルスーツの機動性を肌で感じていた。18m級の巨体でありながらも軽快に攻撃を回避する様。そして重火器の数々……。正に超兵器だ。エースと散々言われた自分がアレほど苦戦を強いられるなど、今でも信じられない。

「……`ガンダム`か」

エイラは未来世界での戦場でエースパイロットのみが搭乗を許され、幾多の戦場を保有する軍の勝利に導いてきたガンダムと言う名の`最強のモビルスーツ`の伝説にやや信じられない思いだった。だが、ZZの戦技無双ぶりを見せつけられては,開いた口がふさがらなかった。さらに格納されているガンダムF91の持つ武勇伝に驚きを隠せなかった。

−たった一機で艦隊を壊滅させた化物を打ち倒したって……?

クロスボーン・バンガードのラフレシアを` 質量を持つ残像`で打ち倒したとシーブックの談。そしてそれを裏付ける超絶的機動性と火力。モビルスーツの最高峰と位置づけられる伝説的存在の名を継ぐ(そもそもは開発スタッフが初代ガンダムに似せて作ったら後から連邦軍に`ガンダム`の名を継ぐに値する機体`と判断され、名を継いだに過ぎないが)機体の威力はこの間の戦闘で存分に見ている。自分はモビルスーツからサーニャを守れるのだろうか。エイラは底知れぬ不安に駆られていた。
格納庫のモビルスーツ群はどの程度のものか。エイラは気になっていた。そして一年戦争からの記録映像を更に見ることにした。そして、そこで歴代ガンダムの超絶的な戦闘力を垣間見ることになる。

 

 

 

ブリタニア本土で一人の軍人がティターンズの行動に感動していた。彼はトレヴァー・マロニー。ブリタニア連邦空軍の大将で、戦闘機軍団の指揮官。
(因みに史実ではトラフォードという苗字であった。)

「これだ。女どもが跳梁跋扈しないあの軍隊こそ、真の漢達による統制された軍隊!」

これはこの時代の人間が持っていた女性蔑視の風潮に染まった発言であり、戦争は男によって為されるべきという太時代的思想だった。彼はストライクウィッチの台頭を嫌悪し、今回の騒乱でウィッチが不利な戦闘を強いられていることを小躍りして喜んだ。あの軍隊−すわなちティターンズに彼女たちの情報を売り渡した。そして彼の心はブリタニアへの忠誠心よりも野心のほうが優っていた。「ウィッチの軍からの排除」。それが彼の野望であり、
そこをティターンズに浸け込まれ、今や彼は完全にティターンズの走狗となった。息のかかった人材をティターンズに派遣したのもその布石。

「見ておれJAPめ」

それは彼にとって扶桑は排除すべき対象としか写っていないことを示していた。そしてその野望を顕現させる道具が……−未来世界ではすでに失われたはずの悪夢のガンダム−
`RX−78GP02A`の再製造機(ティターンズ強硬派がリバースエンジニアリングによって復元させていた)が静かに核弾頭バズーカを持って佇んでいた。

Amen(エイメン)

彼の強化された野望が顕現するのはもうしばらくの時を待たればならない。核に魅入られた狂気の男の狂宴を。そして、その野望は迂闊にも地球連邦軍に筒抜けであった。

 

彼が此の様な売国奴のような行動を行ってる真の理由は「男達によって戦争は行われるべき」という男尊女卑的な思考の持ち主であるのがウィッチが高い発言力を持つ現状に
そこをティターンズに浸け込まれ、彼等の走狗、傀儡へ堕ちた。その結果、
各航空団の行動をティターンズに通報するなどの内通行動を行なっていた。

「おのれ、奴らさえ現れなければ…現れなければ!!ウィッチ共を完璧に排除できたものを……!!」

マロニー大将はティターンズに情報を売り、ウィッチを排除するという目的を間接的に果たそうとしていた。
だが、地球連邦軍もマロニーの行動を察知しており、チャーチルやルーズベルトなどの時の首脳たちに手を回し、彼をウィッチに関わる立場から人事異動させ、要注意人物として認識させると同時に、地球連邦軍は彼の野望を阻止すべく、
特殊部隊を派遣していたが、ここで、何故地球連邦軍が各国から信頼されるようになったのか。そのきっかけとなった出来事があった。

 

 

 

−この時期、連合軍司令部は主に欧州〜オラーシャ方面に出現するジェット戦闘機・爆撃機への対策に追われていた。彼らが誇る大型爆撃機すら凌駕する高高度飛行性能と圧倒的な速度性能、そして大火力。現有のストライカーユニットでは戦闘機には対処は可能だが、16000mを飛ぶ爆撃機の迎撃は不可能であり、各国の緒戦能力は見る見るうちに削られていった。
最初にティターンズの軍門に下ったのは彼らが出現し、最初に侵攻された地域の国々であった。旧・ティターンズは持ち前の機甲・航空戦力で現地の軍を駆逐し、僅か3週間程度で数カ国の政府を屈服させた。当該国家がネウロイとの最前線ではなかった事も災いし、当初は軽く見ていた連合軍だが、最前線の一つ「オラーシャ」にティターンズの欧州方面軍が出現したことから状況が一変。さらに迅速な`生存権確保`のためにティターンズがモビルスーツを投入し始めたことも重なり、連合軍は前線任務の現役ウィッチを急激に損耗した。そしてその破局の一つが第505統合戦闘航空団の事実上の壊滅である。`505`は現地の防衛戦の指揮官「牟田口廉也」中将の稚拙な指揮も相まって散々な敗北を喫した。統合戦闘航空団の消滅は連合の各国に衝撃を与え、戦線を崩壊させた扶桑陸軍への追求が各国から浴びせられた。これに慌てた杉山元参謀総長は牟田口廉也に全責任を被せて銃殺刑に処した。しかし逃亡の過程で彼と、彼に同調した各列強の指揮官らが小国出身の部隊を捨石として用いたのがマスコミに暴かれると、`大国の傲慢`として、小国の不満が爆発寸前に陥り、半分`世界大戦勃発`状態にまでなった。
それを落ち着けたのが地球連邦軍の調査艦隊であった。それはシナプスがこの世界であげた最初の功績だった。

−宮藤芳佳が入隊するより少し前、到着してから1週間程度の期間で、扶桑を中心に磐石な基盤を築いたシナプスは各大国の首脳とヤルタにて会談を行った。

 

 

ヤルタ会談の様子の一部は2205年時の地球連邦軍の参謀本部所蔵の記憶媒体に収められていた。一例として、ウィンストン・チャーチルとの会話を記す。

「……つまり、あなた方はこの世界には`調査`に訪れたと?」
「そうです。サー・ウィンストン・チャーチル首相閣下」

開口一番に口を開いたウィンストン・チャーチルにシナプスはうなづく。`救国`の宰相と謳われたこの人物と対等な立場で話をする事に感慨深いものを感じるが、それを表に見せずに接した。シナプスは会談の中で史実でチャーチルが個人的にバーナード・モントゴメリーに手を焼いていたことを上手く利用し、彼を統合戦闘航空団の処遇に関係する立場から遠ざける事を確約させた。そして先行して調査に訪れていた時空管理局の執務官からもたらされたトレヴァー・マロリーの目論みを告げ、彼の報告を鵜呑みにしないように忠告した。

「あやつは有能だが、野心が見え隠れしおった。まさかな……」
「そうです。閣下にはお見せしなければならないことがあります。……これです」

シナプスはチャーチルに一枚の写真を見せた。それはマロニーの野心と欲望の象徴と言える建造途中の兵器の写真だ。チャーチルは唖然として憤りに打ち震える。

「こ、これは……!!」
「我々の協力者が極秘に撮影した彼の野心の一つ`WR`です」

このWRとはマロニーが極秘で計画を進めさせている無人人型航空兵器の頭文字。ネウロイのコアを利用するという平気だが、それがどうなるか。彼でも容易に想像できる。チャーチルはワナワナと肩を震わせ、怒声を挙げた。

「……あの馬鹿者めが!!功を焦りおって!!」
「このWRが完成した場合、我々はいかなる手段を用いてでも撃墜する所存です。これはあってはならない兵器です」

ウィッチを否定するあまりに一線を越えてしまったマロニーが産み出そうとしている兵器。それはこの世界の人類の自滅を意味するとシナプスは薄々感づいていた。
ネウロイのコアを利用すれば自我に目覚めた場合、`WR`そのものがネウロイ化してしまう危険がある(実際、史実ではその危惧は見事に的中している)。
シナプスは未来世界の反応弾・光子魚雷・波動砲などの最強兵器をフルに使ってでも、この事態の出現を阻止する決意をこの時既に固めていた。

 

 

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