外伝その10


 

―さて、ネウロイを「飛羽返し」で撃破した宮藤芳佳はこの戦闘により、「空の宮本武蔵」の異名を取るようになった。
命名者は扶桑連合艦隊の第一機動艦隊司令長官「小沢治三郎」中将で、芳佳の戦いぶりが宮本武蔵を思わせる事から
そう名づけられた。帰還後、芳佳は坂本から質問攻めにあった。

「宮藤、あんな技どこで身につけた!?」

ズィッと詰め寄る坂本。扶桑のどの巻物にも載っておらず、講道館時代にもそのような秘技があるとは
まったく聞いていないからだ。

「お、落ち着いてください坂本さん。順番に話しますから」

とりあえず芳佳は順番に説明した。非番の日に菅野に連れられ、アフリカ戦線へ赴き、そこで一人の男と
出会ったこと、その男の名は「飛羽高之」と言い、普段は未来世界の地球で戦っている「ヒーロー」である事、
また彼は「太陽戦隊サンバルカン」という部隊の隊長であり、自分が使った技は彼が使っているもので、
それを伝授された事を。

「つまりあの技はその人から教わったと?」
「はい。コツが掴めれば坂本さんも出来ますよ」
「ほ、本当か!?よぉし!!……ん?ちょっと待て。ここからアフリカはかなりあるぞ?どうやって往復したんだ」
「俺が2人を送ってるのさ」
「山本中佐」

芳佳と坂本の前に山本明が現れた。彼は元・宇宙戦艦ヤマト所属であったエースパイロット。
今はヤマトから転属したが、特例により彼はヤマトでの制服を着る事が許されている。
山本曰く、コスモタイガーUの三座型で2人をアフリカ戦線まで送り迎えしているとの事だが……。

「コスモタイガーをタクシー変わりにぃ!?いいんですかそれ」
「まあ俺たちは暇だからな。長距離飛行訓練代りにはちょうどいい。それに新鋭輸送機のテストにもなるしな」
「新鋭機?」
「ああ。人数が多い時はそれを使っている。アフリカ戦線の部隊への物資輸送にも使っているんだが、
乗り心地はいいぞ。ちょうど出発前だから見てみるか?」

……と、いうわけで坂本達は艦内格納庫に足を運んだ。そこには「空間汎用輸送機 SC97 コスモシーガル」の姿があった。
双ブーム方式の機体で、かつてのOV-10の血統を思わせるが、ティルトウイング式で、「V-22 オスプレイ」の子孫とも
思わせるフォルムを持つ機体であった。

「これがコスモシーガルか……」
「ああ。今までの救命艇や探索機の後継として新規開発されたばかりの新型機だ。これで色々な役割を果たせる」
「兵員輸送機にするのはどうやって?」
「機体の下部のコンテナを換装するのさ。あれで空間騎兵隊を多数載せられる。この時代でいう所の海兵隊かな」
「凄いですね」
「まあなるべく単一機種で用を済ませたいって思惑もあるけどな。ちょうどハルトマン中尉がアフリカに用があるとかで乗るから、
芳佳ちゃん達のついでに乗せるが、少佐も乗るか?」
「ありがとうございます。しかし、何故ハルトマンが?」
「お菓子の受け取りだそうだ」
「〜〜っ!またアイツは〜!!虫歯になったらどうする!」

ハルトマンは大の甘党だ。年がら年中お菓子を食っており、バルクホルンにお菓子を制限されるほどである。幸いこの艦に乗艦後は
ジュドー・アーシタらから食い過ぎを戒らめ、ジュドーとシーブックの手により強制的に歯磨きさせられた(彼等曰く`子供の頃の妹を思い出すから`)
事から最近は控えているが、マルセイユが愚痴を聞いてもらう対価として、菓子を贈呈するという約束をしたので、その受け取りに行くのである。

「と、まあこれで4人か」

と、整備兵らに乗員数を伝える山本。彼は護衛機となるコスモタイガーUへ走る。エンジンを温めるためだ。

 

 

 

 

 

 

 

−その頃のアフリカ 

『合体!!グランドクロス!!』

コズモバルカンとブルバルカンが合体し、巨大ロボとなる。これぞサンバルカンの誇るスーパーロボット「サンバルカンロボ」である。
その勇姿は凄まじく威圧感溢れるものであった。

「おぉぉ〜〜〜♪か、カッコイイ……」

その合体シークエンスはマルセイユも思わず見とれてしまうほどのカッコよさである。別々のメカが合体するというのはこの時代には
考えられないものだが、いつの時代も「変形合体」というのはメカニック好きを唸らせるものであることの現れであった。
サンバルカンロボは合体機構が取り入れられた初めてのケースなので、単純なものだが、後発の戦隊では合体メカニズムが複雑化し、
ゴーグルVでは三機のメカニックが合体するようになり、更に後の「光戦隊マスクマン」以降は5機合体となっている。
だが、合体機構が単純というのは、外装含めた機体構造への装甲の割合が高くなり、フレームへの負担が軽く、
剛性が高いという利点がある。その点は後発の戦隊ロボに対する利点でもあった。

サンバルカンロボが相手取っているのはMRX-011「量産型サイコガンダム」。
エゥーゴとの決戦に備え、サイコMK−Uをベースにダウンサイジング化して生産した機体である。
サンバルカンロボより遥かに小型であり不利とも言えるが、ロボは1980年代という、開発年代からはとても考えられないほどの
俊敏性を見せ、量産型サイコと対等に渡り合う。

量産型サイコガンダムはその火力でサンバルカンロボへ攻撃を加えるが、スーパーロボットであるサンバルカンロボには傷をつけるには
至らず、逆に反撃を受けていた。とは言え、サイコガンダムは量産型とは言え、サイコミュによる制御を行なっているせいか、すばしっこく、
サンバルカンロボは手を焼いていた。マルセイユはこの間、この激突に見とれてしまい、仕事をすっかり忘れていた。

 

「量産型とは言え、サイコガンダムの火力は厄介だ。太陽剣で一気に勝負をつけるぞ!!」
「おう!!」
「おっしゃっ!サンバルカンロボの実力を見せてやろうぜ!」

バルイーグルが最初にコマンド入力を行う。この技は音声とモーション入力である都合上、大声で叫びつつポーズを取らないと
発動しないという難点がある。だが、それらを差し引いても、威力は間接的な後継機たる、
ゴーグルファイブの有する「ゴーグルロボ」の「地球剣・電子銀河斬り」と比較しても劣らない。そして後発の戦隊ロボでたまに見られた
「技が効かない」という事も無い(躱されたことはある)無敵の必殺技。3人が、そしてロボが『復唱』して発動させる。

『太陽剣・オーロラプラズマ返し!!」
『オーロラプラズマ返し!!』
『オーロラプラズマ返し!!』
『オーロラプラズマ返し!!』

イーグル、シャーク、パンサー、更にロボまでが復唱し、召喚した太陽剣を一回転させ、オーロラを発生させる。
そのエネルギーを増幅させ、敵を斬るのがこの技の特徴である。
大鷲龍介が操縦していた際には横に切っていたが、飛羽高之が操縦する時に縦のパターンが追加された。剣の心得がある飛羽はそれを
組み合わせ、十文字斬りを用いるようになった。以後はこれが主要パターンである。
サイコガンダムに離脱させる隙を与えぬスピードでサンバルカンロボは剣を奮い、一撃で屠る。

「す、凄いじゃないか……あんな巨体を一撃で……」
「これがサンバルカンロボの実力さ。さあ、後は君の仕事だぞ大尉」
「了解っ!」

マルセイユは対空砲(M163対空自走砲、87式自走高射機関砲)のレーダーを用意していたチャフをばら撒く事で撹乱。射撃統制装置の
モード切り替えなどを行う一瞬の隙を狙う形で「Ta183」の高速で一気に突破。基地内へそのまま侵入。超低空飛行
(といっても基地内の天井が高かったため出来る芸当。地面からちょっと浮く程度の高度だが)で散策する。敵に見つかるのはお構いなしで
とにかくセシリア・グリンダ・マイルズ少佐を探す。

「少佐ぁ〜!!どこだぁ〜!いたら返事してくれ〜!!」

警備用のロボット(大昔の監視用ロボの延長線上に位置するもの)を「MK 108」機関砲で破壊しまくり、
時折、やって来る兵士は器用に転ばすなどして気絶させてトイレにぶち込む。これはMe262であるなら
とっくに稼働限界時間に達しているので、Ta183と第二世代魔導ジェットエンジン「HeS011」の優秀姓が伺える。
(史実と異なりMe262の失敗と試作ストライカーユニットでの事故を踏まえ、失速特性が改善されていたため、低空での低速運転にも
耐えられる)

このマルセイユの必死の行動にも関わず、マイルズはそれどころではなかった。

とにかく戦っている(肉体派の兵士との殴り合いで顔に痣ができているが)彼女はゴロツキ共の喧嘩よろしく、
あらうる戦法を使ってくるティターンズ兵士との殴り合いに苦慮している。

「おりゃあ!!ダブルラリアットじゃあ!!」

マイルズは敵のダブルラリアットをモロに食らって吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる。

「〜ったぁ……
よくもやったわね!!うぉりゃあ〜!!」

すぐさま立ち上がり、相手の足を掴むとそのままジャイアントスイングを行い、そのまま勢い良くぶん投げる。

単純な技であるが、ウィッチとしての力を行使している状態であったので、ぶん投げた相手は勢いよく壁をぶち破っていった。

「いけない、ストライカーユニット履いてる状態だったんだ……うわあ……生きてるかな?」

思わず「あちゃー」のリアクションをするマイルズ。

だが、それがマルセイユに自らの存在を気づかせる効果を上げた。

「ん!!?」
「マルセイユ大尉、来てくれたのね」
「ああ。しかしこれは……派手にやったなぁ。」
「え、ええ。まあ。でも、飛行型でよく動けたわね」
「天井が高かったのが功を幸したようだ。さあ脱出するぞ」
「了解!

 

 

−アフリカのとある別の戦場

「な、何アレ!?」

今回はティーガーの後継機「レオパルト」を使っているシャーロット・リューダーは上空に現れたそれに思わず目を奪われる。
それは電撃戦隊チェンジマンのリーダー「チェンジドラゴン」の駆るマシーン「ジェットチェンジャー1」であった。
普通の戦闘機とSFメカと中間のような外見のメカである。

『制空権確保は任せてくれ!!君たちは戦線確保を行うんだ』
『り、了解!』

シャーロットは無線越しに聞こえてくる声にそう答える。上空のメカは味方のようだが……。

 

「すごい……あんな大きいのに高等の空戦機動ができるなんて」

大型爆撃機にも匹敵する大型の機体(コズモバルカン以上の巨躯)でありながら、
空戦型ネウロイと互角の空中戦を行うそのジェットチェンジャー1の姿に驚きを隠せないシャーロットたちであった。
そしてそれを操る戦士は地球の秘めたパワーを力の源にするとは、この時は知る由もない。

チェンジマンはサンバルカンとは別の戦場のカバーを行なっている。バルイーグルからの通信によれば、近いうちに
「ゴーグルファイブ」が合流できるそうだ。軍・民間問わず、戦隊の垣根を超えた「共同作戦」は始まりつつある。
チェンジドラゴンは心躍る思いで「ジェットチェンジャー1」を操り、シャーロット・リューダー達のいる領域の制空権確保を
続けた。

 

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