外伝その72『最強の大海獣の宴』


――史上最強の艨艟の宴は始まった。連合艦隊主力(大和型戦艦2隻と三笠型富士を主力にする戦艦部隊)は、ブリタニアの新旧の艨艟の護衛を受けつつ、リベリオン本国軍艦隊と対峙した。


「撃ち方初め!」

小沢治三郎の号令のもと、連合艦隊の新旧の艦艇が砲火を上げる。艦隊はリベリオン艦隊に肉薄する形で航行し、かつてのネルソン提督が行ったような、『ネルソンタッチ』を敢行、リベリオン艦隊の脇腹を突いた。

「よし!敵の脇腹を突き、正面突破だ!突破次第、同航戦に移行し、体力勝負と行くぞ!」

ネルソンタッチで正面突破に打って出る連合艦隊。それを阻止せんと砲火を集中させるリベリオン艦隊。双方ともに、小艦艇から脱落艦が生じる。

「ド・ヘイヴン、轟沈!ビール、落伍!!」

「敵ブリタニア駆逐艦を複数、撃破に成功!!」

モンタナのCICには、近代化で敵艦艇と、友軍の状況を知らせる戦況表示モニターが備え付けられており、それによると、大型・中型艦の周りの小艦艇が十字砲火に耐えられずに双方ともに撃沈していく。それらの屍を踏み越える形で、双方は砲撃戦を行う。魚雷を放つ者もいるが、一、二発で参る大型艦はいないため、無駄な努力に終わる。

「よし!弱いブリタニア艦から海の藻屑にしてやれ!弾種は徹甲!!撃てェー!」

彼らは大和型戦艦や三笠型を後回しにし、ブリタニア艦から狙った。これはブリタニア艦は新鋭艦でも、自分らの徹甲弾を防ぎきれないと踏んだからで、それは的中していた。

「よーし、まずは先頭のR級からやるぞ!撃てぇ!!」

彼らは連合艦隊主力の先頭にいる『リヴェンジ』を狙い撃った。幸い、ネルソンタッチの要領で突っ込んでくるので、狙いがつけやすかった。海戦の様子を観測すべく、空母を発艦して、上空にいるウィッチ達はその様子をモロに目撃した。


「リヴェンジが!」

竹井が悲鳴を上げる。モンタナ級戦艦二隻の40cm徹甲弾は、一発がリヴェンジの第一主砲塔に命中する。近距離での命中であるので、防盾は役に立たなかった。同砲塔を粉砕し、更に角度が浅い都合上、同艦の甲板に大穴を穿って爆発した。

「次に同じところに当たれば、轟沈するな……今ので轟沈したっておかしくないダメージだぞ」

「戦艦がそう易易と沈むのか?」

「主砲弾薬庫が爆発すりゃな。だから、弾薬庫はいざというときのために、注水とか出来るようになってるんだが……ん?お前、いくら航空兵だからって、それくらいは知っとけよ。空母だって、搭載機用の弾薬の爆発で沈むだろ〜が」

「うぅ……戦艦に乗ることはそんなになかったんだよ。空母搭乗員だった事もそんなになかったし」

「いいか?今回の見て覚えろよ?坂本、お前って奴は……。こんなの、小学生でも分かるぞ?戦艦乗り組みがなかったわけでもないだろう?ったく……私のほうが詳しいって、どーいうことだよ。お前のほうが本職なんだぞ?」

そう。黒江は陸軍上がりで、坂本は本職の海軍軍人だ。本来ならば坂本のほうが詳しくて然るべきだ。ところが、坂本は士官教育の段階で航空兵に特化された教育を受けたのか、知識が空母に偏っているのだ。

「しょうがないだろう。私は速成教育を受けた世代なんだぞ。少尉任官だって、14歳までの一年だったし……」

「マジかよ……んな短かったのか……」

黒江は頭を抱えた。自分が少尉任官まで費やした時間は3年(12歳から15歳)で、防衛大学校も4年の時間があり、更に幹部候補生学校がある。連邦でも2年から3年は要するので、これはあまりにも短い。

「お前の時代、砲術のカリキュラムなかったのか……?」

「あ、ああ……。私の頃から、早期育成が求められ始めたから省略されたんだ……。今はもっと進んだはずだぞ、確か」

「あ、アホか――!」

思わず叫んでしまう黒江。当時の上層部を思わず罵りたくなったのだろう。


――実際、上層部でもこの頃から、『リウィッチ』が生まれるようになった事、技術加速による兵器の急激な高度化を背景に、空戦ウイッチの教育期間の延長を提案する声が出始めていた。これはジェット機に乗りたくとも、航空電子工学などの知識が必要であり、促成訓練だけで動かせるような機体で無くなっているからだった。更に、ミサイル関連などで増えた無線コードを暗唱できるようにする事、連邦との交流に語学力が必要であるなどの都合もあり、既に高度な教育を受けたウィッチは重宝された。その為、促成組の再教育が必要となり、主にカリキュラムが省略された坂本やミーナ世代以後の戦中組が再教育を任じられた。(三羽烏も連邦で再教育を受けている)これは古参組から反発もあった。『私達が受けた教育はなんだったんだ!』と。当然の反応だった。連邦への留学は、次第に現役将校らに対象が広まり、彼女らの教育面の救済を兼ねた措置に変わっていったという。


「今になって、問題が出るなんて誰も思わなかったんですから、仕方ないですよ。私も殆ど再教育に等しい研修受けましたから」

竹井が双方の間を取った事をいい、場を収める。坂本や自分の世代は短縮されたカリキュラムで兵学校を出たので、どうしても戦前の期間で教育を受けた世代とは差が出てしまうのだから。黒江は根が真面目なので、自分がいうと角が立ってしまいそうなので、竹井の助け舟に安堵した。

(サンキュ、竹井。助かった。私が言うと、言い方がキツくなるからな)

(お安いご用ですよ。美緒も薄々とは感じていると思うので)

竹井は角が立たないように、双方を立てる。彼女はこういう世代差の認識の違いを理解し、尊重する事が巧みだった。黒江はこの後、竹井に頭を下げ、更なる次元の人心掌握術を学んだという。

「お、同航戦になるわよ!」

圭子の一声で、一同は海上を注目する。艦隊はいよいよ、同航戦に移り、砲撃戦を行い始めた。わずか数分、目を離しただけであるが、駆逐艦の数がだいぶ減っていた。大口径砲が行き交う戦場なので、至近弾でも船体に亀裂が入るのが当たり前であったためだ。双方で無事な駆逐艦は、装備云々は関係なく、練度が特に高い艦が中心だった。

「戦艦は?」

「リヴェンジは落伍してる。あれはもう、長くは持たないわね」

リヴェンジはあれから更に被弾したか、艦隊から落伍し、船体全体が燃えていた。各部の被弾で出来た破孔から浸水し始めており、もう、その運命は明らかであった。その敵を討たんと、意気軒昂なのが『ウォースパイト』(クイーンエリザベス級)であった。同艦は練度が高く、なんと格上であるサウスダコタ級に連続で命中弾を与えていた。

「リヴェンジの敵を取る!総員奮起せよ!」

――ウォースパイトの奮戦は、英国海軍魂の発露と言わんばかりのもので、サウスダコタ級を叩く。

「通常弾だ!徹甲は弾かれるから、炸薬で甲板より上を焼くんだ!!」

彼らは榴弾を見舞い、サウスダコタ級『サウスダコタ』を痛撃する。榴弾の特性を活かし、サウスダコタの甲板より上を焼き払う。だが、彼らも無傷でない。お返しの砲弾で8連装ポンポン砲が何個か吹き飛ぶ。

「被弾!」

「消火急げ!……奴らもいい砲手がいるな。いきなり命中弾がでるとは」

「ええ。ですが、敵は頑丈ですな」

「仕方がない。我が艦隊はライオン級と一部のKJ級しか16インチは積んでいないのだ。我々の役目は、扶桑艦隊の露払いだ。撃滅ではない。照準が狂うのは多めに見るしかあるまい」

ウォースパイトは火災を起こしつつも、砲戦を続行するが、照準が甘くなる。それを承知の上だ。だが、彼らに女神は微笑んだ。火災が起きる前に放った砲弾が、Mk12『5インチ砲』を吹き飛ばす事に成功し、彼らを歓喜させた。その様子はウィッチたちからも見えた。


「おーし!!ウォースパイトがサウスダコタの両用砲をふっ飛ばしたぞ!」

「敵艦隊の損害は?」

「あ、今、富士の22インチで、ノースカロライナ級がぶっ飛びました!」

旗艦である富士の22インチ砲は、大和型戦艦を含めた従来艦のバイタルパートを一撃で貫通せしめる威力がある。ノースカロライナ程度の装甲では56cm徹甲弾を防げず、史実のフッドよろしく、一瞬で轟沈する。弾薬庫で爆発したのだ。ノースカロライナ級は上空からも確認できるほどの爆煙と共に海に没した。

「ノースカロライナか?ワシントンか?」

「多分、ワシントンでは?ノースカロライナは沈んでます」

「そうか。これで敵はサウスダコタ級以降のみになったな。それと……。」

眼下で砲撃戦を行う、ガリアの象徴となるはずであった『アルザス級』。同艦はアイオワ級の砲を備え付けられて参陣しており、その高性能でブリタニア製新鋭艦に優位に立つ。

「あれがアルザスか……。全長は250mくらい、主砲はリベリオン製のに変えられているが、船体はオリジナルらしいな」

アルザス級は、艦橋構造物などの上層構造物の殆どはオリジナルだが、射撃指揮装置はリベリオン製になっており、幾分か、オリジナル設計と趣を異にする。この時期は一番艦『アルザス』が実戦投入され、二番艦『ノルマンディー』は艤装途中であった。自由ガリア、ひいてはガリア共和国に残された三番艦『フランドル』、四番艦『ブルゴーニュ』を独力で完成させる余力はなく、『ブルゴーニュ』級として、連邦軍の有償援助枠で1950年に完成するに至る。だが、その頃にはガリアそのものが衰退に向かっており、同級は『ド・ゴールのおもちゃ』と揶揄されるのだった。

「あ!デューク・オブ・ヨークを見てください!」

「ああっ!」

デューク・オブ・ヨークもまた、主砲故障により、大きく火力を減じた状態で戦ったため、アルザスに傷めつけられ、もはや主砲火力は半減していた。更に最悪な事に、彼女らの見ている前で艦橋に被弾してしまったのだ。元々、設計的に艦橋の装甲が駆逐艦並という艦であったので、その難点が露呈したのだ。この戦訓は、後に完成する、チャーチル肝いりの『セントジョージ級』に反映され、司令塔の重装甲が復活したという。

「煙幕だ!煙幕を張って、退避しろ!」

デューク・オブ・ヨークは辛うじて難を逃れた者達の手でヨロヨロと退避していく。テメレーアの華麗な活躍と対照的で、海戦の様子を連邦軍から逐一、報告されていたチャーチルはデューク・オブ・ヨークの醜態っぷりに激怒し、『何たるザマだ!!栄光の大ブリタニアの戦艦にあるまじき……』と憤慨したとか。一方、ウォースパイトの奮戦には大喜びで、『勲章ものだ!』と歓声を上げたという。


――扶桑三大戦艦は、確実に一隻づつを戦闘不能に陥らせる事に全力を注ぎ、モンタナ級戦艦やアイオワ級、サウスダコタ級、アルザスを護衛する巡洋艦から片付けていた。

「ボルチモア級を蹴散らせ!徹甲榴弾を使って燃やすぞ!撃ち方始め!!」

大和型二隻、三笠型は巡洋艦を徹甲榴弾で攻撃し、ボルチモア級を炎上させていく。超大口径弾なので、榴弾の炸裂時の火災はもの凄く、往年の下瀬火薬さながらの光景が展開される。

「命中!」

「派手に燃えとるね」

「徹甲榴弾ですから。奴さんはまだ、不燃仕様の塗料にしとらん艦がおったようです」

富士のCICでは、小沢に参謀である矢野志加三少将がこう返す。

「22インチを巡洋艦に使うのはもったいないですが、向こうも対策を考えていると思い、使わせました」

「よろしい。問題はデモインだ。あれは中々、手強いぞ」

「あれはもう、弩級戦艦といって差し支えありませんので。あれは戦巡で対応させます。本艦以下、戦艦の相手は超弩級戦艦のモンタナらです」

矢野少将はモンタナを『ライバル』と認めているようだ。大和型以下の主砲の仰角は、モンタナ級戦艦のいる方角に向けられる。

「砲術長!門数は向こうが有利だが、打撃力はこっちが優位だ。存分に叩きのめせ!」

「ハッ!それを待ってましたよ」

砲術長は通信越しに、ニヤリとする。富士の背後では、大和型戦艦によく似たシルエットを持つが、マストがトラスマストである新鋭艦『戦闘巡洋艦』が主砲をデモインに向け、咆哮する。甲斐は僚艦と共に、モンタナへ砲を向け、咆哮した。

「だんちゃーく、今!!」

第一弾は外れる。

「うーむ。外れたね」

「次で夾叉できれば御の字ですよ」

航空戦力を挟まない、純粋な近代戦艦による大規模艦隊決戦は、未来世界では『ユトランド沖海戦』以来、この世界の歴史では史上初である。その様子は連邦軍によって、各国首脳部も視聴しており、チャーチルはユニオンジャックを片手に手に汗握り、亡命リベリオンのアイゼンハワーは海軍のニミッツと共に、海戦を静かに見守り、扶桑の次期総理大臣『吉田茂』は建設途中の国防省で視聴し、ガリアのド・ゴールはアルザス級に血の涙を流したりしている。

――この海戦で真価を発揮する大和型戦艦と三笠型戦艦。その勇壮な姿と、圧倒的な装甲は扶桑の国威発揚となった。ラジオニュースはこのように伝えた。

「『我が新鋭戦艦『富士』、『甲斐』を中心にした連合艦隊は、去る8月X日よりロマーニャにて、敵海軍と戦闘状態に――』」

この日、大本営から統合参謀本部への改編準備中の『大本営統合参謀部発表』として、『新戦艦』として、三笠型の存在が公表された。その為、国民は狂喜した。他の追随を許さない『要塞』と言っていい艦を得た事は、『戦艦が軍事力の指標』である時代である故、扶桑国民へは大きな効果だった。





――ウィッチ達は砲撃戦を観戦しつつ、三笠型からの要請で、主砲の誤差修正観測役としての役目も担っていた。それは主に圭子の役目だ。

「着弾、誤差修正、上げ0.5度……」

艦隊からの通信に返信する圭子。超視力を持つ故、観測機の代役もこなすように指令を受けたからだ。砲術は未来でかじっていたため、誤差修正の範囲で時々、砲術長と揉める。

「大変そうですね、加東中佐」

「未来で砲術やった事あるからな。だから、ああやって、艦の砲術長と揉める事あるんだよ」

黒江は、艦の砲術長と口論になっている圭子に同情する。海軍の砲術専攻の士官としたら、航空兵とは言え、陸軍に誤差修正を言われるのは癪に障るのだろう。だが、そのような陸海のいがみ合いをしている場合ではない。だが、圭子の顔に怒りマークが一個出来た。何か言われたらしい。

「……や、やばい。怒りマークが出来た。奴さんに何か言われたらしー……」

圭子は表情は冷静であるように見えるが、顔に怒りマークが出来ている。黒江は『今の圭子』が完全にキレる事を恐れており、語尾が震えだしている。

「お、おい。どうした黒江。顔が真っ青だぞ」

「ヒ、ヒガシ、お、お、落ち着け。な、な?な?」

黒江は完全に怯えだしている。圭子の纏う空気が変わりだしたからだ。ゲッター線を浴びてからは、『切れると怖い』性格になっており、黒江が聞いた話だと、『引退した同期を麻薬中毒患者に陥れた極道の根城に殴りこんで、単身で全滅させた』、『親戚から金を騙し取った悪徳業者の建物に殴りこんで、建物を倒壊させた』という、嘘か真かの話が聞こえている。この時期の黒江は『才能』に目覚める前なので、完全に怯えていた。また、後に才能が目覚めてからも、『ヒガシは怒ると怖い』と周囲に公言しているので、圭子としては、『そんな事ないわよ!?』とぶーたれているとか。

「大丈夫よ、黒江ちゃん。怒ってないから!」

「い、いや、それ十分キレてるしぃ〜〜!」

「……思い出した。あの時――」

『アッハハハハ!!ヒャッハァ―――!!』

「……って事になってたなぁ……。加東さん」

「あ、ば、バカ!それ……」

「……黒江ちゃん、坂本」

「は、はひぃ!」

「終わったら、私の部屋に来なさぁい?」

顔は笑顔だが、目は笑っていない。事を察した黒江と坂本はお互いに抱き合って泣き、竹井は『……なにこれ』と目が点だ。圭子としては、事変最終決戦の際の暴走は、触れてほしくない思い出であるのが分かる。この後、坂本と黒江がどんなお仕置きを受けたかは、彼女達の名誉に関わるので、言及は避けておく。



――砲撃戦が最高潮を迎える。艨艟達はその力を発揮し、敵と戦う。そして、次第に敵味方問わず、力尽きる者が続出する。

「マサチューセッツ、轟沈!!」

「キングジョージX、大きく速度を落として落伍していきます!朝潮、夕雲の機関停止、行き足が止まります!!巡洋艦『愛宕』、主砲塔全壊、沈黙!!」

大口径砲が飛び交う戦場で生き残れる巡洋艦以下の艦艇は少数だった。戦艦でさえ轟沈が普通にある戦場では、巡洋艦以下の艦艇は『大破』状態で残れたら大バンザイだった。

「頼むぞ!」

甲斐の砲術長が望みを託した砲弾は、モンタナに向かい、そして。轟音と共にモンタナの第一主砲塔の砲身を圧し折る。砲塔のすぐ近くに着弾したのだ。

「おっしゃあ!!これで奴の攻撃力は低下したぞ!」

CICで小躍りして喜ぶ砲術関係者ら。

「じゃれ合うのは後だ!次の目標決定だ!! 急げ!!」

叱責を受け、次の目標に狙いを定めるが……」

「うおっ!?」

艦全体が揺れる。

「被弾か!?」

「いえ、第三砲塔で事故があったようです!」

「こんな時に事故だと!?」

なんと、第三砲塔で爆発が起こるというアクシデントが発生したのだ。第三砲塔は煙を吐きながら沈黙している。これで甲斐も攻撃力が落ちた事になる。後の記録によれば、発射薬を落とした事による不慮の事故であったが、砲塔要員は『戦死』として扱われ、同艦が現役期間中は同艦乗員による慰霊祭が行われていたという。また、この事故は、戦闘中の揺れによる事故として、発射薬取り扱い規程が改善され、安全性の増した新式発射薬の開発のきっかけになったのだった。



――甲斐の僚艦『大和』が代わって、モンタナに痛打を与える。そして、アルザス級がついにライオンを捉え……。

「ライオン、第一砲塔、破損!!」

「今のはどこからだ!?」

「アルザス級からです!」

「ええい面倒な!本艦とテメレーア、コンカラーはアルザスを狙うぞ!」

この時期の大和艦長は松田千秋大佐であった。防空射撃や爆弾回避に定評があり、大和型の基本計画時に携わった経験からの拝命であった。ミッドチルダ動乱後期からは森下信衛大佐が務めていたので、史実とは就任順が前後した事になる。彼の後任は有賀幸作大佐に決まっており、この後のクーデター事件の際は、彼への交代の直後だったという。また、森下信衛大佐は、有賀幸作大佐の後任である大野竹二大佐が怪我で入院した際の代打で再登板し、山本五十六の遺言により、彼が買っていた西田正雄大佐へのバトンタッチを1948年に行ったとの事。(山本五十六は1947年から体調を崩しがちになり、翌1948年の7月28日に死去した。史実より5年3ヶ月は長命であった。元帥海軍大将であったため、国葬に処されたという)


――大和は奮戦する。アルザスも大和の46cm砲でも容易に屈しない装甲を持っており、大和と渡り合う。双方の艦隊は再度の変針により、扶桑=ブリタニア連合艦隊が左から、リベリオン艦隊が右に位置するようになっていた。そんな時だった。

「ん!艦長!敵ウィッチを確認!」

「敵はウィッチを本艦の攻撃に出したのか?」

「いえ、目標は……この海域にいる全ウィッチです。魔導エンジン反応、増えます!本国のウィッチ部隊を、予備の空母を使って、この海域に回したと思われます!」

「……加東中佐、喧嘩しとる場合か!敵ウィッチ部隊を確認した。喧嘩なら、ワシが後で仲裁してやる。今は新たな任務を言い渡す!敵ウィッチを撃滅せよ!繰り返す――」

――空では、魔女たちの宴が開始されようとしていた。それは世界規模の公式記録では初の魔女たちによる大空中戦。魔女たちの宴が始まる――



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