外伝その147『鋼鉄のDreamer3』


――Gウィッチは人間である事に耐えられずに『奇跡にすがった』存在。そう王立国教騎士団の吸血鬼は例えた。自分がそうであるように。彼はかつて、ヴラド・ツェペシュ(ヴワド三世』)と名乗っていた王であり、れっきとした人間であり、普通に天に召されていれば、英霊に数えられていた。未来世界においては吸血鬼化して生き延び、インテグラの祖先であるヘルシング教授に屈伏したという経緯を持つ。英霊としての彼とは別個の存在となり、彼個人として吸血鬼となったのが『アーカード』である。彼はGウィッチを『自分と同じで、人間である事に耐えられず、奇跡にすがった弱い存在』と評し、自分と同類とも言う。これが彼なりのGウィッチへの評だった。それは黒江も自覚していた。数度の転生を行い、神になった後も『本質的には以前から変わってない』と自嘲しているが、その弱さが『人間である証』であるとも言っている。のび太に憧れを抱いているのは、後事を子孫に託し、子孫達が素直にそれを守った事である――


「前、アーカードの旦那に会ったんだが、アンタも無茶やってるせいか、一応神様として条件満たしてるみたいだぜ?って言ったら、あの人、『今更、神になる気はないが、神々がそうしたいのならそうすればいい』って返事もらったんだよな。あの人、今の暮らしに満足してるようだな」

レヴィはのび太に言う。

「あの人は人間としてよりも、鬼になってる時間の方が遥かに長いし、英霊の座にいく事には興味ないようなんですよ。不死化した後で、生前と別の存在になった反動かも」

アーカードは英霊としての自分は『別の存在』と認識しているようだが、Gウィッチへは辛辣だが、ある意味で真理を突いた発言を残している。また、長く生きてきた故か、日本と大和民族を『炭火の様な人々』と評している。枢軸国で唯一、最後まで連合国に抗った激情を持ち、一度激怒すると、アメリカですらも三年以上苦戦するほど止められなかった事の暗喩だ。また、置き火のように燃え上がり、世界の覇権を経済で成した様に行うことを予期した言葉なのかもしれない。

「あの人は長く生きてるから、どこか達観してるようだけど、それでいて、ライバルが現れる事を求めてる無邪気なところあるんだよな」

「何百年も生きればそうなるんでしょう。甲児さんだって悲惨ですよ。『成長』が許されないんですから」

「ああ、甲児の奴、苦笑いしてたぜ。2018年にアニメの新作が今更来たろ?」

「ああ、言ってましたね」

「皆が求めてるのは『Zに乗ってた頃』のあいつで、大人になったあいつじゃないからなー」

甲児はそのアニメの自分が明確に大人として描かれているのが不評であるのに苦笑いしつつも、『俺だって年を食うんだぜ?』と嘆息していた。甲児は鉄也に重荷を背負わせた事への罪の意識を持っているが、自分はあくまで『一本気の熱血漢』であり続ける事を未来過去、平行世界を問わず求められるのに疲れを見せている。圭子がキャラを変えたのも、甲児と同じような理由である。圭子も二度の人生のいずれも『優しいお母さんキャラ』を求められていたので、三回目ではうんざりし、キャラを大きく転換している。それ故に甲児に同情的だ。

「あたしも三回の人生送ってるけどよ、今回はこのキャラで通してる。ぎょーぎの良いお母さんキャラなのに飽き飽きしてるんだよ」

レヴィとしての粗野な性格は優等生的に過ごすことにうんざりした圭子の素でもある。

「そう言えば、今回はみんなはっちゃけた性格ですごしたとか?」

「綾香が一番遅かった分、その期間は事変を省くとほとんどない。あたしと智子は一年以上の期間があるからな」

「今回は大変だったみたいですね」

「未来に影響出ない程度に素行を悪くする必要もあったけどな」

『…で、42、3年のあの事件か?』

『そうだよ、隊長。あたしが一番早くに覚醒したんでね。暴れたわけよ。わざわざ紅海から邦佳引き抜いてな』

『紅海戦線帰りの連中が愚痴っていたと聞いたが、原因はお前か』

『あん時の真美じゃ僚機出来ねぇし、ライーサはマルセイユにべったりだったしな。交代要員として、もう一人確保したかったんだ。お膳立ては真美にやらせた』

『だからって、昔の名声で引き抜く事はないだろ?向こうの部隊の連中はお冠だったみたいだぞ』

『だから、本国に泣きつき易い所から抜いたんだがな、ウチの部隊の上位部隊がハッキリしてないせいなのか、人員補充頼んでも埒開かんし、智子はスオムスで隊長してるから呼べねぇし』

『お前、穴拭を呼ぶつもりだったのか?』

『呼べるモンなら、な。綾香は例の事件待ちだから、智子にも話は電話でしといて、ハルカの了承も得てたんだが、向こうの元帥が手放さなかったんだよ』

『マンネルヘイム元帥か』

『ああ。色々言い訳して引き伸ばしやがってさ、結局、智子の第一次の頃には無理だった。まー、それをネタにエイラをもらうが』

『今度の太平洋戦線にユーティライネン中尉を引き抜くだと?』

『サーニャが行くし、あいつはホイホイくっついてくるさ』

圭子はサーニャをエイラを呼び寄せる道具にするつもりだった。それは見事的中する。

『ハエ扱いはヒドイぞー、止めてくれよナ』

『え、模擬戦でMGぶっ込んでもヒョイヒョイ避けるからハエとか蚊とかの使い魔つけてんだと思った』

『違うゾ―!ニュータイプみてーなもんだって!フェネクス乗れてんダロー!』

噂をすれば影、上空援護にエイラがやって来た。今回はニパとセットだ。

『イッル、これって?」

『日本のスーパーヒーローの人たち大盤振る舞いだ。リベリオン人の連中見たら悔しがるゾー』

『日本って、向こうの世界での扶桑の名前だよね?』

『うん。だけど、今度から同じ連邦になる国らしーから覚えとけヨ、ニパ』

会話をしつつ、低空へ降下すると、エイラとニパには信じられない光景の連続であった。


『ライダー回転キィィ―ーック!!』

2号ライダーの回転キックが衝撃波で怪人と戦闘員をまとめて吹き飛ばし――

『ライダー遠心キィィ――ク!!』

V3が26の秘密が一つ『ライダー遠心キック』で複数の怪人を巻き上げつつ、キックで一気に倒すのを目にする。更に。

『大・切・断!』

アマゾンのアームカッターが怪人イソギンチャクを一刀両断に伏すスプラッタを目にする。

「お!?今度はなんだヨ!?」

エイラとニパが慌てて急停止する。Xが自分達の高度まで跳躍し、ライドルスティックを軸に大回転をしだしたからだ。

『X!!必殺キィ――ック!』

大の字になってから、足の先にエネルギーをいつもの倍も集めてキックを放つXライダー。その威力はV3の同名のキックの数倍だ。それにストロンガーも続く。

『チャ――ジアップ!!』

ストロンガーは超電子エネルギーを開放し、チャージアップストロンガーにチャージアップする。この状態のエネルギーは黒江のライトニングテリオスすら遥かに凌ぐ。跳躍し、これまた大の字になり、その場で高速回転してエネルギーを一点集中する。ストロンガー最大最強の大技。

『超電!!稲妻キィ――ック!』

電気が1とすれば、超電子は100のエネルギーを引き出せる。黒江のアーク放電も問題にしない出力と破壊力。その発露により、戦場に赤い稲妻が走った。

『うわっ!!今のはなんだ!?』

「あれが超電子エネルギーだ。綾香のアーク放電すら問題にもしねぇ破壊力をぶつけたんだ。見ろ、地面にクレーターできてるぞ」

超電子エネルギーは歴代仮面ライダーの中でも指折りの破壊力を持つ。その威力は怪人軍団の隊列に大きな穴を開ける程だった。エイラはその破壊力に打ち震える。

「ほら、お前も仕事しろ、ズドン巫女」

「へいへい。分かってるぜ」

レヴィはサイドアームを手持ちのグレネードランチャーに持ち替え、連射して邪魔な戦闘員を吹き飛ばす。この時代、グレネードランチャーは史実であれば、とっくのとうに発明され、普及しているが、人間同士の戦闘のなかったウィッチ世界では第一次世界大戦レベルのものが辛うじてある程度だ。M79のような単発猟銃型の外観を持つモノは影も形もない。レヴィはこのM79の外観を模したオリジナルを空中元素固定で形成し、散弾銃と同じような感覚で撃ちまくる。それで、シンフォギア装者顔負けのフットワークであるから、驚きである。また、調もそれに答え、ウィンチェスターライフルを作り、レヴィを援護する。のび太から教わったか、レバーアクションにしては信じられない連射速度である。形はかの名優『ジョン・ウェイン』が生前に出演した数々の西部劇で使っていた『M1892』である。(実際に西部開拓時代に使われていたのは、その前々型なのだが)

「し、調!それってウィンチェスターじゃない!どこから取り出したの!?」

「作ったの、空中元素固定で。構造さえ覚えればどんなものでも作れるよ」

驚くマリアをよそに、援護射撃を行う調。構え方などは正規の訓練を受けた軍人のそれで、撃ち方も様になっていた。黄金聖衣を使う状態で撃つのは実に稀であるが。黒江と同じく、空中元素固定能力を持つ者がそれを用いれば、ライフルのような複雑なモノも作れるという事だろう。如何に怪人が頑強であろうと、頭部さえ破壊すれば無力化する。(中には、そうでない者もいるので、その場合は人工心臓と中枢である脳髄を同時に狙撃する必要がある)のび太に仕込まれた銃撃の腕は俄仕込みではないところを見せた。

「待って!貴方、F.I.Sにいた頃に戦闘訓練は受けたけど、セレナが死んだ後でシンフォギア装者としての実験に入ったから、通常の戦闘訓練は……」

「のび太くんの家に何年もいれば、のび太くんに付き合って、西部開拓時代とかに行った事もあるから、自然に覚えちゃって…。それに師匠の記憶もあるから」

「それだけで!?」

「連邦軍で一応、正規の訓練は受けてるよ。近いうちに正式に志願して、入るつもりだよ」

太平洋戦争時には士官候補生、少尉となるのだが、ダイ・アナザー・デイの際には、まだ軍に行くとの志望を伝えた段階であった。これは後に、クリスが通算で二度も突っかかってくる事になり、それはそれで苦労するのである。クリスは自らの過酷な体験により、根本的に軍隊に対し、良いイメージが全く無いため、調はその度に動機を説明する必要に迫られる。クリスは、のび太やレヴィに突っかかるほど喧嘩っ早い性格ながら、意外に純真でもあるので、説明を受ければ基本的に干渉しないのだが、クリスAは調が『先輩』である自分を頼らずに、黒江の元へ出奔し、しかもその後はのび太のもとに身を寄せていた事実に、溜まっていたフラストレーションが爆発してヒステリーを起こし、半暴走状態に陥るが、のび太が鎮圧する事になる。結果として、クリスAは自分の短慮さを恥じ、以後は積極的にサポートに回っていく事になる。調は実のところ、タイムマシンを活用しているので、少年のび太の時代と青年のび太の時代とを定期的に通っている。『何年もいる』と言ったのはそのためでもある。のび太を心から敬愛するのは本当である事が分かる。また、西部開拓時代に行ってしまった少年のび太を助けに行った事もある。のび太も『妹』を得た事で、青年期以降の要素を次第に持つようになり、ダイ・アナザー・デイの時点では、メカトピア戦役当時よりも精神的に成長している事が分かる。

「一つ聞いていい、レヴィ」

「なんだ?」

「貴方たち……調もだけど、何の目的で動いてるの。未来もわかっているのなら、どうして」

「どこかの平行世界の仮面ライダーが言っていたことだけどな、『運命と戦う』ためだ。その仮面ライダーは最強フォームに変身を繰り返す事で不死の存在になってまで、ダチと世界を守り、何処となく姿を消した。そのライダーがダチへ言い残したのが今の台詞だよ」

仮面ライダー剣/剣崎一真が言い残したという、『俺は運命と戦う、そして勝ってみせる』という一言は、彼と交戦経験がある仮面ライダーディケイド/門矢士によって、Gウィッチ達へ伝えられた。神に選ばれて転生し、半ば前史からの惰性で戦っていたGウィッチ達にある種の生きる目的と行動指針を与えたといえる一言である。

「そう。私も師匠と同調した後、『何を目的にして生きていけばいいの?』って考えた事あるよ。だけど、師匠のその記憶が目的を与えてくれたんだ」

「運命と戦う……」

「平行世界には、マリアがセレナの代わりに死んだ世界もあれば、そもそも私がF.I.Sに拾われず、そのまま事故で死んだ世界もあるし、日本で平凡に生きる世界だってある。私はその中の流れからは外れた存在だよ、マリア」

「つまり、貴方は……」

「聖闘士になる時点で、それまでの自分の自尊心なんてかなぐり捨ててるよ」

自分はもはや、シンフォギア世界で生きる『自分』という枷から開放されたGウィッチであると明言する調。黒江が神格になっていた影響でGへと覚醒し、平行世界の自分の記憶を得、人格が変化した事も暗示する。そのためか、以前の物静かさは薄れ、黒江同様の活発さが表れている。どちらかと言うと、生前の修行時代のアルトリアに近い性質だろう、

「マリア。アームドギア、貸して」

「何をするつもり?」

「こういう事」

アガートラームのアームドギアを自前で作り変え、エクスカリバーにする。これはシンフォギアのアームドギアの構造にすら空中元素固定能力は干渉出来る事の証明だった。

「アガートラームをエクスカリバーに作り変えた……!?嘘でしょッ!?」

「構成する元素を組み替えて作り変えただけだよ。昔の漫画のキューティーハニーに組み込まれてた空中元素固定装置を、自分の能力として持ってると思って」

調が持つそれはもはや、アルトリアのそれと何ら違いない『聖剣』であった。魔法によるコピーとは観点を変えた『科学的な複製』である。黒江から引き継いだ魔法と自前で覚醒させた小宇宙とで、アルトリアの約束された勝利の剣と同一の効果を発揮する。ある意味では『小宇宙があれば、奇跡は起こせる』というのは当を得ていた事になる。

『約束された……勝利の剣(エクスカリバー)!!』

エクスカリバーはこれで三度奮われた事になるが。いずれも圧倒的な威力を持つのが証明された。調がシュルシャガナでなく、エクスカリバーを使うことに不満気な切歌であるが、エクスカリバーには黒江のせいでトラウマがあるのか、畏怖に打ち震えている。エクスカリバーにはイガリマを断ち切られ、更に自身が何度か食らったため、恐怖が染み付いたのだ。

「エクスカリバーは聖剣の一つの完成形だもの。存在が不確かなザババの刃と違って、明確に信仰されてる剣。イガリマやシュルシャガナよりも上位の存在だよ。イガリマやシュルシャガナは欠片からの再現が変質してるのか、聖剣の投影キーには使い難いんだよね」

「どうしてデスカ!?」

「だって、元々は向こうの方の三日月刀だよ?イガリマもシュルシャガナも。鎌と鋸に変質してるもの」

「正確にはシャムシールだな。だから、今のシンフォギアとしての姿は伝承とはかけ離れてるし、伝承の力は一部しか持っていないのさ」

「エクスカリバーを超えるのは、師匠の切り札の剥離剣エアしかないからなぁ、事実上」

天地乖離す開闢の星。黒江が持つ最大最強の剣であり、友人のガイちゃんからミラクルドリルランスを借り、それを媒介に放つ。調は黒江と同調したとは言え、未熟さ故、因子を持つが、その覚醒には至っていない。ソロモンの宝物庫(ゲート・オブ・バビロン)の中でも最強の宝具。英霊になれる資格がある黒江でも、エアの完全制御には数度の転生を必要としたので、調はまだ、その領域ではない。調はエアを使おうとした際に、エアの持ち主であった『英雄王(ギルガメッシュ)』に『お前にはまだ抜かせん、お前の意思で我が前に立ち誓約するのだ!待っておるぞ!!』と言われるビジョンを幻視。それ以後は約束された勝利の剣を常用している。

「剥離剣エア?」

「かの英雄王がゲート・オブ・バビロンの中でも一番愛着を持っていた『剣の原型』だよ。世界を切り裂ける威力があるから、師匠も滅多に使わない。ガイちゃんと師匠だけが使える」

「ゲート・オブ・バビロン?」

「ソロモンの宝物庫の扉の名前。多くの世界では、宝物庫には、英雄王のコレクションが収められているんだ。シュルシャガナも本来は『万海灼き祓う暁の水平』っていう二つ名の剣で、彼のコレクションだったんだよねー。英雄王が言ってたし」

「!?」

シュルシャガナの本来の二つ名は『万海灼き祓う暁の水平』。英雄王のコレクションの一つであり、炎を纏う剣であった。元はザババの剣だが、英雄王が得た剣。英雄王の宝物は古今東西の宝具を有しており、Z神が最高神の権限で取り上げたデュランダルも彼のコレクションらしい。それ故、シュルシャガナの鋸としての姿は『別物へ変質した何か』である事を知っていると明示した。いや、もしかしたらZ神は、英雄王を兜甲児とマジンガーZが神となる過程で取り込み、一体化したのでは?という疑惑もある。また、シュルシャガナの本質は赤熱した刃を持つ炎の巨剣であると知った調であるが、自身の有するシンフォギアを媒介にすると、それは再現出来ない事も悟っている。

「今のシュルシャガナじゃ、その状態は再現出来ない。鋸に変質しちゃってるし、イガリマも本当は『千山斬り拓く翠の地平』の名前がある。でも、私達のシンフォギアはそれと別物になっちゃってるから、伝承の通りの力はないんだ」

「だからエクスカリバーを…?」

「うん。エクスカリバーなら威力と使い勝手が両立できてるし、本質は変わらないしね」

「……」

「切ちゃん、聖域で待ってるから」

その一言を残し、調は天秤の黄金聖衣と共に、エクスカリバーを携えて突っ込んでいく。切歌の顔は半ば絶望に沈んでいた。完全に自分を捨ててはいないという事への安心感より、人の領域を超えた英霊の座に行ってしまう親友を追いかけられない自分への絶望が勝っていたからだ。

「どうすればいいのデス……」

「君もあの領域に行けばいい。英霊達だって、元は普通の人間だったんだ。ジャンヌ・ダルクやアーサー王にできて、君に出来ないって事はないよ」

のび太のフォローが光る。そして、それを補強するように、ジャンヌが現れる。

「その通りです」

「ジャンヌさん、来たんですね?」

「えぇッ!?」

「准将に先にいけと言われまして」

「そうだ。聖闘士は人としての極限でも有るが、神話の神殺しとしての性質を持ち合わせた者なんだ。決して辿り着けない世界ではないよ、諦めないならね」

ジャンヌの護衛がHI-νという大盤振る舞いであり、怪人軍団はこれで動きが鈍る。ガンダムが来るとは思ってなかったのだ。そして。


『人は、その手で機械仕掛けの魔神を作れるに至った。だから、諦めるのはまだ早いぜ!』

マジンカイザーが飛来し、HI-νと並び立つ。大空に羽ばたく紅の翼を持つ鋼鉄の皇帝。その勇姿をついに現した。

「あれは!?」

「魔神皇帝……。へっ、おせーぞ甲児」

『Zちゃんを医務室に連れて行ったり忙しくてさ。さあて、ここからはテメーら、全滅だぁ!』

「今回はタクシーと解説担当ってところか、流石に怪人相手はガンダムの仕事じゃ無いからね、敵の出現ポイントくらいは潰していくよ」

ライフルを数発ほど放ち、怪人軍団出現の魔方陣を潰すHI-ν。

『あ、俺。対キングダーク要員な』

「キングダークぅ?あんなの持ち込まれたらたまんねぇぜ…頼むぜ」


「「さあ、これでもう少しだ。 甲児、援護するから出てきたら抑えてくれ」

「ガッテン任せろ!」

「……で、なんダヨ、この英霊とかヒーローのバーゲンセールは!」

「私達の力を示して、軍を納得させるためのデモンストレーションも兼ねているのですよ、エイラ中尉」

ジャンヌは我が神はここにありてを持ち、わざとその存在を誇示する。戦意高揚の意味もあるが、モードレッドに無理強いしたド・ゴールへのあてつけも含まれている。生前は剣技はダメダメであったが、今回の生ではルナマリアの記憶と技能でそれなりの技巧を持つので、後世のステレオタイプ通りに戦える。その意も込めている。

「死した英雄も生まれ出でる勇者も轡を並べて生きとし生けるものの為に戦う、それがロンドベルの在り方なんだ、中尉」

「あんたが地球連邦軍最高のエースパイロットの一人っていう……」

「アムロ・レイだ、よろしく」

ガンダムのツインアイを点灯させ、エイラに挨拶するアムロ。エースパイロットという分野に理解が少ないとされる地球連邦軍だが、再建のため、エースパイロットの存在を誇示するためにも、ガンダムが必要とされた。エイラは自分も新米ながら、ガンダムパイロットなので、その原点にして最強と謳われるアムロ・レイに憧れており、この時が初の顔合わせだった。

「俺達は共に行く者は拒まない、拒まれても俺達と生きて行けるなら、その手を掴む!さぁ、共に進もう!」

「あ、ああ!」

エイラはこの出会いをきっかけに、正式にロンド・ベル出向を志願。太平洋戦争時には『扶桑駐在武官』に志願してまで参陣する。この出会いがエイラ・イルマタル・ユーティライネンをGウィッチへと導くきっかけとなったのだった。



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