外伝その152『Dead or alive2』


――レイブンズは他世界では、メンバーだった智子、武子、圭子の三人の引退とともに歴史に埋没していったが、未来世界と関わりを持った世界においては、扶桑皇国最強のチームとして不動の地位を築きつつあった。扶桑皇国ウィッチ派閥の伸長も彼女たちの戦果が理由だが、後輩達の誰もが、三人が真に叩き出していたスコアには及ばず(坂本たちは転生した影響もあり、スコアで張り合う意思は無かったのも大きいが)、更に未来の熟成されきっている誘導兵器が未来世界から持ち込まれると、攻撃ウィッチ、爆撃/攻撃ウィッチは急速にその存在意義を喪失していった。ジェット戦闘機の搭載量がレシプロ機より遥かに増大し、第4世代機になると、B-17以上の搭載量を誇る。そこも両用途にウィッチを当てる必要性が無くなった理由である。また、本来は陸戦ウィッチの空輸にも使えるのが存在意義の一つであったが、その陸戦ストライカーの主流が一気にパワードスーツ状の大型で、重装甲の重ストライカーに変わると、その用途での存在意義も失われ、艦艇がVT信管を標準装備化したのがトドメとなり、ダイ・アナザー・デイ作戦終了を以て、構造が頑強である流星ストライカー以外は退役の運びとなった。攻撃ウィッチや爆撃ウィッチは生き残りを賭け、旧式化した陸戦ウィッチ用の砲を敵対空砲などへの破砕砲として用い、艦艇を攻撃する『バスターウィッチ』へ転科し始めた。急降下爆撃などの旧来の手法が使えなくなってきた以上、ミサイルと破砕砲を組み合わせた新たな手法を用いるしか、生き残る策は無かった。ルーデルはそれを実践してみせた。未来から持ち込まれた次世代ジェット戦闘爆撃ストライカー『F-15E』を使い、ミサイルに加え、地球連邦軍が改造して試作した破砕砲(44年後半時に戦車砲のトレンドだった長砲身75ミリ砲をベースに折りたたみ式に改良し、連射可能なように自動装填装置を組み込んだ)この試作砲はウィッチ世界では後に攻撃/爆撃ウィッチの転科したバスターウィッチの装備品として制式採用され、バスターウィッチの主装備に位置づけられる。80年代以降には、120ミリ砲戦車の定着ですっかり旧式化した105ミリ砲が使用されていくので、基本的に『一昔前の戦車砲を改造した物を使用し、艦艇や地上目標に破壊的な攻撃を仕掛ける』というのが、ウィッチ世界での『後世』におけるバスターウィッチの定義である。戦闘ウィッチは『ジェット戦闘脚』をすぐに配備する事で容易に戦場の革新へ対応できたが、爆撃/攻撃ウィッチは艦艇攻撃や地上目標への掃射や爆撃が艦艇の対空砲火の飛躍的精度上昇だったり、対空車両や携帯式対空誘導兵器が配備されてしまうと、その鈍重さもあって、死傷率が跳ね上がってしまった。それらに代わるのがバスターウィッチである。ルーデルは国際的に『バスターウィッチ』第一号と認められており、1945年の戦では、反則と言える『F-15E』ストライカーで暴れていた――




――当然、未来から持ち込まれた機体はGウィッチの特権なため、戦線司令部の当座凌ぎの対策として、無誘導ロケットランチャーを見越し射撃で発射させ、敵艦や地上目標に当てる方法が取られていた。当時では最新鋭だったサンダーボルト(P-47)、スカイレイダー(A-1)ストライカーがその当座凌ぎの対策に使用され、ドラえもんがせっせとひみつ道具で増やしていた。これは分裂間もない頃の自由リベリオン合衆国では、作戦までに生産ラインが用意不可能だったからで、ドラえもんは裏方で重要な任務についていると言えよう。ドラえもんズもこれに協力しており、自由リベリオンが短期間で兵器は一定数揃えられたのは、ドラえもんとドラえもんズの尽力あっての事だった――

「ふう。これでストライカーは200機揃えたよ」

「ご苦労様〜。でもさ、いいの?ドラえもんズのみんなまで呼んで来ちゃって」

「いいのいいの。みんなちょうど暇だったしね」

ドラえもんズの護衛についていたなのはがお茶とドラ焼きを差し入れする。なのははダイ・アナザー・デイ作戦には青年期の姿で参加しているが、参加時は大人になっているので、流石にツインテールはやめて、サイドテール姿になっている。ただし、服装はロンド・ベルの軍服で、階級章は少佐のそれになっている。

「ヴィヴィオちゃんは?」

「あの子も大きくなったから、留守番。終わったら、調ちゃんに様子を見に行ってもらうよ。それと、映画の撮影の予定が入ったんだ」

「ああ、時空管理局のプロパガンダ」

「台本見ると、管理局の暗部省いてる話もあるんだよね、闇の書事件のさ」

「世間一般への公式発表の破綻が無いことの確認と、本人に演じさせることでボロの出る確率を減らそうって事じゃない?」

「フェイトの母さんの事件は管理局は第三者だけどよ、闇の書事件は時空管理局のお偉いさんがはやてを犠牲にして封印しようとしたんだぜ?それも、それを行った張本人が時空管理局の提督に登りつめてた人で、クロノ提督の親父さんの上官だった。いくら個人で動いてたって、立場的に不味いのは当たりめェだ」

ドラえもんとドラ・ザ・キッドはなのはに、推測したプロパガンダの意図を伝える。管理局で名声を得ていた提督が個人的な考えで、管理外世界のいたいけな少女を犠牲にしようとしていた事は、時空管理局にとっては組織的に隠さなくてはならない事項である。時空管理局は唯でさえ、M動乱で初めての政治的挫折を味わった上、戦後処理と称し、地球星間連邦政府の間接的影響下に置かれている。首都を自力で奪還できなかった事は、時空管理局にとって初めての政治的挫折であり、魔法至上主義の敗北でもあった。また、聖闘士や宝具の存在が明らかになった戦でもあり、魔法至上主義は退潮し、その代わりに台頭したのが地球を知るハラオウン親子を長にした改革派である。ウィッチ世界との共同戦線で、物理法則に則った武器への忌避感が薄れたのを良いことに、機動六課を『特務六課』に再編させたのがリンディ・ハラオウンの時空管理局本局の高官としての初功績だった。機動六課はティアナが扶桑軍へ移籍し、M戦役が終結した時、キャロとエリオが覚醒したフェイトにより、原隊に復帰して(させた)離脱していたりした影響でメンバーが減っており、はやては対応に苦慮した。覚醒したはやては表向き、清楚で品行方正な女性であるように装っているが、裏では如何なる手段の行使も辞さない黒さを持つようになり、私服が赤色主体になり、言葉づかいが粗野気味になるため、なのはからつけられた渾名が『あかいあくま』である。また、新たに身につけた黒さを発揮する時は標準語で喋り、敵対者を徹底的に蹂躙する事を良しとするので、ヴィータが怖がるほどだ。それでいて、ヴィータを愛でるのは忘れない、それがまた彼女の心をえぐっていた。はやて本来の気質ではないが、ある意味でG化で『誰か』の因子を得、それが覚醒したためではないか、とはなのはの談。

「はやてちゃん、最近はなんかこう、あかいあくまなんだよね。猫かぶりをし終えると、ちょっと粗野で、ヴィータちゃんを怖がせてるんだよな〜」

「あの子がなんで、『G』になったか、謎だったけど、魂魄のどっちかが『そのあかいあくま』さんのそれになってて、その因子が覚醒したんじゃないかなぁ」

ドラえもんの推測だが、はやてが見せるようになった強烈な二面性は魂・魄のどちらかの因子が覚醒したための作用ではないか。それがはやてを変えたのだと。その人物の特徴とされる『機械いじりがまるでダメ』は発現していないが、基本パーソナリティのところでは色濃く表れてきている。それまでのはやてと異なり、高度な体術を用いる、自分の敵と判断すれば、殺意すら隠さない冷徹さを以て対峙しようとするが、肝心なところで間が抜けていたりするパーソナリティはまさしく、その人物のものだ。ただし、戦略面では一級に才能が跳ね上がり、M動乱では、扶桑軍やカールスラントの名だたる提督や将軍たちも唸るレベルに昇華しているため、時空管理局で権力を得るため、裏で相当にあこぎな事もしているのは確実だろう。

「まー、猫かぶりで印象を良くしておいて、実際はやさぐれってのは『らしい』からね。しかも、かなり守銭奴になったとは、シグナムさんの談」

「相当に表れてるね。組織でのし上がれるタイプだよ、あれ」

はやてはG化した事で、髪が少し伸び、背丈も160cm台に成長している。また、私生活でもTPOに応じて、標準語を使うようになるなど、目に見えて変化があった。映画の話は引き受けた後、裏では『はぁ!?なんで今更、子供の頃の事件を使うわけぇ!?23歳で9歳を演じろったってねぇ、無茶もいいところよ!』とフェイトにかなり愚痴っている。普段よりトーンが低めで、やさぐれボイスだった上、スチール缶を握りつぶすアクションもセットだったので、立ち聞きしてしまったヴィータに病気を疑われたという。ドラえもんが二面性を私的なところでしか見せないはやてを『組織でのし上がれる』と言ったのはそういうところだろう。実際、撮影が始まった後、子供時代の口調や仕草をするのは三人共、気恥ずかしさなどから、かなり苦労し、撮影する時以外は大人の時の口調に戻っている。フェイトが次元震パニックの際には、大人としての口調なのがその証明だ。

「どうするのさ。子供の頃の仕事とか覚えてるの?」

「年齢がもうちょい若けりゃ、気兼ねしなかったさ。子持ちになってる上、ヴィヴィオが見るのは確実だしさ。あー!本当に恥ずいよぉ〜!!」

「まぁ、子持ちになると、子供の頃してた事が恥ずかしく思えるって、よくある。のび太君なんて、倅のノビスケ君に見栄張って、赤っ恥かいた事あるし、0点のことで」

「あー。それ聞いた。クラスで二番だったぞ!っていうけど、実はビリから二番目だったとか」

のび太の恥ずかしエピソード。大人になり、子育てをしている時期に息子へ見栄を張ったが、結局はバレた(のび太は野比家歴代当主でもまれに見る0点の天才で、○×クイズにさえ全問不正解と神がかり的である)事。ちなみに老境に差し掛かった頃ののび太曰く、『男とは見栄と根性とやせ我慢って、上手いこと言う人がいたんだよねぇ』と笑い飛ばしている。のび太は55歳になる頃、ノビスケが結婚し、ハネムーンで当時に建設中だったフォン・ブラウン月面基地(後のフォン・ブラウン市)に赴いている。しかも、父と同じ結婚の仕方である。のび太はそこがフォン・ブラウン市になるはずの場所である事を知っており、フォン・ブラウンの前身が国際宇宙基地だった事をそこで知った。その知らせを受けたのび太(55歳)は、ドラえもんに『アイツ(ノビスケ)は親の似て欲しくないところを煮詰めた様な子なんだが、なんで良い子に育ったか親の目にも不思議だよ』と言い、親の援助無しに、フォン・ブラウン基地への月面旅行の資金を貯めた事を嬉しがっていた。フォン・ブラウンは23世紀以降では、五千万の人口を抱え、地球連邦の首都の地位を得るほどの繁栄を謳歌し、アナハイム・エレクトロニクスの本社もある。だが、ノビスケの青年期時代では、まだ国際宇宙基地を試験的に居住試験に供している段階であった。そこからのいくつかの技術的ブレークスルーを経た姿が、のび太も子供時代に見た、23世紀の繁栄なのだ。ノビスケが青年となった時代はまだ、フォン・ブラウンが試験的に短期間滞在試験中、後のグラナダは大規模居住区の一層目が落成したばかりで、宇宙時代の幕開けと言った様相だった。アナハイム・エレクトロニクスがこの時代から表れてくる。当時はまだ一介の電機メーカー(本体。グループ自体は2030年代の事業拡大で形成されている)に過ぎなかったが、商業的観点や、軍事的補給の観点から、23世紀には本社ビルになっている建物が建設計画に入っていた他、総合商社としてアナハイムのホールディングス部門と補給関連の扱いでアナハイムグループの商社が入っていた。当時はアナハイム・エレクトロニクスの爛熟期であり、一年戦争後から本格的に軍需産業に手を染め、ジオニック社などを吸収した後は地球圏の一大軍需産業として繁栄し、23世紀ではすっかり、『死の商人』という陰口も定着しているのだから、歴史は面白いものである。23世紀ではすっかり老舗総合商社であり、あのブッホ・コンツェルンも、なんだかんだでアナハイム・エレクトロニクスのコネと力に依存していたので、組織が一気に分解しているほどの影響力を持ち、地球連邦軍と蜜月の関係のアナハイム・エレクトロニクスも、21世紀の半ばに差し替える時代では、『中堅企業は超えたが、電機メーカー発祥のグループ会社である点で国家的プロジェクトには絡めていない』という微妙な立ち位置であったのだ。やがて、2130年代頃に、ラプラスの箱を手に入れ、莫大な財を成したサイアム・ビストが興し、すっかり名家となっていたビスト家の娘が当時の社長の婦人になったことで、アナハイム・エレクトロニクスはその立場を盤石にし、遂には地球圏最大規模の軍需産業に登り詰めたわけだ。

「アナハイム・エレクトロニクスって、いつ頃にできたの?」

「2010年代の末、当時のカーバイン家の当主が立ち上げたのが始まり。そこから20年以内に総合商社グループに成長して、コロニー建設計画に絡んで本格的に成長しだして、2120年代に地球連邦政府の設立が取りざたされる頃に爛熟期を迎えたんだ。その辺りでラプラスの箱を手に入れて莫大な富を手に入れたサイアム・ビストの娘の一人がアナハイム・エレクトロニクスの創業一族のカーバイン家に嫁入りした事で、政治的に盤石になったんだ。軍需産業に手を出したのは、一年戦争のことで、グリプス戦役で本格的に軍需産業の最大手に登り詰めた。一時はサナリィに押されたけど、小型機の難点が分かってからは持ち直したんだ」

「なるほどね……」

ドラえもんの言う通り、小型モビルスーツは当初、複雑怪奇化した大型MSより経費が安く、同等以上の性能を持つ事を売りにしていたが、小型機は発達してゆくにつれ、その構造上、高性能ではあるが、部品製造精度の高さが大型MS以上に要求された事もあり、外宇宙時代では、発達したVFにシェアを食われた結果、ジャンルとして衰退し、代わりに大型MSが中興している。アナハイム・エレクトロニクスが中興を迎えた理由もそれで、外宇宙時代では、大型機のほうが『質量を武器に出来る』事もあり、好まれた。それがジェガンのモデル寿命を延ばしている。ジェガンの改装がデザリアム戦役で提案されるのも当然の成り行きだった。小型機はフレームと内装が一体化している機種も多く、その関係で整備性がムーバブルフレームでユニット化され、完成されている大型機に比してむしろ悪化したとされたのも、ジェガンの後継機開発が迷走しまくった理由の一つであり、ビームシールドよりも実体シールドの方がステルス性が維持できる事も、ビームシールドが連邦のフラッグシップであるはずのガンダムタイプであっても、一時のムーブメントに終わった理由である。また、技術発展やVFからのスピンオフで、MSの推進器の効率が改善された事も小型機の衰退を決定的にした。V2ガンダムが歴代で最後の制式採用された小型機でのガンダムとなったのは、素体での機体強度に不安があるからである。また、ビームマグナムやヴェスバー、Gバード、バスターライフルなど、ビームシールドでは防げない携行火器が現れたのも大きいだろう。また、時代の徒花と思われた第五世代機の試験結果が思いの外良好なので、MSは大型化へ回帰し始めた。

「ミノフスキードライブは思いの外大量生産には向かない動力だし、V2ガンダム以上の性能はサイズ的に難しくなったんだ。ペーパープランで『V3ガンダム』も計画されてたんだけどね」

「V3?何、その仮面ライダーみたいな名前」

リガ・ミリティアが存続していた頃、V2ガンダムの更なる後継機種が考えられていた。それがV3で、前史では試作された機体である。今回の歴史では、ウッソ・エヴィンがV2の時点でほぼ無敵を誇った事もあり、リガ・ミリティア存続時には試作に入っていない機種だった。

「V1とV2を統合したV-Secondという計画も有ったけど、じゃじゃ馬過ぎるのとV1ベースだと、強度が足りなかったとか?」

「ああ、前に何かで見たなぁ。V1にドライブつけただけって印象のデザイン。それがそうなの?」

「実際はビームキャノンもつけられて、試作はされたんだけどね、空中分解したそうな」

Vセカンドは『セカンドV』という仮称で試作されたものの、重大事故が起こったので破棄され、設計段階からドライブの搭載に耐えられるV2が造られた。そのデータで作られたV2は当然ながら、歴代最速のガンダムとなった。その性能バランスは良好で、黒江もこの作戦で予約していたほどの素性の良さを持つ。しかし、V2のミノフスキードライブ製造予算がデザリアム戦役の前では使い切られ、代わりに、Zプルトニウスを持ってきたわけだ。プルトニウスはダイ・アナザー・デイからデザリアム戦役を通し、黒江の愛機として使用されていく。Z系にしては素直な操作系(メインジェネレーターが腰フレームにメインジェネレーターがあるため)と、格闘戦に耐えられる強度が黒江に受けたのだ。先行して量産されたプロンプトがあくまで治安維持用の安価なZプラスにすぎないのに対し、プルトニウスは新規設計の高級機であることでの威力も大きい。

「綾香さんが使いだしたZ系の機体のデータある?」

「ああ、プルトニウスか。第二世代Z計画で生み出された高級機だよ」

Zプルトニウスは、Z系統の傍流に位置する第二世代Zタイプである。Z計画自体、旧エゥーゴのロンド・ベル化で自然消滅した感があったが、時代が可変機の後継を求めたので、Zの第二世代型を生み出す意図で設計された。オリジナルZ以上に複雑な変形を行うので、Zレイピアの後継機種を狙っていたとも噂される。ジェネレーター出力はSガンダムと同等以上の数値であり、量産はあまり考慮されていないとされるが、メインジェネレーターそのものはジェガン最終型にも使われた汎用品のカスタム仕様であり、量産は一応可能であるとされてもいる。軍に登録されている型式番号は『MSZ-006PL1』で、オリジナルのZの派生である事がハッキリしている。サブジェネレーターを制御するアドオンモジュールがカスタマイズされており。出力が7000kwを達成したのはそのおかげで、制御OSが優秀である証拠だ。ただし、常用出力ではないが。

「へー……って、ドラえもん君、キッド君のどら焼きだけどさ、マスタードに何を……」

「ハバネロだってさ」

「はぁ!?なにそれ!!前にも言った覚えがあるけど、どら焼きへの冒涜だって」

「あいつはまだましなほーだってば」

「あんこのかわりってんなら、まだ理解出来そうだけどさ、ああいうのをかけるってのはさぁ……」

「ラー油と酢と醤油だよ?王ドラなんて。闘牛の剣で串刺しにしたドラ焼きのエル・マタドーラはまともだけど」

「あのさ……、エル・マタドーラ君はともかく、王ドラ君のスタイル、肉まんやん?」

「うん。学生時代、あいつに言ったら、『これがいいんです』だとさ」

ドラえもんも王ドラのスタイルにドン引きであるらしく、キッドはまだいいと考えている。ドラえもんの時代、ロボット養成学校が存在し、それが人間でいう高校までの教育課程に相当した。大学で研究の道に進んだドラミは、大学生としての資格を持つが、ドラえもんは人間で言えば、高卒に当たる。ドラえもんは今ではそれなりに博識だが、学生時代はのび太と似たり寄ったりの成績であった過去がある。ネジが一本抜けている故、同じ日に生産された多くの他個体より個性が強く、本来は特別仕様機が入るクラスに編入され、そこでドラえもんズと出会っている。ドラえもんが製造された当時、猫型ロボットは、ごくありふれた子守りロボであったのが分かる。

「僕は学校をギリチョンで出たから、のび太のことは実は笑えないんだよね。成績不振もいいところで、校長先生には何度か警告されたし」

「ドラえもん君って、似てるんだね。のび太君と」

「ドラえもんズの連中にも言われてるよ。学生時代は『ドラドラ7』って名前で部活してたし」

「改名したの?」

「親友テレカ手に入れた時は、ぼくがリーダーシップ取ったからね」

「それで改名を?」

「うん。セワシ君のところでタイムパトロールに貢献してたから、僕が一番有名なんだ。ミニドラは記念品だったけど、量産されたし」

「あれ、ヴィヴィオに一体あげたいから、用意してくれないかな?」

「作戦終わったら渡すよ。僕に輪をかけてアホだけどさ」

「自覚あるんだ」

「一応ね」

ドラえもんは自分のアホさを自覚しているが、厳格な現実主義者という面も持つので、アニメでの可愛さの色眼鏡で見ると混乱は必至。また、アニメでの可愛いどら声で『だとさ』『だぜ』などのフランクな言い回しも多用するので、そこもギャップである。なのはが他世界の同位体よりフランクな言い回しをするようになったのは、ドラえもんの影響であった。

「キッド君って、普段はいつの頃にいるの?」

「1869年から70年ごろ。南北戦争は終わったけど、フロンティアはまだまだあった頃さ。コルトSAAが出始めた時代だな」

のび太が強烈に憧れる、米国の西部開拓時代はおおよそ、1830年代からフロンティアが消える1890年代までとされる。キッドが普段滞在する時代はその内の後期の20年に入る頃の南北戦争の残り香が色濃い時代と言える。時代的には、アウトローやガンマンの華やかりき頃。シャーリーが『連れて行ってくれ〜!』と興奮する時代でもある。キッドが活躍する時代はそんな時代だ。

「日本は明治維新が終わったばかりじゃないか?その頃?」

「うん。たしか1868年が明治維新だったから」

「のび太には言ってあるが、東海岸から西海岸に行く大陸横断鉄道の警備引き受けたんだけどよ、人手が足りなくてな。時代的にアウトロー連中がわんさか襲うし、インディア…もといネイティヴ・アメリカンが襲って来るから、バイトにどうだ?」

「タイムマシンだったら、お安い御用だよ」

米の大陸横断鉄道は正確に言えば、シカゴから西海岸までの区間であり、1870年頃に路線が接続されている。広大な国土の米国は海運が栄えると鉄道は廃れたので、大陸横断鉄道が華やかりし西部開拓時代と列車技術以外はあまり代わり映えしないという有様である。

「どこから出るかってのは後で見とく。映画の中の古き良きアメリカが見られるってのは保証するぜ」

キッドは古き良きアメリカの生き証人と言える。それ故、この時代には既に遠い昔の出来事になりつつある西部開拓時代へ郷愁を覚えるリベリオン人はかなり多い。シャーリーがジョン・ウェインやヘンリー・フォンダなどの後世で撮られるであろう西部劇に興奮する心理もそれだ。ましてやこの世界では、リベリオンは通常なら、東西ドイツ(カールスラント)が背負うはずの運命を背負わされたので、フロンティア精神の拠り所として、西部劇を求めるのは無理からぬ事である。

「この世界だと、リベリオンが東西ドイツが味わったはずの悲劇を味わう上、南北戦争も再燃するから、本土は荒れるな」

「そういえばそうだね」

「いくらアメリカ相当でも、太平洋戦争と南北戦争を同時に遂行するのは無茶に近いからな。膨大な工業力も統制できなきゃ、お飾りも同然だしな。ティターンズの強権に反対してる州は親日傾向がある州に多い。もし、その州が離反すれば、ティターンズも太平洋戦争の遂行は困難になるだろうさ」

キッドの言う通り、西海岸などには、ウィッチ世界でかつて『瑞穂国』と呼ばれ、大和系移民が国を持っていた時期がある。リベリオン合衆国に飲み込まれた後も、子孫のコミュニティが存在するため、ティターンズがいくら強制収容所に押し込んでも史実より多めに人口があるので、すべてを押し込むのは無理だった。ルーズベルトの妻のエレノア・ルーズベルトが夫の人種差別思想に歯止めをかけるのを、周りが手助けしたのは、その大和系人の票田が史実よりも遥かに大きいからでもある。ティターンズが表向き、人種問題にリベラルであるように振る舞っているのも、日系人の人口比率が史実より遥かに高かった事で、差別化を図ったという政治的目的があった。本国が南北戦争の再燃後も自由リベリオンに敵対的であったのは、実権を握った有色人種達が人種問題が元の木阿弥になる事を恐れたためでもある。

「おまけにこの世界は、日本に都合の良いようにできてる世界だ。本当は白人至上主義気味のティターンズも取り繕う必要が出てるくらいにな。21世紀日本はそこに気づいてないんだよ、アホなことに」

「21世紀の日本って、なんでそれに気づかないの?」

「平和ボケだろ、軍事技術のコンプレックス、国防をアメリカに殆どおんぶに抱っこだった事での警察の傲慢だろ……キリがないぜ」

「対策してるの?」

「扶桑と自由リベリオンで国際連盟で人種的差別撤廃条約が出来るよ。在日米軍の素行の悪さをリベリオン軍相手に憂さを晴らす連中が出てきたし、21世紀日本人に凄惨なリンチを食らって、職務遂行不可能になったウィッチが扶桑、自由リベリオンに出た事が契機だってよ」

21世紀日本で新左翼思想に走るテロリストはまだ死滅しておらず、扶桑にわざわざ渡航し、活動家を扇動し、自由リベリオン、扶桑軍人やウィッチを罵倒し、遂には凄惨なリンチを食らわせた凄惨なテロ事件もクーデター事件のどさくさ紛れに起こっていた。中には、鉄パイプで不意打ちされ、そのままリンチされ、頭蓋骨亀裂骨折、頭頂部から後頭部にかけ脳内出血、12対の肋骨のうち胸部1本、背中16本が折れ、折れた骨は肺に突き刺さったなどの凄惨な遺体となったウィッチもいる。そのため、テロリストは軍隊がその全力で殲滅するという、報復戦の様相となった末、少なからずのウィッチがゲバ棒や鉄パイプで滅多打ちにされ、殉職した。死滅に向かうテロリスト達が最後の華と言わんばかりに起こした最後の『戦争』だった。この『戦争』は日本に決定的に左翼運動への嫌悪感を根付かせるという効果をもたらした。警察系勢力の政治的敗北とも言われるのは、軍隊の構成員の死亡にも関わらず、現場の捜査人員がウィッチへの差別意識から、被害者が悪いと決めつけているかのような捜査をした事が扶桑陸軍の怒りに火をつけ、現地の警察は軍隊に対応を丸投げしたからだ。当時、扶桑警察は凄惨な攻撃行為を行うテロリストへの対応力は無きに等しく、必然的に扶桑陸軍が対応に当たる事になっていたというのが理由だ。扶桑警察の装備が強化されていくのは、この事件で蚊帳の外に置かれた事への反省だった。日本警察はSATの派遣を行う準備があると通告したが、その時には、事件に関する管轄権は国防省へ移行していた。また、扶桑警察も一応、払い下げの九六式軽機関銃などは持っていたが、現地の住民が憤り、軍隊の派遣を懇願したという事情もあったし、警察より軍隊のほうが信頼される風潮が事変の影響であったのが原因であった。(特に、事変の時のプロパガンダの影響が色濃く残る地域などでは顕著だった)軍の部隊が自分からテロリスト鎮圧に動いたと言うのは、事後に日本で問題視されたが、現地住民の懇願に応えての知事命令による出動であるという事で収束した。それまで、日本警察には軍隊の国防意識を『流行病』とさえ宣う者もいたが、日本連邦が始動した後では、それまでのような自衛隊/日本連邦軍への強権的な管轄権を盾にしての締め出しは不可能になり、海保の海援隊への罵倒事件が決定的に警察系政治勢力の衰退の原因となってしまう。こうして、戦後日本で軍隊の解体後に傲慢といえるほど日本の治安維持分野で権勢を誇った内務閥はもう一つの自分達である『扶桑皇国』との連邦国家樹立でその政治力を失う羽目となる。吉田茂も『内務の連中に求めていたのは軍の暴走抑止の役目だけだ。自分達の勢力作って、派閥抗争するのでは、軍閥と何ら変わらん』と呆れ返っていた。結果、扶桑警察が吉田茂の期待する役目を果たすのは、後藤田正晴の出現を待たねばならない。扶桑では軍隊から復員後(最終階級は主計大尉)、警察官僚となり、扶桑警察の強化に尽力するが、それは太平洋戦争中からのことだ。





――また、その彼は内務省の同期で、日本側の自衛隊に長年、悪影響を与えたという記録のある『海原治』については、『海原くんは向こうで、自衛隊はどうせ実戦の役に立たぬのだから、同じことならカネのかかる海空よりも、安あがりの陸に重点を置くべきだ、とか言ったそうだが、向こう側の日本人は学校で軍事教練も受けないように変わっておるのに、頭はこの時代の常識で考えておるように思うし、権力を持った事が彼を暴君に変えたのだろう』と、史実と違って、自衛隊が21世紀に彼が阻止し続けた計画が実現している事も踏まえ、在籍部隊が太平洋戦争に行っているために、まだ軍隊にいた同期に辛辣なコメントを残している。内務省閥の机上の空論と後世に謗られるのが、『日本列島守備隊論』と呼ばれし理論で、内務閥はこれを本気で検討していたが、既に民間人へ付け焼き刃の軍事教練を施したところで役に立つような時代は終わっていた事、年月の経過で起こる様々な国防に関わる事件などの要因で自衛隊が次第に強化されたのは言うまでもなく、その理論が扶桑で失笑を買ったのは言うまでもない。後藤田は太平洋戦争中、日本の内務閥へコメントを残している。『外国や怪異などからの国の守りは軍隊に任せればいいのに、君らは治安維持の名目で派閥抗争に明け暮れておる。そういうのは警察の仕事ではない。実に馬鹿げたことだ。海援隊をもっと前向きに考え給えよ』と。


――海援隊は坂本龍馬が作り、子孫らが育て上げた。軍隊の手が回らない分野をカバーするのが役目であった。45年当時には、既に太平洋共和国のシーレーン防衛も委託されているため、兵器の年式は古いが、扶桑海軍そのものに引けを取らない規模にまで拡大していた。太平洋戦争で更迭される海保長官が憤ったのは『重要な任務を担うのに、どうして大正期とかの旧型艦を使うのだ!!』などで、改装はされていたが、扶桑の技術での改装という点で問題視し、遂には才谷美佐子(海援隊総責任者)の眼前で『近接信管もレーダー連動射撃指揮装置もない艦に何ができる!』と罵倒するに至ったが、当時の最新装備がいくら大手といえど、民間軍事会社に流れるわけがない。それを失念していたのが彼を更迭に至らせたが、海援隊も流石にレーダーやソナーを持つ年式への交換は考えていたが、その候補だった艦隊型駆逐艦が自衛隊式護衛艦型に短期間で駆逐されるのは想定外だった。坂本商会が太平洋戦争で多大な出費を強いられたのは、電子装備の装備などで価格が高額化した艦の大量購入が政治的にも必要とされたからだ。払い下げさげるべき艦隊型駆逐艦の多くは日本側が主導してスクラップにした後で、坂本商会との約定を知らされる有様であった。そのため、賠償と慰謝も兼ねて、通常よりかなり安めの値段で自衛隊の新規建造、あるいは古めの汎用護衛艦が買い取られて行った。無論、残存していた艦隊型駆逐艦は優先して引き渡された。乗員の再訓練費用も嵩んだので、日本連邦軍がその購入費用や訓練費用を半額肩代わりしたという。また、海援隊は空母を持っていないため、雲龍型航空母艦の払い下げも行われたという。こうして、日本側に海援隊の実態が知れ渡ると、海保は一気に立場を悪くした。明治から少しずつ地位を築いてきた坂本家と軍隊の相互補完関係を崩しかねないとして、海自から問題視されたのだ。これは扶桑海軍が攻撃的軍備を、坂本協会が防御的装備を分担することでの役割分担を狙っていたが、時代は海軍艦艇に汎用性が求められるように進んだため、明治期の思想は時代遅れとなっている。しかしながら、海援隊は元来は『一般社会に戻れなくなったエクスウィッチの受け皿』でもあったため、その点も問題となった。海援隊は民間軍事会社という位置づけにある事で、政府の規制に引っかからない予備戦力扱いが定着していたが、海保が『民間軍事会社なら〜』と文句をつけ、組織運営を疑問視したため、坂本協会は先代当主の才谷美紀の代から考えてきた、第二海軍化を決断する。坂本協会は1948年春を持って公益法人化され、海援隊は事実上、日本連邦軍の第二海軍として運用され、太平洋共和国の防衛任務も安全保障条約が改めて交わされ、海援隊が引き続き行うことになった。扶桑の安全保障政策の方向性は、戦時中になってから整うという、他国からは珍事に見える状況となった。これは日本からの横槍が如何に強かったかの証だった。――



――話は戻って、1945年のダイ・アナザー・デイ中――

「これからどうなるんだろう、この世界」

「日本連邦が超大国になるのは確実だよ。キングス・ユニオンは英武のどっちも傾いてる国だから、欧州の覇者ではいられても、世界の盟主の地位は維持できない。そのために、日本連邦は超大国らしくならないとね」

ドラえもんは、『日本連邦はウィッチ世界を主導しなくてはならなくなる』となのはに言った。実際、日本はそれを予期している行動を起こしている。日本が扶桑軍の慣例であった『兵科士官と特務士官の序列は同等』を明文化したり、ウィッチ軍人に必要な学歴を引き上げたのは未来への投資でもあった。太平洋戦争は東西冷戦の前段階に過ぎないであろう事も、21世紀以降の日本であれば容易に予測可能である。

「戦後の日本は、自主的に大国として動ける国じゃないんだ。だから、名目だけでも外に有る日本連邦の圧力の結果として動く形が作れるこのスタイルは日本人の約束ありき、の思考には都合が良いんだ」

「本音と建前って奴?」

「そそ。本音と建前で自衛隊持ってるみたいな奴さ」

ドラえもんは意外な事に、厳格な現実主義者で、『使えるものはのび太やミニドラでも使う』という思考の持ち主である。アニメでの保護者としてのイメージとはかけ離れた面だが、養成学校時代の落ちこぼれとしての姿からは想像がつかない変わり様でもある。落ちこぼれたからこそ現実にドライになったとも言えるので、ドラえもんの人物像はなんとも複雑である。

「連邦国家化するのに20年もかかりそうになったのもその証だよ。日本は外圧じゃないと変わらないんだよ、島国根性で、一度決めたルールは変えたくないんだ。そして、その秩序を乱したら村八分さ」

日本は基本的に外圧でしか国の仕組みは変えない国であると言うドラえもん。淡々とした語り口であるのが、ドラえもんが持つドライな面の証だった。

「大本営がそうだったけど、戦線から遠のくと、楽観主義が現実に取って代わり、そして最高意思決定の段階では現実なるものはしばしば存在しない。戦争に負けている時がそうだけど、平和ボケしてても、似たような状況になる。この戦を自分達とは関係ないって見てるんだよ、日本の警察庁や野党の連中は」

ドラえもんは子守り用ロボットという本来の製造用途とはかけ離れた一言を発した。一枚板でない日本への痛烈な批判と取れる台詞だ。まるで、どこぞの警察官のような台詞であった。

「日本は70年平和だった。だけど、ソ連が消えて無くなっていったように、何が起こるか分かったもんじゃないんだけど、日本の人たちはなんかこう…『自分達さえ良ければいい』って言うか」

なのはもドラえもんに同意しているようだった。別世界にいることで、日本の置かれている状況を第三者として見ることで感じた事があるのだろう。

「大衆ってのは、いつの時代もどこの国でもそうさ。外の大事より眼の前の小事。政治家はその意思の代弁者さ。民主主義が根付くと、大衆に媚びる政治家が出て来るもんさ。未来世界みたいに、戦争が身近にある時代じゃなければ、政治家だって、自分の国以外の事は無関心になるよ」

ドラえもんは日本の扶桑へのやたらな介入の背景に、日本の一枚板ではない省庁や連邦で主導権を持とうとする者達動きがある事を知っているので、日本政府や政党の動きには辛辣なコメントを残す。山本五十六が今回、日本連邦構想を打ち出したのは、黒江達から前史での『重慶へのマスドライバー攻撃の際の日本人の反応』を聞かされ、それを鑑みての対策である。

「ドラえもん君って時々、すごく現実主義だよね」

「落ちこぼれだったから、現実主義になったんだよ。僕はね」

シニカルな微笑を見せるドラえもん。アニメとは違う『大人の世界で生きてきたから、考えは大人のそれだが、どことなく少年のままであるところもある』印象で、養成学校で捻くれたと言えるだろう。だが、それでいて、のび太に美しい家族愛や友情を持つという複雑な人物像を持つのがドラえもんであり、長い付き合いになると、ドラえもんという人物の奥深さを実感するのだと、なのはは『長い付き合いになった』今だからこそ思う。

「あの子、立花響だっけ?あの子も相当に綾香さんを困らせたそうだけど……こっちに運ばれるって」

「一応、マリアさんや切歌ちゃんへの体内洗浄とLINKERの再投与の準備は終わってるよ。あの子は綾香さんも言ってたけど、自分の戦うための力に執着するって。あの子は先代の装者だった天羽奏さんが死んで、その遺産を受け継いだのは自分だって自負してるから、元はマリアさんが使っていた別個体のガンニグールでも『私の大事な……』って言ったように、力のシンボルであるガンニグールが通じない敵に遭うとパニックし易いんだ。いくら神槍とは言え、所見は欠片が媒介。聖剣の霊格を宿してる綾香さんには通じない。その上、神殺しの属性もロンギヌスと重なりあった分、この世界だと相殺されて効果は無いんだ。精神的にはかなり不安定になってるんだ。切歌ちゃんも、自分の力の媒介の聖遺物より上位の聖遺物がバーゲンセールなのに落ち込んでるけど、響ちゃんは手こずるぞー」

ドラえもんも、そのあたりの苦労は黒江から聞かされたのか、響へはそのような考えらしい。『グンニグル本来の力はロンギヌスに薄れられて、シンフォギア世界と繋がりがない他の世界では『哲学兵装』とはなりえない。それは黒江のエクスカリバーが尽く、ガンニグールの突進を打ち破ってきた事で証明されている。遭遇した時点で地力が違いすぎたためもあるが、エクスカリバーの威力の高さの証である。これを超えるのは、黒江が公言しつつも、封印している乖離剣エアのみ。エアを防ぐには『全て遠き理想郷』か、ひらりマントの高級品を用いる以外にないし、ガンニグールの力で乖離剣エアの持つ『破壊力』を受け止められるかは未知数である。天と地を分けた力を隠していたことは、かなり顰蹙を装者達から買っているが、エルフナインが『天と地を分けたとされる乖離剣をは如何にみなさんでも……』と見解を出した事で吹き飛んだが、響は『ガンニグールとアガートラームでエネルギーを分配、再配置できる』とし、譲らない姿勢を取り、エルフナインに諌められるなど、自分の戦うための力に強く依存している。その事もドラえもんも敬遠する要因なのだった。



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