外伝その156『空爆機械獣対連合軍2』


――黒江はなのはの思わぬ独断行動に頭を痛めつつ、ガイちゃんと調はのび太に注意してもらうことにした。なのはへの責が大きいのは、正規軍人/局員であること、大人である事が理由だが、ガイちゃんや調は一応、正規軍人ではないため、口頭での注意が適当だからだ。なのはの人事記録には訓告処分の二文字が踊る事になり、それまでスピード出世してきたなのはへはいい戒めになるだろうと、黒江は考えた。ガイちゃんや調にも、なのはにノリノリで乗っかった事の罰は与えなくてはならないので、掃除はやらせる事にした。そのことをガイちゃんに念話で通達した黒江だが、戦線にグロイザーシリーズが出現したことにより、各地に被害が生じ始めていた。





――戦線後方の海軍基地――

「何だあの巨大なミサイルは!?うわぁ――……」

対艦攻撃特化のグロイザーX16型空爆機械獣の編隊が後方の海軍基地に控えていた自由ガリア海軍を痛撃する。後方の海軍基地の一つには、自由ガリア海軍が各地から掻き集めていた主力が停泊していたのだが、グロイザーX16の格好の獲物だった。元々、ガリアはブリタニアや扶桑ほど戦艦の対空砲撃経験はない上、リシュリューのみしかない上、事故も起こったので、運用ドクトリンが保守化した自由ガリア海軍では控えられていた。その隙をティターンズに加勢したミケーネ帝国は突く形となり、グロイザーほどの大型機相手に、中口径砲までで対応するというお粗末な対空砲火をするしかなかった。これには現場の指揮を空中要塞グールから取るブロッケン伯爵もバカ笑いである。

「フハハハ!!フランス海軍は艦隊の防空戦闘というものを訓練しておらんのか。X16にフライングトーピードを使わせろ」

「ハッ。」

オリジナル機では『フライングトペード』と呼ばれる最大級のミサイル兵器である。ドリルがついているが、23世紀地球連邦軍ほどタキオン粒子の制御が練れておらず、波動化もされていないので、原始的なタキオン爆弾の域を出ない。だが、それでも、この時代の最大通常爆弾『グランドスラム』の10倍の破壊力はあり、フランス戦艦なら、如何な現存艦も竜骨を歪ませ、上部構造物を薙ぎ払うだけの破壊力はある。それがドリルを回転させながら、初弾が投下される。これは運悪く、ガリア海軍の主力である、史実では完成していないノルマンディー級戦艦のラングドックに命中した。グランドスラムの更に10倍の威力がドリルで貫通して炸裂したので、ラングドックは史実ティルピッツより悲惨な事になった。ティルピッツの攻撃に使われたのは、グランドスラムより小さい『トールボーイ』なので、それより大きく、ブンカーを容易に貫通できるグランドスラムの更に10倍の破壊力が第一次世界大戦型戦艦にぶつけられたのだから、結果は推して知るべしである。当然、トールボーイ三発で横転したティルピッツよりも悲惨な様相になり、艦首は消滅し、艦橋部までの上部構造物の内、頑丈でない作りのものはなぎ倒され、可燃性塗料やら調度品があった不幸もあり、大火災に包まれる。ガリアが八八艦隊に対抗して建造したノルマンディー級はガリアの消極的ドクトリン、艦自体の旧式化と敵の科学力が相互に作用し、ここに、敵と刃を交えぬ事無く、時代遅れの烙印を押された。船自体は浮いていたが、上部構造物が燃え尽きるか、燃やすモノがなくなるまで燃え続けるのは間違いなかった。この結果に安堵したのは扶桑である。扶桑の新型戦艦が異常に頑丈な構造と未来技術の装甲になったのは、21世紀日本人の左派から『雷撃20本、爆弾17発、至近弾20発に無傷で耐えろ』という、扶桑側からすれば馬鹿げた要求があったからだ。当然、そんな単艦でそれほどの攻撃を受けることを前提にした条件は扶桑自身を含めたウィッチ世界の全海軍の想定外であった。だが、史実捷一号作戦の武蔵の死に様、坊ノ岬沖海戦の大和の悲壮な最期を見させられた扶桑海軍は顔面蒼白になり、23世紀世界に泣きついたのである。扶桑の造船官が『あの、アメリカだからそんな攻撃できんのー!』と言い返したら『そのアメリカが仮想敵なのは、どこのどいつだっけ?(半ギレ)』と百事返って来るので、文句がつけようがないほど頑丈にしてもらったのだが、その読みの正しさが証明された。改装を重ねた大和型以降の船は最重要部に強化テクタイト板と超合金ゴッドZの複合素材が使用され、それ以外の部位にも超合金ニューZが多重空間装甲で配されている。この時点でマジンガーZがおもちゃのような頑丈さである。日本は大和型に図らずも『国運をかけた最終兵器』という呪縛をかけていたに等しいため、扶桑がそれを本当に具現化してしまった。もはやゴジラと戦えるほどだと、21世紀海自からは賞賛されている。大和型のこの改装の詳細は海自には知らされており、その事もあり、大和型の全艦の維持を政府に具申したのである。大和型が四隻もあり、どれもが自分達がブラックボックスであるとしか分からないシステムで統制され、『現在の速射砲と同等の速度で大口径砲が撃てる』という使用技術の高度さを押したて、革新政権時代の構想をぶっ飛ばしたのだ。


――2009年当時、日本連邦構想がちゃぶ台返しされ、更に扶桑に戦艦と空母の全廃すら迫ろうとした当時のユキヲ政権。当然、一郎の叱責でそれは頓挫したが、大和型に加え、長門までの旧型戦艦を持つのなら、それをシーレーン防衛に回せと当時の防衛大臣らは迫った。旧型戦艦はスクラップにして、海防艦や駆逐艦、空母の増備こそが急務だと説明したのだ。それは空母の価値が高い21世紀での基準での見方であった、。しかし、ウィッチ世界では、史実のような空母を多用途に使う研究は扶桑以外は遅れている(扶桑はG達が協力者を抱き込んで研究させていた)上、扶桑でもかなり疑問視されている研究であった。更に、智子が『太平洋戦線の癌になる連中』と侮蔑したウィッチ閥が1945年時点では、まだまだ健在であった。智子が『あいつらの利権をクーデターを利用して粉微塵にしないと、太平洋戦線はまともな戦にならない』という理由は、当時の空母航空隊の常備編成はウィッチ前提のものだからだ。それを根本的に変えるため、地球連邦軍の全面的介入を要請したと言うのが、ダイ・アナザー・デイの政治的背景の一つだった――




――日本連邦が結成されるまでに、Gウィッチたちは相応に苦労を重ねた。黒江と赤松は自衛隊で高い地位を得るため、2000年代を過ごした。智子は神社の巫女として、21世紀世界でバイトを続けたし、圭子は素の容姿で転生前の副業を行い、2010年には一定の地位を得た。調は2003年までには『覚醒』し、修行も兼ねて、シンフォギア姿で過ごしつつ、戸隠流の修行を積み、学園都市への密偵の役目を勤めた。(外見年齢は2003年時点の16歳前後の肉体で固定された他、ダイ・アナザー・デイ作戦後には、古代ベルカ時代の愛機『エクスキャリバー』が手元に還った事で、時空管理局特務六課にエリオの代わりの出向要員として、武子の命で送り込まれる。地球連邦軍軍人としての任官後は下士官→少尉である)なのはは帰還後は概ね、転生前と誤差の少ない経歴だが、この作戦での立花響へのフィンガースナップなどが私的制裁と認定されたために訓告処分を受け、以後は昇進速度が鈍る事になる。フェイトは前史でのアイオリアの憑依の名残りにより、なのはより早いタイミングで覚醒し、自身を『雷刃の獅子』と称するようになった。そのため、メカトピア戦争中の子供の姿の時、黒江たちに『覚醒している』事を教えるため、『ライトニングプラズマ』を使用してみせた。そのため、フェイトはその時点から、精神は黄金聖闘士であったのだ。これには黒江達も驚きであった。今回のメカトピア戦争では、未覚醒のなのはより高い戦果を挙げているが、それはG化が前史より早くなったせいだ。また、覚醒して帰還した後、模擬戦をしたら、なのはを含めての友人一同、更にヴォルケンリッター全員をも闘技で一蹴。『雷刃の獅子はその程度で止められはせぬ』と、アイオリアが憑依していた名残りを思わせる口調でのキメ台詞を決めたという。また、その頃は子供の頃のバリアジャケットのデザインを概ね維持していたが、細部は変更していたので、ダイ・アナザー・デイ作戦後の映画撮影に使用したのは、その時から15歳まで使っていたデザインだとか。(覚醒後は目つきが精神相応に鋭くなっているので、当時のなのはを怖がらせたらしい。記憶の枷が外れる形で覚醒したので、自我意識は当時のフェイトのままだった。判断基準は大人の時の黄金聖闘士としてのものに変貌しているというのが違いか)はやては19歳を超えてからの覚醒だが、自我意識という点では、従来の八神はやてそのものでは無く、所々で、どこかの世界の『あかいあくま』と同一の性質を得て変質しているので、Gウィッチでも珍しいケースだった。アルトリアのように、完全に英霊の器になったハインリーケ、共存に舵を切ったペリーヌ、英霊としての気質と現代人としての気質が入り混じり、自然な形で存在が一つになったルナマリアとも異なる形での覚醒となった。それはリインフォースTの『遺産』であったのだろう。はやてはある意味、G化で起こり得る『自我の別の魂魄による完全上書き』を不完全ではあるが、防いだ事になる。そのため、はやては『あかいあくま』としての容姿端麗、文武両道、才色兼備という猫かぶりと、ライバルがいるならば周回遅れにし、刃向かう輩は反抗心をつぶすまで痛めつけるという苛烈な信条を持つ一方、従来通りの無垢な優しさも維持しているので、覚醒したなのはやフェイトでも、その真意を推し量るのは難しくなった。その証は私服が赤色主体のものになる、髪の毛が若干、伸びている事だろう。ある意味では、なのはより、組織人としては出世に向いていると言えよう。なのははミッドチルダへ帰還した後はひたすら鍛錬に費やした上で、高校には進学した。修行の時間を確保するためだ。正式に移住してしまうと、勤務時間が伸びてしまいがちだからだ。その時間を鍛え直しに費やしたので、ダイ・アナザー・デイの当時には、前史での絶頂期相当の能力に戻っている。そのため、高校在学を理由に勤務時間をセーブしつつ、タイムマシンを黒江に借りて、修行時間の確保に血道を挙げた結果、18歳時には絶頂期の頃(前史での18歳から40歳までの時期)と同等の能力値に達している。しかも今回は、肉体の加齢がある一定の年齢から加算が止まる恩恵を受けている。そのため、肉体年齢の加算が緩やかにあった前史と違い、今回は『死ぬ』という事は無くなっているのもあり、精神的には少女のままで止まった面が生じたのも無理からぬ事だ――



――戦場――

「参った。ガングニールは復元したが、あいつにどう謝ろう。監督責任あるしなぁ」

「んー、ガキ共引きずって土下座でもさせたらどうだ」

レヴィはこのコメントである。黒江は響の精神状態を壊す寸前に痛めつけたなのはに平手打ちをした後にギャラクシアンエクスプロージョンでもやろうかと考えている。

「なのは達に謝らせたら、元の木阿弥になりかねん、説教の後、自分で後始末させよう、あの後の予定聞いたら案外良さげだったしな」

黒江は元々の予定との兼ね合いで、なのは達自身には謝る事はさせず、自分が謝ることで監督責任を取り、尚且つ、ある考えを口にする。

「響には悪いが、なのはを筆頭にあの三人には響の天敵になってもらおう。落ち着いたところで、柳と樫の話で曲がる強さを教えるつもりだったらしいから、響が柳の強さを得るまでは壁として、立ちはだからせよう」

なのはが言い訳したところによれば、柳と樫の話で曲がる強さを教えるつもりが、響が予想以上に早く折れてしまったので、言いそびれたらしい。なのはは響の心の支えがガングニールそのもののオンリーワンさと、絶対に貫けるというシンフォギア世界での特異性だったのを読めなかったのだ。それ故、なのは達によって信念を否定されてしまった上、手を取り合いたいと言いながら、戦っている事の矛盾を突いたのも不味かった。響は『誰かの居場所を侵される』ことを過去の経験でトラウマ級に恐れている。そのトラウマは黒江に演技を強い口調で迫るほどなので、なのははそのスイッチをオンにしてしまったのだ。黒江もそれはなんとかしたいと思っていたのは事実だ。響は最愛の父が会社で居場所を無くして失踪していた事、自らも中学校時代にいじめを理不尽に受けていた事が複合的に作用し、黒江が成り代わった人物のことを気にも留めない風だったので、調が居場所と思っていたモノを守ろうとして、黒江に強引に迫ったというのが成り代わり後期の演技期だ。これについては、小日向未来が後で諌めた上で謝ってきている。未来は響と相互依存している親友だが、黒江に調の演技を強要した響を諌めている。未来はこのように説いて、黒江に協力した。

『居場所だって他人に守られただけの居場所は本当の居場所にはならないんだよ?本人が努力して作り、守らなければ本当の居場所にはならないんだ。守るには友の力を借りるのも有りだし、力を借りられる友達を持つ事も自分の力の内なんだよ? 借りられる様に絆を深め、貸しと思わせない貸しを積み上げる事でいざというときの正しく借りることの出来る力になるから』

と。響は黒江に「借り」を作っているのにそれを「借り」と思っていないという点があるので、一概に今回の事での全面的な被害者とは言いがたいところも、確かにある。その無理強いの結果、調が帰還してきた後に居づらさを感じ、自分から姿を消して、のび太のもとに出奔したのには気づいていない。気づいたのは翼、クリス、マリアの年長組だけだ。調にとって、黒江が行動した後に帳尻合わせを強いられる生活は生きづらかったのだ。そのことへの不満が大いにあり、なのはに協力した面もある。

「あいつ、私に大きな貸りがあるくせに、そう思っちゃいねぇのも事実だからな。まぁ、あいつは偽善でも、やらないよりずっといい事を分かってなかった節あったしな。調に偽善と言われて、未来に泣きついた事もあったっつーし、偽善でもいいからって割り切りができなかったのが、ガングニールや未来への重依存になってたかもな」

黒江も、自分と対立関係にあった者達には偽善と罵られた事が数度の人生でいくらでもある。これまでの人生の累積でおおよそ1000年近くを過ごせば、やらない善よりもやる偽善という考えにも至る。調ものび太とドラえもん、かつての主であった『オリヴィエ』の影響で『偽善』を肯定したように、偽善への考えも年月の内に変わるのだ。のび太への想いがそれまでの切歌への依存心の代替物である事を自覚しつつも、のび太に献身しているように。のび太はそれを最初から知っていて、『全て』を受け入れた。それがのび太がZ神からも評価される高潔な人間性である。調はそれが嬉しいからこそ、マリア達と道を違えていく決意が固まったのだ。のび太は敬愛していた父方の祖母の教えを忠実に守り、誰にでも優しく接する。のび太の人間性は玉子の教育よりも、ドラえもんと祖母によって完成されていたと言える。玉子は息子の人間性や学業成績が芳しくない事を、90年代には定着していた学歴社会の負け組になりかねない事から、息子にはハングリーになってもらいたいという考えが自身の若い内はあった。のび太が長じ、社会で生きて行けるようになった後は一転して落ち着いた事から、のび太が社会人としてやってゆけるのかをひたすら考えていた節がある。

「のび太もドラえもんが来た事で、人生が90°変わったけど、響は色々拗らせた。天羽奏が自分の命と引き換えに救った事が前向きな自殺願望を持つきっかけだからな……。一概には責めれんさ」

黒江は響が歪んだ原因がツヴァイウィングのライブにある事を引き合いにだし、響へ同情している事を口にした。自分とて、ヒステリックな母親から逃避するために、軍人になったからだろう。

「幸いにも、私は色々な人たちの導きで英雄になれた。だけど、あいつは家族を取り戻すにも時間がかかった上、ガングニールがないと、自分は世界に受け入れてもらえないと思ってたらしーからな。なのはくらいの若造じゃ、あいつの心は見抜けないのは当然だ」

黒江は自分が『年寄り』である事を自覚しているようで、なのはを若造と形容する。なのは自身も今回のことで経験不足を実感したようで、時空管理局戦技教導隊を辞する事も考えていると言ってきている。教導隊はなのはを引き止めるだろうが、直接的な精神面の教導ではなく、実務技能専門になりたいという希望は受け入れるだろう。時空管理局は唯でさえ組織がガタガタなのに、なのはに教導隊をやめられたら威信もあったものでないからだ。元々、機動六課出向で棚上げになっているが、はやてが特務六課への改編で正式に所属にしたいと脅しているのも要因ではある。機動六課の特務への改編ははやてがG化で史実より早めた事項だ。機動六課としては、M動乱に迅速に対応出来ず、仮面ライダー達の加勢で本部からの脱出にようやく成功したという戦訓から、はやてがテロ対策部隊への改編を推し進めさせた。そのため、はやてはなのはの正式な引き抜きをカードに、教導隊を脅しているのだ。

「そろそろ、はやてが特務六課に組織を衣替えしてるだろうから、なのははかなり宙ぶらりんになるな」

「ああ、特務六課への改編だっけ?早いな。前は新暦80年代だったろ?」

「はやてが覚醒したらしくてな。早期に組織保全したほうがその後の事件に対応できるって寸法だろう。それに、ティア達三人が抜けた穴を埋めたいらしくてな」

「今更、補充はヴィータが許さねぇだろう?」

「それが問題らしいんだ。かと言って、なのはとヴィータの二人だけでスターズ小隊は回せんだろ」

スバルもGウィッチ化でG機関に事実上は引き抜かれている(出向という形で引き続き在籍)ので、機動六課の前線はかなりガタガタであった。フェイトがエリオとキャロを原隊に復帰させ、ティアナは扶桑軍へ移籍済みになったので、補充要員に最大で4人は必要となったが、ヴィータが折れなかった。そこで、はやては武子に相談しているのである。フェイトはヴィータに「シグナムを過労にする気か、お前」と苦言を呈している。はやてが武子に相談しているのは、気心が知れてる誰かを送り込んでくれという事だ。ヴィータを納得させるため、スバルはガランドの命でリターンし、ティアナも武子の命で出向という形で復帰する事になり、また、フェイトが戦う際に援護可能な人員として、同じ聖闘士の力を持つ調に白羽の矢が立てられた。調は実質、ライトニングとスターズの掛け持ちになるが、ベルカ系統の騎士であるという理由で、シグナムに気に入られる一幕があったりする。また、地球連邦軍も人員・機材を援助し、山本玲が出向したため、特務六課は改ペガサス級を拠点にして機動的に運用されるのだった。

「調が正式に任官したら、行かせようかって話もある。シグナムが過労で倒れかねねぇしな」

「サーニャとリーネを鍛えて送り込むことも考えたが、経験ないからな」

「あいつらを今から魔法少女にすんには無理ねぇか?」

「うん。カードとかその他を渡して魔法少女ーって、うまくいくとは限らないだろ?それもあってさ」

黒江はサーニャの声的意味で、あることを考えたが、ボツにしたらしい。ただし、それは芳佳が変貌し、ペリーヌがモードレッドと共存するようになったため、自分の立ち位置を変えたいリーネの要請で実現する。また、この事でリーネが約束された勝利の剣を使うようになり、サーニャを結局は巻き込んだため、エイラは『クソぉ、こうなったら私も大洗女子に…』とボヤいている。こうして、聖剣のバーゲンセールに陥ったので、ゼウスは『エクスカリバーのバーゲンセールだな』とボヤいたらしい。(黒江、調、蘇ったシュラ、リーネ、アルトリアなど)当代に5人も聖剣持ちが出たのは類がないが、神々の聖戦での必要上、過去に戦死した聖闘士も自分の僕として蘇らせたせいでもある。


「さて、空爆機械獣のおかげでノルマンディー級の一隻が燃えた。これは想定内だ。あれはグロイザーXの劣化コピーだ。私達の敵じゃないが、空自や米軍は近づけるな。問題は戦艦同士の砲撃戦の主役が日米英独だって事だ。仏は怒るぞ」

「仕方ねぇよ。戦場の主役は大和型とそれに対抗できる規模の船連中だ。前大和型しかねぇフランス軍が出ていっても、海の廃屋を増やすだけだぜ」

レヴィ(圭子)はガリア軍の戦力を足手まといですらある事に言及した。現に、ロマーニャなど、前史と同じように、予めのタラント空襲で主力がほぼ無力化されたし、自由ガリア海軍は空爆機械獣にほぼ無力である。ガリア軍艦隊は『敵の能力を見るためのデコイ』扱いしているようで、辛辣である。ジャンヌも自国の海軍が代々、英国に勝てなかった事は知っているので、苦笑いだ。

「お前の国、トラファルガーで歴史的に赤っ恥晒してるし、仕方ねぇだろ?」

「それは認めてますよ。フランスは昔から、陸で最強になれた事があっても、海じゃ弱いですからね」

ジャンヌはいつの時代もフランスは海軍が『弱い』事は自覚しているようだった。実際、イギリスは常に不敗を誇るが、国の衰退により、20世紀が終わる頃には海軍力が見る影もないほどに堕ちているので、20世紀終わりの時点のイギリスであれば、この時期のガリア海軍のほうが見てくれで勝てるだろうというのが感想らしい。仏の英霊ながら、意外に自国の海軍力には現実的である。

「お前が鼓舞してやりゃ、ガリア連中もハッスルするだろうが…、生前は海を見たことないっけか?」

「ええ。内陸部の農民の出でしたので。ロレーヌの出です」

「思いっきり、ドイツの国境寄りだな。そりゃ海に無縁なはずだ」

「今は違いますが、生前は海の事も分からぬ無学な子供で。数学は特に…」

「お前、転生してもその傾向が?」

「はい。シンにはよく怒られてます」

「あいつと一緒に戦えるのは、未来世界がデザリアムの連中に攻められる時だろう。お前のインパルスや、シンのデスティニーはテストに回されて解体されてるのは間違いないだろうから、ダブルゼッツーとかは確保しとけ。月なら、あいつらも手は出さねぇだろうよ」

「分かってますよ。その前にレイの最期を看取る事になりそうですけどね」

「ああ、レイ・ザ・バレルの事か」

「もう余命が数年もない状態でしたから、あの子は」

レイ・ザ・バレルはクローン人間である上、製造時の問題もあり、余命幾ばくもない状態だった。釈放後は月のサナトリウムで命が終わるのを待つ状況であった。地球連邦の強化人間のデータを使用した延命措置は受けているが、本人は悲観的である。ジャンヌがルナマリアの容姿になるのは、レイとの面会時だけだが、所々で態度が落ち着いたらしいところが見え隠れしているのは知られている。

「あの子を騙しているようで気は咎めますが、仕方がないと割り切っています」

「仕方ねぇさ。綾香だって、一年は切歌を誤魔化す羽目になって、色々試行錯誤したっつーし」

「あん時は気苦労のほうが多くてな。何から何までペアルックとか、ベットで一緒に寝ようとか。漫画喫茶で寝泊まりした日も多くてよ」

黒江は身近に迫水ハルカがおり、夜這いをかける事を何度も目撃した。そのこともあり、切歌の百合気味の行為の数々には耐えられなかったらしく、漫画喫茶で寝泊まりするなどの行為を再開し、切歌となるべく二人きりにならないように勤めた事を告白した。黒江が切歌を苦手としているのは、切歌の精神バランスの維持のためとは言え、切歌と行動を共ににせざるを得ない場面がいくつもあったからだろう。切歌は正気に戻った後に謝罪しているが、フロンティア事変での行為がトリガーとなり、調がのび太のもとに行ってしまった事に強い罪悪感を持っている。

「レイの延命を出来ればしたいのですが、どうしましょう」

「アヴァロンでも根本的な解決じゃないしな。こうなれば最後の手段。黄金聖闘士の復活の依代に使うとか?」

「それしかないのですか?」

「アヴァロンを使っても、根本的な延命じゃないからな。ゼウスのおっちゃんに黄金聖闘士の誰かの依代として提供したほうが、あいつの悪行の償いになるだろうさ」

「それは本人も分かってますよ。ギルバート・デュランダルの理想はラクス・クラインとキラ・ヤマトに否定される運命だって事は。シンを、親代わりの人のため、打算的に利用してたことへの償いができるほどは生きれないと悲観的に振る舞っています。……分かってくれるでしょうか」

「彼も、シンへの償いができるのなら、本望だろう。手筈は私や調が整える。後はお前がルナマリアとして、彼のサインをもらうだけにしとくよ」

ジャンヌは、レイ・ザ・バレルの延命のため、ゼウスにかつての黄金聖闘士の黄泉還り用の素体として提供するように提案してきた黒江の案を苦渋の判断で了承し、レイ・ザ・バレルに書類に署名させた上で、サナトリウムから退院させた上でアテナ神殿へ運ばれ、ジャンヌ、黒江、調、赤松の立ち会いのもと、その肉体はかつての黄金聖闘士『蠍座のミロ』の黄泉還りの依代となるのだった。ミロも神々に利用される事は慣れっこになったらしく、レイに精神の主体は渡すものの、黄金聖闘士として『やり残した事』を果たすという意思を見せ、二重人格の形でレイの中で生きる事になるのだった。また、レイはニュータイプの素養があったらしく、ジャンヌが『ルナマリアをシンの精神のために』演じてくれていると解釈していた事がその際に判明する。転移前、シンの精神が破綻寸前であった事で、レイは今の二人の関係をそう解釈していたらしい。流石に、ジャンヌがかつてのフランスの英霊であることまでは分からなかったらしいが、ミロが与えてくれた『第二の人生』を黄金聖闘士として全うする事を決意、フェイトはその時にまた獅子座へ戻り、レイ(とミロ)が蠍座に叙任され、レイの冷静さとミロの熱さを併せ持つ黄金聖闘士になるのだった。また、ジャンヌはこれ以後、聖域と関係を持つのだが、自分が何故蘇ったのか。戦いの世に転生したのか。その理由と意味をアテナ/城戸沙織直々に教えられる事になる。



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