外伝その167『Gウィッチ達の力』


――ダイ・アナザー・デイ作戦で浮き彫りになった『出戻り』を警戒する現役の声、しかし、対人戦には『出戻り』のほうが使える事が判明した事による現役組の焦り、嫉妬などがウィッチ達の分断を招いていた。この事がますます、64Fの再始動に大義名分を与えた。従って、Gウィッチ達の活躍は現役組の嫉妬を招き、それがG/Rウィッチ達と現役組を別部隊に振り分ける案と、教官代わりに分散配置する案が提案されていた。後者が扶桑で試行されていたが、Rウィッチが予想外に多く生じ、現役と同じ規模の部隊がいくつも作れるほどに達していた事、後者の編成がクーデターの要因になってしまったので、前者の部隊案が64の復活という形で具現化しつつある。これは特に、海軍系ウィッチにRへの異物感が強く(前史の坂本のような)、後者は無理があるという結論になりつつある。後者は竹井や武子の推す案だが、海軍系の反発により、クーデター確実の情勢になったことで潰え、64Fの復活に参加する決意を竹井は固める。つまり、『身内がRを異物扱いした』ので、Rに居場所を与えるという思考に達したらしい。このダイ・アナザー・デイの時点で覚醒している全員は64Fという受け皿に流れることとなった。現役組はこの時に寛容性を見せなかった事が仇となり、太平洋戦争では軽んじられてしまうこととなる。つまり、世代が違うからと、自分達の摂理を守る事に躍起になった結果、出撃機会が与えられるのが太平洋戦争後期に入ってからの数合わせで、『戦力』と見なされない屈辱であった。実際、その頃には、45年当時の現役中堅組も高齢化しており、その時に後悔するケースが相次いだ。Gウィッチはダイ・アナザー・デイから太平洋戦争後期に至るまでの長期に渡り、レイブンズとその戦友たちを指す単語であった。その時期の覚醒者のほぼ全員がレイブンズに縁のある者であったためであるが、同時に64F在籍者であったのも関係している。レイブンズに縁もゆかりもない覚醒者が出現したのが1950年代と遅めであったことも作用し、軍内では、自動的にGは64に配属されていた。また、軍が『軍としては、命令に従うことが出来ない者は要らない。命令が納得出来ないなら除隊し、軍ではなくMATにでも行ってくれ』とする方針であったのもあり、現役組は戦争中に世代が移り変わり、太平洋戦争で最もよく戦ったとされるのが、新世代の第一世代と言える46年志願組なのも皮肉であった。この世代はクーデター後初の志願組で、46年秋に志願し、早い時期に前線を経験した。人数は少ないものの、精鋭部隊の配属を勝ち得た者もおり、質は45年組より安定していると評された。また、48年度から集団就職ウィッチからも良質な素養があるウィッチが十人に一人の割合で生じるようになり、これを起点に回復へ向かう。現役組は世代交代でG/Rへの抵抗が自然に薄れ、レイブンズと縁もゆかりもない者にGが生じたことで、結果的に現役組のGへの抵抗感が薄れるが、43年から45年志願組の多くは結果的に辛酸を舐め、MATで幹部になった者も多く輩出するに至る。これは現役組の入れ替わりが戦争中に数回起こったことも関係する。また、扶桑へ日本がよく質問した事が『大和型の改造による大型化』である。290mへ大型化され、主砲口径も拡大され、速射砲化された改造は23世紀の技術と21世紀技術の混合である。装甲材はドラえもんの材質転換器でどうにかなるが、大型化はどうしたのかというと、艦尾延長のみではすまないので、そこを聞かれた。また、艦尾形状の変更などの根本的な変更が加えられており、単純に大型化されたわけでもない。21世紀では、船の軽量化やソフトウェア面の発達、武装のスマート化が飛躍的に起こっており、その面から大艦巨砲主義への疑問が根強かった。防御力と安定性の向上という名分もかなりツッコまれていた。そのため、大艦巨砲主義的な『でかけりゃいい』という思想は時代遅れと揶揄されていた。ただ、小さくまとめすぎても、それはそれで問題が起こったのは、統合戦争などの23世紀の過去で証明されている。



――連合軍参謀本部――

「日本はコンピュータで小型化できるから、巡洋艦はイージス艦で更新すべしと宣ってきた」

「それは事実だが、向こうの艦艇はM粒子を想定しておらんからな」

「うむ。M粒子は21世紀程度のコンピュータでは誤作動起こさせる要因だ。だから、我々はその状況で作動する23世紀のコンピュータを使っているのだ」


「21世紀の証人喚問はどう乗り切る?」

「ああ、戦艦の照準は各種レーダーやセンサー、高画質デジタル測距儀、光波測距儀の複合だと答えるさ。事実だし、23世紀の宇宙艦艇の技術で改造されてるし、造られたからな」

「向こうにはやたら証人喚問を求める野党がいるのさ。戦時中だぞ、こっちは」

扶桑の参謀は呆れ顔で自由リベリオンの参謀に言う。地球連邦軍は連邦海軍がM粒子を大義名分に、『ジュッドランド級戦艦』をモンタナの線図を引っ張り出す形で作り出し、更に宇宙艦艇で砲撃戦のノウハウがある。そのため、21世紀の人々の思うミサイルの打ち合いは過去の遺物扱いとされている。23世紀は戦争への倫理観に騎士道を持ちこんだトレーズ・クシュリナーダや、武侠精神で解釈していた東方不敗マスター・アジアの影響で、無人機があまり好まれず、有視界戦も当たり前であるので、ある意味では21世紀に理解され難い世界になっている。そのため、無人機が普及していると思ったアメリカ軍を大きく落胆させていたりする。

「戦艦は奴さんにとっちゃ、過去の兵器だ。超高速魚雷を撃ち込めばイチコロと言うがね、実際(そう)は問屋が卸さん」

「ああ、金剛型に効いた『スーパーキャビテーション』だろう?金剛型はかなり傷んでたし、当たりどころも良かったんだ。大和型はそうはならんよ。核魚雷でも弾く装甲だからな」

「それをどう理解させるんだ?軍事供与の常識からは外れているぞ」

「アナハイム・エレクトロニクス社だって、サイコフレームが流れてるだろう?」

「それもそうか」

彼らが悩んでいるのは、21世紀日本の野党が求めた証人喚問だ。21世紀日本(2018年頃)は野党が証人喚問を求めまくり、連合軍全体を振り回していた。特に戦艦へ巨額の費用を費やす理由をヒステリックに喚きちらし、扶桑のみならず、自由リベリオンも悩ませた。また、23世紀の現用技術が供与されている話も信じないので、2018年に停泊している三河(ウィッチ世界での実際の完成はダイ・アナザー・デイ後だが)、廃艦予定の長門型『陸奥』を動員しての実験が行われた。わざわざ艦橋周りを新調しての実験であった。米軍がこれまた協力しての攻撃実験が行われた。武蔵に続いての大規模実験であったが、結果は改修の正当性の証明であった。たいていの21世紀兵器は装甲に無効なのだ。当時最新鋭のASM-3空対艦ミサイル(自衛隊)で多少の傷がつく程度の損傷しか負わない(相手は陸奥だが)事が強調された。また、より装甲が厚い三河はそのミサイルを弾くといった光景を見せつけ、大艦巨砲の意地を見せた。23世紀の技術の驚異を見せつけると同時に、大艦巨砲の意地を見せたと言える結果はマスコミも驚きで報じたほどだ。この際に、海自で革新政権時代に提言を行った経験がある、当時の幕僚長は『戦艦に駆逐艦の火力で対応できるものか。それも23世紀相当の戦艦に!』と部内で毒づいたとか。

「実験の結果は出たか」

「ハッ」

「これで、奴らをギャフンと言わせられるよ。ご自慢の空自、海自、米軍が束になってもこの結果だ」

「良かった。これで我々も日本の目を気にしないで済む」

日本は南洋島に、リベリオン亡命者を匿うことにも疑義を呈していたが、アメリカへの人質という利用目的を見出した日本がその統制下に置いている。自由リベリオンも日本が自分達をアメリカへの人質として利用し、アメリカの協力を確実に引き出すために利用しているということは知っているので、アイゼンハワーもそれなりの立場として、日本で振る舞っている。これがアメリカが日本連邦に協力的な理由の一つであった。つまり、アメリカがティターンズへ協力するのを防ぐための政治的道具に自由リベリオンは使われているのだ。亡命者の多くは科学者であったり、軍人、芸能関係者であるので、南洋島の神奈川県くらいの広さがある、二つの離れ島を開拓し、そこに集めている。しかし、神奈川県程度の広さでは、将来的キャパシティに不安があり、ドラえもんが強力岩トカシとマグマ探知機で関東地方ほどの大きさの新島を作る事を実行している。ダイ・アナザー・デイ直前にできた新島はドラえもんの道具で整地され、総面積で関東地方+静岡県程度の面積を持つ新島ができたという。自然の凄いところが、太平洋に大きい島ができたのに海流が適応したという点で、島の一つが増えた程度では地球の気候はびくともしないことも驚きであるが。そこはリベリオン人の受け入れ先にはもってこいであり、扶桑から租借するという形で整備が行われ、ドラえもんがリベリオンの町並みを模した町作りを作戦中でも行っている。扶桑政府直々の依頼だからで、かなりの報酬が出るので、ドラえもんはのび太、出木杉、スネ夫を動員して、町づくりに精を出している。スネ夫や出木杉は模型作りを通して、町づくりもかなりこだわっており、インスタインスタントミニチュア製造カメラでリベリオンの街並みを精密に再現し、それをビックライトで拡大して、街並みにするといった大掛かりなものだ。のび太達はこの時に得た報酬を後の大学時代の学費に使い、ドラえもんは人間偽装システムの頭金に使用したという。

「ドラえもん君達の町づくりだが、ハリウッドの映画会社も真っ青だぞ」

「ああ、あの未来世界の青狸型ロボ」

「見てみろ。定時報告のレポートだが、ニューヨークの街並みを正確無比に再現している」

「凄いな」

スネ夫と出木杉のこだわりにより、ミニチュアサイズでニューヨーク(1945年から1950年代頃)の街並みが再現されている。無駄に凝っており、この時代の人気車種などがちゃんとディーラーに陳列されてある。ニューヨーク海軍基地(ブルックリン海軍工廠)もちゃんと再現しており、資源さえあれば、モンタナの増産も夢ではない。また、ハリウッドエリアもあり、西部劇の撮影に使える岩山ができた偶然も利用して、想定される、あらうる映画のニーズに答えられる(パリ、ローマ市内再現のスタジオも完備した)。そこは後世の多くの名画の誕生を懸念したスネ夫の趣味だったらしい。

「で、無駄に凝ってないか。政府はデフォルメしたかと思ってるようだが」

「デフォルメした街並みだと、後世のイメージが入るから、らしいぞ」

実際、スネ夫はそっくりそのままの再現をすると、膨大な労力がいるので、パリとローマエリアはパッチワークでコンパクトにまとめていると述べている。(クロエ/ルッキーニはそれで不満はあるが、合格とは言っている)

「で、戦線はどうなってる?」

「ああ――」



――戦線では、怪人軍団をスーパーメカで燻り出す戦法がなされる一方、MSや機械獣にマジンカイザーが対応するという戦法がなされていた。黒江達はこの隙に体力回復を図る一方、マジンカイザーの戦いに興奮していた。(特に黒江)――

『光子力ビーム!!』

飛来する機械獣軍団にマジンカイザーの光子力ビームが照射され、Zとグレートが比較にならぬ攻撃力を以て、打ち倒していく。

『正義の魔神、マジンカイザーの力を見せてやるぜ!!ジェットブーメラン!』

マジンカイザーは改修後、手足が青色に変更され、胸の金の装飾が取り払われ、グレートまでと似通った姿になっている。頭部の形状も変化しており、グレートに印象が近くなっている。対ZERO戦を相当に意識した改造がなされている通り、グレートの兄弟であること、Zの兄弟であることが強調されている。その証拠の一つがジェットブーメランである。スクランダーを切り離し、直接、敵にぶつける。スクランダーブーメランが相当に荒い手法であるので、兜剣造が改造を加えて武装化したのがジェットブーメランである。そして、再ドッキングしての。

『ダイナマイトタックル!!』

要するに超光速・慣性の法則無視のタックルである。その威力はMSを触れただけで粉砕し、機械獣の五体をバラバラに引き裂く。この有無を言わせない破壊力に大興奮の黒江。

「ふぉぉぉ〜!かっけー!!」

「師匠、私の顔で興奮しないでくださいよ〜…。いくら翼ちゃんが来てるからって」

「いいじゃん!マジンカイザーの戦闘、滅多に見られね―んだし!」

これである。実際、グレンダイザーまでなら、しょっちゅう見れるが、マジンカイザーになると、有事でしか使われない(ZモードでもZの20倍の破壊力である)最後の切り札である。要はグレンダイザーでも太刀打ちできない敵なり、物量を倒すための魔神がカイザーであり、エンペラーなり、ゴッドである。

『ほーらよっと、お返しだい!』

甲児はカイザーに突貫してきた空戦型機械獣『ジェノサイダーF9』をぶん殴って粉砕する。更に、ジャイローンJ1を『流星ターボスマッシャーパンチ』なる応用技で倒してみせる。(胴体をぶち抜くため、脇腹にターボスマッシャーパンチを接射するやり方)


『うおおおお!数多いから、もうまどろっこしい真似なしだ!カイザースマッシュラリアット!!』

カイザーナックルの応用のラリアットだが、回転しながらやるので、機械獣はほとんど鉄屑に成り果て、潤滑油を血のように流す者も多い。甲児は咄嗟の判断においては、鉄也以上であるので、そこが天才肌と言える。

『お、あいつは確かガイアQ5!ずいぶん懐かしいの出して来やがったな!って、あいつはやばい!磁力が武器だぞ!』

「そ、そうかエイラ、避けろ!」

「え?」

上空援護のエイラは、この時、通常のストライカーを履いていたため、ウルトラマグネチックパワーなる磁力線に吸い付けられようとする。魔導エンジンを全開にするが、吸い付けるパワーが推力を超えており、戻れない。

「嘘だろ!?エンジンをフルパワーで回してんのに、抗えねぇ!」

焦るエイラだが。

『スピンストーム!!』

磁力線をどこからか放たれたスピンストームが相殺し、更に打ち倒す。スピンストームは鋼鉄ジーグの技だが、サイズが小さいので……。

「あー!そうだ。お前いたんだ!ジーグさん!」

黒江が手をポンと叩いて、思い出したような仕草をしつつ、その人物の名を呼ぶ。ジーグさん。外見年齢はどう若く見ても、21歳前後。卯月美和と同じ髪形で、年の割にこじらせた口調が基本だが、慌てると可愛い声が出る。

「ハッハッハー!Zちゃんのことをグレちゃんに押し付けてきたところさ。さーて、念のため退いてな!」

「うわぁー!?」

「安心しろ、影響圏の外から出すだけだー!」

「だからってーパンチで掴むなぁー!くそおぉぉ、こんなキャラ、私のキャラじゃねー!このキャラはニパのキャラだろぉぉぉ!?」

愚痴りつつ、ジーグさんのダイナマイトパンチに運ばれるエイラ。ニパを思いっきり煽っているような口ぶりだ。

「ついでに相棒(フェネクス)連れてきな!」

「こんなギャグ漫画みたいなので運ぶんじゃねぇぇええええ!?」

ダイナマイトパンチに運ばれるエイラに黒江は笑いつつ、参陣したジーグさんに一つ質問する。

「バックの中身ー、ちゃんと整理してきたか―?」

「なんだよー、人がせっかく決めてんのにー!多分大丈夫、パーンさんにメンテしてもらったばかりだから!」

「おい……」

「あ、ジーグさん後ろ!」

「丁度いい、貴様らまとめて地獄に送ってやる!」

怪人にジーグブリーカー(ベアバック)を決める。意外にパワーファイターなので、戦法は荒い。調の声掛けにすぐに反応し、ブリーカーで絞め殺す。

「覚悟しろ、怪人軍団!貴様ら、全滅だぁ!」

指を指し、決めポーズを取りながら決める。珍しく大真面目に決める。そして、日本が生み出したスーパーロボットの化身たる力を存分に発揮。この場で一番のパワーでシャイニングウィザードやら、ジャーマン・スープレックスなどを行い、プロレスを思わせる戦闘法を行う。

「ジーグさん、プロレスファンだっけ?」

黒江もこのコメントである。

「いや、破壊力あるし、タイマンだと役に立つぞー、これ」

ジーグさんはエルボーをかましつつ、黒江に言い返す。ジーグさんは一応、パーンさんのランサーを使えるが、タイマンであると、プロレスさながらのパワーファイターだ。言ってる間に延髄斬りを決める。

「ひゃー、若い時のアン○ニオ猪木並の延髄斬りー!」

どうも、ジーグさんはプロレス技に精通しているようだ。腕を鳴らし、不敵に微笑うジーグさん。今までの数十秒で20体は殺している。パワーはブリーカーを必殺技にしているのは伊達ではないらしく、下手な怪人は腕を引きちぎられるほどだ。それでいて、プロレス一辺倒でもないらしく、モーションを拳法に切り替える。

「フッ、伊達や酔狂で鍛えてるわけじゃないさ!」

朽木倒しに似ているが、それとは異なる技を見せ、地面を陥没させる。相手はもれなく死ぬ。更に、片足の二連続蹴りからサマーソルトキックの連撃を見せ、蜘蛛男を撲殺する。伊達や酔狂でチームGを担うわけではない実力は確かにあるのを見せつける。

「これが、この俺!鋼鉄ジーグの力だぁー!ナァハハハ!!」

と、ギャグ漫画じみた笑いでドヤ顔のジーグさん。伊達や酔狂でチームGを担うわけではないが、如何せん、性格が『遅れてきた中二病』である事から、智子の素と大差ない精神年齢である。彼女は智子と仲がいいが、その共通点であるからだろう。

「あいつは?」

「ジーグさん。ガイちゃんの仲間で、ガイアのスーパーロボ『鋼鉄ジーグ』の化身ですよ、隊長」

「なるほど。しかし、あの性格、誰かに似てるな?」

「私もそう思います」

「あいつ、今頃くしゃみしてるだろうな」

「でしょうね。あ、のび太とドラえもんですけど、仕事が入ってるから、一旦離脱ですって」

「ああ、自由リベリオン用の土地の開拓だろう?変な時に抜けたな」

「代わりに大人のび太が来るそうで」

「何?同時に来てるのか?」

「ええ。ガキのあいつ自身に頼まれてるみたいで、代理で環境省から」

「ややこしいな」

「そんなにややこしくはありませんよ、参謀」

「君が大人の野比のび太か」

「ええ。15年位後の、ね」

いつの間にか、青年のび太が現れる。2010年代頃の青年姿で現れた。いつから来たのか。息子が生まれたか否かの時期らしい。

「あの時は弾丸使いきっちゃったんだよなぁ、敷島博士の作ったヤツ。 やり残しは片付けないとね」

「のび太君、静香さんに連絡は?」

「うちのカミさんには連絡してあるよ」

この時、年代を多少サバ読んでおり、25歳と言ったが、実際は日本連邦結成時の28歳から30歳ほどだ。調はその時代にも野比家にいるので、のび太の年代ごとの風貌はすぐに見分けがつく。30代のうちは、外見で28歳前後に見える風貌を保ち、55歳でも40歳で通じる若さを保っている。それが代々の野比家の特徴で、のび太は特にそれが顕著で、静香共々、あまり風貌が老けないまま、60代を迎えている。白髪になったのも70代で、その後の何十年かの間にノビスケやその子、ドラえもん、調に看取られ、天寿を全うしている。また、ノビスケは運動神経抜群なため、その後、社会人スポーツ大会で名を馳せつつ、壮年期頃に父親が担っていた裏稼業を引き継ぐ。そして、彼自身も息子に後を継がせ、自分の孫であり、セワシの父にあたる野比のび三の成人を見届けた後に没する。セワシは調との面識があるとは語ってないが、恐らく、父親ののび三の仕事を手づだっていたのだろう。少なくとも、調はのび太の曾孫ののび三の代(四代後)まで野比家に尽くし、ドラえもんが買われるのを見届けた後に、黒江のもとに行っているのは確かだ。のび三がセワシに『私のひいおじいさんの代からずっと仕えてくれた子がいた』と語っていることから、黒江のもとへ行った時期が、のび三が子を成した後であり、なおかつのび三の妻である、ジャイ子のひ孫は調を知らないことから、のび三が結婚し、セワシを設けたタイミングで野比家を去ったのだろう。しかし、そのセワシが22世紀後半の一年戦争で次男一家を亡くし、急速に枯れると、その子は調を探したが、見つかるはずはなかった。そしてその子の代になり、先祖ののび太と共にいるのが調と分かり、のび太の雲孫(孫の孫の孫)ののび一に雇われるのである。セワシは23世紀でも生存していたものの、寝たきりの老人であり、かつての面影は青年のび太でさえ見出すのが難しいほどだった。老い果てたセワシは野比家の人間であることを示すのが、童顔である事くらいしか残っておらず、セワシが一年戦争で負った心の傷が伺える。

「23世紀でセワシに会ってきたけど、すっかり枯れ果てていたよ。一年戦争で倅の一人が一家ごと死んだショックで急激に枯れたらしいけど」

「枯れ果てていたって、23世紀の始めだと、もう90超えてなかった?セワシ君」

「そうなんだ。しかし、セワシの孫曰く、急激に枯れたから、よほどショックだったらしい。奥さんはそのショックで病死したらしいし。ああ、セワシの孫が君をまた雇いたいそうだよ」

「お孫さんが?」

「ああ。名前は確か、のび一、だったかな。デザリアム戦役の前くらいに、今の僕くらいで、諜報部にいる。もちろん、もう子供いるよ」

野比家のデザリアム戦役前時点での継承者は『野比のび一』といった。その子で、幼子の『のび久』もおり、のび一は年齢的にまだ青年だが、一族の中枢を担っている。このように、セワシの後の代は先祖代々の通字に戻ったのが分かる。

「でも、確か一度、暇を出したよ?」

「セワシは人生で成功したけど、僕とつるんでた頃が一番幸せだったみたいでね。ドラえもんは統合戦争の戦いでバダンの野望を止めたのと引き換えに、ドラえもんズと時空の狭間に消えていったようだし」

「それは聞いたよ。ドラえもん君には、もっと別の最期があると思うのに……」

「うん。だけど、ドラえもんは世界をバダンから守って消えていったんだ、本望だったと思うよ。それに、君は僕と倅、それと孫の最期を看取ってくれた。それだけでも感謝してるよ」

青年のび太はドラえもんが統合戦争の頃に、バダンと戦い、野望を阻止したのと引き換えに、ドラえもんズと共に時空の狭間に消えていった事に触れる。(帰還の望みがないわけではないが)セワシはそれを理由に、青年期に統合戦争に従軍していった。大人のび太はドラえもんの生き様を『本望だったろう』と言い、そういう星の下に生まれた存在だったのだと解釈している。実際、ドラえもんは世界の危機を幾度も救い、最期は時空の狭間に消えていった。帰還の望みが絶たれてはいないので、大人のび太は希望を見出している。機械でありながら、確固たる自我を得、最期は人のために戦って消えた。ドラえもんは英霊の資格があると言える。のび太、ノビスケ、その子の野比家三代の死に様を看取った調も、野比家への献身がGウィッチ化した身にできることだと言っている。

「のび一に、君が引き受けることは言っとくけど、いいね?」

「必要とされてるなら、いつの時代でも行くよ」

「感謝するよ。まさか、あそこまでセワシが枯れるとは思わんだ」

のび太はセワシが老年期に急速に枯れ果てたことに驚き、セワシの孫達が調を必要とした理由に理解を示し、調もセワシの孫や曾孫、セワシの救済のため、23世紀の野比家に仕える選択を取った。こうして、青年のび太の手引きで、調は22世紀序盤の野比家を離れ、それから何代か経った23世紀の野比家に『再雇用』された事になる。

「しかし、大人のお前が子供のお前自身の頼みを聞くなんてな」

「自分自身ですからね、断れませんよ。それに、カミさんに種明かししたの、結婚後でして」

「あー、なるへそ」

黒江もそこは納得した。のび太がドラえもんが来ていた真の理由を、妻である静香に明かしたのは、息子のノビスケを彼女が妊娠してからであり、そのこともあり、静香には頭が上がらず、『うだつが上がらない』というのが周囲の大人のび太への評価だ。だが、その裏での裏稼業を彼以後、ノビスケなどが継承してゆくのである。 また、この作戦で戦艦の装甲が注目された結果、21世紀の水上戦闘艦は通常兵器への抵抗力を高める意図で、かつての重巡洋艦級の装甲が施され始めるのだ。実際、第二次世界大戦の戦艦と同レベルの装甲厚を新造護衛艦に施す必要性は当時の日本連邦と言えど、そこまでの意義は見い出せなかったので、求められたレベルはデモイン級までの装甲厚でちょうど良いとされたが、この時の装甲への研究が後の宇宙戦艦時代への礎となる。

「ラ號とモンタナだ」

「撃ち合ってるねぇ。たしか51cm砲に強化されたはずだよ」

「あれ、46cmじゃないのー?」

「作戦直前にアンドロメダ級用のショックカノン積んだそうですよ」

「日本の連中見たら腰抜かすだろーな」

「ネットは大盛りあがりですよー」

アストルフォと何気なく普通に会話する青年のび太。ラ號とモンタナが亜音速から遷音速で飛行しながら撃ち合い、地上でマジンカイザーが大暴れしている戦場。仕事が入った少年時代ののび太自身に代わり、青年のび太が以後は参加するのだった。



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