外伝その224『勇壮11』


――こうして、黒江は富士のCICに入った。23世紀型CICなので、ミノフスキー粒子散布下にも対応している。21世紀のいずも型護衛艦など目ではない規模だ。海自の連絡員は息を呑む。そして、敵艦を画面ではっきりロックオンし、主砲を撃つのは宇宙戦艦の手法だ――

「凄いですな、これは…」

「宇宙戦艦の手法で火器管制をしている。君たちの財務省をギャフンと言わせるための反則技だ」

21世紀時点でも、無人の砲塔を遠隔コントロールする手法は取られているが、戦艦であるので、富士の場合は56cm砲三連装四基を一律で制御する。命中率はこの時代より飛躍的に良くなったが、散布界や夾叉という単語が死に絶えたわけではない。

「自衛隊の君からすれば反則技だろうが、これも我々が戦艦を持ち続けるための手段だ」

「ハッ、小沢長官」

「56cm砲は未来技術で砲身命数は伸びたが、戦艦である以上は25キロから10何キロの距離で撃ち合うから、ハズレも出る。ミサイルは打撃を与えられても、致命傷は与えられんしな」

実験で明らかになったが、ミサイルは戦艦の装甲厚になると、装甲表面で爆発することも多く、致命傷にはならない。扶桑はミサイルをあくまで対戦艦では、戦闘力を削ぐための道具として扱っているのが分かる。

「長官、状況は」

「黒江くん、状況はこのようなものだ」

CICの中央モニターに大まかに状況が映し出される。戦艦部隊は扶桑戦艦部隊とブリタニア戦艦部隊が敵艦隊を挟撃する形で進撃している。敵艦隊は落伍艦が5隻、撃沈が5隻と、そこそこの打撃を受けている。いずれもリベリオンのサウスダコタ、ノース・カロライナ、アイオワだ。

「サウスダコタは落伍ですか」

「あれは小さい分、被弾率も低いが、打撃を受けると脆いからな」

サウスダコタ級は全長が重巡洋艦級しかないためと、軍縮条約に縛られた設計が災いし、超大和型戦艦が参加する海戦では脆さを露呈する。

「只今の距離、敵艦隊とは距離19500」

「近いですな」

「直接照準に持ち込めば、そのうちに日露戦争並の至近距離になるさ」

直接照準に持ち込むため、お互いに日露戦争並の至近距離に接近する。こうなると、以前なら自殺行為だが、装甲材の超合金ニューZ化がそれを可能にした。

「我が艦隊は超合金ニューZで鎧っている。だからこそ最新の大口径砲で日露戦争並の距離での撃ち合いを可能になった。マジンガーZの四倍の硬度だからね」

「マジンガーZの四倍、ですか」

「超合金Zのイメージ崩れるだろうが、技術の進化って奴だ」

この頃、光子力研究所は『合金Zに超合金Zのメッキを塗ることでマジンガーZ(完成時)と同等程度の強度を持たせた』超合金Zメッキなる装甲材を提案していた。量産型グレートに懸念を見せた弓教授がグレートマジンガーを簡略化した量産型『イチナナ式』へ使用予定であった。これは兜剣造の推し進める量産型グレートの計画に反対だった弓教授が『軍隊に卸すんなら簡略化しないと』という感覚で設計したものだ。また、超合金Zメッキは別案で『合金Zを超合金Zで覆う複合素材』案もあるが、超合金Zで全て作ったほうが良くない?というさやかの指摘もあるように、理屈倒れとも取れるため、受けは良くない。また、この頃にはマジンカイザーなどのさらなる上位機種が続々と現れたため、超合金Zメッキはある意味、ニューZより安価である。『軍の予算でMSの2倍未満という価格で精算配備可能なZ以上グレート未満の武装のグレート級のロボットほすぃ』とする軍の要求もあり、開発されている。しかし、軍は合金Zを素体に使うのに難色を示したので、チタン合金セラミック複合材に超合金Zのメッキを塗る方向などに変更された。結果、更に超硬スチールに変更されたが、メッキを塗ることで性能が超合金Zの八割にまで向上したので、その仕様で量産され、デザリアム戦役後に採用されたのである。この頃はまだテスト中であり、試作機も完成していなかったため、アースの地球連邦軍はベガ獣対策にスーパーロボットを複数投入したわけだ。

「グレートマジンガーの量産型を追認したけど、増産を弓教授が『マジンカイザーが魔モードになる』とか言って渋ったから、スーパーロボット総動員になった。ガイアからも動員したんだが、あの人、いささか堅物でな」

黒江が言うように、甲児も手を焼くほど堅実性に傾倒した嫌いがある弓教授。以前ほどぶっつけ本番的な事をしなくなったが、娘の事もあるのかもしれない。ある意味、歳をとって落ち着いたとも、冒険しなくなった証でもあるだろう。

「だから、色々とスーパーロボットを引っ張って来れたんですね」

「まぁな。早乙女博士はゲッターに取り込まれたし、色々と工面が大変でな。マジンガーZEROを理由にカイザーとエンペラーとゴッドを引っ張って来れたのは幸運だよ」

「マジンガーZEROですか」

「あれは特にZより強いマジンガーに反応する。グレート、カイザー、エンペラーしかりだ」

ZEROはZこそが至高であるとし、世界をいくつか焼いたが、ゴッドマジンガーに破れた。その光景は甲児が望んだ結末であり、Zの意志は姿が変わっても生き続ける表れであった。

「ちなみに、現在の陸の様子はこのようなものだ」

「これは……」

映し出された映像は主にダイザー、カイザーに紅蓮の活躍であった。カイザーがショルダースライサーを奮い、グレンダイザーがダブルハーケンをぶん投げ、紅蓮が右腕を地面に押し当てた状態で輻射波動を広範囲照射する。紅蓮はベガ獣や円盤獣などとはサイズに差があるため、このような戦法を用いる。シャーリーはバイクの要領で操縦する紅蓮のコックピットには不満はないが、脳波コントロールを細かい作業の補助に用いているため、左腕に持たせた中巻の形のMVSをベガ獣の肩に突き刺すというアクションも見せた。悲鳴を挙げ、肩を抑えるベガ獣。紅蓮はそのままエナジーウイングで離脱し、刀を構え、そのまま真っ向両断する。磁雷矢を思わせるモーションだ。

「ふむ。シャーリーの奴、脳波コントロールと併用式にしたな。戸隠流の印まで結んでやがる」

よく見てみると、真っ向両断を決めた直後に戸隠流の印を結んでいる。手動コントロールだけでは実現できない細かい動作だ。

「脳波コントロール?」

「ネオサイコミュみたいなもんだ。スーパーロボットだとダイモスやゴッドマーズにも取り入れられてる」

ダイレクトモーションシステムやモーション選択式だと、シャーリーが面倒なのか、脳波コントロールと手動コントロールの併用式にしている事を見抜く黒江。

「手動と併用することで作業性を上げるって考えだろうな」

「紅蓮って、作業に使える機体じゃないような」

「多分、アイツ、ゲッター知ってるから、輻射波動機構の腕も変形できるようにしてあるはずだ。ライガーのドリルアームの要領で。VF-22のアレに近いけど、ネオサイコミュに近いかもな」

その指摘通り、輻射波動機構がある特徴的な腕がモーフィング変形で通常の腕に変形していく。一見すると、紅蓮の特徴をスポイルするようだが、輻射波動機構内蔵の腕はそれに特化している分、取り回しに難がある。輻射波動機構は閉所での使用などに難があるため、シャーリーはオリジナルにはない機能をつけたと言える。

「紅蓮は格闘戦に完全に特化した感がある。シャーリーとしては使いにくいと感じたんだろうな」

シャーリーは射撃戦もある程度行えるため、格闘戦に特化した紅蓮元来のスタイルには慣れないため、輻射波動機構に頼らない方向になった。そのため、輻射波動機構を用いつつも、『機体に負荷がかからない』射撃戦をするファイトスタイルを見出す。これはコピーした機体の輻射波動機構のエネルギー供給をカートリッジ式から本体からのエネルギー供給式に変えた都合で、多用すると動力に負担がかかるからだ。

「あのライフル、なんだか、VF-11のアーマード形態用のに似てません?」

「まー、あいつ、バルキリーも乗ってるから、コピーしたんだろうな」

シャーリーはナイトメアフレームにダウンサイジングコピーしてのバルキリー用のガンポッドを持たせたのが映像で示された。

「それにしても、あいつ……なんでそれ選ぶんだよ?アーマードサンダーボルト用の大型ガンポッドなんて、ナイトメアフレームの華奢な構造で反動に耐えられるのか?」

黒江が苦言を呈したのは、コピーして持たせたガンポッドがアーマードサンダーボルト用の大型長砲身ガンポッドであることだ。バルキリーでも反動に耐えられる機体はそうないほど反動が強い。23世紀初頭では、ステージU熱核反応タービン(改良型熱核反応バーストタービンの事)の高出力の恩恵でガンポッドの主流が実弾からビームガンポット式に移り変わりつつあるので、このガンポッドはあまり普及しなかった。だが、エネルギー再充填にそれ専用のエネルギーカートリッジがいるビームガンポッドと違い、実弾式であるために補給が比較的簡単である上、従来式は構造がシンプルでコピーしやすいため、Gウィッチも重宝する。最も、『コードギ○ス』の世界は長距離攻撃手段が確立されていない世界である(戦術的攻撃手段としてのミサイルはあるが)ため、バルキリー用の火器を使わせるにはナイトメアフレームは華奢に思えた。最も、ナイトメアフレームも手持ち火器もそれなりにあるため、扱えないわけではないが。

「アメリカ人ってこれだからなあ、大は小を兼ねるってか?」

黒江もそう呆れたが、アメリカ(リベリオン)人は大は小を兼ねるの要領で、デカくて強い兵器が好きだ。ガンポッドも標準型を使わないのがシャーリーらしいのだが、どうやって反動を吸収するかというと、ランドスピナーとエナジーウイングを併用し、その推進力で反動を相殺するという、これまたリベリアン的発想だった。

「あいつ、普通の人にミニガン持たせるみたいなもんだぞ。あのガンポッド…」

そのガンポッドは11がフルアーマードに換装し、ベテラン兵が乗って初めて真価を発揮できる代物であるので、そう呆れる。シャーリーはこうして射撃戦をすると改めて認識するのであった。





――黒江達が話題にしたマリアンは黒田に導かれ、マジンエンペラーGの戦闘を目にした。マジンエンペラーGは鉄也の操縦で凄まじい高速戦闘を展開しており、その様子に、マリアンは息を呑んだ――

「何だよ、これ……、これ!」

「落ち着いてください、マリアンさん。これが偉大なる魔神皇帝の力ですよ」

「偉大なる魔神皇帝だって……!?』

「そうです。マッハの問題じゃない速度出てますよ、あれ。それについていく円盤獣も凄いけど」

円盤獣相手に高速戦闘を展開するエンペラー。鉄也の本領発揮と言える一騎当千ぶりは、マリアンに後ろめたい気持ちを抱かせた。見も知らぬ世界に赴いて、そこで命を燃やすこと。地球連邦軍の軍人もそうだが、それは勇敢なことであり、尊ささえ感じさせる。自分達はその半分も恩を返せていないのではないか?その疑問が頭の中でもたげるマリアン。

「マリアン大尉。貴方はどの道を選ぶんですか?MATに行って、従来の摂理通りの生活を送るか、軍に残って、この生か死かの血みどろの戦いに身を投じるか」

「血みどろの……戦いだと!?黒田、お前……!」

「あたしは七勇士が一人です。マリアンさんより前から前線にいるんですよ?それに、前に言ったでしょ?あたしは転生者だって」

どことなく転生者故の哀しみを感じさせつつも、戦いへの決意を匂わせる黒田。

「で、でも、お前……どうしてそんな事を、今…!?」

「最終確認です。マリアンさん。貴方は耐えられますか?この血で血を洗うような戦いに」

繰り返し問う黒田。マリアンの意思の最終確認の意図があるのだろう。マリアンは黒田がかつての扶桑海七勇士が一人であり、その最年少戦士だった事は竹井から最近、知らされたため、戸惑いもあった。軍歴が上な上、天皇陛下のお気に入りで、竹井に目上として接する事が可能(前史では後輩だったので、坂本はタメ口のままで接するが、竹井は上下関係ははっきりさせるため、今回は後輩として敬語で接する)という事、七勇士としての挟持を垣間見せる黒田の態度。マリアンは貴族を嫌悪するが、黒田はそれに見合う責務を果たし、竹井から『黒田はその功績で、扶桑の侯爵家の当主の座を継ぐことが確定した』と教えられた事から、自分はそれに見合うだけの責務を果たせているのか、と自問自答する。そして。

『サンダーボルトブレーカー!!』

剣鉄也がマジンエンペラーGの必殺技を放つ際の叫びが木霊し、その雷槌が奔る。その雷槌がマリアンに決意させた。

「黒田、はっきり言って……私は貴族は好きになれない。だけど、お前がちっこい頃から戦って、侯爵家当主の座が否応なしに転がりこんで来て……、あんな連中がいる世界に行って……、あのレイブンズに仕えてた……。私はMATには行かない。軍で戦う。私達を守るために身を退いた、ジェニファーの為だ!」

友人が自分の名誉と戸籍を犠牲にして、同僚を守った事が心に引っかかっていたマリアン。黒田が黒江と圭子に長年仕え、七勇士が一人に数えられる『黎明期の撃墜王』だった事への戸惑い、異世界の勇士達の命を燃やす戦いぶりは、マリアンが軍に残留を決意するには充分だった。

「それじゃ、芳佳から預かったこの推薦状はいらないですね?」

「煮るなり焼くなり、好きにしろ。私は決めたんだ」

『その意気やよし!』

「!?」

『チェェンジ!!真・ゲッターァアアアワン!!』

マリアンと黒田のもとに、真ゲッターロボが飛来した。ゲットマシンで現れ、そこから真ゲッター1に合体する。

「貴族っても“貴族の義務(ノブレスオブリージュ)”をわきまえてない馬鹿も多いから身分が破綻するんだ。あたしは出来ることを成す、身分とか貴賤とか関係なくね。あ、號。真ゲッターのモーフィング変形は子供には刺激が強すぎだよ」

『そうか?普通だぜ、ふつー』

「おい、黒田!人を子供扱いすんな〜〜!」

『ん?なんだそのアメリカ人は?』

「部隊の同僚。で、そっちはどう?」

『ベガ星連合が今更、バダンと手を組みやがったぜ。奴ら、母星が消えちまったもんだから、なりふり構わずだぜ」

「なるほどね。號、翔、剴はあたしと一緒に来て。マリアンさんはあたしの後についてきてください」

『よっしゃあ!』

真ゲッターロボの幾何学的機動はこの当時のほぼ全てのウィッチの理解を超える。その真ゲッターロボをも超えるのが、この頃には、まだ地下で繭になっている真ゲッタードラゴンなのだ。魔神皇帝と進化を司るスーパーロボット。このタッグは円盤獣(と言っても、マジンガーZの初期状態であれば倒せる力はある)程度では止められない。黒田もGウィッチとしての能力を全開で戦闘に入り、マリアンはここで初めて、自分の気持ちにケリをつけた事になる。マリアンが実質的に、自由リベリオンに恭順を選んだのはこの時になる。円盤獣がエンペラーブレードとゲッターサイトに斬られまくり、屍を晒してゆく中、黒田も二代目斬艦刀使い(三代目はハルトマン)としての本領を発揮し始め、履いているのが時代相応のストライカーながら、黒江達と交わった世界線独自の技能である剣技の冴えを見せる。これが後に坂本Bを驚かせる要因であったりする。マリアンはこの選択で黒田と共に戦う事を選んだためもあり、連邦軍が試作中のIS『ユニコーン』の操縦候補者にリストアップされたという。







――地球連邦軍は制空権確保のため、可変戦闘機も自衛隊などに積極的に提供した。派遣された空自が機材不足なのを彼等は知っており、未来の方向性を確かにするためもあり、空自の整備力で対応可能なVF-1EXを提供し、同じく、米陸軍にはデストロイドを提供した。2010年代当時、米陸軍は既存の戦闘車両の調達が生産終了で困難となっていたので、人型戦車の提供は願ったり叶ったりであった。また、ミノフスキー粒子の存在が伝わり、招来の地上戦は有視界戦闘へ回帰する、無人兵器がカウンターテロ用兵器扱いになる事をそれとなく示唆されたため、21世紀で研究されていた『無人戦闘車両と有人戦闘車両の組み合わせの研究、無人兵器を有人兵器が管制する技術を実現可能なベトロニクスの研究』が日米で停滞、後に地球連邦軍の人材不足で見直されるまでの100年ほど研究が停滞。歴史的意味で、61式戦車(22世紀後半)までに至るまで有人戦闘車両一色のままであったりする。また、日本で16式機動戦闘車の扶桑での運用方法を理由に財務省が自衛隊への大量配備を阻止してしまい、窮した自衛隊は場繋ぎと扶桑向けを兼ねて、扶桑の計画戦車『試製中戦車チセ』の計画を再利用してのハイアンドローのロー相当の戦車を作る羽目となった他、扶桑の装輪戦車への理解不足を理由に、最新技術で作った車両を生産させないというのも腑に落ちない。総理大臣の安倍シンゾーに黒江を通して泣きついた陸自は、黒江による口八丁もあり、なんとか16式機動戦闘車の定数を確保に成功する。10式の扶桑での生産と引き換えに、次期T-X(次期戦車)の計画予算を確保に成功し、胸を撫で下ろす。16式機動戦闘車はあくまで、旧軍で言う自走砲なり砲戦車の派生のようなもの。いくら扶桑の現地部隊の無理解でM26と撃ち合うはめになった(射程差で勝ったが)り、現地で機動戦をやらかし、開発元の三菱や陸自を閉口させた出来事や『撃破率が高い』のを理由に予算カットはあんまりである。そのため、財務省は扶桑の旧大蔵省出身者以上の戦争への無理解ぶりを露呈した。(財務省は表向き、国の経理が仕事なためもあり、他の仕事を金融庁が行っていた事もあるが)そのため、防衛省の『性急に旧式兵器に代わる現有水準の兵器をとおっしゃられても、現代兵器は現在の生産量では、扶桑の要求する数はとても用意できないのですが』という総理大臣への進言は通り、結局、数年後の扶桑で『1940年代当時の世界水準よりマシな程度の能力』を持つ兵器を日本メーカーが現地で生産する日本的な尻ぬぐい……もとい、収拾の付け方となる。ただし、僥倖だった事は外務省がカールスラント連合帝国とドイツ連邦の連合『ドイツ領邦連邦』から空母『愛鷹』(元・ペーター・シュトラッサー。デーニッツが主導して返還した)の復帰工事費とメッサーシュミットMe262のライセンス料の違約金をたんまりとぶんどった(デーニッツが太平洋戦争までの数年、海軍予算を潜水艦に注ぎ込んだ本当の理由は、軍備規制条約である『新京条約の適用外の艦艇が潜水艦であったから』という現実的理由も入るが、この時の愛鷹の復帰工事費が状態が悪かったのもあり、莫大な金額であったというのが真相だ)ことである。カールスラントにとっては自慢の技術立国の地位を一瞬で奪われた挙句に、自慢のメッサーシュミットMe262はおろか、その後継としての期待を背負うTa183も一括して旧式機の烙印を押された事実、屈辱的な軍備規制条約を結ぶことを強いられた事から『国辱』と捉える向きも多かった。条約が具体化するタイミングがダイ・アナザー・デイであったため、カールスラントの技術立国化を支えた技術陣の多くは軍事開発予算の規制に悲観して、次々と他国へ流出。日本連邦、自由リベリオン、キングス・ユニオンの三カ国がカールスラントに代わる形で、航空技術国の地位を得ていくのだ。カールスラントは必要上、陸軍の研究は特に規制がかからなかったため、そちらで日本連邦を追いかける事になり、レーヴェ戦車を研究するうちに『装甲のあるレオパルト1』化したりする進化を遂げていく。その流れで流出した無尾翼機『メッサーシュミット P.1112』の素案はその後、数年の空白期間を経て、自由リベリオンに流れ、『F-7カットラス』(史実のF7U)として実現する。ただし、自由リベリオンの技術水準と着艦時の事故率の兼ね合いでダブルデルタ翼となるなどのかなり日本連邦の援助が入り、ドラケンに類似した外見に行き着いて完成したという。米軍の援助でF-8が早期に配備されたので、実戦部隊ではあまり用いられはしなかったが、確かに、リベリオン技術陣の挟持は示したのであった。



押して頂けると作者の励みになりますm(__)m


<<前話 目次 次話>>

作品を投稿する感想掲示板トップページに戻る

Copyright(c)2004 SILUFENIA All rights reserved.