外伝その260『イベリア半島攻防戦9』


――日本の軍事的無知が扶桑を振り回したことの悪影響は陸・空で顕著だった。特に陸軍は機甲戦力の殆どを強引に回収され、保有車両数を一気に減らされた。輸送可能な戦車をグンと減らされた事は現場の士気にも関わるため、次善策として、現地改修や修理を黙認しつつ、自衛隊61式と74式の改良型を扶桑に生産させる事で調整が取られた。旧軍式で唯一、生産中止を免れたのがホリ車だが、本来用途の関係で生産数が少なく、結局は間に合わせでチトベースのチリ要素をぶっこんだ車両が扶桑向けに生産される運びとなった。これは現地の雇用維持、ライン構築の手間を省くためであった。しかし、ダイ・アナザー・デイには当然ながら間に合うはずはないので、自衛隊の機甲部隊に一気に負担がいった。特に、もはや日本の保有する74式は走行装置が摩耗しており、実戦投入はままならないものも多い。そのため、『現地要請』で増派される自衛隊の戦車部隊は実用最新型の10式であった――





――黒江が武子とネゴシエートしている頃、扶桑軍は急いで、宮菱重工業に戦車製造ラインの改良と強化を進めさせ、ドラえもんに頼み込み、MBTの輸送が可能な『おおすみ型輸送艦』のコピーを行い、それを旧軍式輸送艦の代替として、緊急で配備した。これは本来kilyus、ウィッチ輸送艦も兼ねていたはずの『第百一号型輸送艦』、『一等輸送艦』の使用中止と建造中止の代替であり、確保されていた要員はそれらに割り振られていった。もっとも、第二次世界大戦中に40トンを超える車両を運び、降ろせるようなインフラは、欧州でもなかったため、ティターンズと地球連邦軍の双方が作業用MSやモビルワーカーも動員して整備している。そのため、地球連邦軍の輸送機での空輸がもっとも手っ取り早く、ミデアが大編隊で工場完成から間もない五式改(正面装甲が強化された61式にほぼ相当する性能)を直接、前線に空輸するようになり、ここ数週間のおなじみの定期便と化していた。また、当時に完成間近だった播磨型戦艦『美濃』の工期が大幅に繰り上げられるなど、シッチャカメッチャカな状態であり、武子の意志とは関係ない次元でキュアピーチの採用は既に決定していた。(黒江を通し、プリキュアの有用性が通達されていたため)――








――扶桑が実質的に超大国の地位になるのは、ブリタニア連邦の緩やかな衰退によって確定事項であったため、ジープが『高機動車』として扶桑軍に制式採用され、緊急生産されていく。これは表向きは『くろがね四起では輸送力の増強にはならない』との事だが、当時の扶桑軍は軽便な小型車両がサイドカーの代わりにならないか、という目的で調達していたので、ジープのような目的での運用は想定外であった。そのため、扶桑陸軍内部にはジープを模して造っていた『四式小型貨物車』をそのまま量産すべしという声もあったが、国産化の過程での独自規格化を嫌った日本が強引に完成していた試作車を引き取り、その代替にウイリスMBをライセンス生産させた。そのため、当時、1940年代前半までに生産されていたくろがねは回収されていった(員数外装備として保有し続けた部隊も多いが)し、キューベルワーゲンが資料的価値から回収されていってしまう連合軍の車両はジープやパジェロベースのモノに変わっていった。そのため、キューベルワーゲンが使えなくなった501でも、ジープの鹵獲は盛んに行われている。優遇措置を受けている501でも、この有様(鹵獲品の再利用)であるのは外聞的に不味いため、日本側に完成品の融通を依頼するなどのパニックであった――





――駐屯地に戻った黒江はキュアドリームを自分の部屋で寝かしつけた後も多忙であった。偵察車のジープとパジェロベースの高機動車へ性急に改編したがる防衛省を叱りつけたり、キュアハッピー(芳佳)を使いとして、自衛隊派遣部隊から高機動車や輸送防護車を自軍に融通してもらうように要請するなど、反対派閥の心無い罵詈雑言とは裏腹の活躍であった。地球連邦軍からも機材を融通してもらい、量産型F91、F90Y『クラスターガンダム』も配備するなど、地球連邦軍でもなかなかない豪華さである。特に、ジェスタでも対応しきれない高性能機への対処として、エース仕様のF91量産型が配備されたのは豪華であり、地球連邦軍のデザリアム戦への備えとは言え、贅沢であった――

「黒江さん、F91の量産型をよく回せたね」

「シャアがシナンジュで来てたし、RFシリーズがジオンに出回ってるのを警戒しているとこに漬け込んだ。もっと素敵なのあるぞ、メロディ」

「く、クラスターガンダムかよ……現存してたのか」

「何機かあったのを、ザンスカール戦役でのサイド2支社の失態(ザンスカールへの協力)をネタにサナリィを脅して回させた。取り回しやすいぞ」

「サナリィ、クロスボーン・ガンダムをもう試作してないか?」

「V系を要請したんだが、まだリガ・ミリティアからの権利移行が終わってないとかで無理だったから、クラスターガンダムはその代替物だ。クロスボーン(F97)よりは型落ちだが、ジオンのどんなMSよりスペックはいいぞ」

「そりゃ、旧ジオン系の大半は新しくて、ハマーン・カーンの時代に急いで作られたもので、今となっちゃ型落ちだろ?一年戦争の骨董品よりはマシだけど」

「まーな。ジェガンにさえヒーヒー言う旧式の巣窟がジオン軍の実態だ。霧散したクロスボーンとザンスカールよりはマシな組織力だが、肝心要の機動兵器は旧態依然としてる。接収した旧ギガノスのメタルアーマーでさえ使用してるからな」

「アニメだと、旧式で無双してるけど、実際はそうでもないんだろ、確か」

「キマイラ隊やアナベル・ガトーとかの一部の元トップでない限り、ジムクウェルにも勝てないような性能差あるしな。ジム・カスタムの時点でシールドにザク・マシンガンは弾かれる。それに、最近の連邦軍はビームシールド持ってるから、F91が出る前みたいな醜態は珍しいそうだ」

「だから、ビームザンバーが出るわけか」

「ああ。漫画と違って、ザンスカールのビームシールドも斬れるからな、あれ。むしろ従来式ビーム・サーベルがビームシールドに効かないから、作られたってのが未来世界での開発理由らしいし」

「でも、意外にMS戦って起きないよな」

「ティターンズも機材の温存を図ってきてるし、下手にモビルドール使って、非人道的と、軍事法廷で裁かれるのを恐れてるんだろうさ。あれは今や、BC兵器と同列視されてるしな。だから機械獣やベガ獣とかの手を借りてるんだろうな」

「でも、味方、使ってね?」

「廃棄処分代わりにしてるそうだ。現存する機体をこの戦を口実に処分するんだと。まー、トレーズ・クシュリナーダとかの影響で、無人兵器は嫌われ者だしな」

無人兵器は本来、人手不足を補う目的で作られ、有人兵器の補助とされた。メインで使われる事は当初は想定していなかった。しかし、無人兵器の高性能化が進み、ゴーストやモビルドールに至った時に危惧がついに的中し、地球連邦軍の本国部隊では無人兵器はご法度に近くなった。(人手不足の移民船団や移民惑星ではその限りでない)地球連邦軍本星部隊が異常に精強になった理由も、無人兵器礼賛の風潮の払拭による影響であろう。

「移民船団や移民惑星の連中は地球連邦軍本星部隊、いわゆる『アースフリート』の介入を異常に恐れているんだよ。VFはAVF以上、ガンダムタイプはゴロゴロ、パイロットは移民船団トップエース級ズラリだ。ギャラクシー船団の一軒があってからは大人しくなった」

「ヴァールシンドロームにも、ゲッターの影響で強い耐性があるからな。あそこ、反乱なんか起こせば、ゲッターエンペラーに星系ごと消し飛ばされるぞ、えーと、ウィンダミアだっけか」

「噂だと、今の王はゲッターエンペラーを恐れてるからな。そいつが死んで、反地球連邦派の宰相が実権を握れば、反乱起こすだろうよ。あいつらは『プロトカルチャーの正統なる末裔』とか言うが、こっちはそれ以前のアケーリアス超文明の後継者だ。前提が違うぜ。もっとも、こっちもプロトカルチャーの子孫だがな」

「あいつら、タキオン波動エンジンの存在は?」

「知らんだろうな。こっちもサンザー・イスカンダルから持ち込まれるまでは机上の空論みたいなもんだったしな」


「あいつらも可哀想だが、地球の敵と判断されれば、ゲッターエンペラーの覇業の犠牲になるだろうに。だから、プロトカルチャーの遺跡に触れた今の王は地球本星への刺激を避けてるんだろうな」


「ゲッターエンペラーの覇業でも見たのかね」

「だろうな。平行世界での、な。ゲッターチェンジだけでビッグバン起こせるような奴相手に戦争なんて起こす気にもなれないだろ。現地方面の地球連邦軍がクズでも、な」

黒江は噂と断りつつ、プロトカルチャーの正統なる末裔とする選民思想が強い空域に位置するウィンダミア王国の現在の王は、ゲッターエンペラーという、あまりに強大な存在の後ろ盾が地球にある事を垣間見たがために、星間戦争を諦め、不平等条約の改正を国是としている事をキュアメロディに言う。エンペラーの時間すら超えての介入が起これば、その手で本星を『握り潰される』か、『食われる』。既に、23世紀時点で『アンドロメダ銀河』を制覇していた白色彗星帝国をほぼ壊滅させたという実績を持つ、狂戦士に近いほどの闘争心(特攻すら辞さない)に怯えていたというのもあるだろう。実際に現在の王であった『グラミア・ネーリッヒ・ウィンダミア』は地球へは非戦派であった。ボラー連邦やガルマン・ガミラスとの星間戦争の可能性もあったからだが、宰相のロイド・ブレームは王が死ねば、主戦派になる要素を備えている。しかし、ガルマン・ガミラスやボラー連邦が既に、惑星破壊プロトンミサイルをバカスカ撃ち合うような戦をしているのを顧みていないと、反対派には危惧されている。そして波動砲も知っているか怪しい。何故、地球が星間戦争で異常に高い勝率なのか。その真の理由を彼は知らないのだ。

「今の宰相が実権を握れば、間違いなく、銀河連邦に喧嘩を売る。そうしたらあそこは終わりだ。それに次の王を、戦争で風の歌い手として酷使すれば、王国そのものが維持できなくなって崩壊するだろうさ。王位継承権保有者の数は多くないはずだしな」

「いくらなんでも、そこまで馬鹿じゃ…」

「ゲッターエンペラーやアースフリートの力を知らなけりゃ、やるだろうさ。もし、そうなれば、ウィンダミアは遠からず自壊する。戦争で次の国王を酷使させて、寿命を削らさせた末に、な」

黒江はそう言う。実際、ウィンダミアは地球が高い技術を持ちつつも、身体能力が劣ることや、寿命が自分たちの倍以上あるのを妬んでおり、地球人殲滅論もまかり通る国である。だが、地球が追い詰められると、相打ちすら辞さないまで戦うという、狂戦士になる気質を恐れる面もある。その恐ろしさを『見た』グラミア・ネーリッヒ・ウィンダミア(現・国王)はウィンダミアの理性と良識を担っていたと言える。

「ブリタニア帝国にもいただろう?日本人を蔑視してたバカ。あいつみたいなもんさ」

「ああ、思い出しただけで虫酸が走るよ。ブリタニアの吸血鬼だろ。あの時、輻射波動で焼いてやったけど、あういう連中は多いからね…世の中」

「この世界はマシさ。怪異のおかげで白人至上主義は新大陸の一部のノータリン共の戯言だけど、ルーズベルトとかはガチで信じてたし、瑞穂国を虐殺で解体した負の歴史もあるからな。そいつらがティターンズに媚びを売った。そして、虐げられていた有色人種は得た権利を守るために、ティターンズを庇護するから、お前ら自由リベリオンを歓迎はしない。そうなると、半世紀の冷戦は覚悟しないとならん。ティターンズが自然消滅するまで、な」

「少なくとも『1991年』までは、あそこには行けない、か」

「半世紀くらい、今の俺達にはなんてこたぁねぇ月日だ。我慢しろ。有名俳優になる連中はこっそり亡命させてあるから、西部劇は撮れる。最悪、アメリカで撮りゃいいしな」

「その手があったか!」

「そうだ。今度、子供ののび太が西部開拓時代に行くっていうから、付き添いとか言って、ついてけよ。西武のカウガールになれるぞ」

「おお!子供ののび太に頼もっと…」

「坂本は巌流島の戦いが見たいから、とか言ってるからな。俺は関ヶ原を薦めたんだけどな」

「それと、グレートの量産の是非で21世紀日本から文句出てますよ」

「黒田か。まー、イチナナ式の量産までの緊急措置とか言って広報するように言っとけ。マジンガーZEROの前じゃ、グレートも有象無象に見えちゃうからな」

「因果律兵器を超えられるマジンガーはカイザーやゴッド、エンペラーだけだからなぁ。逆に言えば、マジンガー以外の存在に弱いってことだ」

「それと、シャーリーさん。広報の仕事の時間ですよ」

「マジかよ、そんな時間か」

黒田に言われ、キュアメロディ(シャーリー)は仕事に向かう。その前に一つ聞く。

「あいつ(キュアドリーム)が言ってたけど、マジンガーZEROは甲児に何を望むんだ」

「マジンガーZに永久に乗り、永久に勝ち続けることさ。ZEROはZの甲児への親愛や自分が無敵と思う気持ちが暴走した末に変異した怪物さ。それを打ち倒せるのは、『皇帝』か神しかいないのさ。そう、マジンカイザーとゴッド・マジンガークラスのマジンガーしか、マジンガーの中じゃいないのさ。マジンガーZを、グレートマジンガーを超える者という宿命を背負う、な」

黒江は断言した。マジンガーでZEROを打ち倒せるのは、マジンカイザーやゴッド・マジンガーに代表されし『ZとGを超える者』という宿命を背負う者たちしかいないのだ、と。

「あいつには残酷だけど、ああ言うしかなかったって事でいいのか?」

「ああ。事実だからな。因果律兵器はそういうもんだ。お前だって、新人プリキュアだった時は、先輩の数に狼狽えてたろ?」

「……なーんか、昔の事を知られてると、やりにくいぁ」

「ほら、行くよ?」

「はーい」

メロディは最後に愚痴りつつも、紅月カレンとしての荒っぽさを垣間見せた。黒江がプリキュアとしての現役時代の事を知っているのを示唆したため、文句を強く言えない事に不満があるようだが、図星ではあるため、黒田に連れられる際にそう言うのが精一杯らしかった。また、黒江がドリームの不安を煽るような口ぶりで因果律兵器を説明した事も不満らしかったが、因果律兵器の説明は残酷な例を引き合いにするのが一番である事は理解していた。

「いずれ、プリキュア達も俺達の戦いの運命に巻き込まれる。そう言いたいんだろう?本当は」

「なんだ。来てたのか、甲児。俺の部屋に来てくれ」

「差し入れを持ってきた。しばらく、君の部屋に置かしてもらうよ」

――黒江の部屋――

「よっと…。で、差し入れ?本当かよ」

「本当さ。ボスからの差し入れでね。それを届けに来たのさ。あのドリームって子には残酷だが、因果律兵器は存在していた事象そのものを書き換えちまうからな。あの子は『若い』。本当であれば、子どもは巻き込みたくないぜ。ZEROを打ち倒すのは本来、皇帝(カイザー)と俺の役目だからな」

「転生者だもんな、お前も」

「ああ。あの子は昔の俺みたいなもんさ。戦になると、無鉄砲で前しか見ない。純粋に未来を信じられる子供の特権さ。俺達は長く生きてきた分、どうにも弱気になっちまう。俺のそんな心が、あのZEROを生み出してしまった。マジンガーは神にも悪魔にもなれる。だが、人の頭脳を添え物くらいにしか思わないZEROはマジンガーじゃない。魔神そのものだ。だから、俺がやらなくちゃならない。おじいちゃんが俺に遺した、最後にして究極の遺産『魔神皇帝(マジンカイザー)』でね。もし、ZEROがあの子達が守った世界を壊そうとするなら、俺が皇帝と神で倒す。それがおじいちゃんへの手向けさ」

甲児は転生者としての姿、『Z神』となった後の落ち着いた精神状態を垣間見せ、プリキュア達の守った世界をZEROが壊そうとするならば、自分が打ち倒すと明言する。

「さやかさんと籍はいつ入れんの?」

「弓先生やマリアちゃんとの事もあるし、まだまださ。別の世界でも、籍を入れられたのは28歳だからね」

「そいやそーだ。弓教授、今度、州知事選挙出るんだろ?」

「俺が後援するんだし、100%当選するよ。そうなると、さやかさんも忙しくなるし、本当にアラサーまで待たせちゃうかもな」

「鉄也さんは?」

「もうじき入れるそうだよ。鉄也さんも知ってるからね。ジュンさんをあまり待たせたくないそうだ。俺への償いもあるんだろう。うちの父さんを、多くの世界じゃ死なせてしまってるからね」

「とある世界じゃ、いつの間にか呼び捨てになってたな?」

「それは同い年だった場合だよ。ここにいる俺は鉄也さんと二歳離れてるからな」

ニッと笑い、甲児は鉄也との年齢差に触れる。グレンダイザーと出会う世界では、甲児と鉄也は二歳ほど歳が離れているのだ。また、鉄也が遂に炎ジュンと婚約を交わしたらしい事を報告する。嬉しいニュースに思わず笑みが溢れる。その時には部屋の外に出ていたのだが。

『あーーーっ!な、な、な…!なにこれぇ〜!?』

「お、あのガキ、芳佳が俺んとこに置いといたDVDに気づきやがったな」

「そりゃ災難だな」

「せ、せんぱぁぁいぃーっ!」

「起きがけになんだ、騒々しいぞ」

「な、なんですかこれぇ〜〜!」

「ハッピー秘蔵のDVDだよ。あいつの部屋に置ききれないから、俺が一部置いてやってたんだが」

「わたしの現役時代の事を知ってるってことじゃないですか〜〜!ひどいですー!あーんなことやこーんなことまでぇ〜!」

「言えって、一言も言ってなかったろー?

「うわーん!ココとの事は秘密にしておきかったのに〜!プライバシーが〜!」

「安心しろ、大きな友達はみんな知っとる。あ、挨拶しとけ。マジンカイザーのパイロットの兜甲児さんだ」

「やあ。君には災難だね。兜甲児だ」

「あ!その、いえ、は、は、始めまして!キュアドリー…い、いえ、夢原のぞみで……」

「あ、バカ!そのへんの柱に気を……」

挨拶をする際に黒江の部屋の近くにあった柱に頭突きする格好になってしまう。変身した状態での頭突きだったので、ズドンというものすごい音がし、柱の外側に大きくヒビが入る。

「すげえ。ガンダリウム合金製の柱の外装にヒビが…」

「い、いったーーー!こっちの心配してくださいよー!」

「変身してるから、こんくらいじゃダメージ入らんだろー?」

「痛いのは変わりませーん〜!いたたた…」

「普通なら折れてるなぁ。ガンダリウム合金でよかったな」

「だろ?二重構造にしといて……。」

「先輩、これ!本当にハッピーの私物ですか?」

「奴に聞いてみろよ、本当だって。一応、メロディの現役時代まで、二代目を除いてだが、持ってるとか言っとった」

「うわーん!あれこれバレてるってことだよね、これぇー!」

「いいやん。むしろオープンにしたほうが……」

「よくないですよぉぉ〜!おお、そーだ!こういう時は〜……『プリキュア!!シューティングスター』!!」

目がぐるぐるになり、混乱と恥ずかしさのあまりに、キュアドリームはプリキュアシューティングスターを放つ。これに対し、黒江はこの技で対応した。

「あ、バカ!俺の部屋を壊す気か!『ケイロンズライトインパルス』!!」

突進してくるピンク色の流星を、黒江が右拳で起こす黄金の風が迎え撃つ。その結果、ケイロンズライトインパルスが打ち勝つ。推進力を風が上回ったのだ。これで都合、二度、プリキュアシューティングスターは打ち負けた事になる。今回は推進力を風力と拳圧が上回り、押し返された形である。

「おお、なんかすごい対決だ、これ」

甲児はこの感想だが、敵に向けて、星のような軌跡を描きながら飛行しての突撃を風力と拳圧で突き崩すというのもすごい光景である。

「え〜〜!こ、今度は風ぇ〜!?ずるいですー!先輩たちー!」

「だから、智子が言ったろ?要は小宇宙だって」

黄金のオーラを纏う黒江。黄金聖闘士らしい、体から迸る黄金の光は通常形態のプリキュアを軽く圧倒できる事を視覚的に分かりやすく示す。これがナインセンシズでは、白を基調とした神々しいものに変質するので、手加減しているのがわかる。

「お前達が対応できるのはマッハまでだろ?だが…、俺達、黄金聖闘士はその上を行く。追いつきたかったら、この次元まで上がってこい。けして上がれん次元じゃないからな」

「ぐぬぬ〜…ここで退いたら女がすたる!!やってやります!」

「おい、今のセリフ、お前のじゃねえぞ」

「あ、バレました?言ってみたかったんですよ、メロディのこのセリフ」

「あいつが聞いてたらぶーたれるぞ?」

「プリキュアとしては、わたしが先輩だから、大丈夫ですって」

「そっかー?」

と、妙に漫才じみたやり取りが展開されるのであった。



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