外伝その268『イベリア半島攻防戦17』


――仮面ライダーディケイドの調査の結果、夏木りんは夢原のぞみのいた世界と極めて近いが、成人後ののぞみのある選択で枝分かれした世界の出身という仮説が成立した。日付のズレはこれで説明がついた。そのため、りんがいた世界では、のぞみは就職から暫くしてからパルミエ王国に嫁入りして、皆と別れたことになる。のぞみ自身は『地球に留まって死を迎えた』結末だが、りんにとっては『20代後半で教師を辞めて、パルミエ王国に嫁入りし、向こうに定住した』結末である。なんとも言えない選択の結果である。黒江は数日ほどディケイドに裏を取ってもらってから、のぞみに告げたのだが…――

「う、うぅ〜ん…」

「あ、馬鹿!知恵熱起こしやがって。おーい、宮…じゃなくて、みゆき〜!」

と、平行世界の僅かな違いによる枝分かれという難しいテーマに及んでしまった故か、知恵熱を起こしてしまい、星空みゆき(宮藤芳佳)に看病される事になった。その瞬間に別個に分かれていたのぞみと錦の意識がのぞみが主導権を握る形で走馬灯が走って意識が統合され、錦の要素が混ざる形となるため、一日は寝込むことになった。また、基本人格も、数ある夢原のぞみの内、最も未練が強かった世界の意識が基本になった事から、さみしがり屋になっていたという。それが起こっている最中、黒江の要請で門矢士がニューエドワーズ空軍基地にりんを連れてきた。黒江と北条響(シャーリー)が面会し、事情を説明した。平行世界が色々と絡むからだ。

「……君と、のぞみを会わすために、俺達はこの星に来たが、そこにいる門矢士から聞けば、のぞみとは別の選択肢で枝分かれした世界の出身だそうだな?」

「なんて言えばいいんだろう…。のぞみが知る経緯と、アタシが辿った人生は違うし、あの子自身の結末も違います」

「そうだな。あたしの記憶ともズレが有るからな。久しぶり、と言うべきか?りん」

「あんた、ずいぶんさばけたわね、響」

「こっちも色々あったし、説明もややこしいかんな。プリキュアにはなれるんだろう?」

「そりゃね。次元転移、いや、転生の特典って奴でしょうね。後輩連中のツッコミ役がまた巡って来たと思うと、あ〜。頭痛くなってきた」

「いいやん。そのおかげでお前、歴代で埋没せずに済んでるんだぞ?二代目のスプラッシュスターの連中を思い出してみろ。初代のコンパチとか言われてるんだぞ?」

「あの人達はあの人達で、能力で差別化できてたでしょーが。つか、…言葉づかい、ずいぶんさばけたわよね、アンタ」

「色々あったのさ。で、のぞみの奴、知恵熱起こしてよ。今はみゆきが看病してる」

「あの子が?……大丈夫?」

「ああ、あいつ、転生した先が医者の家でよ、医師免許持ってるぞ」

「嘘ぉ!?」

「一応、今の職業は軍医兼パイロットだ。もうじき軍医学校に入る手筈だ」

「あの子が軍医?大丈夫なの?」

「腕は俺が保証する。君、のぞみのいた世界だと、女子スポーツに誘いがかかって、そっち方面に入ったとのことだ」

「嘘ぉ!?あたしの生きてきた世界だと、弟と妹のこともあるから、その方面は諦めて、家(花屋)を継いだんですよ?!」

「それが平行世界だ。響の持つ、君に関する記憶もまた微妙に違うから、お互いに別の世界から転生したと考えていいな」

「その方がしっくりくるぜ」

「……気がついたら200年後、それも直接はあたしの世界とは繋がらない世界。どうなってるんですか?え〜と」

「黒江綾香だ。地球連邦軍の准将だ(元の世界で准将になったため)」

「地球連邦軍……国連軍の後継ですか?」

「国連常設軍のな。とは言うものの、第四次世界大戦の国連主要国の軍隊母体だがな」

「だ、第四次ぃ!?」

「この世界だと、2010年代に第三次世界大戦が起こってたんでな。その秩序に第三次世界大戦で敗れたロシアがいくつかの国を抱き込んで秩序に挑戦した事で、22世紀に起こった大戦だ。正式名称は統合戦争という」

統合戦争は、その開始時は第四次世界大戦と呼ばれていた。その際に指揮系統を統合したキングス・ユニオンと日本連邦の連合軍が地球連邦軍の起源になる。23世紀にウィッチ世界との国交が『回復』すると、23世紀の日英は第二次キングス・ユニオンと日本連邦を結成し、地球連邦での主導的地位を確固たるモノに戻している。戦争の結果、地球連邦が結成されたから、統合戦争と呼ばれたのだ。



「この世界は何時頃から戦争の時代に?」

「ここ15年だそうだ。ただ、君やのぞみの世界のフィクションが実現した世界だから、宇宙戦艦ヤマトが飛んでるし、機動戦士ガンダムや超時空要塞マクロス、マジンガーZが本当にある」

「なぁ!?」

「それに、素でプリキュアより強いヒーローがごちゃまんといる世界だから、存在感がなぁ」

「はぁ!?何よそれぇ!」

「あたしに言うなよ。そこにいる門矢士も、あたしらより強いぞ」

「嘘ぉ、こんな優男が?」

「そりゃ言い過ぎだ。士、なんだったら見せてやれ。『世界を破壊し、全てを繋ぐ』と謳われたお前の力を」

「やれやれ、子供相手に本気になるのは大人げないと言われるんだがな…」

黒江からの事情説明は続く。りんはのぞみのいた世界と微妙に異なる世界の住人であった。のぞみが知恵熱で寝込んでいるうちに、粗方の事情説明を済ませようと急ぐのだった。また、この時にディケイドがカメンライドで555のアクセルフォームになり、そのスピードでキュアルージュになったりんを圧倒せしめたので、彼女にずるいと文句を言われ、基地のギャラリーからは大人げないぞ〜という野次が飛んだという。また、クロックアップによるさらなる加速も可能であるため、プリキュアは最強フォームでもディケイドには勝てないことになる。流石に、平成ライダーの中でも強者の事はある。かなり面倒くさかったのか、アクセルフォームの加速でプリキュア・ファイヤーストライクを避け、アクセルクリムゾンスマッシュという鬼畜コンボである。そのやる気満々なコンボから、鬼畜だーと野次が飛び、ため息の門矢士であった。








――ウィッチ世界の扶桑海軍は海軍整備計画が二年で大きく狂い、空母は数より質に転換し、戦艦は大和型戦艦の系譜をとにかく量産するという方針になった。21世紀日本からは戦艦より空母をという圧力がかかったが、空母は大型になるにつれ、逆に数が揃えにくくなってしまうため、日本は空軍の充実に舵を切らせ、戦艦は大和型戦艦の発展型をとにかく作り、大和型戦艦の主砲を強化し、装甲もより分厚く、場合によれば全体防御に作り変える事を提言した。しかし、元々が集中防御である船を構造から作り変える事は新造に等しい手間がかかる。困った扶桑は23世紀に相談する事で解決を図り、23世紀の宇宙戦艦とほぼ同様の構造に改造してしまったのだ。モンタナを異常に恐れる日本防衛省の文句がつけようがないほど。また、アウトレンジ攻撃を机上の空論と罵るマスコミ対策に、近接砲撃戦に耐えるようにしたため、装甲と運動性能も以前の比ではない。そのため、構造物の基本配置以外に原型がほぼない状態となり、21世紀のどんな兵器も効かなくなったのである。その改装大和型戦艦は21世紀世界にある種の旋風を巻き起こした。特に機関の近代化で不要になった集合煙突をVLSの受け皿にするアイデアは度肝を抜かれたという。また、第三次改装での60口径46cm砲という巨砲は21世紀に存在したどんな船も一撃で沈められる威力なため、抑止力にも効果的と見做された。(扶桑の大和型戦艦は将来的な主砲換装を前提に設計されており、史実よりターレットなどに余裕がある)戦艦は見栄えもいいため、レンタルの要望が強く、三河はそのために用意された艦である。(水上目標を戦艦主砲で撃つというドクトリンが復活したのは、この時の運用経験による)




――日本 国会議事堂――

「扶桑海軍は何故、大和以上のフネを揃えたのか?」

「単純明快ですよ、議員。モンタナを打ち倒すため、より砲撃フラットホームとして安定性を増すためですよ。モンタナは45口径46cm砲に耐えうる装甲を持っていた。それを打ち破るために、より大口径の砲を目指し、完成させたのです」

1940年代日本のインフラ限界を超越した350m級の播磨、越後、美濃の三隻は原爆にも耐える超合金で造られ、扶桑側がインフラを新規に揃えてまで用意させたとは言え、21世紀の空母以上の大きさの船を港に置けるのか。その心配があったが、豪華客船二隻分の全長な三笠型でその心配は意味をなさなくなっている。しかも、船で扱える限界を極めた56cm砲。大和の砲も玩具のような威力であり、砲弾重量は2.5トンを超える。モンタナを叩くために、56cm砲まで至る必要性があるのか。政治家はその疑問で叩いた。当時の標準は38〜40cm砲。播磨の時点で51cm砲に到達しているのに、そこまで大口径にする必要があるのか。

「戦艦というのは、投射量を上げる必要があって、命中率はともかく発射速度同等の同数の砲なら相手の二割増の口径で優位を確実化出来るのです。だから、扶桑は限界を極めたのです。45口径56cm砲という最大の艦載砲に」

「しかし、当時の標準は38cmから40cmだ。大和の時点で砲弾の供給に不安があったというのに…」

「貴方方がモンタナの性能を現地に啓蒙した結果とお考えください。扶桑は大艦巨砲主義の自然摂理から、このような超巨大戦艦を作り出した」

「やりすぎだ!大和の砲の載せ替え程度でいいではないか」

「扶桑でも、当初はその案が通っていましたが、八八艦隊の紀伊が事もあろうに、呉で砲撃戦に敗北して爆沈して建艦運動が起こったのです。信濃が戦艦のままであったのは、そのせいです」

大和型の運用意義は移動司令部。その認識が、大和対抗の戦艦の登場で根底から覆り、今では軍馬の如く使われている。扶桑としても予想外の展開である。また、砲口径が56cmまで拡大したのも砲熕部の予想外の展開である。また、怪異化研究が頓挫した故に、戦艦の能力を限界まで引き上げる必要が出たのは事実だ。空母の数が限られるので、戦艦を消耗品と割り切るとしたが、扶桑としては、紀伊や比叡の喪失だけで叩かれたので、消耗は避けたく、そのために凄まじい魔改造と言える改装と新造を許可したのだ。

「それに、扶桑は八八八艦隊でも養える財政だ。大和を五隻、超大和を五隻持とうが、驚くほどでは」

「だからって、ゼロ戦しか運用できんような、役にもたたん小型空母を二〇隻持とうが、鉄屑だ!」

「雲龍型は45年の水準では中型ですよ。飛龍と同程度ですし、烈風/流星/彩雲の運用も一応は考慮に入れられてます、議員」

雲龍は烈風世代が開発中に計画されたので、艦載機定数もその世代を基準に算出されたもので、飛龍と同程度の搭載量はある。また、史実と違い、飛鷹型航空母艦に油圧カタパルトがあり、天山の運用も大丈夫なことも、飛鷹型航空母艦の買収に日本郵船が失敗した理由だ。

「それに、エセックスに数で対抗しようとした事は愚策ではありません。艦上機の大型化こそが予想外だったのです。ですので、元々、陸上機の紫電改を載せるのは苦労が多いのです」

「あれがゼロ戦の後継機種ではないのか?」

「メーカーも設計思想も違うものです。海軍の場当たり的対応でそうなっただけで、烈風戦闘機が別に開発中でしたよ」

扶桑も本来、烈風が本命だったが、誉エンジンとハ43のゴタゴタと地球連邦軍の裁定がなければ、生産にこぎつけてはいなかった。また、烈風は宮藤博士が1940年に纏めた素案の具現化なため、設計が古く、45年の制空戦闘機に相応しい反応速度を持っていない。そこも烈風がイマイチとされた理由かつ、紫電改の大量生産の理由である。

「しかし、烈風はゼロ戦の欠点を部分的にしろ引き継いで持っていたので、主力にはなり得ないようです」

「何故だね」

「烈風は機体を回転させる性能が紫電改より劣るのです。扶桑の紫電改は本来は別プロジェクトの陣風のチームも巻き込んで作っていたようで、史実より性能が良いのです」

扶桑の紫電改は陣風の要素も含めた結果、史実より高性能機になり、F-86までの繋ぎとして生産された。その事は日本にも通達されている。既に生産は始まっており、自衛隊出身の義勇兵に配備されている。形式で言うなら、F-86のF型で、自衛隊の使用していたものである。また、扶桑はFJ-3と4をF-8までの繋ぎで使用をしており、翔鶴型と大鳳に配備されている。橘花と火龍を捨てた形だが、その2つより遥かに高性能であるので、カールスラントへのいい報復になった。フューリーそのものはF-8への早期転換で使用期間は短かったが、カールスラント空軍に顔色を失わせるには充分で、セイバーが制空戦闘機として活躍するのに、空軍参謀本部は腰を抜かしたとされる。また、自衛隊としても運用ノウハウがまだ記録として残る機体の採用は有り難く、86の配備は急速に促進されていく。指摘された航続距離の問題は空中給油などで解決が図られた。

「それと、我が自衛隊も黎明期に採用していた『旭光』と『栄光』も現地が採用したと知らせてきたので、レシプロ機は次第に置き換えてゆく計画なのです」

「どう置き換えると?」

「栄光は航続距離の問題もあるので、雷電や月光の跡継ぎに。旭光は制空戦闘機として当面は使用し、ファントムまでの繋ぎにすると」

後に、これはF-8とドラケンを扶桑が採用したことで変更になり、F-4Eの配備まではF-8がF-86後継の機体として使用されていく。(実際、日本側には伏せる形で、F-14単座型までの先行テストはされている。それらは64Fのみが有している機体である)

「もうそこまで道筋を?」

別の議員がいう。扶桑の要請で全ては言えないが、メッサーシュミットからライセンス料をボラれた事は明らかにされ、カールスラントは赤っ恥を晒す羽目になった。その事を知り、『大いに同情した』米国が軍用機のライセンスを大々的に与えた事が通達され、F-86FとF-104Jの生産の進行が日本に周知された。

「ええ。扶桑はドイツにぼったくられた事に気づき、米国にその窮状を訴えたのです。そこで米国は軍産複合体の意向もあり、扶桑に戦闘機のライセンスを与えたのです。現用機までの、ね」

「つまるところ、独の入る余地を?」

「完全に叩き潰した事になります。ドイツの黎明期らしい機体を代替するのが、いきなりF-86だ。その時代の最適解をカンニングするようなものです」

1945年当時、エンジンを胴体内蔵かつ、後退翼を有するF-86は空前の高性能機である。扶桑の技術的蓄積、地球連邦軍の援助が重なった成果であった。自由リベリオンの技術提供もあり、生産が成ったが、問題はそれを動かすパイロット、艦上機仕様のFJ-3フューリーを載せられる空母が問題で、当座は改造済みの翔鶴型と大鳳で場しのぎを行いつつ、空母の新造を行う(雲龍型はコア・ファイターは載るが、大改造を要するため、製造時の素材がいい初期艦のみが改装された)しかなかった。そのため、未来世界から買ったプロメテウスに地球連邦海軍からパイロットや運用要員を供出してもらい、載せているのだ。

「扶桑はパイロットを求めているので、黒江統括官の主導で公募しているパイロット募集を継続する方針です」

「防衛省内部で意見の対立があり、統括官が疲労困憊と聞いたが…」

「ハッ。現地のウィッチ軍人は基本的に、12から15が若手、16から18が働き盛り、18から19で衰えが起き、20で引退するのです。統括官や一部の超エースたちのような魔力の永続性を持つ人材は希少なのです。また、18に達したら、肩たたきされだすので、現代の平等主義の世の中にはそぐわない風習ではあります。なので、統括官に賛同する者達を優遇する措置を続けます。組織の膿を出すためにも」

ウィッチ組織を今後も維持させるには、組織の主導権をGウィッチの手に流血を見ようとも、移行させるしかない。これは日本政府/防衛省も一致する見解であった。特に、10代の兵士というだけで、ジュネーブ条約に思いっきり引っかかるウィッチは不味い存在である。そのため、運用設備を縮小させ、黒江らを始めとする、10代後半以上の世代のみを実戦部隊に残す案が有力視されたが、結局は内乱が勃発した。その一応の改正案が『18歳から実戦部隊に出、20でR化処置を受けて、27くらいまで働いてもらう』一文なのだ。軍隊は怪異をほぼ相手取らなくなったからだが、それを認めない派閥が内乱を引き起こすのである。結果、黒江達が定年まで(元帥になるため、事実上は無制限)の長い年月をウィッチ兵の屋台骨として支える事になるのである。

「内乱が叫ばれていますが、近代軍としては、あらゆる敵と戦う覚悟がいります。なので、この際、人員を合法的に整理するつもりです」

「合法的、かね」

「こうでもしないと、向こうで人員整理は出来ませんからな」

「何割減らすのか」

「場合に寄ります。膿を出すには、大規模粛清もやむを得ないかと」


この時の答弁からして、扶桑の内乱が起きれば、それを理由にしての扶桑軍の人員整理をするつもりなのが日本だった。その主な対象が海軍航空隊になり、海軍航空隊を組織の専門性を理由に、組織そのものは維持する羽目になるのは予定外だったりする。黒江達が空母機動部隊をも支えたのは現地のウィッチ供給の問題が長らく解決出来なかったからで、解決されるのは1950年代のことである。(ウィッチ発現の休眠期が1946年から1952年までで、これはGHQの占領統治の期間に相当する)また、太平洋戦争の大半はその期間中である事もあり、戦争が終わりに近づくと増えていくのは、黒江達には、ある意味で気苦労の絶えない時期である。その代わりに、歴代のプリキュア出身のGウィッチ達が64に集まったのが不幸中の幸いであった。日本でこの答弁がなされている時間軸では、歴代のプリキュアが日本連邦軍に集まってきている事が宣伝されており、桃園ラブ/キュアピーチがのぞみ達の不在の間は広報で大忙しであったりする。広報は黒江が不在の間は在籍経験者の圭子が仕切っており、ラブはキュアピーチの姿でポスターを自衛隊の要請で撮影していた。自衛隊は2010年代後半時には人手不足であり、プリキュアは女性自衛官の増加に役立つとされたからだ。しかし、ラブだけでは大変であるので、それを聞きつけた『しおい』が動いた。

「ケイさん」

「なんだ、しおいか。今日はイオナじゃねぇんだな」

「ラブちゃんが大忙しって聞いて。私も手伝えます」

「お、おい。ちょっと待て。お前もかよ」

「はい。私の場合、2つの姿になれるから、大変なんです」

「何?」

「行きます?行っちゃいます?」

「いいからやれよ」

『プリキュア・メタモルフォーゼ!』

しおいは2つの姿を持つと言い、プリキュアメタモルフォーゼをし、キュアレモネードの姿を取る。つまり春日野うららの姿を。

「キュアレモネードか?」

「で、もう一個が…」

キュアレモネードから『イオナ』に姿を切り替え『プリキュア・ラブリンク!』と叫び、今度はキュアロゼッタになる。これには圭子もあっけらかんとし、呆然となる。

「おい、ちょっと待て。どっちも姿別に使い分けできるって事か?」

「ややこしいから、どちらかで統一していますの。イオナだとロゼッタ、しおいだとレモネードと言った具合ですわ」

「うーん。のぞみにどう説明すべきだ?こりゃ」

ロゼッタの時は四葉ありすらしい言葉づかいとキャラになるらしい。つまり、しおい(イオナ)は2つのプリキュアの力をほぼ任意で切り替え、人格も四葉ありすと春日野うららの切り替えが可能という凄まじいハイスペックを見せた。

「これはあくまでエミュレートに近いんですの。ですが、スペックはまるっと再現出来てますよ」

「すげえ演算能力」

艦娘はその演算能力でプリキュア化の能力を再現可能だが、しおいの場合、春日野うららと四葉ありすの記憶をどういうわけか持つ。二人の魂魄の一部を読み込んだためであろう。これは黒江に、彼女の先々代の聖闘士『山羊座の以蔵の記憶がある』のと同様の理由だ。

「私は元々、艦船を依り代にした神霊です。プリキュアの再現はどうってことありませんの」

「おっそろしい。でもよ、エミュレートなら、普通は外見は出来ても、あたしがキュアビートになるみたいに、記憶は持たないはずだぜ?」

「読み込んだと解釈してください」

「うーん。流石は、伊号401…」

「素はレモネードのほうが出しやすいんです。ロゼッタだと肩こって」

「まほは喜びそうだけどな」

「記憶があるから、のぞみさんになんて言おうか考えてくださいな」

「おいおい」

「あの方の妹さんなら、もしかしたら覚醒するかも知れませんよ?」

「そうなったらあいつ、鼻息鳴らしてよ、狂喜乱舞しそうだ。問題はシャイニールミナスが誰かだが…」

「ラクス・クラインとか?」

「ありそうだ」

「とりあえず、レモネードに戻りますから、ラブさんにご説明を」

「お、おう…」

艦娘のエミュレート能力はプリキュアすら再現可能なものだが、しおいは春日野うららと四葉ありすの記憶を読み込んだためか、両者の記憶を有する。また、艦娘としての素に近いのはキュアレモネード/春日野うららのほうであるらしく、レモネードの姿に戻る。この後、キュアピーチに圭子が説明したのだが、凄まじい演算能力でプリキュアの能力を再現出来た事が信じられず、自分の目で確かめに来たのだが、ちょうどそこに怪異が襲来(近隣部隊が取り逃がした個体)した。しおいはレモネードのプリキュア・プリズムチェーンを放ったが、キュアピーチが茫然自失状態に陥った。

「え〜!どこからみてもプリズムチェーンだー!どういう事なんですかぁ!?」

「あたしにきくんじゃねー!姿だけだったら、あたしもできるぜ。レッツプレイ・プリキュア!モジュレーション!」

「なぁ!?」

「ほらよ。どっからどう見ても、キュアビートだろ?」

「え、え!?」

キュアピーチは、素でプリキュアのモノマネが完璧にこなせる人物をここで初めて目にした。圭子は外見をキュアビートにしたのである。のぞみに『メロディに付き合う』と言ったのはこういう意味だったのだ。

「貴方たち、どうなってるんですかー!」

「あたしは空中元素固定の応用だ。綾香がプライベートでもよくしてるが、あたしはあまりしねーよ」


「あれー、キミたち何してんの?プリキュアごっこ?」

「アストルフォか。こいつはガチでそうだ。お前こそ、ド・ゴールの説教は終わったのか?」

「ばっちり。理性ある内に済ませて来た」

「お前なぁ」

「この子が新入りの一人かい?確かにプリキュアだ」

「ケイさん、誰なんですか、この子」

「アホの子なフランスの元英雄で、十二騎士の一人、アストルフォ御本人だ」

「ちょっとー!新入りの前で、アホはないだろー!」

「フランスの……元英雄?」

「フランスの伝説の十二騎士って知らない?ボク、その内の一人だよ−?」

キラッ☆ポーズを決めるアストルフォ。Vちゃんと融合したおかげで女性に性転換したので、こうしたポーズも違和感がない。

「ジャンヌはどうした?」

「ああ、ジャンヌなら、今頃はパリだよ。ド・ゴールの頼みでガリア議会で演説するそうだよ」

「あのクソ野郎。懲りずにジャンヌを政治利用か?」

「いーや、ボクが凹ませたから、それはないね。ガリアの極右政党とか極左を黙らせるための演説を頼まれたみたい」

「第一、あいつ、生前は文盲だろ」

「そうなんだよ。それを言ったら、怒られた。『今は大丈夫です!英語の続け文字も書けます!』って」

「それ、憤慨しながら言う台詞じゃねーし」

圭子は呆れる。英語の続け文字はこの時代には当たり前のスキルで、レイブンズも書ける。書けないのはPC時代以降の一般人(文学科専攻などは読めるが)である。元フランス人のジャンヌには褒められた技能ではないが、コズミック・イラや未来世界ではフランス語は衰退しているため、日常生活に支障はない。

「第一、あいつ、母国語読めないだろ」

「ここ最近、フランス語のカルチャースクール通ってるんだって」

「アホー!」

なんともツッコミが追いつかない。フランス人が前世なのに、メモには英語と日本語という変な状態のジャンヌ。圭子は想像し、キュアビートの姿で呆れ顔だ。恐らく、ルナマリアの名前で通っているのだろうが、シュールな構図である。

「ふふーん。お二人さん、どうせならボクも付き合うよ」

「あー!もしかしてお前、ミューズの記憶を!」

「自我は引き継いでないけど、記憶持ちさ。メロディと同じタイプだよ。記憶はあるから、もし本物のビートが来ても説明はできるさ」

「お前、英霊で、そこからプリキュアに転生して、また英霊として復活なんて、コ○ケのいい標的だぞ」

「いいじゃんー!メロディみたいに、紅月カレンの要素強いからガサツって言われるより」

キュアメロディ/北条響/シャーリーは、紅月カレンの記憶と自我も見え隠れしてきたため、ガサツな性格になり、口調も北条響としてのおてんばなれど、比較的温和な口調ではなく、紅月カレンのガサツで好戦的な激しい口調である。それよりはマシだと主張する。自衛隊のファンからは『プリキュアになれる紅月カレン』と専らの噂だ。

『レッツ・プレイ!プリキュア・モジュレーション〜!』

と、言う具合でキュアミューズになったアストルフォ。キュアミューズの姿でも、アストルフォとしてのキャラ全開だ。

「でも、アストルフォとしての言動は曲げない。ネジが飛んでる?ツッコミは大歓迎さ!」

「コ○ケのいいネタになりそうだよ、ミューズ…」

ピーチが冷や汗をかく。ミューズの記憶はすべて持っていながら、アストルフォのキャラをあえて保つスタイル。彼女はこの後、広報の撮影でおふざけ全開。自衛隊のファンの鼻血で自衛隊駐屯地のティッシュの備蓄が消えたとか(貧血も続出した。アストルフォの変身なので、スキンシップ多めな事もある)また、キュアミューズの姿でキラッ☆ポーズを決めたので、これまた大騒ぎ。自衛隊のファンが記念撮影に行列を作り、米英軍の笑いを誘ったという。のぞみとりんの感動の再会の裏で、こうしたギャグ展開が巻き起こっていたのである。りんがのぞみの面倒を見るため、地球連邦軍に入隊したその日のことである。(転生者が地球連邦軍に入るのは、身分の保証もあるが、何よりも軟禁を避けるためである。転生先が職業軍人であれば、その問題はないのだが)のぞみは錦としての経歴をそのまま乗っ取った形であるので、この時は既に大尉であり、りんはプリキュアとしての経歴で少尉になったので、軍隊階級に差が出てしまったが、それを気にするりんではなく、すぐに上がる自信もあるようだ。黒江が圭子にメールした写真には、私服姿ののぞみが『えっへん!』と胸を張り、りんが猛烈にツッコむという、生前通りの光景が撮影されていたという。圭子がそれに気づいたのは撮影修了後で、プリキュア姿で全員が閲覧し、爆笑したとか。



押して頂けると作者の励みになりますm(__)m


<<前話 目次 次話>>

作品を投稿する感想掲示板トップページに戻る

Copyright(c)2004 SILUFENIA All rights reserved.