外伝その271『Gウィッチを取り巻く環境』
※シルフェニア14周年記念作品


――プリキュア達の集結に暗雲が漂い始めた事を知った黒江は予定を繰り上げ、ディケイドと鎧武に確認を急がせるように要請し、自身はGウィッチの立場確立に動いた。プリキュアの転生者、あるいはプリキュアそのものが現れ、扱いに難儀するため、一律でGウィッチと扱う事での反対論者の沈黙を狙った。そもそもがモントゴメリーの秘匿政策、東條英機の政策に原因があるため、二人は周りから責められた。東條英機は嫌気が差して、故郷を捨てて妻共々にバード星へ移住していった。モントゴメリーは成功と失敗が入り交じることで兵站部署の責任者にされることで実質の左遷とされた。また、魔法つかいプリキュアの壊滅により、早急な歴代プリキュアの保護が急がれた――




――現地では、コンカラーとセンチュリオン戦車の配備がインフラ整備と共に進み、相対的にカールスラント戦車の陳腐化が進んでしまった。カールスラントで新鋭戦車とされた車両を含めた全ての戦車が旧式の烙印を押された事を『センチュリオンショック』と呼んでいた。最終型センチュリオンは105ミリ砲を有し、ティーガーを数キロ先から紙のごとく貫ける。その衝撃がカールスラントを震撼させた。当時、細々と研究されていたレーヴェ戦車を完成させようとしたが、単純な装甲ではAPFSDSは防げない事もあり、半ば頓挫した状態である。APDSと併せて、カールスラントの誇るはずの猛獣軍団は陳腐化してしまったが、時代的に自前の製造可能な戦車では最高レベルを維持してはいた。そのため、現地部隊の要請もあり、製造ラインは維持された。これは新式への更新に異常にこだわった日本との差であった。そのため、扶桑への償いとして、チト改良型が研究される。チリとの統合型として。『第2次世界大戦中、日本陸軍はその戦車開発では資源不足と見通しの甘さも手伝って、常に敵国より一歩遅れていた』という事実もあり、扶桑は暁部隊は海軍陸戦隊に取られ、航空部隊も観測機以外を空軍に取られたので、予算の多くを部隊の機械化と装甲化に費やした。折しも、旧式車両の強引な回収が成された(全てではないが、部隊によっては装備品の全てである)事の早急な穴埋めが必要にされた事から、擬似的な61式戦車である五式改良型(チリは重量が35トンであり、結果的に『30トン級戦車』である)が日本に注目された。五式改はバダンへの対抗から、地球連邦軍からもたらされた自衛隊61式の設計図を元に独自解釈で作った車両であり、単なるコピーではない。同様の手法で74式もコピーしようとしたが、日本がそれを知って正式ライセンスに切り替えさせる混乱もあり、開発は遅延(日本側がスクラップ扱いの車両を再生させたのを問題視したためもある)し、その穴埋めが必要である事も、チト改良型の開発理由だった――



――扶桑で工場の建て替えと工作機械の刷新が急ピッチで行われ、製造車両も戦後基準へ更新されていく。この日本の強引なまでの兵器更新は政治的な『100の旧式より、10の新式だ』という思想も入っており、74式の生産を目論んだが、45年の技術レベルで74式の照準器が造れるのかとする疑問や技術蓄積の面からの不安から、熟成が年単位で為されたため、47年まで制式化が遅れる。また、生産数もそこから数年は延びないため、主役に中々なれない戦車と笑いを誘う。陸海空の新兵器が続々と扶桑の重工業の隆盛を支え始め、扶桑は高度経済成長時代に向かう。扶桑の領域はは概ね平和を謳歌し、1948年の東京五輪と万博へ邁進する。最も、他国と内部から批判もあるが、それぞれが同位国の介入で沈静化している。そのため、前線部隊向けの武器は工場からミデアで運ぶという方法が取られ、損耗部隊の補填はその方法で為されていた。その事もあり、作戦の長期化は避けられない見通しであった――







――キュアフェリーチェが療養に入ったので、キュアルージュのみが戦線に『少尉』待遇で加わった。一同がバトルキャリア『レキシントン』で23世紀地球に帰り、そこからウィッチ世界に戻ったのは、キュアフェリーチェの療養先が決まり、レキシントンが訓練航海の後半に入ってからなので、なんだかんだで予定通りになった。ウィッチ世界の動きは特に無く、比較的に平穏であったが、隔離されていたサーシャが黒江達のいない間に本国へ極秘召還され、正式にフーベルタがその後任としての任務についていた。この時点で501の最終的な陣容が定まり、歴代プリキュア達は飛行能力があるフォームの制御が課題とされ、通常のローテーションには、のぞみ以外は組み込まれていない(のぞみには錦としての経験があるため、ストライカーが使用できる)。その代わりに、臨時で二代目レイブンズと調が助っ人という形で協力し、ローテーションを回してくれていた。機材は二代目レイブンズの厚意で第三世代型宮藤理論式ジェットストライカー(2000年代運用の型式)が損耗したレシプロストライカーに代わる形で続々と配備されていた。時代を考えれば、正にオーバーテクノロジーだらけの機材であり、上層部も相応の戦果を挙げている事から、運用を黙認していた――


――基地 格納庫――

「トーネードにF-14、F-15か。おい、麗子。トーネードなんて、よくあったな」

「湾岸戦争の時に、先々代の隊長がキングス・ユニオンから供与を受けた機材です。独自に近代化はしてありますよ、おばさま」

「レシプロはどうした?」

「日本が機材調達に口出ししたんで、紫電改や烈風の予備部品が一時的に供給されなくなったんだ。それであたし達が2000年代から持ってくる事になったの」

ストライカーは一時は連合軍の主要国の同位国によって機材整理対象とされ、前線への部品供給が止まってしまった。そのため、時にはのび太が特殊弾頭で怪異を狙撃して済ませた日もある。窮したミーナは二代目レイブンズに命じ、第三世代宮藤理論式ストライカーを公式に持ってこさせたのだ。(扶桑は日本の学会から『大学での軍事研究をやめろ』と文句をつけられ、軍事研究と見做されたウィッチ研究者含め、大学から追い出された研究者を軍の研究機関で雇用する必要が生じてしまい、翌年の軍事予算の増大を却って招いた)。Gウィッチを要するがために、他部隊の助けがほぼ得られない状況を未来の機材で補う事となったため、他部隊は上層部に責められて相対的に苦しい立場に置かれた。また、扶桑が建艦運動の波に乗せられ、信濃と甲斐を戦艦として完成させた(既に信濃と甲斐の砲身が完成し、輸送艦『樫野』とその姉妹艦がそれぞれの造船所に砲身を輸送していた事、『空母より紀伊の復讐のために戦艦を!』という、扶桑の国民から建艦運動の圧力がかかったためでもある。甲斐は井上成美の反対で建造中止が内示されかけたが、国民の献納運動のたかまりで建造に至った。)事で信濃型航空母艦は幻となった。同時に日本による査定で『雲龍型の五〇二三号艦と五〇二四号艦、改大鳳の五隻のキャンセル』が決議され、『ミッドウェイ相当の45000トン級空母四隻』に切り替えられたのも、他部隊にとっては誤算だった。信濃型は『ウィッチ部隊用のコマンド母艦として運用するので、固有の艦載機は無し、強靭な飛行甲板と装甲板でウィッチ部隊の中継母艦にする』案が出ていたが、当時、三笠型戦艦の購入で海軍予算に余裕がなく、更に超甲巡の建造で戦艦保有枠圧縮の機運もあり、公には『信濃の規模でもジェット戦闘機には不足であるし、中途半端である』という理由で、空母よりも戦艦として完成したことがむしろ歓迎されたのも誤算であった。海上中継拠点があまり確保出来ないことで艦隊の直掩任務しか出来ず、しかもスタンドオフ兵器の大量投入、電子戦による通信妨害もあり、通常ウィッチでは組織的対応が困難だった。それに対応する装備を大量に有する64Fと501が一体的に運用されるのは当然であり、事実上、武子が2つの部隊を指揮していた。

「武子は認めたのか?」

「ラー・カイラム引っ張って、ネメシスも使ってますからね。当然だよ」

「あいつもだいぶ柔らかくなってきたな。ま、うちの部隊と併せて、だいぶローテーションに余裕が出てきたな。マドリード周辺の航空優勢を確立せんことには攻勢には出られんから、イベリア半島周辺の敵航空母艦と航空基地を虱潰しにしていくしかないか」

「いくら機甲戦力を揃えても、ヤーボに壊されちゃ不味いしね。ハープーンミサイルは用意してあるから、エセックスなら一発で大破できるよ」

「あれができたおかげで、ウィッチ部隊の対艦攻撃要員が生き返ったからな。無誘導魚雷じゃ、近代化された防空網には撃てなくなったし、艦対艦ミサイルは高いし」

「でも、おばさま。例の計画、急いだほうが」

「ああ。なんとか歴代混合でいいから、2チーム組めるくらいは確保しないとな…」


ウィッチ部隊の対艦攻撃要員が息を吹き返したのは、ストライカー用空対艦ミサイルの実用化が大きな要因である。黒江はF-2に自衛隊で搭乗経験があるので、空対艦ミサイルの運用教官であった事が前史であり、その関係で本職と同等の対艦攻撃ノウハウをこの時点で持つ。また、ウィッチ世界の21世紀の現用兵器を持ち込んだ事で、1945年当時の敵艦隊へのアウトレンジ攻撃能力が与えられ、そのノウハウを有する者で対艦攻撃分隊を組めるようになったのは、他部隊の支援が得られない501の窮状を打破するモノであった。Gウィッチへの対抗心や嫉妬心で501の要請を断っていた部隊はその上級管理職にある者がレイブンズの信奉者であった事もあり、現場責任者の首根っこを掴んで引きずってきて、レイブンズの前で土下座させる事案も続出した。こうした事もあり、表立って、前線で協力関係にある部隊は山口多聞、角田覚治、チェスター・ニミッツ、カーチス・ルメイなどの直接指揮下の部隊に限られた。こうした窮状を打破するために、黒江が進めたのが『プリキュア・プロジェクト』である。当初は別世界にいるだろう、歴代のプリキュアに協力を仰ぐ計画であったが、中島錦がGウィッチ化し、その人格が『夢原のぞみ/キュアドリーム』となった事で多少の軌道修正が起き、部隊の既存メンバーのプリキュア因子の覚醒もあった事で、計画は第二段階へと進みつつあったのだが…。

「ディケイドと鎧武に急ぐように頼んだ。マジンガーZEROとバダンに先回りされた以上、一刻も早く見つけねぇと、魔法つかいプリキュアのような犠牲者が出ちまう。ZEROの高次予測を超えねぇと…」

魔法つかいプリキュアの壊滅は出現済みの全プリキュアに衝撃を与え、のぞみには『シャイニングドリームを超え、魔法つかいプリキュアの仇を討つこと』という、一種の強迫観念を植え付けた。その強迫観念は良い方向に働き、それがスーパープリキュア形態の自己制御、ひいてはセブンセンシズへの開眼に繋がる。また、ドラえもんが『架空人物たまご』に『最後の切り札』を潜ませている事を示唆する黒江。

「ZEROはプリキュアも滅ぼすと?」

「そうだ。それを止めるための切り札をドラえもんが持っている。ドラえもんがあのバトル漫画の融合形態たるZ戦士を架空人物たまごで持っている。それがドラえもんの最後の切り札だ。神をも超えるあの融合戦士の…。それがプリキュアの世界を守るための切り札だそうだ」


「同じ制作会社繋がり?」

「だな。設定上、Z戦士で最高の組み合わせでの融合形態だ。もし、ZEROがプリキュアの敵を復活させれば、それでドラえもんは対抗するそうだ」

「なんでもありだなぁ…」

神を脅かす者は神を超える存在で対抗する。それがドラえもんの回答である。ドラえもんの架空人物たまごの『日本アニメヒーロー編』に、それがあるという。ドラえもんのオタクぶりも相当である。未来から来訪中の智子の義娘の麗子(血縁関係は智子の姉の孫で、大姪)と共に、今後の対策を話し合うのだった。











――魔法つかいプリキュアの壊滅はそれ以前の代に当たる歴代プリキュアたちに衝撃を与えた。出現済みの歴代プリキュアの中で最古かつ、リーダーであったのぞみは錦が持っていた血気盛んな面がのぞみ本来の責任感と作用しあい、生前とかけ離れた性格になり始めていた。つまり、バトル漫画でありがちな熱血漢になり始めていたのだ。黒田(錦としては同輩だが、先任である)に頼み込み、特訓を始めていた。それに付きあうメロディ、ルージュ、ピーチ。黒田も黄金聖闘士の端くれであるので、四名をこれまた圧倒する。特に苦痛に耐えるための特訓をドリームは志願したので、発狂しない程度にスカーレットニードルを打ち込む黒田。中枢神経系そのものに作用する痛みであるので、プリキュアの状態でも激痛が襲う。

「サソリの毒が回るみたいな痛み……!う、ううっ……でも、ミラクルとマジカルの受けた痛みに比べれば……!」

「ふふ、これはどうだ?スカーレットニードル・クワトロ!」

「あ、ああっ……」

「これで六つだ。気分はどうだ?」

スカーレットニードルを合計で六つほど受けたドリームの傷から血が吹き出し、少しだが、五感が麻痺し始める。へたり込まないのはここまで来ると気力だ。

「ものすごく悪いに決まってるじゃないですか……!目が霞んできたし、体もしびれて来ましたよ……でも、わたしは……倒れるわけにはいかないんです……!」

「いくらプリキュアだろうと、アンタレスを受けたらただじゃすまないから、ここまでにしといてやるが、よく耐える。お前、生前はそういうキャラじゃなかったろ?ま、錦の影響だな」

感心する黒田。ここで錦の持っていた負けん気が強く出た事がのぞみを変えた。次に撃たれた七発目がシックス・センスを超える扉を開かせたのだ。

『もし……先輩達と同じ力があるのなら……、わたしに力を、奇跡を与えてぇぇぇ――ッ!』

「…!」

「な、なに!?あいつ、プリキュアのままでセブンセンシズに!?」

メロディが驚く。同時に聖闘士がセブンセンシズを爆発させたのと同じオーラがドリームを包み込み、衝撃波が奔る。元々、のぞみはプリキュア5で唯一、自分だけの最強形態を有していたが、それはあくまで、祈りを媒介にしての奇跡だった。だが、スカーレットニードルで五感をプリキュアの状態で弱らせた事で、生存のために力のリミッターが解除された事、のぞみ(ドリーム)が魔法つかいプリキュアの仇討ちに燃えていた事、元々、プリキュアはシックス・センスに属する力であり、それを極限まで鍛え上げていたことで『元々、錦の肉体が有していた素質』が目覚め、セブンセンシズの扉を開いた。そのため、姿はシャイニングドリームに似ているが、翼が射手座の黄金聖衣を想起させる形状になり、所々で鋭角的なデザインになっている。シャイニングドリームの原型は辛うじてあるが、所々で聖衣を思わせるような変化があった。プリキュアの状態でセブンセンシズに達した場合に達する一つの境地と言える。

「フッ……、なるほど。プリキュアがセブンセンシズの扉を開くと、最強フォームの原型は残して、姿が聖衣に近づくのか」

『羽ばたく想いの光の翼!!シャイニングウイング・ドリーム!』

二代目のスプラッシュスターのような顕著な変化が無く、シャイニングドリーム形態の更なるパワーアップであるのを強調した名乗りである。ダメージは治癒し、黒田と同じようなセブンセンシズ特有の黄金のオーラを纏っている。そのため、神々しさがシャイニングドリームにプラスされていると言えよう(錦と融合したおかげで、力強さを求める心理が加わり、射手座の黄金聖衣のような翼はその心理の反映であろう)。

「シャイニングドリームになれた……?自分で?」

「厳密に言えば、違うな。翼を見てみろ」

「え、えぇ――ッ!?」

「お前の深層心理の反映だ。黄金聖衣を纏う先輩への憧れも入ったんだろう。ささ、攻撃してこい」

「んじゃ、遠慮なく…って、わわっ!?」

パンチを繰り出すつもりが、スペック向上が大きすぎて、自分が振り回される。バトル漫画で見るような光景だ。

「なんか、どこかで見たなぁ。……って事は、わたしもキュアエンジェルになれるのかな?」

「お前はもっと特訓が必要だな。…っと」

セブンセンシズに覚醒したと言っても、常に光速では動いておらず、攻撃の瞬間に加速するのである。プリキュアになっていれば、大まかな動きは掴める。拳と蹴りの応酬とぶつかり合いで、辺りの空気を震わす。それでも、黒田は余裕の表情で、ピーチにアドバイスする。

「なんか、バトル漫画でありがちな展開になったわね」

「同意」

「あ、あれ!」

『プリキュア・ファイヤーストライク!』

「たぁー!あたしの技ぁ!?な、なんで!?」

ドリームが自分の技を更に強化した形で放ったので、ツッコミモード突入のルージュ。

「ちょ、それ!あたしの技ー!ドリーム、なんで使えんのよ」

「いやあ、特訓したら普通に…」

「何よそれー!ありえないっしょ!?」

「取られて悔しいなら取り返せばいいんじゃない?」

「……なんかものすごく悔しい」

「ドンマイ」

迫る火球をとっさに取り出した名槍『扶桑丸』で切り払う黒田。

「良い攻撃だけど、もう一工夫しな。単に火球をシュートするだけじゃ、バットで打ち返されるよ、ルージュが昔にやられたでしょ?」

「な、何でそれを!?あれは当事者しか知らないはず……」

「みゆきの部屋から持って来たけど、別世界じゃ、お前らの戦い、DVDになってるからな?」

「☆※※☆★!?」

「あ、ルージュが混乱した!」

「ルージュ〜?あ、駄目だ。放心状態」

黒田がこれ見よがしに、該当のエピソードの収録されたDVDを見せ、キュアルージュはあまりの衝撃で固まり、茫然自失に陥る。ルージュ(夏木りん)のちょっとしたトラウマであるからだ。

「あら。昔の番組であったみたいなゲームでインチキされただけだろー?」

「フットサル部出身としちゃ、許せませんよあんなインチキ!避けるわ、手は出るわ、バットは出すわー!んもーー!思い出すだけでイライラする…」

「あの、その…ど、ドンマイ?」

「あ、ありがとう、ピーチ…」

励まされるが、どうにもしまらない。

「先輩、ルージュのトラウマなんですよ、あれ」

ドリームがフォローしようとするが。


「お前だって、その時は相手に幼稚園扱いされてたろ?」

「うわぁ〜!こ、後輩の前でそれはぁ!」

「大きな友達連中は知ってるよ。ファン多いしねー」

「く、黒田せんぱぁい!!」

「ハハッ。いいじゃないか、あたしも昔のことは日本に知られてるしな。お互い様だ」

黒田は後輩の前では、砕けた口調になる。以前と違うのは、人生経験が豊富になったため、口調が以前のお気楽極楽ではなく、黒江寄りの中性的な言葉づかいになっている事だろう。また、前史で敵を殺すことを割り切ったため、敵に情け容赦なく、ドSな側面を有する。それでいて、スカーレットニードルを慈悲深いと称するなど、蠍座の黄金聖闘士らしさも持つようになっている。その点で言えば、ミロの後継者と言える。

「さて、分家の出とは言え、一応、黒田官兵衛の血筋なんでな。その証明をしてやろう」

「に、二刀流?」

「二天一流だ。宮本武蔵考案の兵法。その所以を見せてやる」

「!」

「は、早い!」

ドリームはとっさにスターライトフルーレで応戦するが、所謂、何でもありな兵法の二天一流に苦戦を余儀なくされた。更に、黒田は『槍の又左の再来』と謳われし槍の名人でもあり、槍に炎を纏わせての攻撃も十八番。変幻自在の攻撃に大苦戦する。

「それと伊達に若い連中に『魔のクロエの再来』とか言われてなかったんでね。それ譲りの技を見せてやる」


空が曇天になり、扶桑丸に雷を集め、臨界状態に達すると同時に黒田はそれを放った。

『トールハンマァァァブレーカー!!』

「な、何あれ!?雷のエネルギーを攻撃に!?」

「ピースの技と桁違いだよ、あれ!」

ギャラリーと化している他のプリキュアの心配を他所に、その破壊力にどうにか耐えるドリーム。擬似的にマジンカイザーの技を再現したものであるので、通常形態では耐えられなかっただろう。

「どうだ?皇帝の技の味は」

「……この姿じゃなかったら、死んでましたよ」

この時にぶつけられた電気のアンペア量、電圧共にグレートマジンガーのサンダーブレークの数十倍。それに耐えきる防御力を持つ証明となった。

「当たり前だ。人間、一か八かのほうが力出るからな。セブンセンシズに到達しても、お前はその何たるかを知らない。それを教えてやる!……流星拳!」

「プリキュア・スターライト・ソリューション!」


黒田は流星拳を放った。セブンセンシズ覚醒済みの者が撃つと、標準的な青銅聖闘士の全力の数百倍の破壊力を発揮する。通常のスーパープリキュアを超える領域に達したドリームはそれに対抗せんと、パワーアップした『プリキュア・スターライト・ソリューション』で対抗した。技のぶつかり合いで爆発が起き、双方がその余波で負傷する。双方、共に額を切っており、血が出ている。

「なるほど。流星拳を掻い潜ってきたか」

「嘘……、今ので相殺が精一杯なんて…」

「これはお前の勲章だな」

額を切った程度だが、攻撃が通じた事になる。

「あ、あの。どうして、のぞみはあなたを先輩って」

「黒江先輩から聞いてないか?こいつは、この世界に素体になった奴がいて、そいつの肉体の人格を上書きする形で転生したんだ。だから、生前にはない性格だったり、経験があるんだ」


「えーと、つまり?」

「あたしと違って、のぞみはこの世界にいた奴の存在を上書きした形で蘇った。だから、そいつの記憶も併せ持つ。当分はその家族を安心させるための事はしないとならない。のぞみが得た肉体は本当なら、そいつのもんだしな」

黒田の言う通り、中島家は代々、優秀なウィッチを輩出してきた由緒ある家柄であるが、のぞみが事実上、乗っ取った形となったのは、中島家の次女である。諏訪天姫にその事がバレたら、大事になりかねない(実際に、黒江が調と入れ替わっただけで大事になったため、のぞみには錦を演ずる事が義務付けられた)ため、圭子が手を回し、天姫を適当な理由をつけての本国送還にした。その穴埋めが歴代のプリキュア達なのだ。(記憶はあるが、演劇の経験がないのぞみでは、すぐにボロが出ることが懸念された)また、錦の姉の中島小鷹は世代が事変前の世代であり、軍隊では在籍中に大した実績はないが、テストパイロットとしての実績から、陸軍航空部隊に顔が利くため、その方面から『中島錦の消失』を知られると色々と不味いため、これまた、最高機密にされている。

「つまり、その子が消えた事を感づかれないように?」

「ああ。だから、最高機密なんだよ。一人の人間が死んでた別の人間の蘇りの素体になったなんて、オカルトじみてるし、いくら英雄とは言え、家族が『その犠牲になって消えた』、なんて認めるか?のぞみには言ってあるんだ。姿を変えられるようになるまで、プリキュアとしてしか表に出るな、って。わかりやすく言えば、ミルキィローズみたいに変身できるようになるまではな」

「そうだ。だから、外に出たけりゃ、プリキュアになれってことさ」

黒田とキュアメロディがそれを述べ、ドリームも苦笑いしつつ、それを認める。これも他人の肉体を素体に転生した故の苦労である。

「でも、プリキュアの力が第六感に属するなんて、なんでわかったんです?」

「光速を視認できるか否かだ。人の視覚には限界があるが、セブンセンシズに到達すれば、同等以上の速度の戦いができるし、肉体の物理限界も超える。その攻撃で死なないのはゴルゴくらいなもんさ」

「え、いるんですか?」

「ドラえもんと同じ世界に。依頼が来てるから、この世界で動いてる」

日本のフィクサーの依頼はこの時点では完遂していないため、デューク東郷はウィッチ世界で仕事を遂行中である。クローンで代替わりを重ねるものの、(初代は1930年代生まれとも)人間として未だ存命の彼、異能生存体であり、肉体の寿命以外の要因では、絶対に死なないのである。

「報酬は例によって、スイス銀行?」

「ああ。今は銃をM16A4あたりに切り替えたんじゃないかな?あの人、銃の型式切替に10年かけるし」

「あの、のび太君は?」

「あいつはギャグ漫画の人物だ。ギャグ補正で元から死なないようになってんの」

「ギャクねぇ…」

ゴルゴは基本的にM16でも既成品を使うのは稀で、基本的には当代最高のカスタマイズを施したものを使う。ゴルゴの求める精度はオリンピックでゴールドメダルを取れるものよりも上の水準で、既成品では無理なことから、その道のプロが10年近くを費やして作ったバレルを調達している。有名な話である。

「なんか、凄く…アニメの世界みたいな…」

「お前らも同じようなもんだろ?それにドラえもんとディケイドの調査によるとだな、そのうち、男がプリキュアにだな」

「は、ははっ、ありえないっしょ?男がプリキュア?タチの悪い…」

「いや、男がなれないって誰が決めた?」

「ち、ちょっ…待ってよ!ほ、本当!?」

「調査によれば、2018年以降のことだそうだ」

トンデモスクープである。そのためにルージュは目玉がギャグ漫画さながらに飛び出る勢いでツッコんだ。ルージュは少なくとも、のぞみ/ドリームと違い、2018年のプリキュアは知らないらしい。また、ルージュのみが知らないようであるので、周囲の皆は知っている風な生暖かい視線であるので、ルージュ/夏木りんの出身世界では、2018年以降は新規のプリキュアが出現せず、プリキュアの役目は終えたとし、平和になったが故に自然消滅したか、その年にプリキュアが出現しなかった世界である事が分かる。(まだ他世界での自分の記憶が統合されていないらしい)

「そっか、ルージュはあのプリキュアがいない世界の?」

「かもな」

「こらー!そこぉ、人を置いて、かつてに話を進めるなぁー!」

ルージュはお笑い芸人の素質があるのかと言わんばかりのツッコミ要員である。生暖かい視線に耐えきれなかったらしく、半ばムキになっているようであった。また、こうしている間にも、ヒーロー達はバダンと死闘を展開しているのだ。黒田はこうして、プリキュア達を鍛えているが、それは仕事を遂行するのび太とゴルゴ、ヒーロー達の助けになるためだ。いずれも高い戦闘力があり、タフさを持つため、如何にプリキュアと言えど、足手まといになりかねない。こうした特訓で基礎能力を向上させる必要が出てくるのである。


――このように、Gウィッチはプリキュアをも内包しつつ、その勢力を確立せんとする。ゴルゴ13が仕事を遂行し、集結した仮面ライダー達などのヒーロー達が日夜、ティターンズ残党のパトロンでもある『組織』と激闘を行い、英霊たちが出身国の同位国を政治的に制御しようとし、スーパーロボットとリアルロボ混成軍団が戦闘を行う。青年のび太は彼らを影に、日向に補助しつつ、自身もドラえもんから与えられていた最強の鉄人28号『鉄人28号FX』でちゃっかり目立っていたりする。

「僕たちは『通りすがりの正義の味方』だよ。助けを呼ぶ声があれば、どこでも駆けつけるさ」

のび太はそう述べ、『太陽の使者/鉄人28号』を操るスネ夫との共闘も披露する。その凱旋の模様がプリキュア達にも見える。

「ちょっと、あれって!?」

「おお、二大鉄人28号!のび太達が帰ってきたな」

鉄人28号FXと太陽の使者・鉄人28号。それが基地へ帰還していく光景が見えた。のび太とスネ夫はある意味、これで子供の頃の夢を完全に叶えた事になる。陽光を浴び、きらめく巨体。キュアルージュにとっては衝撃のダブル鉄人28号だが、ドリームは何気にドラえもんに会いたいと言っており、そっちのほうが興味があったりする――



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