外伝その294『軌道上狙撃』


――日本の左派による軍への妨害工作の弊害と、軍規違反者への厳罰の徹底による恐慌、小学校からのスカウトの禁止などでウィッチ志願数が46年度は45年度の三割未満に低下する見通しであり、Gウィッチへの特権授与は急ピッチで進められ、ダイ・アナザー・デイ中には、通常ウィッチでは許されない権限を持つに至った。(例えるなら、ゴルゴ13への直接の依頼権など)ゴルゴは、そのGウィッチの依頼を受ける形で次なる行動を開始。ティターンズが衛星軌道上に設置した衛星兵器の破壊作戦を実行する。その作戦名をオペレーション・Gと言った――


――ダイ・アナザー・デイも三週間目に入った日、圭子は破壊活動を終えたばかりのゴルゴと面会した――


「あんたに頼みがあるんだ、Mr.東郷」

「お前たちなら、真正面から要塞の一つや二つは落とせると思うが…?」

「ところが、そうもいかねぇんだ。これを見てくれ」

「……軍事衛星か?」

「そうだ。あたしらは、ティターンズがヒューストンやケープ・カナベラルからロケットを宇宙開発競争の時代みたいにバンバン打ち上げてるのを確認したんだが、どうやら、東西冷戦時代の軍事衛星の設計図から、ミサイル攻撃衛星を作って打ち上げてるらしいんだ。稼働状態の一基を撃ち落としてくれ」

「…引き受けよう。東西冷戦時代に同じような事をCIA(アメリカ)の依頼でこなしている」

「おお!」

ティターンズが構築を目論んでいたのが、東西冷戦時代のようなミサイル攻撃衛星を衛星軌道に置き、報復ネットワークを構築。宇宙開発技術がまだ黎明期にも達していないウィッチ世界を支配せんとしている。衛星の狙撃の経験があるゴルゴに白羽の矢が立ったわけだ。(正確には初代の経験であるが、東西冷戦時代にアメリカの核攻撃衛星を秘密裏に葬り去った経験がある)ゴルゴの仕事を見届けるため、圭子は彼についていくことになる。







――21世紀はアメリカ、某地――

「やあ、あんたか。……おや、珍しい。若いのにくっついてる、二丁拳銃のお嬢ちゃんも一緒か」

「おーす、Mr.デイブ。ついでにのび太の依頼品を取りに来たぜ」

「待て。まずは、あんたの依頼を聞いてから。話はそれからだ」

「ダモクレス攻撃衛星の件は覚えているな…?」

「ずいぶん懐かしい話じゃないか。有に20年は昔の事だな」

「あの時に作った奴をもう一度造れと?」

「できるか……?」

「23世紀のビーム・ライフルを使うのもいいが、あんたの性格と、経験からして、それは性に合わん事は知っておる。あれから20年以上だから、今の技術なら、もっと確実なものができるだろう」

「そう言えば、Mr.東郷…」

「東西冷戦が終わって間もない頃だ。ある仕事で俺は窮地に陥った……レーザーに狙撃されてな…。」

圭子にデューク東郷は過去の出来事を話す。自分(正確に言えば、その時にキャリアの絶頂期にあった二代目の頃の経験だ)を窮地に追いやったレーザーライフルの事を。その出来事で、彼の『先代』はレーザーライフルにペナルティを課すようになった。一種のトラウマだろう。

「120時間以内に仕上げてもらいたい。撃発の反動の処理などは任す…」

「よし、やってみよう」

三代目デューク東郷は先代や先々代と微妙に異なり、デイブやベリンガーなどの『信頼するガンスミス』への制限時間を一日ほど緩和している。これはガンスミス達が先代の時代より齢を重ねているための気遣いと、彼らのミスを防ぐ意図があった。

「さて、お嬢ちゃん、若いのに渡しておくれ。この手の依頼は数十分もあれば、わしゃ、できるからな」

デイブはスーパーレッドホークのカスタム銃を渡す。のび太の依頼はデイブ・マッカートニーにとっては40分もあれば、容易に達成するものだ。デイブ・マッカートニーは東西冷戦時代の頃は独立間もない新進気鋭のガンスミスで、全盛期の初代デューク東郷に才を見出され、以後は腐れ縁となった。その頃は髪は黒々として、30代後半ほどであった彼も、21世紀に入ると、生え際が白髪になり、顔に相応にシワも刻まれた『初老』の年頃になっている。腕は衰えておらず、老いてなお軒昂。21世紀現在でも現役バリバリであるが、友人から『きな臭い仕事から引退する年頃』と言われてもおり、2000年代後半からは弟子も育成している。

「お、そうだ。若いののバックオーダーが溜まっとった。倉庫に取りに行くから、40分ほどまっとれ。依頼の準備もあるから」

「あーい」


デイブ・マッカートニーはこの頃になると、のび太も常連になっており、関係はかれこれ、6年(のび太は22歳からデイブ・マッカートニーの仕事場を訪れている)になる。デイブはデューク東郷とのび太の二大巨塔御用達という事で、裏世界ナンバーワンのガンスミスになった。その始まりはのび太青年期からおおよそ数十年前。東西冷戦時代に全盛期を迎えつつあった『初代デューク東郷』がアメリカ当局の依頼でハイジャック犯の超遠距離狙撃を依頼された時である。当時は大手ガンスミスの一職人であったデイブは雇い主から、デューク東郷の依頼に応えるように言われ、やってのけた。この功績で独立を許され、それ以降の腐れ縁もあり、裏世界ナンバーワンに登り詰めた。ゴルゴに信を置かれる事は、その分野の職人の誉であるため、ガンスミス業界の目標とされている。

「TV、つけていいかー?」

「それは構わんよ」

「ポチッとな」

圭子は暇つぶしにTVをつける。すると、ダイ・アナザー・デイ関連のニュースが放映中であった。そのニュースとは。





――それは、アメリカから扶桑が戦闘機や、その他の兵器を大量に購入したというニュースだった。背景として、扶桑皇国海軍艦政本部は、ダイ・アナザー・デイ直前、大鳳型の二番艦と三番艦が起工直前でキャンセルされ、大鳳を翔鶴型に再分類し直すドタバタにより、烈風と流星、彩雲のみならず、ジェット戦闘機を運用する次世代の空母整備計画へ空母整備が大幅に変更され、65000トン級の中型空母の三隻をとりあえず整備する事が目標にされた。工期短縮のため、13号型巡洋戦艦用に途中まで作られたまま、5年前後放置されていた竜骨を改修して流用する事となったための設計作業に追われていた。当時、海軍航空隊は前線での義勇兵の活躍でウィッチの存在意義が疑問視されていたものの、空母の需要そのものは増していたからだ。しかし、空母は重要艦艇ながら、その貴重性、失った際のリスクから、前線投入を躊躇う風潮が生まれてしまった。未来空母のプロメテウス級が急ぎ、購入されたのは、連合艦隊の『指揮官先頭』の伝統や日本の一般層の謗りへの対処も含まれている。そのため、空中給油が当初より考慮されているジェット戦闘機への装備更新が急ピッチで進められていたが、ゴルゴも苦言を呈したように、ジェット戦闘機のパイロットはそう安々と育てられるものではない。雲龍型が10隻も追加で『輸送名目』で増派されたのは、お互いの物量差を少しでも埋めるためである。ウィッチ運用装備がされる前に投入された艦も存在し、実質的に雲龍型が『純粋な空母として投入された』最初で最後の戦がダイ・アナザー・デイであった。ニュースの後半は自分を含めた『レイブンズ』が扶桑でかつて、電光三羽烏と呼ばれ、名を馳せたトップエースであるかを示す扶桑のプロパガンダ映像が流されていた。現役ウィッチ達の間で、ここに至り、伝説の電光三羽烏がレイブンズと同一であることに気づく者も生じ始めたが、陸軍系と海軍系とで反応が分かれてしまう。黒田が大まかに統制していた陸軍系はニュースに歓喜し、多くがレイブンズの味方につく。坂本や竹井のように、古参が全体的な統制を諦めており、自主性が強く、更に反レイブンズ教育がされた海軍系と真逆になった。もっとも、若本や西沢の教え子や、菅野の悪友達など、レイブンズ寄りの中堅層はいないわけではない。海軍系は激戦だったリバウ撤退戦を期に世代交代も進んできていたため、人員の構成比率が陸軍航空と異なる。その違い、陸軍が事変の褒賞の過半数を持っていったことへの反発に根ざす陸軍の宣伝への懐疑心。それが海軍航空隊の組織としての大誤算だった。クロウズ亡き後に備え、組織戦闘重視の風潮を育てようとしたら、日本側に広報との矛盾を責められ、空軍編成を理由に、主力化を目指していた陸上航空隊が訓練中の空母航空団含めて、文字通りに根こそぎ引き抜かれ、空母航空団の育成が事実上リセットされた状態に追い込まれることになる。レシプロと全く異なる飛行特性のジェットの時代では、結果的にプラスに働いたものの、育成完了の目処がたっていたはずの601空を空軍へ引き抜かれたショックは甚大で、海軍航空隊の作戦自己遂行能力はダイ・アナザー・デイを境に次第に失われていく。この事への抗議への対応で、作戦時には日本軍出身の義勇兵が当初予定よりも遥かに多く集められたのである。実際に従事した空母機動部隊に配属の隊員の六割は日本軍の出身で、しかも、航空機パイロット全体の7割が義勇兵である。これは航空自衛隊には、空母機動部隊を担える者はおらず、元・日本軍将兵でなければ、空母機動艦隊のパイロットを直ぐにできないからだ。これは扶桑海軍航空隊の平均飛行時間が、史実あ号作戦時の人員よりは多少マシ程度であるという問題が先立ってあり、結局、各地の教官級をフル動員し、残りは義勇兵で補うという手法が取られ、実働隊員の多くは『経験不足』を理由に冷や飯食いの結果となった。その後も、ジェット機への転換に手間取った&艦上機の構成が戦時特有の定期的な機種変更(太平洋戦争までに、烈風/紫電改↓F-8/A-4、A-6↓F-4EJ改/A-6↓F-14/F/A-18シリーズ)で、なかなか安定しない事も重なり、海軍航空隊の再建は遅々として進まなくなるのだった。(最も、601空は空軍に引っ張られたものの、実質の空母航空団としての育成は継続され、その完了が予定より数年の遅れる程度だったが、軍事的には遅れまくりであった。史実より遅い開発速度を日本側が信じず、数年おきに世代を進めた弊害で、太平洋戦争中には、機種変更のしすぎで、日本の一世代前にまで追いついてしまうのであった。運がいいのは、扶桑はジェット機をグラスコックピット前提で製造し、外見上、世代が違う機種でも、操縦系を統一していた事だ。軌道に乗れば、空自もアッと驚くレベルの促成ができた。また、機体の単価も日本側より安いため、航空消耗戦を行えるほど、日本の現行機、もしくはその一世代前の機種が調達できるため、扶桑は航空消耗戦前提で大量生産していたのだ)








――ダイ・アナザー・デイが予想以上に長引いた理由は一つ。日本が米国系国家の物量作戦に恐れをなし、積極的な攻勢を嫌がった事での中央の混乱もさる事ながら、現場のサボタージュで、攻勢に必要なウィッチの人数が確保できなかった事、ウィッチ部内の勢力抗争が勃発し、前線を一握りの部隊で支えていたが故のオーバーワーク化の懸念による防衛計画の策定である。のぞみやラブがプリキュアとして、軍内で名を挙げたのは、この時である。当時、北条響はシャーロット名義で軍務に励んでいたし、星空みゆきも宮藤芳佳名義で参戦している。それとの兼ね合いで、後の世に残された記録で、純粋にプリキュアとして参陣とされたのは、海藤みなみ/竹井醇子も省いた場合、この二人のみであった。歴代の中でも、格闘での戦闘能力は初代の二人に次ぐレベルにあった二人だが、ティターンズの送り込んだガンダムファイター崩れ、もしくは世紀末系拳法の伝承者達に苦戦する場面が多く見られ、それがより本格的な修行に繋がった――


「くぅ。折角、ル・マン24時間レースから帰ってきたところだったのに……!何の因果で泰山天狼拳の使い手とやりあう事になってんのぉ!?」

キュアドリームは、ティターンズが送り込んだ、ドラえもん世界における泰山天狼拳の伝承者に大苦戦を強いられた。元々、素体になった中島錦も素手での格闘術に長けるわけではなかった上、プリキュアとしてのスペックに頼っていた傾向があったドリームは、高速で飛行できるシャイニングドリームの姿でありながら、闘気で凍傷を起こさせる事が可能な泰山天狼拳に大苦戦を強いられていた。これはまだ覚醒めて間もないセブンセンシズで引き出したスーパープリキュアとしての力を、極限まで鍛えた肉体と闘気が織りなす泰山天狼拳が尚も上回っていた事の証明である。しかも、かの世紀末救世主伝説と全く異なる道を辿った場合の歴史の伝承者である敵は、なんの因果か、奇しくも漫画での伝承者『リュウガ』にそっくりであった。

「はぁああああっ!」

「いやぁ――ッ!!」

空中でぶつかり合う拳。だが、当時ののぞみの実力では、いくら最強形態であろうと、平常時の拳速は泰山天狼拳には及ばない。拳の打ち合いになるが、基礎スピードの差により、ダメージを次第に負っていく。

「押されてる!動いて、ドリーム!拳の疾さじゃ向こうが速い!動かないとやられちゃうよっ!」

「分かってる!だけど、闘気で動きを鈍らされちゃうっ…!」

全てにおいて、最高峰とされる北斗系、それとほぼ対等(一時は凌ぐともされた)の元斗系の流派には到底及ばないものの、泰山天狼拳は南斗系の末端の流派の多くを凌ぐ拳速を誇る。人間、肉体を極限まで鍛え、なおかつ技を極めると、『超人』になれる。泰山天狼拳はスーパープリキュアであるシャイニングドリームをも防戦一方に追い込むほどの威力を見せた。

「くっ!」

『フレッシュプリキュア』の最強形態である、キュアエンジェル化したピーチも加勢するが、最強形態の二人の攻撃を同時に受けているのにも関わず、相手は攻撃をいなしている。

「そんな、プリキュアとしては限界までパワーアップしてるはずなのに、まるで追い付けない!?」

「笑止な。超能力で基礎能力値を引き上げたくらいで、天狼の牙は折れぬ!」

二人はこの時、たとえ自分達がスーパープリキュアになっても、鍛え上げた肉体は上回れる事を身を以て思い知らされた。歴代プリキュアでも、かなり上位の近接格闘スキルを有しているはずの(殆どのプリキュアは近接格闘術が自然と身につくが、戦闘経験と戦術の関係で、初代と代が近いこの二人は、実力者と後輩に称されていた)自分達が二人がかりで圧倒される。スーパープリキュアに二段変身していて。それでこのザマであるため、ドリームとピーチの目は驚愕のあまりに目が点だ。こうして、二人は泰山天狼拳にズタボロにされた。特に、のぞみは一回、修行をした後であるため、それで強くなったつもりであったのもあり。ショックは大きかった。

『天狼凍雹拳!!』

二人のガードを一撃で崩し、大きく吹き飛ばした泰山天狼拳の奥義が一つ『天狼凍雹拳』。二人の強化されている視力を以ても視認できなかったこの技。20mから30mは有に吹き飛ばし、二人にノックアウト寸前の大ダメージを与えた。二人に取っての最強形態の防御力で凍傷こそは免れたものの、物理的ダメージは防げず、コスチュームの数カ所がズタズタに破れていた。並大抵のことでは堪えないはずのプリキュアのコスチュームを物理的な力で破壊せしめた、俗にいう『世紀末系』拳法。この時、『彼』はできたのにも関わず、敢えて殺しはせずに立ち去った。(弱者は見逃す主義だった)その事に二人は安堵しつつ、なんとも言えない屈辱感が渦巻いた。二人は幾多ある内の一つと遭遇したに過ぎないのを『知っている』いるため、最強形態になっているのにも関わず、自然と冷や汗をかいていた。この戦闘で『見逃された』事で、二人は本格的に修行に打ち込むきっかけを得た。少なくとも危機感を抱かせる意味では最適な清々しいくらいの負けっぷりであった。この遭遇の後、二人はトレーニングに本格的に打ち込むようになり、北条響/シャーリーを加えてのトレーニング風景が見られるようになったという――




――21世紀は米国。デイブ・マッカートニーは四日から五日ほどと、通常よりは余裕を持ったタイムスケジュールを与えられ、作業に取り掛かった。彼は若かりし頃の東西冷戦時代に『宇宙でも使えるM16』を制作し、核ミサイル攻撃衛星を破壊する依頼を受けた『初代デューク東郷』の期待に応えた事がある。デューク東郷は『レーザーライフルであわや失明というところに追い込まれた』経験から、光学兵器を用いる銃を嫌う傾向ができたため、宇宙でも使える実体弾式の特別製をデイブに造らせている。圭子が作業を始めた日の夜に、デイブへの差し入れを作業場に持っていくと、バレットM82/A2を基本ベースにして制作を始めたところであった。東西冷戦時代と違い、銃の選択肢が広がったためと、時代の変化で宇宙で銃を撃つ事への研究そのものも進んだため、東西冷戦時代ほどの大がかりな改修は必要としない。(例を挙げると、後世の『ザク・マシンガン』は特段の改修なしに宇宙でも撃てる)ただし、実体弾を撃つ時の反動の処理は、21世紀の序盤の頃は宇宙開発の停滞もあり、まだ研究段階に留まっていた。デイブはこの反動の処理に、今回の依頼でもっとも労力を費やしたと言える。銃の輪郭は浮かび上がり始めていたものの、まだ制作準備中だった。彼は倉庫に資材を取りに行っていた。

「今回の仕事は『軌道上狙撃』の再来なんだよな。ったく、ティターンズめ。余計な手間をかけさせやがる。21世紀までのボタン戦争でもやりてぇのか?」

デイブへの差し入れを机に置きつつ、愚痴る圭子。実際、グリプス戦役のティターンズの敗北が決定した直後、ティターンズは『ベルカ式国防術』(古代ベルカの一部勢力が核兵器で敵を都市諸共に吹き飛ばす戦術を実行し、その戦術の名が残った。ミッドチルダも戦乱期に行った行為ではある)まがいの核兵器で地上を道連れに滅びようとしたので、地球連邦軍にとっても、ウィッチ世界にとっても、はた迷惑な集団である。実際、ティターンズの構成員の八割は地球至上主義者であり、更に言えば、上層部の大半はジャミトフの威を借りるネズミでしかない。ダイ・アナザー・デイが未来勢力による『血のチェスゲーム』と現地で揶揄されたのは、21世紀の日本が自分達の好みに合う兵器の配備を強行し、現地の現行兵器を無理に廃棄、もしくは本国後送させる間に多くの将兵の血が流れ、しかも21世紀の日本の内務系勢力と背広組の一部はその犠牲を一考だにせず、むしろ、『軍国主義者のいい整理』とまで宣う者までいた事が原因であり、21世紀日本の警察系勢力の政治力の低下に拍車をかける事になる。これは半ば自業自得の結末を迎えたと言える。このように、21世紀日本は様々な思想が入り乱れ、結果として、ウィッチ世界に悪影響を及ぼした側面も多い事から、その償いも為さねばならないため、ダイ・アナザー・デイ開始時点で在籍済みのウィッチたちの軍籍維持の保証の声明が出されたのだ。(これに懐疑的な海軍系ウィッチの一部がクーデターに走った事で、粛清人事が巻き起こり、前線で戦うウィッチ航空部隊は64Fのみという状況に完全に陥る。人員がバラバラにされた50F、47F、244Fの再建が成ったのも戦中の事であり、クーデター派は自分達の危惧した『一部のウィッチが手柄を独占する』状況を自分達の行為で招来させてしまったと言える)

「やれやれ、日本の役人は独善で、自分の都合で解釈して動くから、後々に禍根を残すんだよ。ガキ共をブルらせるだけブルらせて、問題になったからって、雇用維持の保障手形を出しやがる。それでクーデターを理由に左遷の嵐やらかしやがるからな。Pプロジェクトを日本に正式に通達するしかないか」

デイブの仕事場に置かれたラジオから流れるニュース。日本連邦軍として、ウィッチ雇用維持を『特例措置』という名目で正式に表明したというもので、数千人の少女を路頭に迷わせるわけにもいかなくなった故の日本政府の妥協でもあった。士官学校の学費を払えない家庭環境の者も多いため、『七年の勤務実績があれば、学費返還免除』の項目も発表された。この勤務日数が規定に達しない内に士官の階級で退役すると、士官学校の学費を全額払わなくてはならないと解釈された事から、反発する者も多くなる。その事も、新規志願数の低下に繋がり、反対論の多かったGウィッチへの『特権付与』が量の低下を質で補うために公に認められ、プリキュア・プロジェクトも、この時に日の目を見るのである。既に芳佳の声明が出ていたものの、依然として反対論が燻っていたこの時期において、前線で敗北はあれど、ティターンズの繰り出す『超人と激闘を繰り広げる、のぞみとラブの存在』は大きかった。圭子がアメリカにいる間に、二人は敗北を味わうものの、見せ場がないわけではなかったのも事実だった。泰山天狼拳の伝承者に遭遇する間に、シャイニングドリームが『プリキュア・スターライト・ソリューション』の一発で敵の機甲師団を壊滅せしめているなど、普通の軍隊とプリキュアとの格の違いは見せている。世紀末系拳法の伝承者たちは彼女たちの進撃を阻止するために投入され、その役目を見事に果たしたのである。





――デイブが仕事を終えるまでの期間、のぞみとラブはスーパープリキュア状態を以ても、歯が立たないほどの強敵の出現に危機感を抱くのである。圭子のタブレットに、のぞみからその旨を報告するメールが入ったのは、圭子がラジオを聞き終えたその時であった――



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