外伝その297『イベリア半島攻防戦19』


――一同は戦闘を開始した。のび太が暗殺者を倒したのが狼煙となり、一同はリベリオンの第五次侵攻に出くわした。マドリード市外に出たところで、ちょうど侵攻中の歩兵師団、機甲師団などの諸兵科連合に出くわしたのだ。

「お、見てくれ。空挺部隊が降下してきてる」

「空挺部隊かぁ。いい装備持ってるの多いんだよね」

「まぁ、空挺部隊はこの時代から精鋭だしね。アメリカだと、この時代の装備はM1カービンだな。撹乱される前に片付けよう」

空挺部隊はゲリラコマンド戦略に長けているため、優先して倒すべき目標であった。のび太たちのいる地域に降下した中隊規模のコマンドたちは装備を回収したはいいが、激戦を味わう事になった。


――基本は平原であるが、ちょっとした丘などもある地に降下した空挺部隊と対峙した一同。殆ど虱潰しに近いが、のび太が先陣を切る。銃撃戦で彼と互角に渡り合えるのは、デューク東郷だけだ――

「もらった!」

のび太は銃撃戦への天性の才能で、ライフルでの狙撃にも対応し、降下中の隊員を数人ほど始末する。

「三人共!」

「うんっ!!」

のび太の合図で箒、ドリーム、ピーチの三人が飛び出し、アトミックサンダーボルト、プリキュア・スターライト・ソリューション、プリキュア・ラブサンシャインを一斉に放つ。地形を変える一撃であるが、燻り出しに使用する。それを潜り抜けたものを始末するのだが、これがまた大変であった。空挺部隊の中に、ティターンズの督戦要員がおり、その要員が防御力を強化する『華山鋼鎧呼法』の使い手だったのだ。

「なっ!?今の真っ向から耐えた奴がいる!?」

「用心しろ、二人共!あの男の小麦色の肌色は……華山鋼鎧呼法!のび太の世界の中国に伝わる秘伝だ!…と、言うことはティターンズの督戦要員…!」

爆炎を悠然と歩く、小麦色の筋肉質の壮年の男。ティターンズの送り込んだ督戦要員であり、『華山角抵戯』の使い手。相撲の源流とも噂される『角抵戯』の流れを汲む拳法。その特殊性から、ガンダムファイト向きではないとされた拳法だが、特筆すべきはその防御力。伝説では『肉体を鋼鉄と化する』とされ、青龍刀をへし折ったとされる。

「ふむ。今のは良い攻撃だが、ワシを倒すには足りんな。」

「ならっ!」

「馬鹿者、先走るな!」

シャイニングドリームが先走り、スターライトフルーレを手に攻撃を仕掛けたが、その鋼鉄を謳われた呼法を発動させし肉体はフルーレの刃を一切、通さなかった。プリキュアの最強形態の武器を通さないというのは、中々に衝撃的であった。

「なっ!?フルーレの刃が通らない!?」

「フッ、華山角抵戯で鍛えたこの肉体、そのようなモノは通さぬわ」

フルーレは男の胸を傷つけるどころか、逆に、フルーレの刀身に罅が入っていた。シャイニングドリームが飛行能力を全開にしても、微動だにもしないフルーレ。男は攻撃に移った。

「華山角抵張手!」

角抵戯は相撲の源流を噂される武術なので、当然ながら『張手』もある。その威力は、相撲の力士が一般人に使えば、殺してしまうともされる。張手は掌底技にもカウントされるため、ドリームは一発で額を割られる羽目に陥った。空を裂く炸裂音とともに、ドリームは吹き飛ばされ、箒に受けとめられるが、相手の張り手で額を割られており、出血する。脳震盪には至らないものの、またも大ダメージを負ってしまう。

「そんなっ……『ムシバーン』を破ったフルーレが……、こんなあっさりと破られ…!?」

「伝説では、幾多の青龍刀を寄せ付けなかったとされていたが、ここまでとはな……」

ドリームはショックで放心状態に陥った。箒の解説も耳に入っていないようだった。無理もないが、現時点での最強形態の武器を、『格闘技を極めた人間』に真っ向から防がれたのだ。何事も、そう上手く事は運ばない。たとえ、英雄であるプリキュアと言えども。その証明と言えた。

「んじゃ、これはどうかな?」

「のび太、何を…!」

「こういう時のための特殊弾さ。合成鋼G製の弾芯の徹甲弾。相手が鋼鉄の体なら、それ以上の金属をぶつければ……どうなる?」

のび太が敷島博士の用意した特殊弾頭を二発撃つ。仕組み的にはAPDSであった。流石の華山鋼鎧呼法も鋼鉄を遥かに超える合金製の弾芯で貫くAPDSは弾けず、食らった相手は大きく仰け反る。

「ぬうう……!わ、若造め、味な真似を……」

「あんたの華山鋼鎧呼法も、戦車砲弾と同じ仕組みのものまでは弾けないようだな」

ニヤリと微笑うのび太。30代以降での『傲慢不遜な男』(そう装っていた)との裏世界での評判の片鱗を垣間見せ、28歳にもなると、歳相応に、スイーパーとして肝が据わったところを見せる。こうしたハッタリの巧みさこそ、のび太の百戦錬磨さの証明である。プリキュアの攻撃を無効化する相手を、英霊としての能力と、思いもよらない奇策で打ち破る。元々、子供の頃から『銃を持つと、別人のように切れる男になる』と評されていたのび太。青年期以降の端正なマスクもあり、『シティーハンター』を名乗れそうなカッコよさであった。

「さあ、次はそのご自慢の脳天でもぶち抜くかな?」

スーパーレッドホークベースのカスタム銃を悠然と構える。ビシッと決まっており、調が惚れたのもわかる、ある種の『カッコよさ』を醸し出していた。

「おのれ……、勝負は預ける!」

のび太はこうした『ハッタリ』で相手を撃退に追いやる事は青年期以降、大の得意技であった。初見殺しをなるべくしないところは、子供時代の名残りだろう。相手は撃たれて負傷した身で逃走していく。スターライトフルーレを防がれたショックで放心状態だったシャイニングドリームも、のび太の背中に、かつての恋人『ココ』に感じたのと同じ『何か』がある事を直感的に感じ取り、ときめいてしまう。

「のび太、お前…、またスケコマシしおってからに」

「あ、あー…。困るなー、所帯持ちなんだけどな、僕」

そのときめきを感じ取った箒に言われ、気まずそうなのび太。ドリームの表情が、かつて、自分に心を開き始めた頃の調と同じものだったからだろう。28歳頃の彼は既に、息子も儲けている家庭人で、愛妻家。勝ち気な妻を持つため、家庭では『アメとムチのアメ』を自認する。一方で、成人した後は端正な顔立ちになったが故に、仕事場でモテモテなので、のび太としては困っているのだが。

「とにかく、のぞみはお前が面倒を見るんだな。」

「そうしますよ。本当は子供の僕に任すつもりだったんですけどね」

予定通りに事は運ばない。苦笑しつつ、のび太はそう思うのだった。








――それはGウィッチである黒江達も同じこと。同人界隈での禁じ手ともされる『メアリー・スー』まがいの存在ともされた(21世紀人を含む敵対者に、だが)原因である転生の繰り返し、あるいは前世の技能の引き継ぎで得た強さは正しく、敵対者から見れば、『悪魔的』な何かにしか映らないだろう。実際のところ、黒江たちはそれをある程度は予測していたが、敵対者がGウィッチを『悪魔や死神と契約した』と罵るという状況は彼女らの精神を少なからず疲弊させた。だが、いくら黒江達でも、前史における坂本とミーナの反発など、予想外の出来事に出会うことは多い。プリキュア達の登場にしても、黒江たちの予想外の出来事である。(自分達がなろうとしていた事がその証明だろう)黒江と星空みゆき(宮藤芳佳)が1945年以後、政治の場で戦う事が多いのは、所属部隊の64戦隊そのものの政治性に由来がある。日本は未熟なパイロットが戦死、事故を起こすと、人的損害よりも機体の方を心配する傾向が戦中からある。その事は501にも及んだ。ウィッチとしては実績のないリーネが肩身の狭い思いをし、ネームバリューのある『美遊・エーデルフェルト』に転じた理由である。64が短時間で『各地から精鋭を根こそぎ動員した』に等しい陣容に膨れ上がったのは、『若手をできるだけ配属させない、実戦部隊の配属人員は実戦経験の豊富なベテランのみとする』という、日本からのむちゃくちゃな編成承認条件が裏で突きつけられていたからで、武子の反対云々以前の問題であった。また、ベテランを各地から引き抜いた事による各戦線からの苦情の処理も大きな問題とされているのも事実であり、そこが扶桑皇国が向き合わなければならない問題であった。『メアリー・スーの権化』、『悪魔的存在』と、本来ならば同胞であるはずのウィッチから『迫害』され始めたGウィッチ達は内心で『平穏』を望みつつも、血の献身で自分達の存在価値を認めさせるしか、生きるための選択肢がない状況下に追い込まれていた。これはプリキュアの過去生を持ち、現在は職業軍人である者達にも当てはまる。それがこの世界の半世紀以上後の未来の時間軸での、Gウィッチ達の軍退役後の南洋島最高峰での隠棲生活に繋がるのだ。日本や扶桑のGウィッチ達の『敵対者』達が『後世』の人間に罵られる事になったのは、彼女達の献身で日本連邦の『飛躍』があった事を認めようとしなかった、それと、この時期に軍隊をいたずらに混乱に陥らせた罪である。彼らの功績はただ一つ。結果的に軍隊魔導師制度の近代化に貢献した。それだけだ――








――その通り、ダイ・アナザー・デイはまさに、Gウィッチと義勇兵達の血の献身で前線が支えられた戦であった。超重爆に戦闘機が体当たりを仕掛け、諸共に落ちる事、敵艦に攻撃機が特攻する事も戦場では当たり前に起こり、その衝撃でシェルショックを患う者が敵味方ともに続出した。怪異ではない、人同士の争い。これに衝撃を受ける者はウィッチ出身者を中心に多く、皮肉な事に、シェルショック=戦闘ストレス反応がウィッチ世界で広く認知される戦になった。怪異との戦闘の場合よりも、それを患う者が多くなった。そのため、戦争の空気に慣れている『大人』たる、Gウィッチが必要とされたのである。新たなプリキュア出身者達は戦車道世界におり、そこで大学選抜チームとの試合に臨む事になったので、ダイ・アナザー・デイへの参加は見送られた。(現地のプリキュア出身者達の統率はダージリン/蒼乃美希が行っている)このように、戦車道世界でかなりの割合でプリキュア出身者が発見されており、それが僅かながら、のぞみにとっての慰めであった――



――基地――

「すまんな、みほ。そちらの私に言ったか?」

「外国人と親しげに話してたって目撃情報が入ってたからか、こっちのお姉ちゃん、珍しく焦ってたよ。これじゃ、バレるのは時間の問題だよ」

「この作戦が終わったら、挨拶には行かなければならんだろう。幸いだったのは、お前とエリカがプリキュアに覚醒めた事か」

「嬉しそうだね」

「私も、自分がシャイニールミナスだったら、良かったかもしれん。だが、あいにく、そうではない。お前には苦労をかけてしまうな」

「いいの。プリキュアに戻ったのは、私とエリカさんの意志だよ。私は大学選抜チームとの戦いが終われば、みんなと未来世界で戦う事になってる。ただ、圭子さんがマスコミに垂れ込んだから、文科省の役人が首をとばされる危険が大きくなったのに焦って、試合をマスコミ関係者シャットアウトでセッティングしてね。こっちもみんなで対応を考えてる。圭子さんが『短期留学』をねじ込んだ腹いせかもしれないし」

四葉ありすとしての自我の影響か、若干ながら、プリキュア戦士としての芯が通った口調になっている西住みほ。また、大洗女子学園の廃校の事が公になったため、戦車道世界の文科省は試合を急いでいる。大義名分が明確にないため、島田愛里寿は試合に乗り気でないなど、状況が圭子の記憶と違ってきている。島田流そのものも『弱い者いじめ』のバッシングを受ける危険が大になり、門下生離れが師範以下から懸念されるなど、政治的すぎると反対する意見のほうが大きくなっていると、みほは言う。

「みほ、文科省はなぜ、大義名分のない試合に固執する?一般世論が沸騰すれば、戦車道そのものも危うくなるというのに」

「たぶん、私達『大洗女子学園』の持つノウハウを強豪校に渡すためだよ。ウチの人員を分配すれば、日本戦車道のレベルは上がる。そう考えてね。だけど、圭子さんのタレコミで文科省は政治屋の政争に捧げる生け贄を探し始めてるし、俄に世論も文科省を糾弾し始めてる。叩かれる前にウチの学校を廃校させちゃえって事だね。だけど、負けないよ、お姉ちゃん。プリキュアに戻ったんだもん。私、諦めないよ」

「そうか…強くなったな。試合が終わったら一報をくれ。ケイさんを行かせる」

「分かった。それじゃ」


四葉ありすとしてのポジティブさが良い方向に作用したみほ。この気迫の差、プリキュアとしての矜持を持つが故の闘志が島田愛里寿の才覚をみほが凌駕した理由であろう。また、みほを含む6人のプリキュアは試合が大洗女子学園(事実上の高校選抜)の勝利に終わった後、文科省の役人を変身した姿で脅しつけている。役人はプリキュアが実在し、しかも大洗女子学園の臨時チームの中に紛れていた事に驚愕しつつ、事態を政治問題化させると脅しつける6人に屈する形になった。『彼』は試合後、スキャンダル発覚を恐れる文部科学大臣の指示で騒動の全責任を負わせられ、自主退職に追い込まれる。島田流も少なからずのバッシングを受ける事になり、西住流が政治的意味で島田流に優勢な情勢がしばらく続く事になったという。ただし、文科省の命で大義名分無き試合をさせられた島田愛里寿には同情の声が大きく、後に圭子が、彼女とその副官達を留学名目で引っ張る理由付けにもなったという。

「すっかりシスコンだねぇ」

「聞いていたのか、エーリカ」

「坂本少佐は本国のクーデターの押さえつけと、サボタージュしてる連中への制裁で忙しいからね。あたしが副官の仕事しないとね」

執務室に入ってきたエーリカ・ハルトマン。階級は既に少佐であり、アレクサンドラ・I・ポクルイーシキンの追放などが起こったため、事実上のミーナ・ディートリンデ・ヴィルケの副官的地位に収まっていた。ミーナ自身、覚醒後はレイブンズを立てるようになっているので、司令の座は編成上のものになっており、実務は実質、特務士官(中尉)の赤松貞子が取り仕切っている。これは真501での人間関係は軍隊階級を超えた上下関係で構築されていた証であり、部隊の意思決定に関われる幹部はカールスラントと扶桑の出身者が大半であった。

「やれやれ。私がやる事は赤松さん達の決めた事を形式上、上官として認めるだけになったんだがな」

「特務士官が裏で取り仕切ってるなんて、兵科将校の名折れだって批判する輩がいるから、公にはできないんだよ。将校ってだけで、日本の一般大衆は『温室で作戦考えてるだけ』って思ってるから、あたしらみたいな前線指揮官型が重宝されんのさ。戦国や源平合戦の頃の風習の名残りだね。士官が前線指揮官してないと、『臆病者』のレッテル張りまで受けるからね、日本だと」

「そういう考えが根強いからな、日本は。要は将校は戦場で戦えばいいのだろう?」

「そういう事。戦場に偉い人がくれば、実情がわかる利点があるのだけは本当だしね。日本は扶桑との事で揉めまくったから、扶桑に一方的に言う真似はどこも避ける様になってきてる。内務省さ。扶桑の検閲を無くして、内務省の分割解体まで出した以上、自分のところの規制がかけられなくなったからね」

扶桑の検閲はこの頃には、未来技術の導入のためもあり、すっかり形骸化していたが、内務省は官僚の雇用維持のため、軍隊は警務隊の仕事の維持のため、『形式上』は存続させていた。だが、日本側が評議会で扶桑内務省の『解体』を打ち出したために、内務省は萎縮し、検閲の完全廃止に至った。結局、内務省は分離解体でのたらい回しを嫌がる扶桑国民の声で存続となるが、扶桑皇国の内務省からの抗議への外聞から、表現規制は日本連邦で半ばタブーになったという。(内務省、軍部の検閲に関わっていた人間を日本の都合だけで強引にクビにもできないため、理由をつけて、『窓際族』にするしかなく、日本側の都合だけで理不尽に立身出世の根を摘まれる事への不満も、クーデターの原因の一つになる)

「これを見て」

「乗り物型なぁ。舟形ストライカーの改良での使用も検討されてる時代とは言え、パイロット兼任の都合で。ただ、舟形が廃れた理由を考えると、乗り込み式に変えたところで受けないと思うなぁ。訓練用に使われるだけだろうな。舟型を改良するにしても、昔のものの様では、『擦れる』からってブーイングされるのは、目に見えてるし」

ハルトマンの持ってきた書類には、ある事が書かれていた。舟形ストライカーを改良し、ウィッチをパイロットと兼任させる案が出ているという提案。これは防護の意味合いもあるが、第一世代宮藤理論式の搭載限界が見え始めた故の考案であり、戦闘用としての第一世代宮藤理論の限界点が訪れた証であった。この案は結局、もろ他の理由で廃案にはならず、初等練習機という形で採用される。魔導技術の使用で尾翼が存在しない以外は、ほぼ航空機であり、ウィッチとパイロット兼任の者を育てるに最適だとされたからだ。書類では、23世紀のとある科学者が考案した『空戦魔導機』という事だが、その目的での使用は、ウィッチ閥の反対もあり、数を必要とする有事に限られたという。同時期にウィッチ用陸戦装甲機動車も提案された。これは威力偵察の際の移動手段も兼ねて直に採用され、16式機動戦闘車の設計が流用されたという。それを製造する事になったが、おいそれと製造ラインは用意できないため、従来兵器で戦うしかないのである。


「まさに内憂外患だな、扶桑は。連邦化の副作用というべきだろう。検閲もダメ、軍隊の徴兵も規制が入り、クーデターでまとめて左遷の嵐が吹き荒れる。見せしめに公開処刑なんてやったら、どうなる?」

「ウィッチを親たちが隠す様になるね。お上の玉音放送がされた場合は、田舎の農家が不敬罪を恐れて、集団就職させるようになるけど、質はたかが知れてる。志願も落ち込むだろうから、あたし達は遅かれ早かれ、元帥になるね。で、2000年代以降はどこに隠居する?」

「南洋の最高峰に村を作って、そこに隠棲するさ。いつまでも若いままでは、普通の生活は、人間の寿命を迎える2000年代以降は無理になるしな」

Gウィッチ達は自分達の世界の2000年代以降、南洋島の最高峰に隠居する事をこの時点で決めていた。ただし、軍の元帥にどこかで任ぜられるため、社会との繋がりは絶たれない。それが軍部のGウィッチへの償いであると言えよう。

「さて、あたしは出てくるよ。マルヨンを久しぶりに使ってくるさ」

「塗装はお前に合わせた。武器もマルヨン時代のものにしてある。サイドワインダーとガトリングだが」

「それだけありゃ、後は刀がありゃ十分さ」

この当時、超音速を実現した第二世代以降の宮藤理論式ストライカーは充分に『超兵器』であった。魔導誘導弾、M134を改良したミニガンを携行してマッハ2で飛行できる。45年の技術レベルでは『時速630キロを超えていれば、充分に高速機である』とされていたため、第一世代から第二世代への過渡期に開発され、技術的に『1.5世代』とも言われるF-104。設計上の理由で、低速での機動力に難があるが、高速での機動力は良い。ちなみに、カールスラントは将来(太平洋戦争中)、G型を採用し、扶桑仕様とは装備は違うのだが、扶桑仕様をカールスラント空軍カラーに塗り替えただけであるので、改良型のガトリングガンが装備に入っている。扶桑での空対空戦では標準的な装備である。ハルトマンはそれに刀を使うことで格闘戦に対応する。そのため、第二世代宮藤理論の実戦投入は厳密に言うと、ダイ・アナザー・デイが最初になる。(非公式であるが)






――1945年当時、ジェットトストライカーは黎明期にあった。Me262を皮切りに、He162などの先行配備段階にあったし、扶桑も『橘花』、『火龍』のテストを行っていた(後に中止)。それらはせいぜい亜音速の速度レベルであり、総合性能もレシプロ機と大差なかった。そこに当時に最新鋭機とされた『F-86』の次の世代のモノがポンと現れれば、隔絶した性能差が示される。F-86までは平均的なウィッチの場合、火器はM2重機関銃までで、高技能のウィッチでない限り、B-29などの相手は困難が伴った。その解決のため、以前より開発されていた魔導誘導弾の使用が検討されていた。だが、この当時に入手できた『ルールシュタール X-4』は技術的に未熟な代物であり、燃料も危険が伴うものだったので、未来の魔導誘導弾がタイムマシンを用いる形で持ち込まれ、装備の優遇が許可されていた64Fでのみ使用された。使用された魔導誘導弾はリベリオン合衆国製の『AIM-9』で、史実の戦闘機用と同じ『サイドワインダー』である。そのため、格納庫で整備を受けているF-104ストライカーの装備は空対空用で、扶桑空軍で用いられるものだ――

「よし、出撃する!」

戦場に出たハルトマンはF-104を以てして、カールスラント軍の通常ウィッチ部隊の援護を行う。カールスラント軍は扶桑と違い、サボタージュがそれほど起こらかったものの、ドイツ領邦連邦としての軍縮による外征部隊の削減の影響で、本国に送還された部隊が多く、この時点では、ジェットストライカーの実験部隊と、『44戦闘団』のみが活動していた。この時は前者の援護であったが、当時のジェットストライカーと異なる『小面積の台形の直線翼』(後にも先にも、F-104のみ)、当時、カールスラントでも実験的にしか用いられていないはずの魔導誘導弾よりも洗練された形状のものが装備され、さらに当時の最新火器のリボルバーカノンとも違うガトリング砲。インパクトは充分であった。

「さあて、こいつで蜂の巣になってもらうよ!」

魔力で弾速などが強化されたガトリングガンは数秒の発射だけで、重装甲で鳴らすP-47に致命傷を与え、空中爆発を起こさせる。ウィッチが重装甲の米軍機と対峙して困ることは火力不足で、いくら弾速と威力が強化されたと言っても、M2重機関銃ではP-47に致命傷は負わせられない。扶桑の手練のみが刀で斬れたが、負傷の危険が伴っていた。カールスラントの実験部隊では、50ミリ砲や30ミリ連装砲で対処していたが、弾薬の貴重性から、おいそれと使えるものではない。それに引き換え、7.62x51mm NATO弾を毎分3000発の発射速度で吐き出すガトリングガンの威力は、P-47を蜂の巣にして爆発させるに充分だった。

「さすがガトリングガン。ウィッチの魔力を使えば、P-47も目じゃないね」

このガトリングガンは弾薬の補給が効くため、太平洋戦争でも主力装備として使われるが、その先取りであった。また、ウィッチがストライカーユニットを履いた状態で使用する前提で改良されており、非現実的とさえ言われた携帯式が現実になった。弾薬供給方式も改良により、カートリッジ式になっている。リボルバーカノンより軽量で、嵩張らない事から、太平洋戦争以後は扶桑航空ウィッチの射撃メインウェポンに登りつめている。リボルバーカノンとの並行運用の形で用いられるのだが、実物が存在しない45年時点で『使うのは反則』であると言えよう。ウィッチの魔力で威力が強化された場合、当時に配備されていた『いかなる飛行機』も蜂の巣になる証明であった。

「さて、背中にマウントしてっと。第二世代のあたりはこの補助アームが便利なんだよな」

第三世代型はF91やV2アサルトなどの小型MSのような方式になるため、戦闘機の機首を模した武装保持安定用のユニットがある設計は第二世代特有のものである。機動性は落ちるものの、銃の安定が容易であり、かつての対物ライフルと似た感覚で操作できるため、狙撃手などは第二世代型を愛用した。第三世代はISに近くなり、操作感覚がそれまでとまったく異なるため、使用中の操作感覚が従来の延長線上にあるのは、この第二世代型が最後である。

「ハルプの連中、驚いて声も出ないか。まあ、950がせいぜいなところに、アフターバーナーついてる機種だもんな。ま、連中のために、P-51とかを落としてやるか」

F-104は航続距離は長くないが、発揮できる戦闘能力は旧来品を凌駕する。(同時期に開発されたF-100に戦闘爆撃機としての特性が強く、制空権確保を重視する扶桑の眼鏡には叶わず、扶桑は後に、104を選ぶのである)黒江達はハルトマンと対照的に、90年代以後の技術で改修された第三世代を好む。前史ベトナム戦争での苦闘の記憶からであろう。機動性と搭載量で第3世代型が優れているからだ。

「あらよっと!」

ハルトマンはガトリングガンを一秒づつ撃ち、10数秒ほど発射時間が経過すると、カートリッジを交換する。換えのカートリッジは通常、五個ほどである。弾薬使用量が多いため、折りたたみ式に改良されたリボルバーカノンを好む者も多い。一長一短である。ちなみに、F-100はゼロ距離発進の実験機でもあったので、一時は有力候補だったが、源田実の採択で没になったとのこと。(レーダー邀撃には、そんな緊急離陸は必要ないとのこと)

「あー、『ハルプ』へ。こちら、エーリカ・ハルトマン。戦闘機は引き受けたから、そっちはB公の迎撃に向かわれたし。以上!」

ハルトマンはこの時点の高速戦でF-104を凌駕するモノはストライカーでは存在しないことを知っている。シャーリーの加速もストライカーの強度とエンジンの限界に依存するため、F-104の世代以降のストライカーを使用しないかぎりは追いつけないので、この時点では紛れもなく、彼女が最速である。当時、F-104は自由リベリオンでプロトタイプがメタ情報をもとに制作されているものの、極秘事項であるため、カラーリングはカールスラントのものながら、リベリオンの特徴が出ているために、ハルプ内で『制空権確保に供する事が可能な未知の新型ジェットストライカーをエーリカ・ハルトマンが使っていた』と話題になったという。(当時、カールスラントはドイツの横槍にもめげず、EF128、P.212、Ta183、P.1078、P.1101などの次世代型の制作に入っていたが、その全てを凌駕していた)







――のび太達は敵の空挺部隊を虱潰しにしていった。武器が破損したシャイニングドリームはのび太から渡されていた『フレイムソード』を用い、軍用ナイフや銃剣で応戦してくる敵を斬りまくる。中島錦の剣術スキルが、ここで役にたったのである。

「ドリーム、援護するよ!前に僕が渡したあれを使うんだ!」

「うんっ!」

『フレイムソォォドッ!』

のび太の援護を受け、シャイニングドリームはGウィッチとしての空中元素固定能力で量子変換していたフレイムソードを召喚し、『どこかで見た』パースで構える。フレイムソードは『太陽の勇者ファ○バード』のグレート形態のそれの『本物』(ほんもの図鑑から取り出した)であり、ドリームが両腕で持ち、天に掲げると、刀身を炎が包み込み、周囲に鳳凰を象ったオーラが出現する。

『フレイムソード・チャァァァジッア――ップ!!』

その叫びと共に、フレイムソードを構えて突進する。相手の逃げ場をのび太が援護射撃で無くした上で肉迫したドリームは一気に相手を斬り裂いた。

『わたしだって、この体の元の持ち主の錦ちゃんから剣術を受け継いだんだもん。これくらいは、ね』

残心を心がけつつ、見得を切るお約束は忘れないドリーム。炎は本来、ルージュ/りんのアイデンティティなので、ちょっと後ろめたさがあるようだが、見得の切り方は合格点であった。

「よし、見得の切り方は合格点だよ。さすがはプリキュア」

「錦ちゃんの知識でやった事だし、自然にできただけだよ。いつか、錦ちゃんの知識だけじゃない強さを身につけたいの」

「その時になったら、また協力するさ」

「ありがとう」

のび太とのぞみ。ちょっといいムードの二人だが、そこで箒が割って入る。

「おほん…、二人共、まだ戦闘中だぞ。とは言うものの、私も『後輩』(黒江の弟子的意味で)の前だ。いいものを見せよう」

箒は伊達に『黄金聖闘士』へ前史よりも速い段階で叙任されたわけではないため、この時点では、シャイニングドリームとエンジェルピーチの両者の戦闘レベルを超え、一行で最高の戦闘能力を誇っている。その一端たる闘技を披露する。それは以前、シンフォギア世界に滞在した時の黒江も使用したものだった。

『インフィニティ・ブレイクッ!!』

右腕から無数の光の矢を螺旋状に放つこの技、広範囲を薙ぎ払う闘技であり、太陽神軍も一掃できる威力を誇る。光の矢が螺旋状に周囲に降り注ぎ、各所に潜む空挺部隊を地形を変えるほどの一撃で薙ぎ払った。

「インフィニティ・ブレイク、今回はもう覚えてたんですね」

「姉さんに脱走されないようにな。素で白銀級に強いし、姉さんが何か良からぬ事を考えると、先代に迷惑がかかる。私も黄金聖闘士に任ぜられた者、繋ぎとは言え、先代のアイオロスや次代の星矢に恥じないようにせねば、な」

星矢が然るべき年齢(聖戦時点では、星矢は13歳であったためと、サガの乱の教訓で、星矢達が黄金聖闘士にふさわしい精神的成長を遂げるまで待つ方針に変わった)まで成長し、叙任されるまでのつなぎ扱いだが、射手座の黄金聖衣を継いだ箒。つなぎであると自嘲するものの、しっかり歴代で使用されし闘技は習得していた。のび太にそう明言する。

「すっごーい!セブンセンシズを完全に扱える様になったら、あなたみたいに撃てるんですか?」

「この前の黒田先輩もそうだったけど、今回のは凄いですよー!」

「うお!?なんだなんだ、そんなに良かったか……?」

見栄えも良かったため、食いつくドリームとピーチ。困った顔の箒。言い出しっぺだが、予想より受けたらしい。視線でのび太に助けを求める箒だが、のび太は『勉強ですよ』と言わんばかりの表情と視線を返す。そんなのび太のいたずら心に、やれやれのため息のマリアとクリスだった。



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