外伝2『太平洋戦争編』
第三話


――太平洋戦争は主に緒戦はティターンズ側の優位に運んでいた。水雷戦隊がデモイン級重巡に封殺されたからだ。真っ向からの砲撃戦で扶桑型重巡にデモイン級を抑えられる力はなく、その弩級戦艦張りの耐弾性に物を言わせた突破力で、エアカバーをつけたはずの第三水雷戦隊を返り討ちにしてみせた。

――第三水雷戦隊 旗艦「川内」

「馬鹿な……酸素魚雷を三発食らって、何故平然としているのだ!?」

森友一少将はショックを受けて悲鳴を上げた。自慢の酸素魚雷を数発直撃しても傾斜さえせずに僚艦を屠っていくデモイン級に畏怖する。

「睦月、轟沈!!」

「撤退だ!このままでは全滅するぞ!」

これは正しい判断であった。友軍航空戦隊はVT信管の対空砲火の前にその稼働機のほぼ八割を喪失し、軽空母『龍驤』は大破、『瑞鳳』は機関故障で漂流している。水雷戦隊もほぼ八割を喪失し、無傷なのは旗艦の川内の他はその護衛艦のみという散々たる体たらくであった。この海戦により、南洋島周辺の制海権に綻びを見せ始めた扶桑皇国。商船護衛に新型艦を回すなどの努力を見せたものの、1950年代初頭相当の軍備へ更新されていたリベリオン製兵器の前に、商船隊は消耗していった。数週間でおよそ30隻が物資ごと海の藻屑となり、本土への資源供給に支障が出始めていた。統合参謀本部ではこの対策に追われ、地球連邦に新たに『おやしお』(初代)相当の潜水艦の製造(扶桑は伊400潜実用化後は潜水空母の建造に傾倒しており、攻撃型潜水艦はおざなりとなっていた)を依頼、旧型の海大型を代替する潜水艦として、20隻前後が1948年までに就役し、シーレーン防衛に投入された。同時にウィッチを陸空問わず統合運用するための特殊部隊の設立も決議され、1948年に結実する。

――同日 空母「瑞鶴」

「第三水雷戦隊がやられたか。戦前からある船の消耗率が高いな、黒江」

「ま、年式の違いだよ。第三水雷戦隊の船は多くが大正期から昭和初期の建造で、装備面で老朽化が目立ち始めてた。対する向こうはここ数年以内に造られた新鋭艦だ。そもそもの力が違うんだよ、力が。おまけにデモイン級は弩級戦艦と同等の装甲と、高度なダメコン技術を持つんだ。高雄だろうが、妙高だろうが敵じゃない」

「超甲巡を投入するのは、そのためか?」

「そうだ。あれはそのために調達された軍艦だからな。欺瞞も兼ねてデザインは大和型そのままにしたっていうし」

超甲巡は元々、金剛型戦艦の夜戦支援任務の代替艦として計画されたが、空母の台頭で中断されていた。だが、戦艦のプラットフォームが高額な大和型に統一された、甲巡の陳腐化と老朽化という問題に対応すべく計画が復活し、実質的に安価な小型戦艦建造ほどの費用で4隻の調達が叶ったのだ。デザインは大和型戦艦を小型化させたものが採用され、欺瞞性にも優れていた。(大和型の正確な居場所を欺瞞できるため)乗員は比叡や霧島の元乗員が割り振られ、練度は高い部位に入る。ただしかなりオートマチック化が進められているため、元乗員の全てが同じ艦に割り振られているとは限らない。霧島の元乗員は半数ずつが2隻に割り振られて任務についたように、オートマチック化で必要な人数が減ったのだ。

「欺瞞か……なんかこう個性が無くなってないか?」

「しゃーない。軍艦や戦闘機、戦車とかの通常兵器は機能を突き詰めていくと似たようなデザインになるんだ。イージス艦なんて、旧西側諸国のモノは米軍のアーレイ・バーク級と同じデザインのが多かったし、戦闘機じゃラファールとユーロファイターがまちがいさがしレベルだった。MSとかなんて見分けつきやすいほうだぞ」

「確かに。あれならわかりやすいしな。ただ……」

「ただ?」

「ジム系のバリエーション多すぎないか!?」

「ああ、それか。ジム系なんて覚えやすい方だぞ?ザク系なんて、専用機のバリエーション含めたら目が回るくらいあるんだぞ?私だって、未だに覚えきれん。高機動型だとか、S型なんて言われてもわかんねーー!」

ジムとザクの系譜はその子孫も含めれば膨大無比な数が存在する。それは他世界の殆どの人間が同意するほどに把握しきれない数が存在する。バルキリーと違い、マイナーチェンジ型が星の数ほどあるMSは、現場で働く人間ですら把握しきれていない。なので、大まかに特徴を指して分類されるようになった。狙撃手を思わせる武器を持つジムは『スナイパー』、後期改良型ジムには『コマンド』、第二期生産ロット機を『ジム改』と言うようになった。戦後に固有名を与えられた機種も存在するので、その辺がややこしいのだ。

「ガンダムはワンオフだから、頑張れば覚えられる。問題は量産機だ、あれは多すぎる」

「うむ。どれがどれだがなぁ」

「大まかな特徴がある一年戦争ん時のはともかく、今のはギラ・ドーガにしても、ジェガンにしても、武装違いで対応できるようになってるからなぁ」

坂本と黒江は兵器の見分け方が難しくなっていく風潮に苦戦しているのが窺えた。スーパーロボットには特徴があるので覚えやすいが、リアルロボットは武装や形状違いのバリエーションが多すぎるという愚痴も含まれていた。

「そういえば思い出したんだが、お前、若い頃に勇者エクスカ○ザーの真似をした事あったな?」

「ああ、あれか。ありゃその場のノリでやっちまったんだが、覚えてたのかよ」

「あれだけド派手にやりゃ、忘れられんさ。今なら種がわかるが、あの時は何がなんだか分からんかったし」

「当然だ。未来世界で過ごしてる時の自我が宿ってる状態だったからな。お前達が分からんかったのは無理もねー話だ。けっこう改変したからな、あの時。堀井大将の運命だろ、ガランド閣下が事変を最後まで見届けたとか……」

「アレはお前らのせいだったのか?」

「結果的にはな。制空権が抑えられたから帰国便を手配不能になって、船で行くのも危険だからって事で帰国が先延ばしされたんだよ。私らが奮戦したら、奴らは別ルートを抑えやがったからな」

黒江たちが色々動いたために歴史が変化し、アドルフィーネ・ガランドが途中で帰国不能になり(ウラジオからのルートの制空権を握られたため)、最後まで扶桑海事変を見届けた事がここで示唆された。そして、黒江がその場のノリで再現した勇者エクスカ○ザーのとある剣技の元ネタを理解するのに7年がかかった事を話題にする坂本。黒江は大笑しつつ、『事変』の種明かしをする。

「お前の今の態度の謎が未来世界にあるということも聞いてきたぞ。随分影響されたんだな?」

「おう。兜のヤローが江戸っ子でな。自然と影響されたんだよ。おかげで語尾が変化しちまった。前は女性言葉も使ってたが、今は使わなくなった」

そう。黒江の口調が現在の江戸っ子じみたものへ変化したのには、兜甲児が関わっていたのである。事変時に武子が感づく原因も、この語尾の違いであったのだ(『〜だぜと『〜だわ』など。)

「そういうことか。しかしお前がアニメを見るとはな。意外だぞ、釣り以外興味無いのかと……」

「お前なぁ……。こう見えても映画とか見に行くんだぞ。未来世界で『ローマの休日』のリバイバル公開されるって言うから、前売り券買ったところだったんだが……」

「あれか。あれはミーナとかが夢中になってたからな。まさか後の世の映画を見れるとは思わんかったが」

「結構幸運なんだぞ、あれ。本来なら、私らがオバハンや婆さんになってる年代の映画も多かったし」

黒江はこの時代には『公開もされていない』映画のタイトルを言うが、坂本もしっかりついていった。ロマーニャ時代、金曜日には映画の上映会が行われていたからだ。その中には『1946年以降の公開となる映画』も当然ながら含まれており、ローマの休日もその一つである。上映を見る権利は歴史の保全性の都合上、限られた人間しか得られなかったが、扶桑国内のアニメータが最盛期ハリウッド映画に圧倒されたのをきっかけとする運動で、国家規模の援助を得て、史実後世のアニメを研究した結果、史実より『鉄腕ア○ム』のTV放映などが前倒しされ、1950年代後半に扶桑アニメを隆盛へ導く事になる。

「確かに。また見れるか?」

「戦争ったて、いつも戦いが起きるわけでも無いからな。機会さえあればまたやれるさ。今はその時期じゃないがな」

――その通りである。戦争と言っても常に激戦状態ではない。小康状態である時も多い。そのような時なら映画も見れる暇があるだろう。坂本もなんだかんだで映画を楽しみにしていたのが窺える。

(そいや事変の時に映画連れてってやったな。チャンバラ映画だったけど、夢中になってたっけ)

坂本は子供時代はチャンバラ映画に夢中であった。休暇に連れて行ってやり、大喜びされたのを思い出す。坂本との関係はその出来事がきっかけに『始まった』。それを思うと不思議なものだと実感する黒江であった。








――その数日後、黒江はレーバテインの搬入をチェックしていた。ISが個人専用機の体裁が強い兵器なのに対し、レーバテインは装備さえ変えれば『誰でも一定の戦力となり得る』。その点は高く評価され、実戦テストの名目で501時代から継続してテストを続けられている。黒江は自分用の武器をこの頃には更に新造してもらっており、『斬艦刀』を装備し、それに合わせて各スラスター推力を強化した仕様にマイナーチェンジしていたりする。

「よーし、格納庫に運んでおけ。装着施設も機材が友軍から搬入されるはずだ」

「ハッ」

先任中隊長の任に就いている黒江は部隊長である武子の負担を軽減すべく、上層部との折衝、銀河連邦警察や地球連邦軍とのパイプ構築などに奔走していた。上層部が扶桑海事変時に自分たちが勢力構築に力を貸した改革派閥へ入れ替わった事もあり、補給物資は潤沢に送られてくる。また、地球連邦軍からも『ロンド・ベル所属』の利点を活かし、基地構築を援助してくれているし、銀河連邦警察はコム長官直々に情報を提供してくれるという状況になった。これは三大宇宙刑事などのツテである。


「あなた、諸方面にコネあるのね?官僚になっても出世できたわよ」

「だろーな。まっ、色々苦労したしな。おかげでうちの機材は最新型にいち早く更新してある。未来兵器も取り揃えてあるぞ」

「若い連中は戸惑ってるわよ?ジェット機とははアビオニクスとか全然違うし」

「若いうちに覚えたほうが飲み込みは早い。私も若返ったおかげで、存外早くPCとかの知識覚えられたからな」

「でしょうね。私も同じような体験したし。整備兵等に時間整備について講義してもらえる?」

「んじゃ、今度の木曜と金曜に47戦隊の刈谷大尉を呼んどくから、その時にする。整備兵の技量維持は重要だからな」

黒江が言った『刈谷大尉』とは、扶桑軍有数の整備手腕を誇る技術士官である。誉エンジンが流通していた一時期、疾風の誉を100%近い稼働率を維持させた事で知られ、黒江もロンド・ベル行きが決定する数日前に、誉の整備マニュアルを作ってもらい、ロンド・ベルで活用した(それでも製造精度の低い個体が当たった時はどうにもならなかったが)縁がある。そのために面識があるのだ。刈谷大尉自身も整備兵技量平均値のムラを問題視しており、要請があればどこへも出張し、講義を行い、時たま自らへレポートを提出させるように通達を出していた。64戦隊は旧343空と陸軍64戦隊という精鋭部隊が母体なので、整備員の技量は比較的高かったが、全くの新規入隊の者も着任するので、その教育の質如何が整備員の質の維持にかかっている。黒江は考えられる最良の人材を呼び寄せる事で、整備員の意識を改革させんとしていた。(他には液冷エンジンの神様として知られる坂井少尉がいる)

「航空審査部時代のツテね?他の部隊が聞いたら文句言うわよ?」

「うちは源田のオヤジ肝いりの最精鋭ってプロパガンダされてるんだ。これくらいやってもバチ当たらねーよ。」

「その分忙しいけど。あ、コーヒー飲む?」

「カフェオレで頼む。どうもブラックコーヒーは苦くて」

「本当、変わってないわね」

黒江はブラックコーヒーは飲めなくはないが、苦手な部位で、未来世界ではカフェオレやコーヒー牛乳を愛飲している。歴史改変中に武子はそれを知り、(黒江が別部隊に配属される事が無くなり、第一戦隊がそのまま64戦隊へ移行したために起こった出来事)黒江が現在の記憶と人格を取り戻すであろう年までは、カフェオレを送るなどするのを控えていた(黒江は未来世界行きの前後では実質的に別人と言えるほどの変化がある)。

「ああ。だけど、今のほうが相手に戸惑られる事が多いんだぜ?欧州戦線時代の戦友とか先輩とかには『お前ってそんなキャラか?』ってネタにされてんだぞ?」

「でしょうね。私だって、あの時に気づくきっかけになったのって、あなたの口調が違ってたからだもの。ほら、あの時に『バーロー。お硬いのは私の性分じゃねーんだよ』って言ったじゃない?私が違和感を感じ始めたのはそれからよ」

「あ〜あそこからか。お前、よく観察してんなぁ」

――彼女らは語り合う。かつての思い出を。それは若き日の一コマ。今となっては話の種になるような事もたくさんある。そして、扶桑海事変の真相を知る数少ない人間として。






――軍事的には、史実での信濃の役割はより巨大な龍鶴が吸収した形となった。非国産空母である事実は伏せられ、大々的なプロパガンダが銘打たれ、ジェット機の離着艦もデモンストレーション代わりに行われ、国内向けプロパガンダに活用されていた。同年に公開された国内向けプロパガンダ映画『音速荒鷲隊』では、最新鋭機である『F8Uクルセイダー』が離着艦する様子が写されており、同空母がこの世界では空母にならなかった信濃の役割を担った事が間接的に示され、映画は大ヒットを記録したという。





――翌1947年、軍隊の制度が完全に志願制(ウィッチは志願制だが、男は徴兵制が取られていた)となり、軍隊に入る事がなくなったスポーツ選手は多岐にわたった。例えば、悲劇の豪速球投手として、後世に名を残した沢村栄治は幸いにも史実と異なって軍隊に入隊していなかった。これ幸いとばかりに、地球連邦政府は政治的圧力をかけ、『スポーツ選手やスター俳優、歌手は原則、徴兵免除』を1944年に志願制に移行させるまでのボーダラインとして成立させ、スポーツ選手と芸能関係者を徹底して保護した。これらは役人の手違いで徴兵され、戦死した芸能関係者が存在した逸話に基づくものだ(ちなみにその逸話の当事者であった役人は、見せしめに懲戒免職処分に処され、失意の後半生を送ったという)。そのため、戦前の人材を温存できた全スポーツ界は、史実より速く隆盛していく。野球は沢村栄治や、水原茂、川上哲治、千葉茂という名選手が活躍し、後に世代交代で現れる、『V9世代』と併せ、実に数十年の長きに渡って巨○軍は野球界の絶対王者として君臨していった他、サッカーも職業化が成され、準備期間と併せ、Jリーグに当たる『Hリーグ』が1949年に開幕した。1954年には苦労が実り、ワールドカップに初出場し、未来世界日本人を涙させたという。本土でのスポーツ界の隆盛は軍人には関係はなく、太平洋戦争の戦局は押され気味であった。


――1947年 1月中旬

「南洋島の東に上陸しようっていうんすか!?本当ですか、神さん!」

「ああ。俺は今、ハワイのパールハーバーに潜入しているんだが、本格攻勢を仕掛けるつもりだ。敵艦隊の陣容だが、フランス系と思しき戦艦がモンタナ級などに混じっている。主砲は変えられてるが、登楼のデザインで判別できた。多分、フランス最強のアルザス級だ」

「何だって!?アルザス級!?」

「そうだ。あれを送り込まれたらまずい。カタログスペックで、『舷側装甲393mmの貫通を可能』とされているはずだ。大和型以上の軍艦でなければ耐えられんはずだ」

黒江は思わず頭を抱える。ガリア製新戦艦の主砲は大和型でなければ耐えること叶わずなほどの破壊力だ。神敬介から知らされた『アルザス級戦艦』の存在。艦砲射撃されれば街の一個は確実に地図から消える。かと言って、防衛砲台の多くは旧式戦艦から外した砲塔の流用であり、戦力的には微妙だ。

「参ったな……陸上砲台だって、多くは旧式の戦艦主砲の流用だし、最新型の大和型流用の45口径46cm砲台は本土にしか配置されてないんす。南洋島にあるのはせいぜい長門や紀伊の残存主砲塔の流用型だし……」

「今から設営するのでは、到底間に合わん。犠牲は覚悟しなければならないぞ。俺が言うのもアレだが、防衛戦は犠牲がつきものだ」

「ええ。なんか硫黄島な気分っす」

「あれよりマシな状況なのが救いだよ。一時的にしろ東側か北側の一部は占領されるのは覚悟しておいたほうがいい」

「果たして陸軍がそれで戦前の幻想から完全に目覚めるかどうか……」

「三個師団の損失は確実だろう。向こうにはM14やM48パットンが配備されだしている。そちらはまだ戦後型装備は充分でないだろうし、緒戦は不利になるだろう。ミッドチルダの動乱で示された『機甲師団の有用性』に懐疑的な者も多いだろうし」

「まだ犠牲が足りないと?」

「昔から日本の軍隊は膨大な犠牲が出ない限り考えを改めなかった経緯があるんだ。ミッドウェーや長篠の戦いがそれを証明している」


敬介は日本の軍隊の性質から、さらなる犠牲が生じない限り、扶桑は完全に戦後型軍隊へ脱皮出来ないと言う。外部からこう評価される辺り、後世日本人による旧軍隊(大日本帝国陸海軍)の評価が辛辣であるのを実感する黒江。史実太平洋戦争が与えた日本人のトラウマはどのようなものだったのか。それを理解できたような気がした。






――その言の通り、1947年1月21日。遂に南洋島への上陸作戦が開始された。扶桑軍は敵の猛烈な艦砲射撃と火力の前に粉砕され、東海岸に橋頭堡を築かれてしまった。その際に発生した戦死者はなんと3万人を超えた。司令官による水際作戦が裏目に出た結果となり、ティターンズ側もあまりの大差による勝利に、『これは戦闘ではない、殺戮だ』との言を残した。これに統合参謀本部は震撼した。3万人といえば、一個軍団がごっそり消えたのと同義である。国民からは『腑抜け陸軍』、『戦死者続出の無能!』と罵られ、陸軍高官の数人が責任を負わされ、更迭される事態となった。

――東海岸 ティターンズ前線陣地

「ここまで差が出るとはな。いささかやり過ぎたのではないかね、山上」

「獅子はうさぎを追う時も全力だ。たとえ敵が三八式歩兵銃と九九式軽機関銃しか持ってなかろうと、全力で狩る。それだけだ」

山上と呼ばれた、23世紀では珍しい純粋な日本人のティターンズ高級将校は相手方を一方的に数万人戦死させても悪びれた様子を見せずに平然としていた。地球至上主義者であった彼は、たとえ相手が同じアースノイドであろうとも、エゥーゴの協力者と見れば情け容赦無く殺戮を行う、言わば『ティターンズきっての殺戮嗜好な狂人』である。アレクセイにとっては『何も考えずに敵を倒す』という側面から重宝されているが、『トカゲの尻尾切り』の要領でいつでも切り捨られるに過ぎない位置づけであった。

「全軍に告げる。勝てば官軍だ、女子供、老人であっても情け容赦するな。全て倒せ、薙ぎ払え。勝てば罪は免除される!」

と、司令部からこのようなスターリン張りの残虐な指令を出し、その傍らで捕虜となった陸戦ウィッチに対し、すっ裸にした上で、プロレスラー出身である故の怪力で鞭を振るい、拷問する。その様子に、監視要員を兼ねている副官はこう日誌に書き残した。『あのサドで、ゴリラマッチョ野郎の残虐嗜好は目に余る』と。結果、東海岸の最東端に位置する『明応市』は艦砲射撃によって、全ての建物を破壊され、更に生き残った住人の一切を一箇所に集めた上で、燃料気化爆弾で虐殺するという凶行により全滅。飛行64戦隊が隣接した市に駆けつけた時には、その跡が市境から確認できるほどの惨状が確認できた。

「ひでぇ……綺麗さっぱり消えちまってる。艦砲射撃か?」

「中佐、現地に足を踏み入れた友軍の報告によると、敵は住人を一掃するために燃料気化爆弾をつかったと」

「燃料気化爆弾だって!?しかしあれの殺傷半径はせいぜい300mのはず。こんな状況にはできんはずだが」

「いえ……敵はどうやら艦砲射撃から生き延びた住人を一箇所に集めた上で燃料気化爆弾を使用した模様です。広場跡に夥しい数の死体が……」

窒息したような様相の死体が優に数万体放置されているのを報告する部下に、黒江は思わず激昂し、こう吐き捨てた。

「……ド外道が!奴ら、今度会ったら生かして帰さねえ!!」

物事に大らかな彼女をして激昂させるほど、彼らの行為がえげつない行為であったのが分かる一コマである。ティターンズはこの行為を見せしめとしてプロパガンダし、扶桑皇国の防備の不備を突く内容で新聞にリークした。リベリオン国内では、南部を中心に有色人種への差別意識から反響を呼び、ティターンズに志願する白人青年が急増したという。一方の扶桑皇国では、急遽、本土で錬成中の優良装備部隊が東部防衛強化を名目に配置された。同時に地球連邦軍もコスモタイガーを3個航空大隊で配置させ、ティターンズの暴挙阻止に動く。次なる舞台は東部第二の都市「享保市」。そこでこの年最初の激戦が起こるのである。1月26日。再編成を終えたティターンズはリベリオン海兵隊ウィッチなどを先頭に立てて、侵攻を開始。対する扶桑は市街地に防衛線を構築。ここに、1947年最初の大規模会戦が生起した。

――前線飛行場

「よし、行くぞ!」

前線飛行場にジェットエンジン特有の「キーーーン」という甲高い音が響く。レーバテインによる少数精鋭の編成による航空小隊である。装着がアイ○ンマンじみた施設装着式であるのが難点であるが、実戦ではそれほど問題にはされず、装着前にウィッチでなくなった者でも、ある程度の魔力を湯治の要領で回復させる効果がある事から、エクスウィッチに人気が生じ、飛行64戦隊でも、坂本美緒に一機が配備されていた。

「こいつのおかげで17歳時の魔力値に戻ったが……いったいどういう技術を使っているんだ?」

「それは連邦軍でもよくわからん。どこからどうしてこの技術が与えられたのかは極秘事項で、いまいちはぐらかれている。まあ、動作するだけマシってものさ」

「そ、そうか。しかしお前のについてる刀、特注なのか?」

「そうだ。斬艦刀。戦艦を叩き斬るために造らせた特注品だ。大昔の斬馬刀に着想を得て作らせた」

……と、もっともらしい理由を述べるが、当たらずも遠からずであった。実際はとあるゲームに登場したスーパーロボットの武装を、『本当に作ってみました』なノリで開発チームが作ったというのが本当の所。威力は液体金属を用いた事もあり、この世で最も硬い超合金であるニューZαとゴッドZ以外の金属であれば、問答無用でたたっ斬れる。黒江は大剣状態と日本刀形態を使い分けており、主に大型ネウロイやMSを斬るために使用している。

「そうか。実のところ、私は数年前に自分で刀を作ろうと思った事があるんだ。北郷先生に止められたんだが、お前のを見てると、私も特注してみたくなる」

「ああ、扶桑に伝わる例のアレか……。あれは止めとけ。戦国時代からの言い伝えで、何人ものウィッチがそれで魔力を失ったって言うからな」

「ああ。しかし、魔力と引き換えに放つ斬撃で人々を救った伝説も多い。お前が若い頃に見せてくれた『サンダーフラッシュ』に似てるよ」

「勇者エ○スカイザー見たか?」

「この間、加藤さんを訪ねて、向こうの世界に行った時にレンタルビデオ店で借りたよ。2種類あったんだな」

「ああ。グレートとキングのがあるが、前者は突進するから、後者をやった。あの時はISを見せるわけにもいかなかったしな」

「武器だけ召喚ってできるのか?」

「可能だ。箒や鈴達もやってるしな」

「そうなのか。お、レーダーに反応だぞ」

「敵はなんだ?」

「熱源と速度からして、F9Fだ」

「速度からすると、クーガーのほうだな。一部はジェット機に替えてきたか。面白い!各機、敵を落とすぞ!相手は旋回半径が大きい。そこを突いて翻弄しろ!」

「了解!」

――ここに、攻防戦の火蓋は切って落とされた。新生・飛行64戦隊がここで初めてティターンズ側に認知されたのであった。



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