外伝その316『空母機動部隊とは』


――結局、扶桑は空母機動部隊のシェイプアップと称した空母保有数の減少策で雲龍型航空母艦のすべての戦力化は諦めた。その埋め合わせに艦上機の近代化は容認されたため、近代空母に対応する第二世代理論型以降のストライカーのみが空母に積まれた。これは呪術処理が飛行甲板にされなくなった影響もあり、ウィッチ運用は強襲揚陸艦からなされるというドクトリンとなった。温存策が取られる空母の代わりに、『弾除けの砲台』として前面に置かれた戦艦が戦果を挙げるという逆転現象が発生。皮肉な事に、日本では主力装備と見做されていなかったはずの戦艦が『最も近代化されている』実状が示された。そのため、日本の一部勢力が空母の近代化に躍起になったというのが本当のところであり、既存空母の改装よりも新造を選んだ点では批判もあったが、ジェット機を艦上機にするには、既存の日本型空母では不都合が大きいのは、事実であった。また、空母機動部隊の運用経費が莫大になるため、投入にも二の足を踏むという、戦艦の維持費が高額化した『1945年』からすれば、皮肉な状況になった。ただし、空母飛行甲板の魔術加工は理論が進歩すると意味が薄れ、電磁カタパルトによる物理的射出のほうが効果が出るようになったのもある――








――扶桑皇国海軍は烈風、紫電改、陣風(紫電改後継機)を当面の主力としつつ、ジェット機の先行配備を進めていた。陣風は25ミリ機銃四門か、20ミリ六門の重武装であり、日本系戦闘機では史上空前の火力であった。今すぐにジェット機に統一できる状況でもない上、既に実働半年の紫電改の陳腐化が心配されたため、陣風が開発された。陣風は全てでP-51Hに対抗可能な水準の性能であり、マスタングを超えることに固執する日本の執念と、国産機を馬鹿にされた扶桑の意地が生み出した『最強のレシプロ戦闘機』であった――




このように、陣風はレシプロ最高峰レベルの制空戦闘機であるが、あくまでレシプロであるため、レシプロ戦闘機の新規開発に疑義が持たれていた。だが、レシプロ戦闘機が主力の頃の戦争では、最速で数ヶ月くらいでモデルチェンジが行われる事実がある。当時、実働一年近い紫電改や、基礎設計が零戦の延長線でしかない烈風の陳腐化が懸念されたため、陣風は生まれた。表向きは凍結された計画の再開という形で。レシプロ戦闘機としては極限の性能を備えていた事から、ストライカーへのスピンオフも期待されていたが、日本側の予算の都合で先送り(太平洋戦線には投入されたので、防衛予算が単純に無かった)になった。(一説によれば、ストライカーの性能が上がっても、武器がウィッチ個人の好みに左右される事を嫌がったとも)ダイ・アナザー・デイにおける連合軍の兵器は史実の米国、英国製兵器がドイツ領邦連邦の派兵と支援の縮小による兵站の都合もあって、瞬く間に増加。戦車はM48パットン、センチュリオン、コンカラーが主力になり、そこに自衛隊の歴代戦闘車両が混ざる状況であった。兵器の更新はルシタニア侵攻に備え、急ピッチで行われ始め、突撃銃(アサルトライフル、バトルライフルなど)の配備も扶桑において、急速に進んだ。『ハードウェア』の更新は順調ではあるが、肝心の『ソフトウェア』の更新はサボタージュや、新兵器のテストを戦線で行うのに反対する意見(マルセイユがその筆頭格だが、実戦テストもしていないで投入されたνガンダムが大戦果を挙げた事例から、以前ほどは強く言えなくなっている)から、予定より遅延している。しかし、扶桑の新兵器実験部隊の航空部門は昭和天皇の意向で廃止になったため、熟練者が集中する64が必然的に引き受ける事になった。



――空母『龍鶴』――

「扶桑はなぜ、新兵器実験部隊を廃した?意味がわからん」

愚痴るマルセイユ。42年前後に必ず、新兵器に由来する事故を経験するからか、扶桑が新兵器実験部隊を廃したのかがわからないようだ。

「まあ、愚痴らない。お上の意向なんだ。先輩の事でご立腹なんだ。だから、処罰が下る前に部隊を無くして、有耶無耶にするつもりなんだ。陸海を問わずな」

黒田はアフリカでマルセイユの面倒を見ていた時期があるため、目上として接していた。圭子の護衛として縦横無尽に暴れたので、流石のマルセイユも畏れ畏まる。

「私の事故で、危険性があるのはわかるだろう?なのに、工場から運ばれたばかりの新兵器を使え?嫌だね」

「仕方ないだろ、既存の機体は補給が難しくなったし、扶桑から供給するしか無いから、日本受けしないメッサーより、フォッケのほうが供給台数多くなったし、日本は基本的に空冷王国だ。メッサーはライセンス契約がこじれた影響で、外貨獲得手段から滑り落ちたからな」

メッサーシュミットはマルセイユが好んでいたが、日本連邦とドイツ領邦連邦との間で訴訟問題に発展した事もあり、外貨獲得手段から滑り落ちた。その影響もあり、既存機のパーツ供給も覚束なくなったため、五式戦の設計参考にされていたフォッケウルフ(フラックウルフから改名)が扶桑に工場を立てていたために、メッサーシュミットの代わりに、パーツ供給を担うようになった。その関係で、マルセイユはフォッケウルフを使用するしか選択肢が無くなったのである。カールスラントはこの時期以後、米軍機のライセンス契約で航空産業を維持する方向になっていくため、悲観した技術者の流出が始まってしまう。それと同時に、扶桑もライセンス契約の増加を危惧する技術者達がクーデターに加担するため、扶桑は震電系統の血脈を維持する事になる。(国産機の血脈を維持するための開発)

「なぜ揉めた?」

「渡したシュワルベの設計が当時の最新の設計じゃなくて、古いものだった上に、金をぼったくってたんだよ。結局、うちらがアメリカに泣きついて、86からトムキャット世代までのライセンスをもらったから、一夜にしてカールスラントの技術は骨董品さ。それでドイツの介入で、ライセンスをドイツ側の現地法人が格安で与える事になったから、外貨獲得はおじゃん。液冷エンジン自体、日本には受けないからな。おまけに莫大な賠償金さ」

「それでデーニッツが潜水艦に傾倒したのか?」

「そうさ。賠償金に回されて、とても、戦艦や空母を造るだけの予算はないし、ドックもない。水上艦はバダンの鹵獲品を直して使うほうが安上がりだしな」

「デーニッツが気にしていたぞ?日本に『田舎海軍』って見下されると」

「しかたがない。ドイツが世界二位だった時代は遠い昔のことだし、この頃には新古戦艦のビスマルク級とUボートしかないからな。おまけに北海とかを想定してる国の海軍と、太平洋の大海原に漕ぎ出す事を前提にしてる海軍じゃ、出来が違う」

マルセイユは、扶桑が世界三大海軍として、繁栄を謳歌する現況での見解を垣間見た。同時に、第一次世界大戦で多数の艦艇を失ったがために衰退した帝国海軍(扶桑は『皇国海軍』であるが、義勇兵らにより帝国海軍とも呼称される。この場合はカールスラント海軍を指す)の惨状に初めて同情した。

「出来が違う、か。30年前はこちらのほうが規模が上だったのにな。それに、なぜ艦隊の総司令が前線に出るんだ?」

「連合艦隊司令長官は前線で戦えというのは、日本の圧力だよ。野党の議員には罵倒されるし、年寄りには卵が投げつけられるからな。東郷平八郎元帥の時代じゃあるまいし。だけど、義勇兵にも受けが良いから、前線に連合艦隊司令長官がいるのは都合がいいんだ。せっかく、陸に司令部作ったのに、結局、前線に出ることになったんだ」

黒田は、日本の一般層と政治の圧力で結局は連合艦隊司令長官が直々に前線で指揮を取る事になったのを『政治』だと、マルセイユに言った。日本にとっての戦争のイメージは日露戦争であれば良い方、悪ければ戦国時代である。何かと難癖をつけられるため、結局は連合艦隊司令長官は前線で指揮を取る事になった。(日吉の防空壕に籠もるんだろ!という批判を躱すためでもあり、一種のパフォーマンスでもあった)

「やれやれ。政治か」

「軍を押さえ込めば、好き勝手させなくできるって奴だよ。民主国家の軍隊ってのは、国民に受けを良くしないと、予算ももらえないものだ。だから、64は曲技飛行隊も兼ねるんだ」

民主国家の軍隊は基本的に戦時であろうと、予算に縛られる。そのため、64に人材と機材を最優先で供給する理由付けに、一定の説得力があった。501が事実上、64の一部と化したのは、日本連邦が連合軍での発言力を増したからで、それにキングス・ユニオンが乗っかる形である。カールスラントはドイツ主導の軍縮で発言力を失いつつあるため、事実上、人材の供給所と化している。

「扶桑は曲技飛行隊でも欲しがってるかと思ったよ。あんたらの代は特別に強かったと言うが、まさか第7感すら超えてるとはな」

「嫉妬か?」

「そういうわけじゃない。カールスラントの連中は自分達が世界一と思ってる。あんたらに出会うまでは、いや、あんたらの事を知るまでは、私もそうだった、思い出すまでは。魔境に入り込んだ気分だよ…」

「酒か。もう酔えないだろ?」

「気分の問題だ。それに、今はスコアの精査で肩身の狭い思いをしているんだ。飲まんとやってられんさ」

マルセイユはカールスラント最高レベルの撃墜王であるという自負を持つ。スコアの大半がアフリカ戦線であった幸運で、再精査の影響はそれほどではないが、原隊の誇りが傷つけられた気がしてならず、太平洋戦線に参陣する決意も固めている。それを示唆しつつ、酒を飲む。Gウィッチ化で深くは酔えなくなったのを承知で飲んでおり、周囲へのポーズ付けも兼ねていた。

「酒がジュース代わりとか洒落にならんよ。気分だけでも酔って置くんだよ。それに私は飲まんと、逆に体調を心配されるからな。それにしても、ずいぶんと様変わりしたものだ」

「ジェット機の時代の空母は大きいからな。艦首と艦尾はピッチングで揺れるが、真ん中は安定してるからな。宇宙空母はその心配はないけど」

「つい、3年前は1000馬力級が普及途上だったというのに、今では2000馬力どころか、ジェット機だ。デーニッツが潜水艦に傾倒するはずだ」

「空母機動部隊は戦艦以上の金食い虫だ。21世紀には、世界三大海軍でやっとこさくらいの経費がかかるようになった。だから、デーニッツは取得を諦めたんだよ。パイロットの供給や整備士の育成も含めると、10年かかっても整備が終わんなくなったしな」

黒田は、目下には黒江に近い粗野な口調になる。扶桑のウィッチの間では、『彼女が敬語を使うかで、自分の立ち位置がわかる』とされている。マルセイユは部下であるが、あまり敬語を用いない質であるので、黒田相手にはタメ口である。

「先回りのしすぎじゃないか?この当時の基礎技術じゃ、F-84やF-86が安定して量産できる限度なんだぞ」

「日本は敵の生産力を恐れてるんだよ。だが、ジェット機はレシプロ戦闘機と格闘ができるほどの機動力がある機種は初期は限られてるから、普及は簡単にはいかない。うちのF-8だって、ドッグファイト可能だからってんで、技官連中を説得してこぎつけたんだからな。それと、世代の優位を確保しておきたいのさ。鹵獲されて解析されるのを異常に恐れてるが、基礎技術が遅れてる世界じゃ、軸流式ターボジェットエンジンの安定供給の実現にも、年単位は必要だろうさ」

実際、ティターンズもリベリオンに残されたメーカー技術者が二流から三流の人材である事を嘆きつつ、技術指導でジェット機の生産にはこぎつけた。しかし、戦線の将兵は手慣れたピストンエンジン搭載の従来モデルを要望し、その兼ね合いで『P-80』の普及にさえ四苦八苦している有様である。扶桑は未来世界からの情報流入で『技術面を克服して量産にさえ至れば、レシプロエンジンよりも安価かつ量産が容易なジェットエンジンこそ、爆撃/攻撃機に搭載するエンジンに最適である』とする旧来の認識を捨て去り、ジェット機を次期主力機に選定している。カールスラントもジェット機を戦闘機に転用したのは、『爆撃機よりも、戦闘機に向いていることを経験則で学んだ』からであるが、あくまで要撃機扱いであり、扶桑のように、制空戦闘機までを全面的に切り替える意図は無かった。この事から、ジェット機に戦闘目的の飛行機を統一しようとする動きは、各国から奇異に見られていた。

「日本は早期警戒管制機や空中給油機、練習機とかの裏方以外をジェット機にしたいそうだが、当分はかかるだろう。空対艦ミサイルの普及、空中給油技術の普及とかの兼ね合いも関係してくる。だから、陣風を場つなぎに造らせた」

「あんた、噛んでるのか?」

「山西に出資してるし、事変の英雄だと、開発陣に指示が出せるんだよ、これが」

黒田は陣風の開発を山西航空機が行うにあたり、工場用地などの都合をつけたりして便宜を図った。その関係で陣風の開発に関わり、黒江の提言を伝え、30ミリ砲四門予定の乙型を『25ミリ砲四門』に変更させたりする直接の手助けをした。黒田は家を継ぐ事が内定していたし、侯爵位を継ぐ見込みである。(ウィッチがいる世界であるので、華族や皇族に女性当主が多い。)黒田は緊急登板なので、両親の都合や『予定』(両親はいずれ、どこかに嫁入りさせるつもりであったが、黒田が次期当主になり、既に職業軍人として高位になっている都合もあり、もはや自己都合での退役は不可能になっている。更に、職業軍人であることで本家をその階級で黙らせられるため、退役するつもりはない)を全部ぶっ飛ばすので、黒田の出身である黒田家の分家に皇室からの慰労金が支給される事になっている。

「凄いな、アンタ」

「侯爵の地位はこういう時にしか使えないしな。日本だと名誉称号扱いで、霞会館に出入りするしか特典ないし」

黒田には華族なりの苦労がある。それを感じさせ、マルセイユはなんとも言えない気持ちになるのだった。






――ハピネスチャージプリキュア世界で戦闘を繰り広げる二大魔神。破滅を司る『ZERO』。世界の守護神である『カイザー』。その二つの存在が、既に守護者が二人のプリキュアのみになってしまった『ハピネスチャージプリキュアの世界』を舞台に、死闘を展開する――


『マガイモノメガ!!』

『へッ、そっちこそ、じいちゃんの遺志から外れてんだろーが!ショルダースライサー!!』

ZEROのアイアンカッターに、ショルダースライサーで対抗する甲児。ほぼ30mの巨人達が大地を揺るがしながら、剣と刃をぶつけ合う。

『おっと!』

ZEROがアイアンカッターを放つ。甲児はターボスマッシャーパンチで迎撃するが、ターボスマッシャーパンチはアイアンカッターに押し負け、弾かれて破損して落下する。だが、そこまでは甲児の想定内である。

『今だ!!ZERO、そのアイアンカッターをもらうぜ!!』

『ナニ?』

甲児はカイザーパイルダーの追加チャンネルを開き、ハッキングでZEROのアイアンカッター(右)の制御を奪い、右腕を失ったカイザーに装着させる。左右非対称になるが、ZEROが強化したアイアンカッターはカイザーに強度が追いついているし、マッシブな造形であるので、カイザーに装着してもしっくりくる。

『やい、ZERO!お前の右腕はもらったぜ!マジンガーの裏ワザさ!壊れるから予備を使える様に複数のチャンネルがロケットパンチコントローラーには有るんだ、そしてマジンガーのフォーマットの遠隔操作武器はマジンガーでなら乗っ取れるのさ、コツは教えねぇけどよ!!』

『コノ程度デイイ気にナルナ……。我ニハ自己再生能力ガアルノヲ忘レタカ』

ZEROは瞬時に自己再生能力でアイアンカッターを別個に、フレームの段階から生成してみせる。トンチ合戦の様相を呈し始めたが、ZEROとカイザーの戦いに割って入る者がいた。あしゅら男爵である。

『手こずっているようだな、ZEROよ』

『あしゅら男爵カ。我ニ援軍ハ不要ト言ッタハズダガ』

『兜甲児と小娘共、野比のび太にいいモノを見せようと来たのだ』

『良いものだと!テメーの事だ。碌なモンじゃねぇだろ!』

『ならば、見せてやろう!!いでよ、ドラゴン、ライガー、ポセイドン!!』

あしゅら男爵は乱入するなり、唐突にドラゴン、ライガー、ポセイドンの名を叫んだ。すると、空間転移で無数の新ゲットマシンが空を覆い尽くすかのように現れ、そのまま無限にゲッターチェンジを敢行する。前史以前ではミッドチルダ、あるいは廃墟となった新早乙女研究所付近で起こる光景である。

「あしゅら男爵!わざわざ、この世界でアレのゲッターチェンジをさせたのか!!」

「そうだ、シャーロット・E・イェーガー。いや、その姿だと『キュアメロディ』と呼ぶべきかな?デモンストレーション、そう思ってもらって結構」

「デモンストレーションだと!?」

「どういう事、メロディ!?」

「あれは……龍だよ」

「龍!?」

「そうだ。その名は……!」

『チェェェンジ!!ゲッタァアアアア…!!真!ドォォォラゴォォン!!』

あしゅら男爵のド派手な叫びと共に、無限合体した新ゲットマシンが一つの超弩級ゲッターロボとなっていく。竜の胴体に人型の上半身が載っかっている形状のゲッター。そう形容するしか無かった。

「ハハハ…ハハハ!!聞け、兜甲児!野比のび太!、小娘共!!これぞ次元世界に最後の日を呼ぶ者!!その名も『ゲッター真ドラゴン』よ!!」

「真ドラゴン、それをどこから奪った!」

「答える必要があるのか、キュアメロディ?」

「くっ…!」

「聞くくらい良いじゃないか!ケチケチすんなよ、あしゅら準爵」

煽るのび太。

「ちがーう!!!」

「騎士爵だっけ」

「男爵だ!!おのれ青二才めが!」

気分を害されたものの、ハイテンションなあしゅら男爵は続ける。

「冥土の土産とイイたいが、報いは受けなければならん!そう、その本質が何であるか知ろうともせず、プリキュアの力に溺れし者たちよ……!さあ、次元世界の最後の日に懺悔せよ!ぬわぁははははははぁ…!」

どこぞの世界における早乙女博士の如き哄笑をあげるあしゅら男爵。かつての夫婦であった頃の記録が甦った影響か、妙にハイテンションかつ独特の台詞回しで場を支配する。しかし、最後の高笑いの最後で咳き込む間抜けさも残っており、どことなくギャグめいた三枚目的雰囲気も残す。

『バカモノ、咳込みおって!」

『ええい、決めるところは決めたではないか!文句を言うな、ブロッケン!」

ゲッター真ドラゴンのコックピットにいるブロッケンにツッコミを入れられ、往年の掛け合いをみせる二人。そこは変わっていないらしい。

『るせぇ!お前ら、どこかの世界の早乙女博士のセリフをパクるなってんだ!』

『なんとでもほざけ!勝てば官軍なのだ!』

甲児がツッコむ。あしゅら男爵は妙に悪役にしては達観したセリフを吐くが、これも連戦連敗の悲哀から来るものなので、それを聞いていたのび太は苦笑いする。

『力に溺れてたらこんな所来ないって、あしゅら殿は継ぎ接ぎのせいかズレておられる様で』

「若造め、言いたいこと言いまくりおって…!」

『さあ、デモンストレーションはそれで終わりかよ?』

『それはどうかな?チェェンジ!真ポセイドン!』

あしゅら男爵達はゲッター真ドラゴンを真ポセイドン形態に変形させ、ポセイドンの両腕と首に仕込まれているファンを最大出力で回転させる。その技こそ。

『ゲッタートリプルサイクロン!』

ゲッタートリプルサイクロン。この世のモノとは思えぬ暴風を発生させ、すべてを吹き飛ばす。その暴風はのび太がとっさに全員をバリアーポイントで包むほどの暴風であった。マジンカイザーですらももみくちゃにするほどの威力であるので、その威力の程が分かる。

『うわあああっ!!』

甲児も流石に悲鳴をあげる。そして、周囲にゲッターエレキ(超高圧電流)を放射する真ポセイドン。

その放射が終わった後に出現したのは、町の郊外があまりの暴風で地面ごと、根こそぎえぐり取られ、高圧電流で、辛うじて残った森林部が火災を起こしている光景であった。

『クソ、ここまでの威力なんてな…!』

態勢をなんとか立て直すマジンカイザーだが、形勢は真ドラゴンの参戦で完全に不利である。カイザーノヴァで逆転する手もあるが、かなりのエネルギーを使う技であるため、甲児は町の被害が破滅的になるのを避けるため、使用を避けている。プリキュア達はメロディとフェリーチェを除いては、あまりのすさまじい光景に半ば茫然自失の状態であった。


『フフ、ZEROと真ドラゴンのコンビネーションの前には、マジンカイザーと言えど、そこまでのようだな』

『へッ、魔神皇帝を嘗めるなよ!カイザーにもアレがあるのを忘れてないか?マジンパワー!!』

甲児は真ドラゴンとZEROに対抗するため、マジンカイザーのリミッターを解除する。魔神皇帝最大の秘密である『神モード』。それを解放したのである。神モードであれば、ZEROすら凌駕する領域に達するからだ。

「甲児、お前……!」

『へッ。おじいちゃんの魂が俺に言うんだよ、魔神皇帝は神を超え、悪魔を倒せるってな!』

金色のオーラを発し、自己再生能力を発動させるマジンカイザー。そして、ショルダースライサーに雷を受け、それを増幅させる。

『くらいやがれ!!ゴッドスパーク!!』

雷を剣から放つ。サンダーブレーク系統の技だが、サンダーボルトブレーカーと同等以上の威力を発揮しつつも広域放射である。強力な雷でZEROと真ドラゴンに打撃を与える。

『仕切り直しだぜ、ZERO、あしゅら男爵!!』

神モードを発動させ、二大マシンに立ち向かう甲児とカイザー。それに触発されたか、フェリーチェも『アレキサンドライトスタイル』に変身(アイテムがない状態なので、エイトセンシズを以て変身)し、残りの二人もイノセントフォームに変身し、並び立つ。

『貴方達の好きにはさせません、ZERO、あしゅら男爵!!』

『ぬぅ、カイザーに触発されおって…」

『この姿なら、あなた達の好きにはさせない!あたしだって、プリキュアだもん!ハピネスチャージプリキュアの誇りにかけても、これ以上はやらせないんだから!』

ラブリー/愛乃めぐみは歴代でも稀である、『プリキュアである事に誇りがある』人物である。そのため、偶然から異能を手にし、その力に強い執着が無かった歴代のプリキュア(ピンク)とは一線を画する。そのため、メロディは『気負い過ぎる』と危惧もしている。また、プリキュアとしての先輩格ののぞみも転生で、めぐみに似た『力にこだわる危うさ』が出てきているため、メロディ/響は気が気でないところがある。だが、めぐみの前向きさは、のぞみにも良い影響を与えられるはずだと考える。


「撹乱は僕に任せてくれ」

「のび太、大丈夫かよ」

「無理はしないで、のび太」

「なーに、左腕を打っただけさ。異能生存体は伊達じゃない」

笑いつつも、上着を脱いで、Yシャツ一枚の姿で戦いに本格的に加わるのび太。フェリーチェに気遣われる光景は、二人の関係を匂わせる。

『よし、いくぞ!』

一同はそれぞれの力を以て、二大マシンに対抗する。撃退が目的であるが、スーパープリキュアが四名、異能生存体が一名、スーパーロボットが一体。中々以て、なんとも凄まじい光景であった。



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