外伝その323『STORM』


――扶桑空母の艦上機はカタパルトやスキージャンプの整備と着艦制動装置の刷新もあり、烈風や紫電改、流星と言った大型レシプロ機も難なく運用になっていた。実戦部隊の要望と外部の指摘が一致せず、時勢に翻弄された機体の代表が流星であった。流星は油圧カタパルトの実用化前、『軽量化のため、試作段階ではついていた防弾装備を省略』する形で開発が進んでいたが、油圧カタパルトがブリタニアの技術供与で開発成功にこぎつけたため、防弾装備の再装備に傾いたが、実戦部隊は『そのままで良い』とした。だが、日本側が強引にエンジンの換装、翼下パイロンの増設、防弾装備の強化を至上とし、再度の軌道修正を行わせた。このように開発が迷走しまくったため、防弾装備のある制式量産機は満足に揃わず、第一機動艦隊の全ての空母航空隊への定数配備もままならなかった。それを事実上、現場で代替したのが『A-1』である。流星を全ての面で遥かに凌ぐ高性能をマークした事から、黒江達が現場で調達させ、配備も覚束ない流星の代わりにした。流星は『まとまった数で運用された』と言うが、『戦線の全空母にある〜』という但し書きがつくため、第一線の実戦部隊での代替はより高性能のA-1であった――






――統合参謀本部では、流星の開発と生産で軍の方針の二転三転に振り回されて、肝心の量産が遅延していることに尾張航空機から抗議がなされたと報告された。流星の制式仕様は散々に振り回されて二転三転したため、ラインの策定も遅延を重ね、天山と97式を代替する事は夢のまた夢であった。前線の消耗した飛行隊に補充機として送られたために、まとまった数の運用はままならず、黒江達が自由リベリオンの最新鋭機『A-1』を回させる始末である。A-1は量産がようやく始まった流星が霞む高性能をマークしており、ジェット機すら持つ第一機動艦隊は日の丸を持つ同機を流星の代わりに揃え、『大海戦』の前の日には流星は追加派遣された雲龍型の機動艦隊へ管理が移され、第一機動艦隊のレシプロ攻撃機はA-1に置き換えられていた。――

「尾張航空機に『事実』を言います?」

「尾張航空機が懸命に改良に取り組んでおるのだ。言えるわけがないだろう。既に翼下パイロンを持つ主翼の製造に入っておるのだぞ。あそこはかなりの金額を設備投資しておる。川滝の例がある以上、クーデターに力を貸す企業が多くなるのは避けたい」

「液冷エンジンへのダメ出しで、あそこはかなりの損害を被っている。キ100の採用がなされたとは言え、現場のサボタージュがなぁ」

「液冷エンジンが余っておる。アツタとは似て非なるものだから、部品の流用も効かん」

「日本への飛燕の稼働機提供でなんとか都合をつけましょう。それで川滝のご機嫌を取りましょう。戦車へのエンジン流用ができない以上は…」

「それしかあるまい。戦車も1300馬力以上のエンジンで50トン近い重量級を快速で走らせる時代が訪れつつあるのだ。日本に博物館用と展示飛行用の機材として売りさばこう…」

飛燕の残存個体の日本への展示飛行用の機材としての輸出に舵を切る連合軍。当時、川滝航空機の生産力はキ100(五式戦)に全力を注いでおり、三式戦は新規機体の殆どは五式戦に転用され、前線部隊での現地改造でハ40の行き場は無く、改良型のハ140共々、倉庫で埃をかぶっている在庫がごちゃまんとあった。その在庫処理に戦車を予定していたが、日本側が1200馬力を超える水冷式ディーゼル機関を戦車用に提供してきたため、転用が不可能になった。日本側に展示飛行用として売りさばこうにも、日本側にとっての三式は最悪の評判である。そこで海自の海上幕僚長がウルトラCのアイデアを出した。

「展示飛行用と言っても、飛燕は受けが悪く、とても在庫処分になりません。大馬力のモーターボートに転用したほうがよろしいかと」

「それだ!」

ハ40とハ140は高機動モーターボート用のエンジンに在庫が転用され、チューンナップされて搭載され、太平洋戦争中の高機動偵察ボートとして活躍する次期内火艇として普及する。また、ハ140は中型クルーザーの機関にも転用され、第二の道を歩む事になる。






――前線では、キュアドリームとキュアピーチが神闘士と海闘士相手に苦戦を余儀なくされていたが、キュアレインボー形態に目覚めた事もあり、善戦していた。黒江達の補助もあり、まともに戦えていた――

「クソ、この姿でも完全には追いつけねぇのか!?」

ドリームは覚醒とゲッター線による闘争本能の増大で、口調が普段のものでなくなっていた。声色、雰囲気、共に中島錦としての荒々しいものになっていた。これはゲッター線で錦の肉体の闘争本能が引き出されたためで、黒江と智子もびっくりの変化であった。

「ドリーム、これを使え!ケイから預かってたもんだ!」

黒江が神闘士とドリームが対峙する中間地点にソードトマホークを投げ入れる。正式名称は磁鋼剣・ソードトマホーク。元はゲッターロボ號のために開発されていた兵器だが、ネオゲッターロボへの計画変更で宙に浮いたGアームライザー計画のスピンオフで人が扱えるサイズのものが製作された。もちろん、敷島博士の作品だ。柄にあたるダブルトマホーク部分で投げられており、剣としての刀身の形成には改めての音声入力が必要である。

「せ、先輩。この斧は…」

「正確には斧じゃねぇ。音声入力で機能に火が入る!叫べ!磁鋼剣・ソードトマホークって!」

ソードトマホークの柄の部分を手に持ち、構え、黒江の言う通りに叫んでみる。スターライトフルーレが使えない状況下であるため、やぶれかぶれで叫ぶ。

『磁鋼剣!!ソォォォドトマホ――ォォク!!』

巨大な両刃斧と思われたそれから長大な刀身がせり出し、剣に変貌した。大柄で、黒江の斬艦刀並に大きく、同時に、それは単純に『剣』と呼ぶには、余りにも分厚く大きく、荒々しい物だった…。分厚い刀身にリベット止めされた薄板が特徴的な、とても切断に使えるようには見えない刀身を持つ身の丈を超える大剣が現れた

「うわっ!な、なんだよ、これ!剣と斧が合体してやがる!?」

「ソードトマホークだ!両方の使い方が出来る!お前の腕力で振り回せるかは別問題だけど」

「先輩。俺の事、ナメてます?」

「錦の特徴が強まってんな。だが、強気なセリフはそれを使って見せてからだ」

黒江は黄金聖衣を着込んでいる時は基本的に手刀を用いて戦うため、斬艦刀はほぼ用いない。黄金聖闘士として戦う場合は手刀のほうが出が早いからだ。黒江が海闘士を手刀で追い込む様子を確認し、ドリームはピーチが苦戦する神闘士相手に剣戟を挑んだ。


「おおおおおおっ!」

「ぬ!」

神闘士はオーディーンより授かりし剣を召喚し、ソードトマホークと打ち合った。ドリームはゲッター線の影響で錦としての闘争本能が完全に目覚めた影響で、声色と口調が錦寄りになっている。一人称も『俺』になっており、ソードトマホークの振り回しかたも、のぞみとしての軽やかな『蝶のように舞い、鉢のように刺す』動きではなく、錦としての荒武者のそれであった。剣戟の達人である智子と黒江からすれば、『荒々しさを売りにする若造』のそれでしかない動きであり、武器に振り回されている感がありありであった。

「馬鹿、その大きさで太刀みたいな動きが出来るか!」

「長巻使ったことないの、あんた!」

黒江と智子は言いたい放題であった。ドリームは錦が通常の太刀を常用していたため、それを引き継いでいるため、太刀の技能は当時の平均より上だが、それ以外の武器の技能はからっしきであった。特に、槍でない長物は始めてだったようで、間合いが掴めておらず、いたずらに空振りする始末である。

「デカブツはカウンターで使うんだよ!」

「このアホンダラ!カウンターよ、カウンター!」

智子にアホンダラと言われてしまうドリーム。智子は先祖伝来の長巻が家にあり、その関係で熟達していたからだろう。ドリームは意外に軽いソードトマホークに驚きつつ、大柄なソードトマホークを懸命に振るうものの、普段の得物が西洋型のフルーレだったため、どうにも扱いあぐねているようである。

「槍と違って、全部刃が付いてるんだ!普段の間合いで振り下ろしたって大丈夫だ!それにソードトマホークなら、ローブの上からでも、骨を折れるはずだ!」

黒江は長巻の扱いにも長けている。同世代からは当代屈指の『剣聖』を謳われた事すらある。長巻の扱いも同時にレクチャーするようなものであった。

「こうなったら、やぶれかぶれだぁ!うぉぉりゃあ!!」

ドリームはやぶれかぶれでローブごと叩き斬る勢いで、相手の左腕にソードトマホークをぶち当てた。ローブが斬ることは防いだが、衝撃は殺せず、骨が折れるような音が響いた。

「っしゃあ!これで相手の片腕は潰したわよ、ドリーム!」

「は、はい!」

「いい気になりおって、小娘が…!」

「へっ、御大層にそんなの着込んで、ドヤ顔してたのはどこのどいつだっての!」

口調が完全に錦のものになっているため、言葉づかいは荒い。ソードトマホークを背中に回し、決めポーズを決める様はモードレッドにそっくりで、黒江が感じた既視感はそれだった。

「お前、モードレッドのマネかよ」

「えー。こういうポーズってやったんじゃねーの、先輩も」

「アホ、そういうポーズは勝ってからしろ」

「戦いの途中でドヤ顔すんのは、三流に思われんわよ。得物を前に舌なめずりすんのは、三下のチンピラのする事よ。真のプロってのはね…」

「戦闘の終結宣言無い内は次の攻撃に繋がる様にすんだよ!ダホ!!」

黒江と智子は勝負が決まった時のみ、決めポーズを決める。ドリームは黒江達にダメ出しされまくっている。そのあたりは『青さ』が良くも悪くも、かなり残っているのぞみと、百戦錬磨の黒江達との経験の差であった。

「言われてるね、ドリーム」

「うぅ。先輩達は百戦錬磨だから、経験じゃ悔しーけど勝てねぇ」

黒江の援護を受けつつ、海闘士と殴り合いをしているピーチからようやく声をかけられたドリーム。黒江達はもはや百戦錬磨であるため、プリキュアとしての経験が若年期に集中しているのぞみ達よりも豊富である。ちなみに、ピーチがドリームの口調が変わっているのにツッコまないのは、ドリームは『昂ぶるとキャラが変わる』と解釈していたからである。のぞみは素体の自我を上書きする形で転生したため、このような現象が起こっているのだ。また、のぞみが持つ軍籍は錦のものを流用している(素体が錦であったのもあるが)ので、表向きは錦の戦果とされる予定である(後に、個人の特定を避けるため、夢原のぞみの名が軍人名として使われるようになるが)。このような事情もあった。






――のび太は愛乃めぐみ、氷川いおなの両名を野比家へ送り届け、キュアマーチ/緑川なお/ラウラ・ボーデヴィッヒらに二人の面倒を見るように頼み込むと、自身はことはを伴って、統合参謀本部へ赴いた。圭子とゴルゴ13からの定時連絡で、ティターンズの未稼働の衛星を含めれば、かなりの数の人工衛星が既に衛星軌道を周回している事が分かったからだ。なお、ことはを連れて行ったのは、調がシンフォギアC世界から、まだ戻ってこれない関係であった。

―タイムマシンの時空間――


「調は、なんで戻ってこれないの?」

「向こうの世界でクラスカード使ったんだけど、状況が状況な上、あれって説明が難しい道具だろ?おまけに、宝具を召喚するってのは、奴さんの完全聖遺物の概念を覆すからね。錬金術とかの概念で解析できないから、向こうがなかなか帰してくれないそうだ」

「まぁね…。それを言うなら、私達の力だって、そうじゃない?」

「そうさ。だから、シンフォギアA世界も困惑してるんだよ。君達や英霊…、僕もだが、自分達の信じてた固定観念を覆してるって言われてるんだよ」

「固定観念、か」

「ああ。僕もシンフォギアは普通に貫通する銃撃を撃てるし、糸(鋼線)を使えば、もっと簡単に重傷を負わせられるしね。スカーレットは宝具を完全な形で使えるだろ?」

「まぁ、スカーレットの場合はものすごく特殊なケースだけどね」

「だから、だろうね。おまけに、こっちのほうはティターンズが東西冷戦時代よろしく、人工衛星の報復網を作ろうとしてるし、日本やドイツの干渉で兵力不足と来てる。いくら質がいい兵器を揃えたって、扱える人間とそれを万全な状態にできる腕の整備員がいなけりゃ、子供の玩具のコレクションと変わらない。それと潤沢な補給。旧日本軍が紫電改や流星を満足に運用出来なかったのは、補給の問題が大きかったからさ」

「補給かぁ」

「そうさ。西部の後期にピースメーカーが好まれたってのは、『弾がどこでも入手できて、ストッピングパワーがそこそこで、ガキの頃の僕でも整備できたから』だしね」

「どうするの?」

「大学時代にゼミで一緒だった奴がJAXAにいるから、ハンターキラー衛星の製作を頼んでる。その説明をするんだ。Mr.東郷にいちいち頼むのも悪いしね」

「統合参謀本部は?」

「種子島に宇宙基地を建設してる。綾香さんたちがV2ロケットの試験を名目に作らせていたそうだから」

「用意いいね」

「この世界の地球は金属資源がいずれ足りなくなる。僕たちの世界より宇宙開発の必要性は高い。核に費やされるはずの金が宇宙開発に注ぎ込まれるから、21世紀には月面基地できてるかもね」

「でも、史実通りに種子島に作る必要はないような」

「日本への方便さ。実際は小笠原や南洋島の開いてる土地にも作ってる。野党がうるさいから極秘にしてるだけで、もう用意は終わってる」

「野党にどうして隠すの?」

「連中は全部の巡洋艦を空母にしろとか、戦艦は大和だけでいいとか、トンチンカンな事しか言わないくせに、声がでかいからさ」

「どうするの?」

「自由リベリオンに避難してたフォン・ブラウンをJAXAに紹介するよ。糸川博士と併せれば、日本連邦の宇宙技術は22世紀並になる」

「あ、のび太。もうじき、ワープだよ」

「分かってる。ドラえもんが桃太郎の出来事のもとになった事件ん時に追加して、カミさんがリルルと一緒に行った時に使ったきりの機能だけど…、ワープ!」

のび太はタイムマシンのワープ機能を用い、ウィッチ世界に戻る。かつて、妻のしずかが少女期に一回だけ使ったと聞いている機能で、ドラえもんのタイムマシンの大規模アップデートの目玉である。ドラえもんのタイムマシンは登場初期にのび太が購入したもので、ドラえもんの時代では『三〜四代は型落ち』のモデルであった。だが、その分、統合戦争後の低下した時空間技術でも保守整備が可能であり、地球連邦が手本にしたのは、この型だ。そのため、地球連邦で再流通しだしたタイムマシンはドラえもんのものと同型で、タイムパトロールが有していた『ボート型』はオーパーツ化しており、現存しているが、稼働状態ではない。時空管理局の技術でのレストアが検討されているに留まっており、タイムパトロールも組織自体は存続しているが、時間旅行が廃れて久しいために有名無実化している。ウィッチ世界にいくのに、タイムマシンを用いるのは、次元航行と時空間航行、ワープとが同原理であると判明したからで、メカトピア戦後に判明したことである。なのはがメカトピア戦後にミッドチルダに帰れたのも、そのためであった。なお、タイムパトロールが過去に使っていたボート型は時空間移動機能がブラックボックス化して整備不能に陥った後は連邦宇宙軍の警備艇として徴用され、一年戦争やガミラス戦で大半が戦没している。時空間移動機能が整備可能になり、タイムマシンであるとわかったあとは、本来用途に戻されたが、現存数は少ないため、旧式化した金剛型宇宙戦艦(俗に言う沖田艦)の残存艦を改造して転用する事も視野に入れられている。

「タイムパトロールも復興には時間がかかる。沖田艦の同型を転用する案もある。見かけは古いけど、時間犯罪者にはハッタリが効くしね」

「宇宙戦艦は主力戦艦があるから?」

「そういう事。あれも古くなってきたけどね」

地球連邦軍の波動エンジン搭載型外征艦隊で主力を占めている主力戦艦級。俗に言う『ドレッドノート級宇宙戦艦』は一番艦就役がガトランティス戦役前で、設計が旧式化しつつあった。そのため、後継艦が検討されだしている時代がデザリアム戦前の状況であった。

「23世紀の問題はいいよ。軍隊が自己解決できるからね。問題は僕たちの時代の日本とドイツさ。連中は自分の都合でモノを言うから、沖縄の左派は扶桑の沖縄の非武装地帯化を迫って、現地に一蹴されたっていうし…」

「怪異がいるのにね」

「害獣を鹿児島から沖縄に飛んで撃退しろってのは机上の空論さ。空母使ったって、陸に着陸できないと休憩も出来やしないし、ウィッチには空中給油は殆ど意味がない。それで沖縄の基地は一定数置かれるのが継続するんだよ。沖縄から台湾の守りに空母は割けないしね」


「空母はどうして一箇所に?」

「ミッドウェイとマリアナの戦訓という事だけど、扶桑は史実みたいな集中運用ドクトリンをM動乱以前は取ってなかったし、ウィッチ運用の都合で取れなかった。今回はスーパーロボットがカバーするからって、紅海、北極海方面、インド洋方面、太平洋方面を切り捨てて、現場の反対を押し切って、508まで凍結状態にして集めたんだから」

欧州戦線に他の各方面に分散配備されていた全ての艦隊型空母を有無を言わさずに集中したものの、空母の頭数はともかく、航空機の数で負けている。ブリタニアの空母が史実より少なかった上、ウィッチ運用に割かれていたからで、日本は固定式のウィッチ運用装備を取り払い、露天駐機させてでも機数を増やしたが、主力が雲龍型であった都合上、物量面では不安視されてしまった。雲龍型の搭載数は零戦世代で63機、紫電改以降の世代の大型機ではもっと減るからで、日本は雲龍型は艦載機を統一して運用するとし、援軍の内、五隻前後は予備機保管庫扱いされている。雲龍型はウィッチ運用共用とされたため、史実の飛龍と同規模の船体しか持たないし、史実のような艦隊型空母としての運用は想定されていなかったのを、数合わせで引っ張り出した故の問題点、扶桑が整備を目指していた大型の大鳳型航空母艦の整備計画の頓挫は扶桑の空母機動部隊整備を大いに狂わせている。それを65000トン級の量産化という形で補おうとしているが、『ウィッチの居場所を奪うな!』と反対があるため、雲龍型は順次、強襲揚陸艦へ改造され、ウィッチはそれに回され始めている。

「史実のマリアナ沖海戦のトラウマがあるからって、敵の空母が一隻でもあれば、袋叩きにするように官僚が喚く。紫電改や烈風、陣風があるのに、F8FやF2Gに怯えてるんだから」

「綾香さんが悩んでたね」

「そりゃそうさ。空母着艦ができるパイロットを急いでかき集めたんで、六割が元・日本軍の義勇兵で、生え抜きは留学組や教官級を引っ張り出してる。それで、ウィッチの時に槍玉に挙げたから、南洋島に二個飛行戦隊が軟禁なんて、馬鹿げた事態になるんだよ」

「日本はなんて言い訳してるの?」

「それならそうと言え、前線に交代要員くらい、いるはずだろ!とか官僚が喚いて、更迭されたよ。ウィッチは14人集めるのも一苦労で、501でも定数は満たしてなかったんだから」

「そうなの?」

「扶桑は実戦経験がある世代からの世代交代が進んできてたから、実戦経験があって、腕がいいウィッチは必然的に高齢になる。だから、綾香さん達が復帰した途端に世代間対立が顕著に表れたんだよ。そんでもって、日本がウィッチ訓練校からの軍隊への入隊を事実上、潰してしまったんだ。教育機関から軍人が排除されたから、新規ウィッチは入る人数が雀の涙になる。レイブンズとその後の数世代はこの先、使い倒されるだろう。定年しても、ね」

当時、日本側が軍人を有無を言わさずに教育現場から排除したため、ウィッチ雇用形態の維持が不可能になり、ウィッチ訓練校にいた女性軍人が役職を失う羽目に陥ったし、既に在籍中の生徒の取り扱いで揉める羽目になっていた扶桑。結局、訓練校の高等工科学校への改組と、在籍中の生徒の在籍期間の調整、直に卒業見込みであった生徒の任官で、お互いに妥協点を日本と見出し、ウィッチの若年雇用は少しづつ無くなり始める。また、個人主義の浸透により、志願数の低下が慢性化して、世代交代の代謝速度が低下した事もあり、大戦世代は長らく、軍隊を支える羽目になる。数度の戦乱で功績顕著な者は後年に元帥位を与えられ、孫の代と共に飛ぶ者も21世紀にはチラホラいるが、それは慢性化した人手不足で、予備役軍人となった者が戦役の度に呼び戻されていたからで、MATが志願人数で優勢だった時代が40年代後半〜80年代半ばまでと、40年もの期間に及んだ事での慢性化した人手不足の表れであった。ダイ・アナザー・デイ〜1946年までに海軍航空隊が日本側により、解体寸前に追い込まれた事、撃墜王とされた者達の空軍への大量移籍による組織の求心力低下が海軍には痛手となり、若本徹子が現場で海軍航空を支え続ける羽目になったし、坂本の現場からの完全引退は成らなかった。

「今の古参が2、30年は戦い続けるしかないだろうね。若い子達はクーデター後の厳罰で、親が怯えるだろうし、婚期が〜とかで辞めさせるのが出る。太平洋戦争でお上の玉音放送を流して不敬罪の適応を煽って、農家にウィッチを供出させるけど、日本側はうんとは言わないだろうし、野党が喚く。扶桑でのお上の権威は日本が思った以上に強固なんだけどね」

結局、のび太の言うこの事は『天皇は扶桑では国家元首である』という事で、1946年頃に実行に移される。日本の左派はこれを政治利用と叫んだが、扶桑では皇室の鶴の一声で重要事が収拾する事が多かったため、左派のヒステリーと逆に、『ウィッチの集団就職』を促す事になる。江藤が皇室の国家緊急権の保有論者であったのはそのためで、扶桑は事変のクーデターを入れれば、二度のクーデターを既に経験していた。その関係で、有事における内閣の機能不全を危惧しており、日本と違い、皇室の国家緊急権が憲法に明記されていた。その余波で、武子は皇室に指揮権を委譲された過去があるのに関わず、大尉(44年当時)に留め置かれていたのが問題視され、日本による人事課の粛清を恐れた参謀本部は、武子を加速度的に昇進させた。わずか半年で大佐となり、ついには本人の意志と関係なしに、『准将』の地位に任ぜられるに至る。ダイ・アナザー・デイでは、精鋭部隊の隊員の戦果による昇進が増加しすぎたため、戦果昇進に限度を設ける変わりに、特権の授与へと、隊員への報奨が切り替えられ、Gウィッチでなくとも、戦果顕著なウィッチは機材優遇などの特権を授与されるようになった。また、Gウィッチたちは最高位と言える特権『自由勤務権』が与えられており、戦場で一騎当千を義務付けられるが、普段の勤務態度や勤務時間は一切が不問とされている。この実現に邪魔であった『アレクサンドラ・イワーノヴナ・ポクルイーシキン』(サーシャ)が赤松の最終的な判断で、サーニャとの問題を大義名分に、真501から追放されている。(その関係で、ヴァルトルート・クルピンスキーの降格処分は取り消され、人事記録からも抹消されている)その結果、赤松が実質的に猛者たちを統制しており、501の戦闘隊長は実質的に赤松であった。


「日本とドイツが一番、同位国を見下してるかもね。特に、日本は『戦前の日本は粋がって、全てを失った愚かな連中』って見下す思考がある。だから、戦中の行為の逆張りが正しいと思ってる。海軍航空隊の撃墜王奨励もそうだけど、慣習をぶっ飛ばすために、強引に手を入れた挙句に、組織そのものに瀕死の重傷を負わせちゃ、後が大変なんだと思うんだけどね。坂本少佐も、数十年単位で手こずるよ」

坂本が40年代後半から裏方で苦労する事になるのが、解体寸前の瀕死の重傷を負った海軍航空の再建である。芳佳の移籍というショック(坂本は源田に進言し、海軍軍人のままでも64に在籍できるようにするという隊紀を設けさせたが、海軍出身の皆が揃って、空軍に正式に移籍していったのと、一番に引き留めたかった芳佳が空軍に移籍する決意であった事にショックを受ける事になる)を乗り越え、海軍航空隊の再建と改革を使命とし、伝統に固執する志賀を強く叱責する、空軍の空母乗艦の仲立ちに尽力するなど、裏方が主な活躍の場になっていく。坂本なりの『黒江への償い』は、裏方で黒江達を支えていく事であったのだろう。

「前史であったけど、ウィッチは思い上がってたんだよ。自分達しか怪異と戦えないからっていう特権意識でね。スーパーロボットやMSが対抗できるのが気に入らないのさ。たとえ、プリキュアでもね」

「ウィッチは自分達の力を絶対視する傾向があるってことだね」

「それも、引退した人が出戻ると見下されるのも問題視されたから、扶桑は序列を明確化するそうだよ」

この時代に、現役世代をもっとも下位のヒエラルキーに、実戦経験豊富な事変経験者を上位のヒエラルキーにする扶桑独自の慣例が確立される。これに反対した者がその後に失脚した事もあり、ある種の年功序列が確立し、世代交代の停滞もあり、事変世代と大戦初期世代が、少なくとも80年代まで軍ウィッチの屋台骨として機能し続ける事になる。(一部は90年代以後も、『元帥』として残留)そのため、日本連邦の栄光はある世代のウィッチ達の血の献身で賄う事になる外、航空派の処提督が重宝される一方で、保守派の提督らに名誉回復の機会が与えられない事に不満があったのも事実であり、栗田健男、宇垣纏などの保守派は太平洋戦争で危険な任務に優先的に割り当てられる事になる。

「序列かぁ…」

「ほぼ年功序列だね。日本の組織はその方が上手くいくかもしれない。ただし、立身出世の根を絶たないように、『上の世代への敬意を持て』と教え込まれていくだろうね。海軍は目下、『商船乗りは日章旗のもとでは死するとも、軍艦旗のもとでは死なじ』って喧嘩うってる海保との喧嘩で悩んでる。旧海軍と同一視されちゃ、奴さんも可哀想だ」

「海援隊をどうしようっていうの、海保は」

「綾香さんが手を回す前は、『解散させて、装備だけをそのまま頂く』って寸法だったらしい。まったく、連中と来たら。戦闘艦艇を後回しにしてまで、タンカーや輸送艦を揃える羽目になったんだからね。伊吹とか」

のび太は高校のクラスメートや大学時代のゼミ仲間らが様々な官庁に就職している。海保にも、高校時代のクラスメートが数人いて、海保の苦境をのび太に愚痴っている。当時の海保は前弩級戦艦と弩級戦艦を退役させられた海援隊への物的補償で、せっかく予算が得られた大型巡視船を提供する羽目になる、扶桑海軍の反感を買ってしまうなど、政治的失態を重ねていた。扶桑海軍の戦闘艦艇整備が予定よりも遅れたのは、造船能力の60%以上を工作艦、補給艦、輸送艦、軍用タンカーに傾けざるを得なかったからで、日本の民間船舶業の協力が得られないのを、自前でどうにかする必要があるからであった。(その分、既存艦艇をどうにかする必要がある事から、鈴谷、伊吹などの巡洋艦の空母改装予定が軒並み、キャンセルされる事になる。その代替で近代化がなされる事になる。検討されていた『工事期間9ヶ月以内で、長さ約195メートル、幅約23.5メートルの飛行甲板設置と約30機の搭載が可能』の処元はジェット機時代にはそぐわないとされた他、提出された検討用の設計がアイランド型でなかったからともされる)

「どうして、そこまでしないと」

「日本の民間企業が扶桑軍に協力しないから、自前でなんでも揃えないといけなくなったんだよ。タンカーまで自前で用意しないといかないとはね」




――このように、統合参謀本部が悩む問題をスバリと言い当てるのび太。日独の政治家や日本の左派層(特に、日本で干渉が顕著であった)が軍部に押し付けた『徴兵をやめろ!志願兵の質で米軍を圧倒するんだ!』という通達は戦時動員が延び延びの扶桑軍を困惑させたし、戦線の既存兵器の回収は数合わせも出来なくするために不満も多い。海でこれであるので、陸は更にひどい有様である。扶桑は三式『チヌ』までの中戦車と軽戦車、『五式砲戦車』以外の全ての砲戦車が強引に前線から引き上げられ、機甲兵力が不足する事態に陥った。その埋め合わせに、砲の規格などを戦後自衛隊式戦車に合わせた改良兵器が宛てられるにしろ、この時点では、その第一弾となる四式中戦車改は日本で作られた150から200両の先行生産ロットの車両しか配備されておらず、戦局にあまり寄与していない。また、ブリタニアから供与されたセンチュリオンとコンカラーは重量が50トン超え(コンカラーは66トン)であり、山あり谷ありのイベリア半島で運用するのに異議が唱えられており、それよりは軽量と見込まれたE50の計画が継続されたのもわかる。しかし、E50も砲の変更や機動力確保、装甲強化などの影響で50トン超えの重量級になってしまう。日米英は架橋戦車などを駆使して、イベリア半島の機甲戦を遂行しているが、インフラ整備を優先している都合上、おいそれと始められない事情もある。機動遭遇戦はMS戦である事が多いが、ティターンズ側がモビルドールを用い、捨て駒のように使うことが多くなり、有人機を温存する事が増加傾向にあるため、モビルドールを一撃で破壊できるスーパーロボットが重宝されている。また、対人戦では、超人を地で行く世紀末系拳法の出現で、シンフォギアやプリキュアの優位性が薄れてしまう事態となった。仮面ライダー四号がショッカーライダー軍団の長であると推測された事もあり、仮面ライダー達も決戦を予感している。目下の最大の脅威であったマジンガーZEROをひとまずは撃退したものの、ハピネスチャージプリキュアは半減し、更に南斗五聖拳の一角が確認された事は緊急事態である。黒江が特訓を急いでいるのは、バダンの攻勢を警戒しているからだ。海戦では、護衛艦型が戦艦と重巡洋艦の砲撃戦には追従できるが、戦艦の砲撃は愚か、巡洋艦の砲撃にも耐えられないというのが問題視された。そもそも、第二次世界大戦で絶えた艦種の水上決戦での護衛など、戦後型艦艇は殆ど想定していない。その兼ね合いで、扶桑の要請で護衛艦の構造強化工事がなされるほどである。メカゴジラ系列機の投入で制空権確保はなるが、水上戦闘では意外に巡洋艦の役目が大きく、扶桑は伊吹型巡洋艦の空母改装を最終的にキャンセルする形になった。空母機動部隊の高額化とジェット化が伊吹を空母化させなかったのは大いなる皮肉であったが、空母として完成した場合、早晩に旧式と見なされて、早期に退役をさせられたのは目に見えており、重巡洋艦として生まれたほうがまだ幸せであると言えた。この時、伊吹の建造作業は凍結状態であり、二番艦の建造も止まっていた。重巡のままで建造が再開されるのに半年以上を浪費し、デモインに対抗できる重巡を目指した結果、弩級戦艦や超甲巡とさして変わらぬほどにコストがかかってしまった事から、コストパフォーマンスの観点で、重巡の存在意義が疑問視されてしまったという。この後、ことはも統合参謀本部の要請でやむなく、戦線に立ち、キュアフェリーチェとして戦う事になり、2015年以降のプリキュアとしては初の参戦例になった。(調が予定通りに戻ってこれなかったため、代打でフェリーチェが戦線に立つ事になった)








――スーパーロボット軍団はグレートマジンガーの廉価量産モデル『イチナナ式』というの量産化が成り、ゲッター軍団の結成がなされた。ゲッタードラゴンとゲッター1タイプの量産だが、ゲッタードラゴン型は一部スペックが簡略化されている。真ゲッタードラゴンの目覚めに必要なゲッターエネルギーを集める事が目的に入っていたが、ゲッター軍団はとりあえずの活動に入り、一定の成果を挙げていた。ダイ・アナザー・デイ当時はネイサーがゲッターロボ斬の制作に入っていた頃であった。Gウィッチ達に量産ゲッターのテストパイロットをさせつつ、斬の設計と資材確保を橘博士と共に行っていた隼人は、ゲッター線の使者となった巴武蔵に『真ゲッタードラゴンの復活は近い』と告げられた事から、パイロット復帰の準備を始め、ゲッターライガーに再び乗るつもりであった。ゲッターGは真ゲッター系統に比して旧式であるが、グレートマジンガーと同レベルの戦闘能力を誇っている。その事から、真ゲッターを用いるまでもない戦では、本格戦闘向けのゲッターであるドラゴンは重宝されていた――




――格納庫――

「でもさ、隼人さん。どうしてゲッタードラゴンを、とある世界みたいに量産しようと思ったのさ」

「真ゲッタードラゴンを目覚めさせるための触媒も兼ねての量産だ。本命は真ゲッタードラゴンだが、斬の予算を確保するための方便でもあるのさ。それにゲッター1は元来、実験機だ。本格戦闘で用いるには、パワー不足だし、操縦性が低い。俺たちだからこそ、できた芸当であって、本当は無茶なのさ」

「それじゃ、OVAみたいな無双ぶりは?」

「戦闘用に改装されたゲッター1でも、現実には無理だ。いくら竜馬でも、単独で乗ったゲッター1で無人とは言え、ドラゴンをなぎ倒せはしない。だからこそ、変形を犠牲にして、基礎性能を上げるブラックゲッターが造られたんだ」

隼人は科学者の観点から、初代ゲッター1とゲッタードラゴンの性能差を北条響に明言する。ゲッタードラゴンは実際には『ゲッター1の最大性能を計算した上で、新技術をふんだんに取り入れたブラッシュアップ機』であるので、基礎能力に差があるのは当然だと。二代目であるゲッターGはグレートマジンガーがカイザーと比較されるのと同様に、後発の真ゲッターと比べられがちだが、ゲッター1と比べれば、相応に強くなった機体なのだ。

「真ゲッターはもてはやされるが、博士は生前、真ゲッターは戦闘に用いるには強大すぎて、核以上の悲劇になりかねないと言っていた。それを真ドラゴンは…」

「ドラゴンが真ゲッタードラゴンになると、いったい何がどうなるんですか?」

「強さは確実に真ゲッターを超えるだろう。元々、増幅炉搭載なんだ。機体強度の限界に由来する上限が無くなる以上、お前らが見た龍型を遥かに凌駕しうるだろうな。エンペラーへ至るまでの途中形態だろうが、それでも、既存のほとんどのスーパーロボットを超える能力値だろう」

「ゲッターエンペラー…。黒江さんの言ってた究極最後のゲッターロボ…ドラゴンの末裔なのですか?」

「武蔵は…30世紀までに、真ゲッターと真ドラゴンの進化系『ゲッター聖ドラゴン』が融合進化したのがエンペラーと言っていた。エンペラーの登場で、宇宙の広さにある程度の目安ができたそうだ。それで、エンペラーは宇宙の質量安定のために生まれるという仮説に説得力が出てくる」

「ビックリップの阻止、ですか」

「そうだ。ゲッターエンペラーはそれを阻止し、宇宙の安定を齎すために生まれるのだ」

ゲッターエンペラーは『宇宙を再安定化させるために、宇宙を我が手に収めていく』。出撃前、北条響/キュアメロディは神隼人とそのような会話を交わした。『嵐が巻き起こる時、悪の炎は全て消える』とは、ゲッターチームの標語だが、ゲッターエンペラーは宇宙の安定のためにゲッタードラゴンから三度の進化を遂げて生まれる事がハッキリと明言された。ゲッターエンペラーは空間支配能力を手に入れ、30世紀の戦乱で太陽系全体よりも大きくなっていくが、生まれたての頃は合体時で地球くらいのサイズだった。進化で大きくなり続けたと言うべきだろう。

「隼人さん、ゲッターはあたしらに何を…」

「地球人類の生きる宇宙と『居場所を守るための戦い』をさせるつもりだろう。地球人類全体が神々に言わせれば、『喰い合い、滅ぼし合うことで生き残った者が強く進化していく戦闘的な生き物』の成功体だそうだ。お前たちのことを修羅という者が言うが、実際は地球人類そのものがそういう運命の生き物という事になる」

――ゲッターは大いなる意思の戦いなのだ。それでなくては、宇宙に存在するゲッターの意味がないのだ!!本能に身を委ねれば、すべてがわかってくる!!生物が、人間が、なぜ存在するのか 宇宙がなぜ存在するのか!!そして!お前たちがなぜ殺し合うのかを!これしか地球人類の生き残る道はないことも!――

ゲッターの意志を代弁する巴武蔵は神隼人にハッキリと言った。『ゲッターは大いなる意思の戦いなのだ。それでなくては、宇宙に存在するゲッターの意味がないのだ!!』と。見方によっては悍ましくあるが、地球人類はゲッターやイスカンダルの手で、地球というゆりかごから海千山千の次元世界という大海原へと放り出された。愛の戦士たち。『地球人は基本は慈悲深いが、本気で怒らせると、星系や銀河を滅ぼす事さえ厭わない』。宇宙戦艦ヤマトの幾度かの戦いで異星人に知れ渡る評判。マゾーンやイルミダスが内部から切り崩そうと考えるのも無理はない苛烈さ、自分達に友好的か、祀ろう民への寛容性。相反する二つを併せ持つのが地球人類である。

「地球人は基本的に、四方の諸族に法を敷き、平和を与え、祀ろう者には寛容を、逆らう者は打ち倒す気質だ。西洋のカトリック教会が2000年以上前の昔からやってきた事だが、地球連邦も同じだ。だが、反発も呼んでいる。今や、異星人に高圧的に接するバカ共がいるからな。ウィンダミアはゲッターエンペラーを恐れている一方、今の地球連邦なら倒せると見込んでいる。だが、これはエンペラーの介入を招く」

「エンペラーがウィンダミアを握りつぶすか、押し潰すと?」

「最悪の場合、ゲッターエンペラーのゲットマシンが奴さんの本星を押し潰す。そうなれば、ウィンダミアに生きる道はあるまい」

「ゲッターエンペラーが本気を出せば、プロトカルチャーの遺跡も意味をなさないと?」

「あれは神だよ。機械仕掛けの、な。ウィンダミアが如何なる手段を講じようと、空間支配能力でねじ伏せる。そうすれば、星系ごと、トマホークかビーム、ストナーサンシャインで吹き飛ばすだろうよ」

「嘘ぉ…」

「エンペラーが介入したら、向こうに希望はなくなる。我々としても、虐殺になるから、エンペラーの介入はなんとしても抑止したい。俺達が真ドラゴンで向こうの軍隊を殲滅し、心を折るしかないだろうな」

神隼人は血気に逸る者が多いウィンダミア王国を危惧し、最悪の場合、ゲッターエンペラーの介入を止めるため、自分達が真ゲッタードラゴンで介入し、すべてを粉砕すると伝える。この頃から、ウィンダミア王国の暴発は一部で危惧されているのが分かる。また、ウィンダミアの軍事力を、これから目覚めるであろう『真ゲッタードラゴン』は容易に殲滅できると明言されており、北条響はゲッターエンペラーの行動を抑止するために動乱に介入し、すべてを終わらせるという神隼人の意志に、ゲッターエンペラーの恐ろしさと、その抑制のための行動を講じる必要性を悟り、ため息をつくのだった。



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