外伝その390『図上演習と戦闘2』


――レーヴェ戦車はコンコルド錯誤の要領で造られたと揶揄されるものの、戦後の技術が導入されたことで軽量化と足回りの改善がなされた。第二次世界大戦当時の快速中戦車の水準の速力と長い航続距離を達成。重戦車と中戦車の統合たるMBTの魁ともされるが、カールスラントとしては、あくまで『重戦車』である。基礎設計は戦中の避弾経始取り入れ初期のものだからとも、軍隊にまだ軽戦車が残っていたからともとれる。また、戦中期同様の重装甲を持っていることを揶揄されるが、ウィッチ世界には戦後型で見られるような、本格的な複合装甲を作れる技術はまだ存在しないことからも、傾斜装甲と追加装甲は当時の技術の範囲内では最善の選択肢であった。史実以上に重装甲の造りであるが、21世紀の大馬力エンジンを積んだ事、冶金技術がより進んだ時代の装甲板で結果的に軽量化がされたことでティーガーの弱点を克服。当時としては優秀な戦車となった。ケーニヒティーガーの足回りの脆弱性を克服し、より強化された性能を持つ事になったため、この当時のリベリオン機甲部隊に為す術はなかった――


「敵は蜘蛛の子を散らすように逃げて……」

「いや、パーシングと戦車駆逐大隊でも呼んでるんだろう。ヤーボを封じ込んでる以上、頼れるのは虎の子の重戦車のパーシングと駆逐戦車のジャクソンだけだしね」

「M4を山のように破壊してるというのに、敵はどうして生産ラインを切り替えないんでしょうか」

「敵は兵士の命よりも生産ラインの効率を重視してるのさ。史実は制空権があったから通じるけど、それがないから大問題になってるはずだよ。重戦車を破壊できるのが、砲兵か戦闘爆撃機だけじゃ、戦車部隊の士気に関わるしね。今頃、ティターンズがM26かM46の生産を促進させる命令出してると思う」

「M4にどうしてそこまで?」

「敵の地上軍管理本部は生産効率と稼働率だけを考えてるからさ。M26を増産するにも、行き渡るには時間がいる。その間にM4を撃破しまくれば、敵の機甲部隊は士気阻喪で機能しなくなるさ」

キュアミューズのいう通り、M4中戦車は『チト』にすら撃破される程度の能力しかない。リベリオンの機甲部隊ドクトリンは戦前期のものから更新される機会がなかった事もあり、戦後の戦訓が伝えられ、機甲兵器の質が強化されつつあった連合軍の前に徒に犠牲を重ねるのみだ。戦車駆逐大隊も連合軍の戦闘爆撃機と対戦車携帯火器を支給されし陸戦ウィッチに狩られるなど、戦闘そのものは負け続けである。既に機甲師団にして三個分のM4や戦車駆逐車を破壊している連合軍だが、リベリオンの生産力の前には効果は薄い。リベリオン地上軍管理本部はティターンズの恫喝で遂に屈し、M26、M46の本格生産を開始したのはこの日のことであった。流石のティターンズも機甲部隊のキルレシオが悲惨極まりないレベルであることで激怒したのだ。圧倒的物量も制空権が確保できない状況と敵の重戦車に対抗できる戦車がない事は、自前の戦力を温存したいティターンズにとっても都合が悪かった。リベリオン本国軍上層部を恫喝し、ティーガーと渡り合える戦車を生産させる。戦線に行き渡るのには数ヶ月を要するだろうが、膨大な戦力を用意済みのリベリオン軍はその期間を持ち堪えさせるつもりであった。

「敵が弱体の内に決定打を与えない事には、敵が物量で押し切る可能性が大きくなる。最悪、数ヶ月で強引に敵をイベリア半島の沿岸まで押し返さないといけないんだよね。宝具や未来兵器、ボク達の力を使ってでも、ね」

「可能なんですか、ミューズ」

「無理でもやるのさ。敵も相応の超人でボク達を抑えにかかるだろうけど、倒すしかないよ。最悪、南斗六聖拳や北斗琉拳と一戦交えてでも、ね」

「いくらプリキュアに変身してても、身震いしますよ、そんな連中」

「立ち塞がるのなら、倒すのみですよ、フォーチュン。修行はそのためのものですから」

「フェリーチェ、なんだか変わったような?」

「20年近くはのび太と過ごしましたから。恥ずかしい事もありましたが、その月日を無為に過ごしたわけではありませんよ。歴代の昭和ライダーやスーパー戦隊に師事し、強くなろうと鍛錬を重ねましたから」

「みらいちゃんやリコちゃんが驚くわけだ。あの子達、のび太さんの義理の兄妹になってるのに泣いてたのよ。特に、みらいが」

「みらいとは、数年は会えなかった時がありますから…。事情はある程度は教えてたはずなんですけどね」

「実際に聞いてみると、驚くわよ。あなたが公には花海の性ではなく、野比姓を名乗ってる事、のび太さんの妹として過ごした月日の長さとか」

「のび太も驚いたくらいなんですよ。お義父さん達がトントン拍子に私を養子縁組したのは。のび太の家、けして経済的に余裕があるとは言えませんでしたし、ドラえもんと違って、学校に通わせないといけませんからね」

「そう言えば…」

「綾香さんが学費を出すって言ったんですけど、調と二人分だったから、お義母さんはかなり不安がってまして」

「実際は二人が成績優秀だったから、奨学金がもらえて万事うまくいったのさ。その頃から、のび太のお父さんが出世コースに乗り出したし」

「シビアだなぁ…」

「普通はそうですよ。学齢期の養子を持つ事はかなりの負担がのしかかる事になりますから」

調は大学を地球連邦大学で済ませているが、高校については、のび太の二年後輩という形で卒業している。黒江からの仕送りも、野比家の家計の助けになったのも事実だ。黒江はかなりの高給であるので、野比家にのび太が就職するまでの期間、仕送りをしていた。かなりの金額であるため、野比家の家計を少なからず助け、ことはの養子縁組を促した。のび太が青年になる頃には、街の中心部にあるマンションに再開発を認める代償に引っ越したが、G機関の支部があるところなので、家賃や管理費も払う必要がない。そこも野比家が富裕層にのし上がったきっかけの一つである。(新・野比家はそのマンションのワンフロアまるごとで、住民の殆どはG機関の一員である。僅かにだが、下層階に無関係の者がいるが、カモフラージュでもある)

「綾香さんがお義母さんを上手く説得して、私は2003年に養子に入ったんですよ。その頃には普段の姿を取れるようになりましたから」

「みらいがパニクってたあの写真はそれ以前に?」

「ええ。精神的に落ち着くのに数ヶ月は要しましたよ。変身をいったん解けたのはそれからです。魔法使わないと、色んな意味で苦労しましたよ…」

「だいたいわかったわ…」

「あ、アハハ…」

フェリーチェが困った事は生活に欠かせない『あること』で、変身が任意で解除できない内は魔法を使うことで、どうにかしていたと明言した。それは『用を足す』事だ。変身ヒロインであっても、『用を足す事』はしなくてはならない(キューティーハニーも経験がある)。魔法をそういうところで使わざるを得なかったのは、相当に精神的に葛藤したららしく、乾いた笑いを出すフェリーチェ。(黒江もシンフォギア世界に飛ばされていた頃、用を足す時は当然ながら、ギアを解除している)

「なんて言おうか…、その、ご愁傷さまとしか」

「あ、ありがとうございます…。風呂はそのまま浸かるしかなかったし、解除できるまで苦労しました。解除できるようになってからは学校帰りに変身してましたけど」

「プリキュアって事、理解された?」

「のび太が高校に入るあたりで、初代のアニメが流されてからは。のぞみさん達のアニメの頃からかな、注目されだしたのは。私達の代で完全に認知されて、一時はサイン攻めに遭いましたね」

「実物がいる事になりますもの。当然ですわ」

「スカーレットは自衛隊の連中にバカ受けですよ。色んな意味で」

「恥ずかしいですわ…色んな意味で」

「いいじゃないですか、ドリームなんて、現役時代の二年間がまるっとお見通しになってるし、ファースト・キッスもバレてるんですよ?」

「あれ、2010年代に入っても伝説だからねぇ。明確に恋人関係と取れる関係になってる唯一無二の例だから。ところが、肝心のドリームが出身世界で自覚したのは随分と後になってからで、後の祭りだったらしいんだよねぇ」

「それも寂しいなぁ…」

「仕方がない、ドリームも現役時代は中二の女の子だよ。大事な人って自覚はあっても、恋愛対象って見れたのは大人になってから、ってのはわからないわけじゃないよ。だから、生まれ変わってからは後悔したくないんだろうね。子供との事や自分の想いへの決着とか」

「それで結婚、…か」

「ボク達は戦う宿命を背負わされた。だけど、どういう風に生きていくか、くらいは選ぶ権利があるさ。ドリームだって、そりゃ幸せになりたいだろうさ。それに、キュアエールの応援に今度こそは応えたいんだろうね」

キュアミューズはキュアドリームが結婚を選んだ理由を悟っていると同時に、ドリームにとっての呪縛となってしまった『キュアエールの応援』に触れる。エールが何を応援したのか、ドリームはなぜ、それに応えられなかったのを悔いたのか?察しのいい者はわかっている。かなり重苦しいが、ドリームは前世で『世界の英雄になれても、一人の人間としては後悔だらけな一生になってしまった』世界線を生きたのだと。ルージュを守ろうと必死になっていたり、メロディやピーチに前世以上に心を許しているのは、その経験からだと他のプリキュア達も薄々と気づいている。ルージュも前世と違い、敢えて突き放すような言動を取らないのは、出会った際にドリームの記憶を垣間見た際、その世界線の自分が先に『逝った』ことで決定的に心が壊れてしまった晩年期の姿を見たからである。その際に、のぞみが泣きじゃくりながら言った『ずっといっしょだって、いっしょだって言ったのに…、わたしを一人ぼっちにしないでよぉぉ!りんちゃぁぁん…』という切実かつ、悲しい一言がルージュ/りんに決定的な影響を及ぼしたが、それはドリーム/のぞみも同じ事。りんを失う恐怖や、りんを家族同然に思っている故の『拠り所』を冒された怒りが、後の戦いで、のぞみが苛烈な行動と言動に走っていく根源になる。これはのぞみの中に元からあった激情が錦の熱しやすさと合体したことで起こった化学反応と言える。

「ミューズ、マーチの言う通りに、まさか」

「そのまさかさ。こんな時に話すことじゃないけど、ドリームは……」

そこまで話したところで砲兵の支援射撃が終わり、戦車部隊の進撃が再開される。押せるところまで押すつもりなのだろう。敵陣地は先程までの砲撃で蹂躙されており、戦車部隊の進撃を阻もうとする健気な歩兵共が応戦してくるが、榴弾の砲撃に倒れていく。

「おっと、仕事だよ。ボク達は戦車の側面援護でいい。機関銃もない構築途中の粗末な陣地だけど、ここを押さえれば、近くの機甲部隊を張り付かせて、戦線に楔を打ち込める。残った敵を始末するよ!」

『航空部隊』というのは実質的に建前になっており、実際は海兵隊もかくやの殴り込み部隊の様相を呈する64F。陸自に新設された水陸機動団のような『俄仕込み』ではなく、本格的な『海兵隊』(というより、23世紀の空間騎兵隊に近いが)的な性格を持っている。編成上は航空部隊なので、バトルフィールドを選ばない。(ジオンが海兵隊を汚れ仕事専門部隊のように扱ったことから、地球連邦宇宙軍が部門を新設する際に、海兵隊という名称が政治屋に忌避され、空間騎兵という突飛な名前にされたという経緯がある)

「あ、あの、私達は建前上、飛行隊なのに、どうして陸戦まで?」

「事実上の海兵隊みたいなもんだよ。戦線はどこも人手不足さ。日本もドイツも、自分達の行いが結果的に兵器不足と人手不足を招いたのに、それを悪びれもせずに、現場に責任転嫁してるからね。海軍の一部青年将校が血気に逸るのもわかるよ。この時代の日本軍の青年将校は血の気が多いからね〜。問題はその後なんだけどね」

――ミューズはこの時代の青年将校の血気盛んさを『血の気が多い』と表現する。日本は青年将校を嫌悪し、事の始末に銃殺、軍籍剥奪か抹消を含めた厳罰を行うように圧力をかけるだろう。ウィッチがその中枢を担うだろうと予測されるクーデターの首謀者は別にいると思われるが、実働を担うウィッチ将校に銃殺を含めた厳罰を与えなければならない。このクーデターは後年、『ウィッチの政治的立場を危うくし、兵科解消の一助となってしまった』と悔恨めいて語り継がれる。また、親の意向で軍隊に入れなかった世代が生じた事もあり、扶桑のウィッチ社会はクーデターを境に変革していく。ただし、この時期にウィッチの間で芽生えていた『特権意識』の払拭には役立ち、後の世代は特権意識がない事により、他の兵科との軋轢がない。その嚆矢が黒江達の整備兵への気遣いである。整備兵のウィッチとの接触禁止への不満が溜まっており、ミーナは『覚醒前』当時にその処理に失敗し、二度目の査問を招いた。それも降格の理由の一つであり、武子の判断で、整備部門はシャーリー(北条響/キュアメロディ)と圭子が管理する事になった。管理責任者は圭子で、その次席がシャーリーだ。501は形式上は64Fと共同作戦中だが、事実上は64Fに組み込まれ、隊員も64Fの幹部扱いである。501は形式上はダイ・アナザー・デイ後に休眠の予定となっているが、隊員は全員が64Fの指揮下で戦う事になっている。統合戦闘航空団そのものが既に形骸化していたのだ。44年の一年間で501のみが突出した戦果を挙げている事で枠組みそのものに疑問が持ち上がった。連合軍のパワーゲームに日本連邦が勝利したことで統廃合が進み、廃止された各統合戦闘航空団の名は501の各飛行中隊の名称という形で存続した。ただし、マイティウィッチーズのみ(508)は空母部隊であった事から、孝美の供出こそされたが、501以外では唯一の存続が許された。ただし、孝美の供出の際にあからさまに不満を表明したことによって活動凍結処分となっているので、この時期は本当に501しか活動していなかったのだ。また、彼女たちの母艦たる瑞鶴もジェット対応改修で彼女たちの手を離れたため、有名無実化していたのも事実。このパワーゲームの結果による統合戦闘航空団の事実上の一本化で欧州列強の軍事的影響力は大きく減退し、逆に国力を温存している日本連邦が覇権を握っていく。しかし、政治的にはアメリカ合衆国の意向も働くため、実質的に日米英が連合軍の切り盛りをしていくことになった。――






――64Fの戦闘データを重視した日本連邦は海軍陸戦隊を『海兵隊』として完全に独立させるつもりであり、その検討を行っていた。これは陸軍と海軍から単独展開能力を剥奪し、統合軍編成を物理的に実現させるためだったが、性急すぎる軍制改革とウィッチの権利の実質的縮小はウィッチクーデターの流れを既定路線とした。ただし、ウィッチの中に存在した特権意識の強さに顰蹙している者は大勢いたため、クーデターには驚きはなかった。だが、それよりも、事後の処理で科された罰の大きさに国民が恐怖した事がウィッチの世代交代を遅滞させた一番の要因とされている。ただし、当時は『あまりに高度な教育をされると、後で農業従事者が減ってしまう』とする農村の危惧が相互作用した面もあり、一概に彼らを責められないのも事実であった。それと引き換えに、大戦世代が軍部で長らく、主導権を握る事となる。『世代交代の真の意味での完了は1986年以降の話である』と2000年代以降に揶揄されるほどの『長期政権』となった。クーデターはその序章となるわけだ。『世代交代』を声高に叫んだはずが、その真逆の結果を出現させるわけだ。ウィッチはそこから10数年はMATが主な就職先になり、最盛期を迎えていく。それが89年に『代替役』とされる理由だが、MATはウィッチのふるい分けを進ませたという功績と、軍部で大戦世代が80年代まで『支配層』になる結果を生んだという『結果』を招いたのも事実である。その過程で軍隊内部で、華族や士族という身分の区分は書類に記される程度の扱いとなっていく。身分に関わらず、平等に扱われるという事を軍隊が最初に実践したのは、日本にとっては、大いなる皮肉であった。兵科の維持が困難になったのは、第一に政治的後ろ盾の竹井退役少将の死去、第二に戦役の終結の度に多くが退役した、第三に完全新規の入隊が長らく少数で推移した。これらが兵科の解消の経緯だ。他の要因は義勇兵が特攻を躊躇なく実行したり、アウトレンジ攻撃を理想的な形で行える対艦ミサイルを大規模に投入することで旧来のウィッチ主体の戦法が陳腐化した事で、洋上でのウィッチの活躍が狭まった事が挙げられる。一部のジェット時代の教育に適応したエースパイロットやベテランと違い、ダイ・アナザー・デイ当時の主力であった層は通常兵器との戦闘に四苦八苦し、怪異との戦闘で身軽さを求めて、物理的な防弾装備を外していた事が災いし、未帰還になるケースが増えていた。また、帰還できても八割はシェルショックに罹患するため、司令部は扱いに難儀し、ウィッチの運用は自然と縮小に向かっていた。そんな中でも活躍できる者が尊ばれる風潮が生まれていく――








――のび太とドラえもんはいつ別れたのか?ことはと調は『のび太が大学を出て、就職した時に使命を終えた』とし、質問したプリキュア達にもそう答えている。のび太曰く、『ドラえもんとは小学校の半ばに出会って、大学を出て、就職するまでいっしょだった』とのことなので、少なくとも、9歳ごろからの15年ほどを共に過ごした事がわかる。ただし、必要上、ドラえもんとのホットラインはその後も維持しており、ダイ・アナザー・デイでは子供のび太と青年のび太がバトンタッチし、戦いは青年のび太が担当している。これは子供のび太が小学六年になるタイミングだったなどの都合で、青年のび太は『ガキの頃にやり残した仕事を片付けてるよ』と冗談めかして語っている。のび太は少年時代に出木杉英才に抱いていた嫉妬を乗り越え、青年時代以降は彼と家族ぐるみの付き合いの関係にある。日本や世界各地を巡る仕事の関係もあり、語学レベルは水準以上で、バイリンガル化している。父親ぶりは自分の父親と酷似しているが、『一人っ子』(ドラえもんが事実上は兄弟のような間柄になっていたが)であった分、のび助より子供の頃の成績で見栄を張る事がある。子供に見栄を張ったものの、過去の自分自身にバラされる珍事に見舞われるなど、コミカルさも多分に残っているのび太だが、仕事では有能な官僚兼スイーパーである――

「うちの倅はわんぱくでね。カミさんに似たんだよ」

「思いっきり羨ましがれる家庭環境よ。少なくとも、マーチとフェリーチェは常駐だったんでしょ?」

「ボクとカミさんがいない間の倅の警護も兼ねてたのさ。カミさんも最初は警察官になったんだけど、倅を身ごもったから、G機関に転職したんだよね。いや、ガランド閣下が引き抜いたのさ。勤務時間は自由って奴と高給を餌に。なんだかんだで共働きは続いてるから、マーチに警護を頼んだのが最初だよ。それで、はーちゃんも巻き込んで、倅の面倒を頼んだんだ。タイムマシンで入り組んでるから、みらいちゃんも一回じゃ、全部は理解できないだろうね」

最近はのぞみの結婚の段取りの相談もあり、その親友のキュアルージュ/夏木りんとコンビを組んでいるのび太。のび太自身が『君と年はそんな変わらないよ』と言って緊張気味のルージュをほぐしたこともあり、、現在はルージュはタメ口を利いている。

「ややこしすぎて、あの子、一回聞いただけじゃ無理だと思うわ。」

「ピンクはキュアハートを例外に、ほとんどが学業は残念だって言うけど」

「フローラが次点、アホの子はドリーム、ハッピー、メロディが三強ね。ま、なぎささんの頃からどんぐりの背比べみたいなのが大半だけど」

「キュアハートは突然変異みたいな扱いか」

「あの子とフローラ、ミラクルくらいかな。学業が現役時代からいい部類に入るの。運動神経はなぎささんと咲さん、ラブ、響、マナ、めぐみの5人か。素は。プリキュアになると、素が低くても能力は飛躍するから、あまり差はないわね」

「なるほど。図上演習は今、誰が揉まれてるかい」

「えーと、ダイヤモンドよ。あの子、ハートの参謀だから、戦略シミュレーションゲームも得意とか言ってたなぁ」

「ロゼッタはまだ来れないとか?」

「ハートが来た便で来るはずが、生徒会前副会長が留年しそうになったから、辞退したみたいで。あの子、多分、意味がわからないくらい上手いかも…」

「大洗女子学園の優勝の立役者で、西住流戦車道の本家の次子。これだけですごい箔だもんね」

「実戦じゃ〜って言うやつ出てくるって思うけど、キュアロゼッタと同一人物って分かると、収まると思うわ」

「色々とチートだしなぁ」

「のぞみ、何か焦ってるみたいなのよね。なんだと思う?」

「やはり、プレッシャーだと思うよ。負担は軽減されたけど、古参として、後輩を束ねるってのは並大抵の苦労じゃないよ。プリキュア5はリーダーそのものは明確に決めてないけど、オールスターズだと人数が多いから、指揮序列は自然と定めないとならないからね」

のぞみは現役時代はチームリーダーへの依存ので生じるだろう腐敗を懸念し、最後までチームに明確なリーダーは定めなかったが(現役時代、ブンビーにリーダーはいらないと断言した事もある)、軍隊に籍を置く以上は対外的意味でもリーダー格を定める必要があった。なぎさと咲に次ぐ古参格かつ、三代目の中心戦士の自分がその立場に就かなくてはならないことで、強いプレッシャーと精神的ストレスがかかっていることが、のび太によって示唆された。現役時代の明朗快活かつ前向きな性格も成人後に陰が差したのか、自分がプリキュアとして戦う事そのものに依存気味である事はのび太やルージュに懸念されている。キュアマーチはその陰を知る故にキュアエールに思うところがあり、フォーチュンに本音を漏らしている。

「あの子、大人になった後にだんだん、私達と疎遠になっていったのに耐えきれなかったんだわ。子育てに躓いたのに、周囲に助けを求められなかったのも今の精神状態に繋がってると思うと…」

「それも転生の一因だろうけど、君たちにもう一度、現役時代の姿で会いたいっていう願いが奇跡を起こしたと考えるべきだよ。あの子にはその資格がある」

「のぞみはそれを望んだと?」

「ぼくの推測でしかないけど、話を聞くとね。マーチはそれで、エールに思うところがあるんだろう。混同はしないと言ってるから、それはいいけど、エールが事を知ったら、落ち込むだろうね」

「その子はその名の通りに応援すると言うけれど、結果的にドリームの心を縛った事に?」

「マーチの記憶によるとね」

出身世界が異なるため、ルージュにはいまいちわからないが、キュアエール(HUGっと!プリキュア)が自覚のない呪縛をキュアドリームに科してしまったというのは、キュアマーチの証言だ。第二期中盤以降のプリキュアは生年月日が2000年代に入るため、第一期プリキュアとは世代が違う。(第一期プリキュアは90年代生まれである)そこもドリームの前世で暗い影を落としたと言わざるを得ない。アニメと同じ経緯を辿っただろう『基本世界』と直接の関係がない『派生世界』(平行世界)の一つではあるが、とにかく、全てが成人後に裏目に出てしまった世界の出身であるための闇があるのは確かだった。

「ドリームは何を求めてるの?」

「ボクが言えたことじゃないけど、あの子は拠り所が欲しいのさ。立場上、表向きは『中島錦』なわけだし、精神が別人になってるのに、錦ちゃんの家族と暮らすってのも気まずいでしょ?記憶は引き継いでも、意識は別人格だから。だから、君やはーちゃんのサポートが必要なのさ。僕は『受けとめる』ことはできても、一から十まではサポートできない。あの子に近しい立場の君やはーちゃんだからこそできるものがあるさ」

「あたしやはーちゃんにしかできない事……」

「ピンクチームは殆どが出身世界がバラバラで、個々の事情に立ち入るのは憚られてるし、この場でできるのは、出身世界は違えど、同じチームの君か、立場上、ほぼ第三者のはーちゃん、後はメロディ、ピーチだろう。現役時代、仲が良かったでしょ?」

「確かに。相談してみるわ」

ルージュはその三人と共に前線でのドリームのサポートをするようにアドバイスを受け、その日の内に三人に相談し、善後策を考えていくのだった。







――この頃の連合軍は戦艦に求められる性能が飛躍してしまい、欧州型戦艦の多くが陳腐化してしまった。平行世界から持ち込まれたH43級戦艦、新造時の大和に匹敵する防御力を持つモンタナ級戦艦が現れた結果、欧州型戦艦はキングス・ユニオンの新型を除いて陳腐化した。最も、扶桑とて、紀伊型戦艦以前の戦艦が大和型戦艦以降の重戦艦で置き換え、統一せざるを得なくなった事で戦艦戦力の多少なりともの純減(二桁は維持できるが)は免れなくなった。空母は大型高性能化で維持費が高等したために調達数は減らされ、強襲揚陸艦が戦後型たるアメリカ級をベースに量産される流れとなる。その分、数を揃えるのに時間を要する事となる。また、ウィッチ運用に必須とされていた魔術処理の術師の失業対策の都合もあり、関係者との折衝に時間を要するため、未来のストライカーを要する64Fが重宝される事になった。これは公然の秘密であり、空母部隊にも口外禁止を条件に貸し出し、空母部隊に利益を与えている。戦闘技能維持のための出撃は必要だが、ロングレンジ兵器が使われることで萎縮したのだろうが、長距離移動すら制限されれば、技能維持に支障を来すと現場が提言したことで、兵器の貸し出しが空母部隊に口外禁止を条件に決まったのだ。海軍内部にY委員会に恭順している者達は多いが、実務的な都合も大きく絡むため、何かかしらの餌は必要であった。昭和天皇の願いとは相反するが、軍閥化していた統制派・皇道派・艦隊派、条約派の四つを淘汰し、Y委員会が軍を統べるには、比較的に良識的軍人が多い条約派を取り込み、各派閥の重要人物を切り崩すか、中立的な高官を味方につける必要がある。その意味では、Y委員会は見方を変えれば、『政財界を味方とした条約派が陸軍良識派と政財界要人を取り込んで生まれた派閥』とも取れる。海軍は二度のクーデターで人気が落ち気味であり、連合艦隊としては、なんとしても三度目は防ぎたかったのだが、それは起きてしまう。小沢治三郎はその責任を取り、連合艦隊司令長官を辞し、その後任に山口多聞が抜擢される。山本五十六の手引きで実現した抜擢人事で、人材活用に関しては史実と大差がないと揶揄された扶桑海軍だが、機動部隊指揮官経験のある者を二代続けて連合艦隊司令長官に添えることで、日本海軍より実力重視である事をアピールし、空母機動部隊第一に変革している事を示すための神輿に近かった。しかしながら、実務タイプである山口多聞は有事の司令長官としては最適とする声はあり、小沢治三郎の要請もあり、ダイ・アナザー・デイ中には検討が開始されているのだった――



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