外伝その417『海戦の本番4』


――ダイ・アナザー・デイの海戦は次第に乱戦の様相を呈していく。リベリオン側も耐久力を強化した艦艇を増やしたため、完全に世界三大海軍系の艦艇以外はお呼びでない状況に変わった――

「敵のモンタナ級の改良型はしぶといですな」

「うむ。防御力を強化したと見える。第二戦隊にに打電。警戒されたしだ」

「ハッ」

連合艦隊と敵艦隊は同航戦を崩す形で航行し始めた。第一戦隊は20インチ級の艦砲を有する関係で敵に優勢を保っているが、第二戦隊は敵が対等の砲を得たこともあり、苦戦中であるためだ。そのため、富士はその巨体で弾除けも担っていた。被弾率は高いが、防御力で攻撃を寄せつけないのも富士の存在意義だ。

「敵アラスカ級、轟沈!」

「やったのはどの艦だ」

「クイーンエリザベスU号です」

「ふむ。ブリタニアの連中の戦果だな」

敵の護衛を勤めていたアラスカ太巡が見事に艦首をもたげて轟沈する。敵は護衛艦らが次第に落伍し始めている。その内の最初の大物がアラスカ級であった。46cm以上の口径を誇る大戦艦が跳梁跋扈する戦場にアラスカ級は場違いなのだ。ややあって、富士の56cm砲が火を吹く。大和よりも大口径化した砲は相応に破壊力を発揮、モンタナ級の艦首の先端を一撃で消し飛ばす。

「ふむ、艦首を吹き飛ばしただけか。次はバイタルパートに当てるように」

「了解」

海戦は連合艦隊が火力で押す展開となっているが、油断は禁物である。海戦はそういうものだ。仮想戦記でありがちな『火薬庫の誘爆での相打ち』は現実には起き得ないが、ラッキーヒットによる大損害は普通に起きるので、連合艦隊は主力艦を順番に叩いているのだが、敵もさるものであった。

「敵機来襲!」

「乱戦に持ち込む腹か、対空戦闘、用意!護衛艦隊は対空戦に専念させろ、敵艦は我ら打撃艦が引き受けると」

連合艦隊は上空に64Fの精鋭を配していたが、敵は物量での乱戦に持ち込もうとした。戦闘機だけで500機以上と凄まじい陣容であった。

「敵は700機以上。500機はヘルキャットだ」

「嘘だろ、ヘルキャットだけで500機だと?」

「護衛空母からも上げたんだろうね。後続も続々来るよ。しかも爆弾を搭載してる」

「海軍がヤーボの真似事を大規模にするたぁな。ヘルキャットの在庫整理のつもりか?船は爆弾じゃ沈まんが、投弾コースに入れるなよ!護衛艦の主砲とファランクスに援護射撃させる。一航戦のウィッチを無事に上げさせろよ」

対空戦闘は黒江達がありとあらゆる乗機の武装を駆使しつつ、まだ機動兵器の訓練を受けていないプリキュア達も混ざっての大混戦となった。何隻かの海自の護衛艦の主砲とファランクスが火を吹き、時には対空ミサイルも飛ぶ。犠牲を覚悟の上で爆弾を投下する敵もあっぱれなもので、甲斐(改大和型戦艦二番艦/大和型戦艦四番艦)が主砲塔に爆弾の直撃を食らう。もちろん弾くが。

「凄い、弾いた!」

「大和型戦艦の主砲塔は元々、270ミリの装甲を天蓋に張ってるんだ。ヘルキャットの爆弾が一個か二個当たったくらいじゃ、ビクともしないぜ!」


ヘルキャットは中型爆弾を何発か携行可能だが、それくらいでは大和型戦艦には通用しない。それは承知していたか、本命の機体がHVARロケット弾を一斉射撃、甲斐の細かい艤装品を吹き飛ばす。護衛艦群はすぐに『ロケット弾』携行機を優先目標とする。ロケット弾は単純だが、モノによっては戦艦に充分な傷を負わせられるからだ。甲斐はアンカーキャプスタンのコントローラボックスが吹き飛ばされて甲板で直接操作出来なくなるものの、元々、化学兵器対策が施されているため、運用に支障はない。

「ロケット弾装備の奴を狙え!一発でも護衛艦に撃たれて、当たったら『コト』だぞ!」

21世紀の日本のマスメディアは自衛官の死傷にうるさく、攻撃で死傷者が出るものなら、鬼の首を取ったように騒ぐ。そこが扶桑が日本のマスメディアにあまり情報を開示しない理由である。戦闘に死傷者はつきものにも関わず、だ。そこも黒江がマスメディア嫌いになった理由でもある。

「ええい、敵が直線飛行してくれるのが救いか!」

キュアハートもリ・ガズィ・カスタムのあらゆる武器を用いて撃墜しまくるが、とうとう頭部バルカンの残弾が尽きる。

「バルカンがカンバンです!」

「Eパックが無くなったら、サーベルを使え!」

MSのライフルはそう連射が効かないため、最後にはBWSを使うのがリ・ガズィ・カスタムの戦法である。リ・ガズィは機体性能はいいが、『BWSが特攻兵器同然』という理由で量産が見送られていたため、カスタムでTMSに先祖返りしたのは当然の結果である。BWS自体、TMSのコスト削減のための試行錯誤だが、却ってコストがかかるため、素直にTMSとして作ったほうが良かったのだ。

「サーベルのエネルギーが切れたら、BWS形態で敵をびびらせてから戻れ。そうしたらエンジェルモードかパルテノンモードで出直せ」

「わかりました」

「俺はサーベルで突撃する。昔、キンケドゥさんがF91で使った戦法だ」

「大丈夫ですか?」

「そのために、プルトニウスに乗ったからな」

黒江はプルトニウスの両腕にサーベルを持たせ、かつてのガンダムF91のように手首を高速回転させつつ、突撃する。回転の合間に腕部ビームガンも使い、とにかく敵を落とす。アニメでは存在しない未知のZ系であるので、その勇姿は注目を浴びる。

「くぅ。こういう時に機動兵器乗ってないとキツイなぁ」

「今のあたしたちじゃ、先輩達みたいに安定して小宇宙使えないし、精霊の力はまだ試してないしなぁ。とにかく、地道に行こうよ、ピーチ」

「うん。技を乱発すると、体力続かないしなぁ」

キュアドリームとキュアピーチは最強形態だが、地道に戦うことを選んでいる。この時点ではまだ転生に伴う強化のポイントを使いかねているからだ。だが、キュアハートがここでやらかす。

「あ、サーベルもエネルギー切れた!」

「このバカ!本当に切れるまで使い切るなよな、帰り道どうすんだよ。ったく、戦車道でティーガーで岩に乗り上げて履帯切るくらいのポカだぞ」

「それとこれは関係ないですよぉ!」

「ったく、格闘は歴代有数の強さの割にポカしやがってからに」

「ハートはまともなほーですよ、先輩」

「お前がいうか?テストで40点……」

「わーわー!!後輩の前でやめてくださいよぉ!」

戦闘をしつつ、ドリームとハートはいじられる。いじられポイントがこの二人は多いのだ。もっとも、プリキュアとしては完璧超人に近いとされる相田マナだが、『逸見エリカ』としてのいじられポイントは多いのだ。

「フフフ、芳佳ルートでお前らの現役時代、知ってるもんね、俺」

「こんな時に言わないでくださいよぉ!」

「完璧とか無いわ、誰しも弱点は有るからね。僕を見てみ。ガキの頃は弱点だらけだったからね?カミさんにも劣等生なんて言われたこともあるし」

「のび太くん」

「ま、大人になっても下手の横好きで野球は続けてるさ。マナちゃんは歌が苦手だろ?」

「まこぴーや六花に散々言われたよぉ〜、それ。亜久里ちゃんにも言われてさー…」

「あたしは現役時代はエアギター以外に特技がなくてさ…」

「あれ?のぞみちゃん、そんな特技あった?」

「みんなには言わなかったけどね、これ」

のぞみは現役時代、エアギターが唯一無二の特技であった。その事から、黒江は『音感持ちじゃね?』と推測している。(何の訓練無しでエアギター技能はかなりの特技であるため)

「あ、お前。意外にマネージャーの才能あるんだろ?うららから聞いたけど」

「うらら、覚えてたんですか。あの時のこと」

「芳佳がマークしてたぞ。意外な事実って」

「くぅぅ……なんか無性に悔しい…」

「お前は変身前と後のギャップが大きいほーからな」

「みゆきちゃんがネタにしてたけど、確か……」

「ら、ラブちゃん!それはなし!」

「いや、もうみんなにバレてるよ」

「し、しょんなー!?」

「ああ、りんがトラウマってるクイズ回のことか。お前、敵にそのレベルのおつむって思われてたのな」

「……思い出したら、ムカムカしてきます〜!」

「ああ、その回なら、僕も大学の頃に見たな。たしか君、敵に幼稚園か保育園みたいな部屋に……」

「あんな反則ないってー!人をバカにするのも…」

「現役時代はそれ言える立場でも無かったろ」

「ぐぬぬぬ……」

「勉強はしなくて良い、でも学ぶ事を忘れちゃいけない。高校の時の先生に言われ、僕自身も長年の経験で得た教訓さ。だから、今、こんなことできてるのさ」

サイクロンビームを撃ちつつ、ダブルスペイザーを横滑りさせ、敵機を落とすのび太。レシプロ機相手でも、手加減無用なのがのび太らしい。


――ちなみにのび太は高校二年時に担任から『勉強ってのは『勉めて強いる』とも言え、嫌でもやらされるもんだがそんなんじゃ頭には入らん、学習は『学び習う』事だから自分で進んで教えを乞う姿勢になる、そう導くのが教育だと考えてる。義務教育じゃない高校の授業、受けたくないなら寝てようが帰ろうが私は授業の妨害さえしなれば何も言わんよ』と言われ、感銘を受けた。のび太の精神を成熟させる最後の一打がこの時の出来事であるので、のび太は高校でそれを学ぶことで大学受験に打ち込めたとのこと――

「この戦いが終わったら、ドラえもんがハテノハテ星雲のドリーマーズランドに連れて行くってさ」

「銀河超特急、23世紀でも?」

「復活記念だって。統合戦争で連絡が絶えたけど、なんだかんだで存続したみたいで」

統合戦争前のひみつ道具時代、反重力エンジンと光子エンジンとワープ理論を持っていた頃、地球人類は銀河の端にある小さな星雲に入植していた。それがハテノハテ星雲にいる地球人類であった。ひみつ道具時代が終わった後は機関車型宇宙船を独自に運用していたが、地球本星が外宇宙に再進出し、本星にその存在が思い出されると、勢力圏に組み込まれ、一地域扱いで属することになった。この時に復興した銀河超特急のネットワークは30世紀になっても維持され、復活したどこでもドアの保有と使用に一定の規制がかけられた兼ね合いもあり、『重要な交通機関』として復活。24世紀以後には『一般人が楽しめるレベルでは最高級の宇宙の旅』と位置づけられている。

「僕たちはVIP扱いだから、列車を一個貸し切りできるのよね。あの冒険でハテノハテ星雲を破綻から救ったから」

野比家は銀河超特急運行会社の大株主であると同時に、一族の一人(小説家になった野比家の分家の次男)が再興に尽力した事から、VIP扱いである。

「のび太くん、すごーい!」

「ヤドリに操られて、けっこう大変だったけどね。ドラえもんが『禁断の星』でどら焼き恋しがって…」

「ドラえもん君、もしかして?」

「そうだよ、ラブちゃん。あいつはどら焼きを三日も食わないと、麻薬中毒患者みたいになるのさ。良い子のみんなには内緒だけど」

「はーちゃんが慌てて買いに行くレベルなんだってさ、ラブちゃん」

「あいつにとって、どら焼きはドラッグみたいなもんさ。親父のタバコと一緒」

ドラえもんのどら焼き好きはもはや麻薬中毒患者のレベルの中毒であり、三日も口にしないと正気を失う。これは結局、老年期になるまでタバコの本数すら減らせなかった自分の父親のニコチン中毒と同レベルに見ている証であった。

「今なら四次元ポケットにファミリーパックの五個入りどら焼きを非常食にストックしてるけど、あの時はまだそこまで気を使ってなかったみたいなんだよね」

「はーちゃんに買い物いかせたって、どんな?」

「はーちゃんも腹ペコになると、変身してても理性飛ぶからね。僕が小学生の頃は二人のおやつの確保に腐心したもんさ」

「え、フェリーチェになってても?」

「そう。その時が一番苦労したもんだ。調ちゃんが慌ててシンフォギア姿で駅前の和菓子屋に買い物に行ったりね。最近はキュアマーチが買い込んでくれてるから、助かってるよ」

「なおちゃん、ドイツ軍の給金、そんなにいいのかなぁ」

「少佐だしね」

のぞみたちはキュアマーチを現役時代と同じく、『なおちゃん』と呼んでいる。転生先はラウラ・ボーデヴィッヒだが、プリキュアに変身している方が多くなったからだろう。

「なんで、転生先の容姿をあまり取らないんですかね、なおちゃん」

「本人曰く、ISの問題もあるそうだ。いくら改良しても、形状的にかさばるし、プリキュアになってたほうが色々と楽だかららしいぞ」

ラウラはここのこころ、キュアマーチとしての活動が常態化しているが、それはいくら小型化しても、自分の機体はかさばる事、ラウラとしては動きにくいところも多いのが本当のところだろう。

「曰く、プリキュアしてるほうがまだ動きやすいって奴だが、むしろ、プリキュアのほうが有名じゃね?」

「ですよねぇ」

一同もそれについては同意らしい。ラウラの真意はどうであれ、どっちみち目立つなら…という精神なのだろうか?それとも、大仰な装備である自分のISを気にしてのことだろうか。それはわからない。もっとも、ISとしての原型がほぼ無くなり、存在が半聖衣化した赤椿の例もあるので、『ISより気軽に使える』というのが実際の理由だろうとは目星はつけられている(セシリアやシャルの機体は装備にもよるが、装甲部を小型化すれば、コンバットスーツに似た感覚で動かせるため、砲撃戦対応のISは使いにくいのだろう)が。

「ま、今は連中を撃退すんぞ!鉄也さん達が来るまで持たせろよ!」

『了解!』

一同の目的はスーパーロボットの来援まで連合艦隊を守ることでもあるため、補給を挟みつつ、奮戦する。プルトニウスに持たせたサーベルを回転させつつ突撃する黒江。それぞれの新しい力を模索しながら使い、試行錯誤中のキュアドリームとキュアピーチ。MSに乗りつつ、ポカをやってしまうキュアハート、そしていぶし銀のサポートを見せる青年のび太。子供の頃から、血気盛んなジャイアンのサポートをすることもあったため、ある意味では適任と言えるポジショニングと言えた。










――この頃、聖闘士にジョブチェンジした大人切歌と調は当時の響、マリア、翼、クリスを凌ぐ戦闘能力を発揮し、子供切歌のサボタージュをやめさせる効果を挙げた。大人切歌は聖闘士という『世界』を過去の自分に知らしめる目的で来訪していた事もあり、過去の自分の分も戦線で活動。切歌の功績は実質的に白銀聖闘士としてのそれであった。――

「うぅ。大人のワタシはいったい何がどうなってるのデス…?」

「……長い夢を見てるみたいだったけど、今なら分かるよ。あの力はみんなを守るための究極的な力…。聖遺物のポテンシャルを本当に引き出せて、神様に本当の意味で太刀打ちできる…。あの領域にたどり着きたい……」


響はキャロルを侵食し、ついには魂を捕食したエリスの前に無力であった自らに悔しさを感じつつも、黒江達が持ち、本当の意味で神と戦える力である小宇宙に羨望を覚え始めていた。黒江が滞在していた頃は『調の立場を乗っ取った』形で滞在していた黒江への反発心からムキになっていた事を自覚し、また、自分の迂闊な言葉でがきっかけで出奔した調の持つ『騎士道精神』を沖田総司の因子が覚醒めることで垣間見た『新選組隊士としての誇り』を知る事で、武士道や騎士道という戦う者の考えを真に理解したのか、ようやく元に戻れた立花響は沖田総司との共存を認めつつ、小宇宙を会得する事で大人切歌や調、黒江が抱く想いを理解しようとしている。

「私にはまだ、心の奥に誰かの『カタチ』があるのを感じる…」

「え!?」

「漠然とだけど、なんだか…。あの子達と似た感じがするんだ……。私は誰かと手をつなぐことを綾香さんへの反発でしなかった。だけど、こんな私にも、あの子達(プリキュア)のような……誰かの笑顔を本当に守れる力があるのなら…」

立花響はこの頃、自身が持つ『もう一つの因子』が誰のものであるのか。それを漠然と自覚しているような節を覗かせた。自分が結果として、自分の信条に反する行動を取ってしまったことを深く悔いていると同時に、小宇宙への羨望を強く表し、歴代プリキュアを『誰かの笑顔を本当に守れる子たち』と見ているため、自分の中に眠る『もう一つの因子』が『プリキュアの誰かのもの』であることを願っていた。子供切歌はいまいちよくわからないようだったが、立花響は薄々と気づいていたのかもしれない。自分の内に眠る『誰かのカタチ』が『プリキュアの系譜を継ぐ戦士』の誰かのものである事、自分がそう願う事はキャロルを救えなかった悔いから来るものであることを。

「私は……自分の心にあるモノを沖田さんと出会って、『見ること』で感じて『なんとかしたい』って思った。あの子達が守ってるものを私も守りたいんだ。自分の想いを今度こそ貫きたいから、誰かのために拳を握りしめる。それが私にできることだって思うから」

響は沖田総司と向き合うこと、歴代プリキュアの存在をすることで、自分が発露してしまった暗部と向き合い、今度こそ誰かのために『信じて握りしめる事』を決めた。彼女らしい立ち直り方であり、黒江と調への自らの反発と嫉妬心に自分なりに折り合いをつけたと言える。自分を苦境に追いやった張本人と言えるなのはへの悪感情は微塵もなく、むしろ『自分の闇と向き合う機会を作ってくれた』とするポジティブさはかつてののぞみに似ていると言え、ある意味で彼女の持つ強さの表れと言えた。



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