外伝その422『中国とロシアの野望とは』


――地上空母。かつてのナチス・ドイツが考案し、東西冷戦時代の米軍もアイデアを再利用せんとした兵器だ。その具現化されたものの出現に連合軍は狼狽した。ゴルゴの調査でアイデアは東西冷戦時代に煮詰められていた事が確認された。ティターンズが陸上戦艦部隊を投入、陸上での戦局が悪化した連合軍は戦線の整理を余儀なくされた。また、けして大型の空母ではないが、この時代からすれば、超兵器である対空ミサイルや近代的な近接防御火器を備えているのと、この時代では有効性が模索されていた装甲空母であった事もあり、この時代における航空ウィッチの標準装備である250kg〜500kg爆弾程度ではびくともしない強度を備えていた――


――戦場――

「そんな馬鹿な……500kg爆弾を当てたんだぞ!?」

「次弾投下、急‥…!?」

爆撃ウィッチ部隊は進撃する超兵器『地上空母』を止めようと、必死に爆撃を当てるが、標準装備のウィッチの携行可能な中では最大級の500kg爆弾にもびくともしない飛行甲板を備える地上空母に戦慄する。

「が、あ…!?」

そして、通常兵器との戦闘に慣れていないのが仇となり、防御の間もなく近接防御火器に蜂の巣とされ、若い命を儚く散らすこととなった。ウィッチの評判が戦場で下がった原因はこれら超兵器に一蹴される光景が立て続けに見られたからで、この被害がストライカーへの防弾板装備が見直されるきっかけとなった。同時に急降下爆撃に熟達したウィッチが短時間で多数が失われていったため、その代替として対地ミサイルと誘導爆弾が普及し始める。また、近接防御火器や対空ミサイルなど、敵に超音速のジェット戦闘機に対応できる装備があるため、シュワルベ装備のウィッチによる爆撃も見送られた。爆撃ウィッチ部隊はメンツにかけても、地上空母への攻撃を数度に渡って大規模に行ったが、進撃は止められずじまいだった。それどころか多くの熟練ウィッチが失われる大惨事を招いた。Gフォース航空部隊が奮闘し、地上空母の進撃は食い止めたものの、ウィッチの面子は丸潰れであった。


――64F 地上組――

「爆撃部隊は……そう。壊滅したのね」

キュアマーメイドはキュアフォーチュンからの報告を受け、表情を曇らせた。面子のために敢行された五回に渡る攻撃は見るも無残な結果を招き、高精度の急降下爆撃可能な『技能・甲』のウィッチが多数戦死、あるいは後送される大惨事に終わったからだ。

「地上空母は装甲空母でもあるからね。500kg爆弾を数発当てたくらいじゃ、びくともしないよ」

のび太はそう断言する。

「フォーチュン、味方の命中弾は?」

「申告によると、10発程度だそうよ」

「まさに蟷螂の斧ね。これならやらないほうがマシだったわね」

「足止めにはなったさ。これで対地ミサイルや対艦ミサイルの大規模投入の大義名分は得られたよ。急降下爆撃は熟練が必要だし、これからは廃れていく攻撃だよ」

のび太はウィッチの犠牲の大きさをある程度は予期していたようだ。それを対艦ミサイルと対地ミサイルの普及の大義名分として司令部が利用するだろうと述べる。また、旧式化したレシプロ攻撃機はA-1以外は次第に淘汰されていったため、それは正しかった。

「しかし、これからどうするのです」

「やるしかないさ。君たちはそのために集められたようなものだからね。お誂え向きのエンブレムも選んどいたよ」

「炎の鬣のユニコーン、ですか」

「ああいう敵への反攻のシンボルにはなるだろう?それに、東郷も予測してるけど、旧東側諸国や日本の左派が資金援助してるだろうからね。それと、日本が軍事的に再興するのが気に入らない国々とかね」

「23世紀だけでなく、21世紀の世界からも干渉を受けるとは」

「だから、もっと未来の30世紀にいる宇宙海賊たちに助力を頼んだのさ。彼らが抑えてくれるから、戦線の致命的崩壊は避けられてる」

「どうして、あなたはここまでしてくれるのですか?」

「友達が困ってるのを見過ごすほど、ボクは冷血漢じゃないさ。それに、人を助けるのに論理的思考がいるのかい?」

のび太はダイ・アナザー・デイであらゆる方面で尽力し、扶桑の昭和天皇から瑞宝章(のび太は軍人ではないため)の授与に預かり、扶桑爵位を得るに至る。その爵位は永世のものであったため、ノビタダもその爵位を継承している。また、のび太はドラえもんの影響で『通りすがりの正義の味方』と自身を称しており、黒江達のみならず、プリキュア達の手助けにも尽力している。また、『何かしらの手段で人を超えたって、人は人さ』とも述べており、人から神と同等の存在に上がった者にも寛容である。そこが気に入らない者たちの琴線に触れるのだろうが、そもそも海底鬼岩城や鉄人兵団、竜の騎士からして、『自分達が関わる必要はない存在』であったと言えるため、のび太たちは性分的に首をつっこまずにいられず、それが結果的に世界がいい方向に向かうのに繋がったと言える。だが、彼ら亡き後の時代、中国とロシアは復讐と野望のために全世界を巻き込んだ世界大戦を起こしてしまい、それが長期化してしまい、日本連邦が築いた機械と人の共生社会を崩壊させてしまう。その時代の伏線はなんと、ダイ・アナザー・デイ中には存在していた。

「中国とロシアのマネーがティターンズに流れてるよ」

「え!?」

「東郷に言われて、スネツグ君(米国籍になったスネ夫の実弟。叔父の後を継ぎ、若き実業家として名を馳せている)のルートで調べた。どうやら、中国とロシアはマネーロンダリングとかでティターンズに金を渡してる。物資提供の見返りだろうね」

中国とロシアは日本連邦の勃興を快く思わず、21世紀の頃から野望と復讐心を滾らせていた。22世紀まで雌伏の時を過ごし、アメリカ合衆国の権勢に衰えが見えた時代に実行に移すのだ。

「日本連邦の勃興をあの二国は快く思ってない。だけど、ロシアは学園都市にボコされて、かなりの軍事力を失ってる。それを再建した時代に事を起こす。それまでは間接的な妨害を行うのさ。今回のこともその一環だよ」

「しかし、その割にオラーシャに冷淡な気が…」

「ロシア連邦はロマノフ朝を打倒したソビエトの衣鉢を継いでるからね。だから、『後継国家』の名目と裏腹にロマノフ朝に冷淡なんだよ。目立たないけれど、歩兵用の兵器をロシアは流してるようだしね。厄介だよ、連中は」

ロシアと中国は統合戦争後の時代に『文明を後退させた元凶』としてのレッテル貼りをされ、かつてのナチスに半ば近い扱いをされることになり、その汚名返上に年月を要することとなったが、文明の後退は彼らとて想定外の事態であったようであり、進みすぎたデジタル化の弊害への恐怖が以後の時代における文明の再デジタル化に対する壁になってしまった面があるのは否めない。携帯電話などの再普及に一年戦争から十年以上の歳月を要したのも、そのあたりの事情が大きい。M粒子の登場で国家や組織による情報統制がやりやすい時代に逆戻りさせてしまったことを後悔した元・ジオン公国の技術者などは多くが後退した電子工学などの復興に尽力し、アナハイム・エレクトロニクスやサナリィの技術者へ転じた。その経緯から、地球連邦政府がミネバ・ラオ・ザビのサイコフレーム封印提案を一笑に付すのである。また、技術封印にアレルギーを持つ地球連邦の気質をミネバが読めなかった事も、この時期に彼女が連邦政府との交渉で主導権を取れなくなった理由であった。(交渉が難航しているうちに、強硬派がネオジオングを完成させてしまう)ジオンの権威もハマーンの敗北などを経て、大きく低下しており、ジオンそのものがタウ・リンに利用されてしまうのである。そして、彼の行いの責任を負う形で、サイド3の主要コロニーは移民船団に衣替えし、地球圏を去ることになる。――








――扶桑連合艦隊は規模的にこの時期は世界三位であった。日本は自分達の戦訓から、弊害が大きいということで連合艦隊の解体と任務部隊制への移行を一旦は決めたのだが、これが報じられた後、扶桑国民が大反対したために案は実行されず、その代替に『海援隊を公営化して、海上護衛総隊に組み込む』のだが、ロシアとの戦争で形骸化が進んだ海保の再建に躍起になる海保長官が海援隊の編入を目論むあまりに問題を起こしたため、却って海保は政治的に苦境に立たされる事になった。扶桑国民の圧力で連合艦隊の名称は存続したが、内実は混乱状態であった。第一航空艦隊はダイ・アナザー・デイ後に(航空艦隊が殆ど解隊されたためと、空母機動部隊であることを示すため)第一機動艦隊へ改組されることになったが、旗艦は当時に最新鋭とされた大鳳でなく、瑞鶴とされた(日本にとって、大鳳は機動艦隊敗北の象徴であるが、瑞鶴は栄光と幸運の象徴である)。これは日本の都合のみで決められたため、防衛省に文句が出たほどだが、大鳳の突貫工事ぶりを心配したこと、史実では『初陣で沈んだ』事からの忌避感が大きかったからであった。この案も扶桑の反対で実行は先延ばしにされたが、旗艦の瑞鶴への当面の固定だけは強行された。そのため、プロメテウス級空母の運用に熟れた1948年にようやく正式に旗艦が変更される。その兼ね合いで、大鳳が旗艦の地位にあったのはM動乱の一度きりになった。また、改蒼龍型という表記が翔鶴型に統一され、同型艦が建造されることも無くなった大鳳は翔鶴型三番艦というポジションという事になった。雲龍型の二十四番艦以降の量産も潰えたため、それを前提に発注されたウィッチ用設備が倉庫で不良在庫化してしまうが、これは空軍が最終的に多くを引き取り、地下基地のウィッチ運用設備として運用され、様変わりしていくのであった――








――ウィッチの政治的立場は軍事的地位の低下と同期して急速に低下していった。一握りの超人達を除けば、通常兵器と大差ない戦果しか出せない上、サボタージュも起こった事、艦上機のジェット戦闘機化でスペースの余裕がないなどの理由で運用は縮小された。爆撃ウィッチの地上空母への攻撃はウィッチ達が立案し、面子をかけての大攻撃であった。(多国籍部隊でもあった)だが、結果は熟練ウィッチの多くが失われるだけに終わった。生き残った者はごく僅かで、生き残りの大半がシェルショックに罹患した彼女達の責を問うわけにもいかなくなった。対地・対艦ミサイルの普及はその攻撃で急降下爆撃ウィッチの多くが戦死したことの穴埋めを兼ねての施策から始まったのである。また、この場合の超人はGウィッチやのび太、ゴルゴなどの人々を指すが、Gウィッチも個々で練度にばらつきがあるため、クラスカードなどは重宝された。また、プリキュア出身者がアイテムを部屋に忘れる失態を犯した時にもクラスカードは使用された――

「あー!いっけね!キュアモ(プリキュア5の変身アイテム)、部屋に置き忘れてきたー!!」

「このアホ!!変身アイテムを忘れる奴があるかよ!」

「ど、どうしましょ〜ケイ先輩」

「しゃーねー。イリヤから借りたクラスカードを使え」

この日は圭子に呼ばれ、護衛についていたのぞみだったが、事もあろうに変身アイテムを部屋に置き忘れてくるという失態を犯し、圭子に叱責された。圭子は保険を兼ねて、イリヤから借りていたクラスカードを貸す。

「魔力あるから、使えと?」

「やり方はイリヤや美遊のを見て知ってんだろ?」

「うろ覚えなんですけど、あの呪文…」

「魔力流して繋がったと感じたら、“インストール!”って叫んでみろ、略式で行ける筈だから安定しねーかもしれねーけど」

「こうなったら、やけくそだぁ!インストール!」

セイバーのカードを使用したが、この時はラインが繋がった英霊の都合で姿が『赤セイバー』になっていた。

「お、赤セイバーか。あんま強い英霊とは言えねぇな」

赤セイバーはローマ帝国の暴君ネロである。能力としては微妙なラインで、肉弾戦には強くないという特徴を持つ(それでも、ローマ皇帝であったため、一般人よりは遥かに強いが)。イリヤや美遊と違い、元から英雄であるのぞみが使ったため、呼び出す英霊に下方修正がかかったかは定かでないが、とにかくも使用はできたわけだ。

「あの、先輩。赤セイバーって……確か」

「暴君ネロだけど?」

「ひーん。歴史上の五本の指くらいの無能じゃないですかー!煬帝よりはマシだけど!」

「戦バカだっただけだよ。えーと、五代くらいの皇帝だから、暴君ぶりが強調されただけで、戦は強かった。武田勝頼みてぇな皇帝だよ」

「そ、そうなんですか」

「煬帝みたいに、救いようのないノータリンじゃねーだけマシだ。ただ、剣術の補正はあまりかからんからな、気ぃつけろ」

ローマの割合に初期の皇帝だった暴君ネロはローマ最初の暴君として名を残す一方、軍事面の才能はそれなりに持っていたため、一応は英霊に名を連ねている。ただし、死後に内戦の時代を迎え、カエサル以来の系譜を途絶えさせたという点で罪を背負っているため、いまいち英霊としてはパッとしないのだ。

「あーん、補正弱いじゃないですかー!」

「ゼータクいうな。くじ運がないと思えよ。ただし、そんじょそこらのなまくらよりは強い剣は使えるのは確かだ」

その言葉通り、ネロは仮にもローマ皇帝であったため、常人より強いのは確かで、兵士達くらいはどうという事はないところをみせる。


「あ、本当だ。セイバーの中じゃ微妙って聞いてたんで」

「青セイバーとか桜セイバーに比べりゃ普通の人の範疇だからだよ」

兵士を倒す分なら赤セイバーでもいいが、立ち回りに注意がいるのと、スキルが皇帝なために多めである(頭痛持ちは再現されていない)ため、頭が良くないと使いこなせない。

「仕方ない、えーと……招き蕩う黄金劇場(アエストゥス・ドムス・アウレア)!!」

ネロが生前に設計したとされる劇場や建造物を魔力で再現し、自らに有利に働く戦場を作り出す。それが暴君ネロの持つスキルの一つである。のぞみはそれだけはどこからか知識を仕入れていたのか、発動させた。

「お、お前。それだけは知ってたのか」

「え、えぇ。まぁ……」

こうなれば自分の能力に+補正がかけられるため、巻き込まれた兵士らは地獄を見る羽目に陥った。その数は一個旅団まるごとであり、おおよそ6000名程が招き蕩う黄金劇場で地獄を味わう羽目になった。また、発動中であれば炎剣を奮えるという判定もあり、のぞみは赤セイバーを通して、クラスカードの使い方を学んだことになる。

「変身アイテム忘れた事、みんなには…」

「黙っといてやるよ。その代わりになんか奢れよ?」

ちゃっかりしている圭子。だが、自分のやっていることは脳天ぶち抜きやらのオンパレードなので、レイブンズ最狂と言われるのも無理はなかった。

「星馳せる終幕の薔薇(ファクス・カエレスティス)!」

剣で弧を描いた後、炎を纏った突撃をかますのぞみ。後にこの技がヒントになり、『プリキュア・クラッシュイントルード』を完成させるのである。

「次に使う時はリリィの格好になりたいですよぉ」

「あれか?クジ運が良くなるように祈っとけ。イリヤがよく使うからなー」

笑い飛ばす圭子だが、ガン・カタをすっかり自家薬籠中の物にしているため、圭子の通るところは屍だらけである。レベッカ・リー名義も持つだけの事はあり、素の容姿に戻っていても目つきが怖くなっており、それがもとでルッキーニには避けられている。

「先輩、今は素なんですよね?目が怖いんですけど」

「癖になっちまったんだ、そこは我慢しろ。ルッキーニにはビビられるし、エイラも目合わせただけで腰抜かしやがる」

圭子は元々は温和な性格であったが、転生を繰り返し、ゲッターの使者になった後は好戦的でウルトラ短気になり、覚醒直後はマルセイユに正気を疑われたという。だが、モントゴメリーが圭子の過去を教えたため、この世界においては従順になったという経緯がある。

「さーて。今後のためだ、よく見てろ。ダブルトマホォォク・ブゥゥメラン!!」

圭子はそう嘯き、ダブルトマホークブーメランを放つ。これは割合によく使われる技で、圭子の専売特許ではなく、キュアフェリーチェや青年のび太も用いる。相手の片腕、もしくは両腕を切り落としたり、先制攻撃を仕掛ける時に重宝する。牽制技にもなるため、使われる割合は大きい。

「先輩、エグくないですかね…?」

「ゲッターロボおなじみの攻撃だぞ?ま、牽制技程度に覚えとけ。グレートブーメランは熟練がいるし、お前なら、ニーインパルスやバックスピンキックでも覚えたほうがいいな」

「え、先輩は覚えてるんですか」

「のび太もスーパー手袋とか使ってる時は使うぜ。ま、しずかが一番こえーぞ。ニーインパルスキックで敵を串刺しにした事あるし」

しずかは思いっきりがいいので、少女期にニーインパルスキックをやり、敵を串刺しにした事がある。それを苦笑い気味に言う圭子。

「え、しずかちゃん、そういうキャラでしたっけ」

「スイッチが入ると恐ろしんだよ、あのガキ」

「そ、そうなんだー…」

ちなみにのび太は射撃に目覚めてからはスーパー手袋を使うことは減り、代わりに護身用に『名刀電光丸』を吊るす事がある。のび太は腕っぷしは子供時代からさほど強くならず、見切りでどうにかするしかないため、名刀電光丸をこの時期からは持つようになった。大人用のデラックス版で、太刀サイズの刃があるものだ。

「あ、のび太の奴、昨日、名刀電光丸をドラえもんから受け取ってたぞ」

「え?名刀電光丸って宮本武蔵に持ってかれたって」

「そのデラックス版だそうだ。ドラえもんが普段持ってるのは、子供用の護身グッズ用途のものらしい」

名刀電光丸。ドラえもんが持つひみつ道具の武器の一つで、刀型のものである。鍔にレーダーが仕込まれており、自動的に相手を倒せる触れ込みだが、ドラえもんの持つ廉価版では限界があるため、未来デパートから軍事用途に転用可能な最高級グレード版を取り寄せたという。(普段の脇差サイズでなく、太刀サイズの刃渡りを持つもの。レーダーとコンピュータも性能が数段上)

「と、言うことは武蔵が持ってったのは子供の遊び用程度の?」

「史実を考えると、若く未熟な頃に電光丸で動きを覚えたあとで、壮年期に巌流島したんじゃね?よく分からんが」

ちなみにのび太曰く、小学生時代、調やフェリーチェとこんな会話を交わしたという。

「どっから出したの」

「これ、ポーチサイズのとりよせバッグ、使用者認証付き高級モデルだからこのサイズが限界でね」

「だから剣とか折り畳みの武器とか多いんだね?」

「口のサイズがあるからね。電光丸は割に使うよ。大人になったら太刀型でも買うさ」

との事。電光丸は剣技を覚えるのに丁度いいもので、宮本武蔵を一流にした一助を電光丸が担ったとはのび太の談。また、彼曰く、21世紀に発見された武蔵の弟子に継承されたらしき武蔵の遺品に経年劣化で機能停止した電光丸らしき脇差が含まれており、二天一流の証拠として扱われていたという。

「……って事は、のび太くん、歴史に影響与えてませんかね」

「だってあいつ、桃太郎と西遊記の話のモデルだって、昔に自慢してたぞ」

のび太曰く、ある年の夏に『永元三年』に行って桃太郎のモデルになったとか、唐の太宗の治世の頃で玄奘三蔵の命を救い、孫悟空になったというのが子供の頃からの自慢であった。のび太は腰が引けていたという桃太郎より、能力が使えるため、孫悟空として活躍したため、西遊記の話になると、朗らかに話す特徴がある。(ちなみに、その冒険でジャイアンが女物のパジャマを着た事を話の種にしている)大人になった後、のび太は『ジャイアンはその辺含めて、実は女の子の気持ちを良く解ってるんじゃないかな』とフォローしており、ジャイアンに女性願望がある事を示唆している。

「さて、〆はあたしにやらせろ」

「いいですけど…。何の技で?」

「これだ。ストナァァァァァァ・サァァァァンシャァァァァイン!!」

圭子転生後のお得意技『ストナーサンシャイン』。圭子は叫び方を撃つ度に変えており、今回は「シャイン」を伸ばしている。ただし、今回は室内で撃ったので…。

「熱っ!アチチチチ!いけね、室内だったんだった」

「先輩〜!シャインスパークのほうが良かったん…熱っ!?」

「あほ、シャインスパークなら、この結界ごと吹っ飛ぶぞ」

「え、そうなんですか」

「ストナーサンシャインはシャインスパークより下な位置づけなんだよ。……あばよ、6000人の兵隊諸君」

圭子の言う通り、結界は維持されたが、巻き込んだ6000人はストナーサンシャインで消し飛んでいた。

「すごいですね、チートですよ…」

「フェリーチェも撃てるぞ?」

「え、ど、どうやって!?」

「20年近くも時間あったから、本人が望んでなー。シャインスパークも撃てるから、今のプリキュアじゃ一番にチートじみてると思うぜ」

「みらいちゃんには?」

「泡吹かれた。ま、元々の神通力の埋め合わせがゲッター線と光子力だしな。却ってヤバくなってるぞ」

圭子はそう話すが、後にのぞみ本人も同じ領域に完全に達した後は自己意思でそれらを扱える様になるのである。

「それに、ZEROに二人をやられた後、綾香にフェリーチェが懇願してな。それで仕込んだわけだ」

みらいとリコを倒され、ディケイドに救出されてからそれほど経たない頃、自分の持っていた神通力を剥奪された事のショック、二人を守れなかったことの負い目とZEROへの復讐心から、フェリーチェは二大スーパーロボットの力の根源である光と進化の力にすがった。圭子と黒江は『戻れなくなる可能性』を説いたが、フェリーチェは『それでも構わない』と懇願した。それが彼女の強さの始まりである。

「頼まれたとはいえ、やり過ぎたかもな。後悔はしてないが。フェリーチェは必死だったんだ。大地母神として守るはずの世界をZEROという魔神に為す術もなく滅ぼされ、存在を『不死なだけのプリキュア』に貶された事、みらいとリコ、モフルンも失って、縋るものが誰もいなくなった状況に。お前もハードモードな前世だったそうだが、フェリーチェもいきなり理不尽な状況に置かれたようなもんだ。だから、のび太の家に居付いたんだよ」

「みらいちゃん、めっちゃ発狂してましたよ…?今はガンダムのテスト中だけど」

「アルバム見たら、やけになって、ストライクルージュの武器を撃ちまくるかもしれねぇな。フェリーチェの姿でガキの頃ののび太の布団に入り込んで、添い寝した事あるんだよ」

「へ…?本当ですか…」

「調とドラえもん曰く、フェリーチェ、思いっきり赤面してたそうだぞ、起きた後」

「へー。フェリーチェの姿になってると、大人びてる態度だからなー、はーちゃん。かわいいとこあるんだ」

「寝ぼけて素が出たんだろ。その時ののび太、冷や汗たらたらだったそうな」

のび太にプリキュアの姿で添い寝してしまった事は思いっきり恥ずかしいエピソードだったが、どうしても寂しさは感じてしまい、精神年齢が上がっているはずのフェリーチェの姿でも寝ぼけて素が出た事は回復の兆候とも言え、ドラえもんは歓迎したという

「のび太も頑張って『お兄ちゃん』してたからなぁ、あの頃だな、長男の重みが出て、一人っ子っぽさ抜け始めたの」

「いつです?」

「ん、調が家政婦として落ち着いて数年後くらいだから、2001年の春か夏だったかもな。綾香のやつが修行とか言って、二人を変身させたままで過ごさせ始めた頃でもあったしな」

圭子は珍しく、穏やかな目つきで語る。のび太の『お兄ちゃん奮闘記』は一冊の本にできるほどの密度のエピソード満載との事だ。

「それで、当時はプリキュアが誰もいない時代だったから、綾香の奴、あの両親になんて口八丁したと思う?」

「?」

「魔女っ子だよ」

「間違っちゃいませんけど、古いですって…」

黒江は2000年当時ののび太の両親にフェリーチェを『魔女っ子』として紹介した。時代故の仕方がない点で、のび太の両親の世代的に分かりやすい比喩でもあった。のぞみは赤セイバーの姿でずっこけそうになる。

「仕方がないだろ。2000年は誰もプリキュアになってねーんだし。のび太は初代は見れたけど、スプラッシュスターの時に大学受験で、また見始めたのがお前の二年目あたりだって言ってた」

「咲さんが聞いたら、100パーで落ち込みますよ…」

「しゃーねーだろ。その頃、のび太のカーチャン、大学受験に命かけてたんだから」

のび太はスプラッシュスターは見れず、また見始めたのが『プリキュア5/GOGO!』の頃と言っている。ここより二年後にやって来る日向咲/キュアブルームはこのことに本気で落ち込んでしまったとか。これは子供の頃には、その時点の歴代の仮面ライダーを既に視聴済みであったのと対照的で、咲はのび太に『なんで、あたしたちのことみてないんですかぁああああ!!』と泣きながらがぶり寄りし、のび太は『いや、君たちの頃は大学受験で……』と気まずそうに返すしかなかったとか。

「で、TVがみらいたちになったあたりでキュアフェリーチェってカミングアウトして、その年の同人誌即売会の売り子したら、大盛況だったってよ」

フェリーチェのカミングアウトは2016年だが、プリキュアが定着した頃には大学時代から『本物のプリキュア説』が流れており、カミングアウトはそれを裏付けとなり、ジャイ子が青年期にプリキュアのコミカライズを引き受けるきっかけとなった。また、しずかは少女期に単純にフェリーチェに憧れていたのだが、プリキュアの一人である事が知らされたのは、プリキュアが定着しだした2008年のこと。カミングアウトを後押ししたのは結婚後のしずかで、しずかは学生時代、『自分も魔女っ子に憧れてて…』と話していたため、ダイ・アナザー・デイ後はのぞみを妹のように可愛がるのである。曰く、『プリキュア5は大学時代に欠かさずに見ていた』とのこと。のぞみがその後に立ち直れた要因の一つは『大人になっても応援してくれていたしずかの想いを裏切れない』からで、大人になっても童心を忘れないのび太夫婦はのぞみとことはの心の支えとなっていくのだ。

「……先輩、あたし、泣いていいですか?」

「おい、こんなとこで泣くなよ」

「年食ったら、どうも涙腺が緩んで…。大人になっても応援してくれてるなんてぇ…」

のぞみは娘にプリキュアとしての生き方を罵倒された挙句の果てにダークプリキュア化された過去、野乃はなと敵への対処のしかたでかち合ってしまった上、その後の『約束』も破ってしまった過去があるため、プリキュアとしての自分を肯定されるほどは本当に久しぶりだったと言える。記憶が蘇り、ネガティブな記憶も持ったため、本当に嬉しいのだ。

「お前、泣くってガラじゃないだろ?」

「色々嫌なこともあったんですよ、本当。娘に否定された時は心が壊れる音が聞こえましたよ。だから、この姿に戻れて、居場所もあって……」

「なら、生まれ変わった場所で何かを見つければいい。自分の信じるモノを見い出せ。戦士の尊厳でもなんでもいい。守りたいものを取り戻せ」

圭子は自分やマルセイユがそうであったように、守りたいものを見つけた時に人は強くなれるという信念がある。転生者としての誹謗中傷に晒され、『精神異常の粗悪品』とまで断じられたのぞみへ『生まれ変わった場所で何かを見つければいい』と示す。黒江は『友情と戦士の尊厳』を見出していったし、智子は『想いを貫く強さ』を見出していった。圭子も前世でのゲッターでの自爆の時の黒江の慟哭でその考えに至り、現世に舞い戻ったように。

「転生がなんだ。たまたまそうなっただけだろ。精神異常だぁ?んな戯言なんかゴミ箱につめて捨てちまえ!一度死んだ人間がこの世に戻っちゃいけねぇ道理はないし、世界中にそういった再誕伝説が残ってるかよ」

黒江やのぞみたちが非難されるのは『次世代に託す事をしないで、自分たちでどうにかしてしまう』という想いの引き継ぎの観点からのものだが、些か的外れであると言える。

「お前を愛する者が居て、お前が愛せる者が居る、それってすごいことじゃないのか?しずかを見ろ。愛は不滅なんだよ。損得勘定でのび太やドラえもんが、お前らは動いたか?そうじゃないだろう?」

永遠不滅の思いは確かに存在する。そして不滅の力も存在する。しずかがのぞみに憧れ、ことはに憧れたように、のび太が少年期に本郷猛や城茂に憧れていたように、人々が望む限り死なない存在はあるのだ。

「先輩はどうして……のび太くんたちと…」

「のび太はダチだ。それ以上の理由がいるか?何回生まれ変わろうとも、友情は変わんねぇもんだよ。それに、通りすがりの正義の味方が今はあたしのプライドだ」

圭子はそう言って微笑む。それはのび太が大戦争に関わることを誹謗中傷で『関わる必要なんてないのに』という誹謗中傷を向けられていても意に介さずに、命を張って自分達を助ける高潔さを持つことへの敬意でもあった。『依存し続けるのなら気の毒なことだ。弱者が立ち向かう必要はないのに』という誹謗中傷はキュアハートすらも激昂するほどに、Gウィッチを化け物と見ている証であったからだ。

「義理と人情秤に掛けぬ、仁義を通して笑って歩むが我等三羽烏の進む道、とくらぁな」

圭子は『強大な力を持ち何百年も生きる存在には愛や絆など不必要である!!』と誹謗中傷を受けるGウィッチとしての見解を示した。のぞみやことはにももちろんある誹謗中傷。

「情に溺れると、ろくな事にならないからこそ義理を欠かさない。よく覚えとけ。これからあたしたちは誹謗中傷と向き合っていくしかねぇんだ」

友のした事に対する義理を通す、自分も約束した義理を果たす。それが黒江たちとのび太(ノビタダ)の交わした時を超えた約束である。黒江たちはなのは、フェイト、プリキュアたちや調たちにそれを言い聞かせ、一同もそれを守っていく。強大であるが故に、それと釣り合わないであろう一人の男が繋ぎ合わせているものは誹謗中傷を受けるが、一同は確かには強い絆があった。クロノスであろうと干渉できない友情と愛が。『フン、野比家の者達が世話をやく時点で、奴らは何百年経っても親離れ出来ない子に等しいのだ』とする地獄大元帥の言葉に兜甲児はこう返す。『いいじゃねぇか。ダチと一緒に見る夢、一緒に過ごす日常!!ドクターヘル、お前も心の奥底ではじいちゃんを求めたくせによ!!』と。(ドクターヘルは『十蔵が居たからここまで来れたのは確かだな、だがワシは求めてはおらぬ!打ち倒すべき仇敵なのだからな!その現身こそがマジンガーなのだ!!』と言い返したという。

――のび太との関係は情なんて殆どねぇぞ、1度結んだ仁義がある、戦友であり恩人に対する礼、そして絆、それで充分だろ?助けて助けられて、それも含めた仁義ってもんよ!!――

黒江が公言する義侠心こそ、彼女たちの強さの源。ドクターヘルとて、青年時代の学友であった兜十蔵にだけは親愛を抱いていたように。黒江の言葉と、のび太が64Fに与えた『炎の鬣のユニコーン』のパーソナルエンブレムはその義侠心の証であった



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