外伝その428『救出作戦の裏側』


――ウィッチ世界は織田家が外征を行った結果、早期に大国化した歴史を持つ。それが伝わった結果、明智光秀の評価が余計に落ちたのは否めないが、副次的に支配者としては老害を晒して死んだという豊臣秀吉のウィッチ世界での評価も落ちた。信長はウィッチ世界では神君だが、彼の有した水軍以来の伝統が海軍の硬直化を招いたのも事実であるため、日本側主導で『近代海軍ができた1868年を建軍年とする』改革が行われた。その過程で水軍以来の風習は徐々に失われていくが、抑止力信仰ドクトリンは受け継がれ、色々な都合で戦艦の運用は冷戦後も続けられ、90年代頃に大和型戦艦の後継型が新造される。それまで、大和型戦艦ファミリーは冷戦を通して最強であり続けた。(後継世代にも大和型戦艦の外観が受け継がれたのは、大和型戦艦で日本型近代戦艦のレイアウトがほとんど完成してしまい、手のつけようがなかったからである)連合軍の他国は大和型戦艦に匹敵しうる戦艦はなんとか用意できても、それを超えるものは用意する必要がなかったからだ。リベリオンと扶桑の海獣対決に追従する気は他国にはなかったが、1930年代後半に建造した戦艦が老朽化し始める1950年代に代替艦を建造する。それらは大半が40cm砲搭載艦であった。大和型戦艦ほどの火力は持たないが、象徴的役割がそれらの役目であったために高い個艦能力は求められなかったからだ。そこも大和型戦艦の一族が最強であり続けた理由である。実戦的な戦艦と空母の運用は冷戦中期以降は数カ国に限られていく。これは戦艦や空母が調達・維持費の高額化でたいていの国の手に負えなくなったからで、財政に比較的に余裕がある日本連邦のみが二桁の保有数を維持していく。この戦艦の維持については、日本連邦結成前から議論されており、史実がそうであったように、ミサイルで代替可能だとする意見が強かった。だが、戦艦のバイタルパートを覆う重装甲がミサイルでは貫けない事、ウィッチ世界の他国が大和型戦艦に対抗しようとして、戦艦を造っていた事、大和型戦艦以上の重装甲艦が存在し、ミサイルで致命傷は与えられない事で対抗上、砲熕型艦艇の維持は決まった。大和型戦艦の46cm砲を超える艦砲の存在が容認されたのも、モンタナとヒンデンブルクの存在が大きい――







――ダイ・アナザー・デイの最中の日本――

「なんだ、あの戦艦は!?」

「史実の大和より大きいではないか!アメリカがそんなものを……」

「モンタナ級戦艦。大和の本当のライバルたる大戦艦です。アメリカの造船技術の粋を結集したフネです」

「馬鹿な、空母を量産せずに戦艦などを」

「アメリカは両立できる国ですがね」

この日の安全保障会議は紛糾していた。ダイ・アナザー・デイの映像中継に大写しで発砲するモンタナ級の勇姿は日本側に衝撃を与えた。史実の大和より大きい戦艦が何隻もおり、連合艦隊と刃を交えているからだ。対する連合艦隊も大和型とその強化型が隊列を組んでおり、扶桑の国力がかなり大きいことの表れであった。なお、電探が後付であったはずの大和型の大まかな姿を発展型が継承しているのには疑問が持たれているが、大和型のレイアウトが日本戦艦の到達点だからである。

「連合艦隊の主力艦はどういう大きさなのだ?」

「全長500mほどの移動要塞を旗艦に、350m級の量産型の超大和型戦艦、それと改装された大和型がおります。超文明に用意させたようですが、我々も驚いております」

「何故、そこまで大きくしたのだ?」

「あなた方が先方を馬鹿にするからですよ。だから、核兵器にも耐える装甲と異常な火力を大和の血族に与えたのです」

海上幕僚長が説明する。長砲身46cm砲や51cm砲、56cm砲と言った仮想戦記じみた砲を振りかざし、連合艦隊の戦艦隊が敵艦隊と砲火を交える。史実より強力な砲を擁する連合艦隊、数の暴力で対抗する米艦隊(リベリオン艦隊)。質と量の対決は史実で思い描かれたのと同様の光景だ。そして、その上を乱舞するゴッド・マジンガーやブラックゲッター。まさにウィッチ世界の渾沌とした状況を示していた。

「超文明の栄える世界では、このような光景が常態だそうです。非戦と言っていられないような待ったなしの戦いなのですよ、これは」

「平和を語るには、力の裏付けが無ければならない、力無き正義は無力なのだからな」

「超文明からの来訪者をご紹介いたします。かの高名な宇宙海賊、キャプテン・ハーロックです。我々がお呼びしました」

「キャプテン・ハーロック……まさか、あのドイツ空軍のファントム・F・ハーロック二世大尉の…」

「彼は私の遠い先祖だ」

ハーロックの本名はファントム・F・ハーロックであるが、その何世であるかは定かではない。初代ハーロックはドイツ帝国時代の冒険家であり、その子である二世はドイツ空軍の150機撃墜で知られるエースパイロットである。(大戦終結寸前にレジスタンスの私怨で失明しているが、後年に娘を儲けており、その子がトチローの先祖の一人と結婚している。従って、その子以降のハーロック家の人間には日本人の血が入っている)

「彼がこの日本に来たのは、彼の親友であった大山敏郎技師の先祖がファントム・ハーロック二世大尉の子と結婚していた事実を確かめにきたのも目的だそうです」

「それでは、あなたはアルカディア号を…」

「アルカディア号は我が友の遺した宇宙最強の海賊戦艦と言っておこう…」

ハーロックは一代で名を成した海賊だが、青年時代は太陽系連邦(地球連邦の後身)の大佐にまで登りつめたエリート軍人で、真田志郎の末裔の親友である。その関係か、海賊でありながらも軍人気質が残っている節もある。また、クイーンエメラルダスがトチローを愛していた事も知っており、その事も彼が30世紀世界の状況を変えるために動く理由である。

「海上幕僚長、その彼が何故、この会議に」

「総理のご判断です。今次作戦には彼のみならず、クイーンエメラルダスにも助力を乞うております。いくら兵器の質が良くとも、判断を間違えれば一巻の終わりですので…」

海上幕僚長はそう説明する。キャプテン・ハーロックやクイーンエメラルダスに助力を乞いたのは総理大臣の判断だと。ダイ・アナザー・デイでは防衛省内の抗争で現地の兵器不足という、一歩間違えれば取り返しのつかない事態にまで状況を悪化させ責任を取る形だが、のび太にハーロックとエメラルダスへ助力を依頼させたのである。

「我が友・野比のび太の頼みにより、この作戦に加勢させて頂く。宇宙戦艦ヤマトと共に」

「なっ!?」

「彼等も動いたのだ。彼等なりの目的でな」

とは言え、初代宇宙戦艦ヤマトが動いたわけではないため、そこもややこしい。23世紀の初代ヤマトはイカロス基地で改装中であり、古代進も輸送艦隊の護衛艦の艦長としての任務中である。沖田十三も公には『イスカンダルからの帰還寸前に戦病死』とされているのはいうまでもない。沖田十三は色々な都合で生き永らえ、30世紀の太陽系連合艦隊(アースフリート)司令長官にまでなっている。23世紀の本人が700年も存命しているとはされていないのは、政治的な都合である。

「もっとも、沖田十三提督が生きておられる理由はご存知だろうと思うが…」

「例の佐渡先生の誤診ですな。あれは冗談がすぎるが」

沖田十三は宇宙放射線病が進行しており、イスカンダルからの帰還時に病死したとされた。だが、それは佐渡酒造の早とちりで、実際には脳死には至っておらず、新治療法の治験の被検体にされ、無事に蘇生している。その事は日本ではネタにされまくっているため、佐渡酒造の誤診は『世紀の誤診』としてアニメとして有名であったりする。

「さて、本題といきましょう」

総理大臣が手を叩き、本題に移るように促す。ここからが会議の本番であった。






――それはさておき、ダイ・アナザー・デイは待ったなしの状況だ。この頃は戦況はまさにたけなわの状況。地上空母は猛威を奮い、64Fもプリキュア達の何人かが捕虜になるなど、極秘にされているが、苦戦している頃であった。海戦に関しては、船の性能差で優位に事は運んでいるが、陸戦は正直言って、苦戦である。機甲兵器不足を超兵器で補うのも限界があり、いくら戦術の妙でその場はどうにかできても、戦略的には押され気味なのがダイ・アナザー・デイ第三週以降の状況であった。また、この時期に顕在化した問題として、『連合軍と言っても名ばかりで、戦線の主力は日本連邦軍とブリタニア連邦軍などである』という事実があった。カールスラント連合帝国の軍隊が実質的に主力を引き揚げさせ、オラーシャ帝国は連合軍から事実上は脱退したため、連合軍と言っても、名ばかりのガリア共和国軍と他のいくつかの小国出身者を含め、限られた国が残され、日本連邦軍、ブリタニア連邦軍はNATO軍、地球連邦軍の助けで戦線を維持しているにすぎないのだ。


「敵の物量は圧倒的です。ノルマンディー上陸作戦の更に倍以上と推測されています。我が日本連邦は友軍の助けを借り、どうにか戦線を維持し、かの世界のイベリア半島奪還を図っています。現地部隊は74式だけでなく、10式の増派を要請しております」

「なぜ最新の10式なのだ」

「10式は軽いからです。第二次大戦中の欧州のインフラで90式を使うのは多少の問題がありますが、10式であれば問題はありません」

陸上幕僚長が説明するが、90式はティーガーよりは軽いものの、50トンに達する。しかし、10式は44トンなので、パンター戦車よりも軽量である。そこがミソである。第二次大戦中の代表的中戦車が30トン級のM4であるのは知られているものの、ドイツが最後に負けた要因の一つは『高価で高性能な戦車だが、重くて運べない』事も含まれるため、10式の軽量ぶりはいい意味で重要であった。そのため、74式の保有数が減ってきたあたりで、背広組も実戦テストとして、本格的にウィッチ世界へ送り込む事を検討し始めていた。この当時はM4のあまりのやられぶりが問題視されたか、後継も兼ね、M26重戦車が現れ始めたからだ。74式は砲で勝っているが、装甲そのものは第二次大戦型機動戦向けではない(待ち伏せからの陣地転換が主な用途)。そこで、21世紀前半の陸自で新鋭であった10式が脚光を浴びたわけだ。第二次大戦型の90ミリ砲に正面装甲が耐え、21世紀の戦車としての能力を備えた同車はこの安全保障会議と日本連邦評議会の決定を経て扶桑に第一陣が派遣され、消耗した74式の代替車扱いで配備された。






――ダイ・アナザー・デイの戦場――

「俺達は仮面ライダー達が基地に侵入するための陽動だ。とにかく目立ちまくれ。MSは地球連邦軍が抑えている!」

「了解!」

のび太たちがドリーム達の救助に向かった頃、Gフォース陸戦部隊は陽動のため、敵戦車隊と敢えて矛を交える。10式戦車隊はM粒子下でも、ご自慢の電子装備が動作したという僥倖があったため、この時代には一部のエースしか成し得ない行進射を百発百中でこなせた。そこが登場していきなりの大戦果を叩き出した理由だ。

「そう言えば、制空権はどうなんですか」

「味方のレシプロ戦闘機が確保している。旧軍出身の義勇兵もかなりいるそうだ。この世界のアメリカ兵はド素人ばかりだというから、制空権は向こうがジェットを大規模に使わん限りは揺るがないと豪語された」

「高オクタン燃料で設計値を100パー出せるって奴ですか?」

「正確には部品の質もいいし、燃料もいいからな。日本機でも680キロは安定して出るそうな。それで紫電改やら烈風が高性能機として鳴らしているが、敵もジェットを繰り出してきたそうだから、ハチロクを量産してるそうな」

「この時代からすれば、次世代の高性能機ですからね」

「一部で使われてるが、いよいよ本格的にするそうだ。サンダーストリーク対策だな。もっとも、統括官はドラケンやF-20を個人的に調達なされているそうだが」

「B-29を落とすにしても、オーバーすぎませんか」

「シュワルベで事足りるというのに、ドラケンやF-20だ。オーバーにも程がある。まぁ、この時代のジェットでは格闘戦考慮外だからかもしれんが」

10式戦車の一両の中で繰り広げられた会話は戦車の性能差に起因する余裕からのものだった。ウィッチの不可視の視認系魔法の兆候をも探知可能と分かった10式戦車は『戦術の工夫でMSにも対抗可能』な数少ない従来型兵器であると同時に、『ウィッチを先に探知して狩れる』戦闘車両であったからだ。21世紀型ハイテク車両は大戦型の泥臭い戦場で使えるのかという懸念があったが、逆に優位性が生きた形であった。彼等は陽動作戦のため、敢えて敵部隊にちょっかいを出し、返り討ちにする。10式の44口径120ミリ滑腔砲は第二次大戦型の中戦車や重戦車をダンボールのごとく貫けるため、10分ほどで転進を行う頃には、M4が20両、当時の最新重戦車とされるM26が10両ほど鉄の棺桶に成り果てていた。





――上空では、実質的な日本連邦空軍の主力機材の一つである『キ100』装備の義勇兵部隊が呑気に飛んでいたF6Fの編隊に襲いかかっていた。この義勇兵部隊は旧日本陸軍の出身者であり、実際にキ100を扱った経験者であった。対するリベリオン側の部隊はド素人であった。指揮管制がない古来の状況では、リベリオン部隊に史実太平洋戦争の地獄を生き延びた者に勝てる道理はなく、F6Fの性能を活かせぬままにキ100に全く翻弄された――

「ド素人め。太平洋戦争の借りを返させてもらうぞっ!」

義勇兵となった旧日本軍人達は若き日の悔恨を晴らし、敗戦で失った帝国軍人としての誇りを取り戻すために志願した。元々受けた教育もあるが、士気は高かった。そこが扶桑に重宝された理由だ。扶桑はパイロット枠を緊急で増加させものの、色々な要因で人員定数確保もままならない。そのため、実戦経験がある旧日本軍人や元・航空自衛隊の隊員をリクルートで雇い、義勇兵として大量に戦わせた。ダイ・アナザー・デイ、太平洋戦争を通して行われた義勇兵施策には批判が大きかったが、戦場の主兵力が少数精鋭のウィッチから『通常兵器を扱う者』へ切り替わる過渡期に入ったウィッチ世界特有の事情ということで渋々ながらも容認される。ウィッチが主から従へと役目を変えざるを得なかったのは、航空魔導師と違い、航空ウィッチには携行できる武装に1945年当時の理論と技術では限界が生じた上、サボタージュでそもそもの人心を失ったからである。キ100は見事に昔年の屈辱を晴らし、F6Fを全機撃墜。キ100登場時にはすっかり過去の栄光とされた『大日本帝国陸軍飛行戦隊の栄光』はここに蘇ったのだ。





――日の丸戦闘機が史実の鬱憤を晴らすかのように各所で活躍する中、ウィッチら、特に重装甲の高性能戦闘機になんら打つ手がない航空ウィッチの立場が凋落し、手のひら返しでの迫害が怖れられた。だが、扶桑においては、近代兵器をも赤子同然に倒せるGウィッチの総本山であるため、一定の地位がダイ・アナザー・デイの時点で保証されていた。また、いつしか次世代ユニットが開発されているという噂が連合軍構成国のウィッチの間にに飛び交い、それを拠り所に、多くのカールスラントとオラーシャウィッチが義勇兵、あるいは亡命ウィッチとして扶桑へ渡っていく。実際に高性能戦闘機へ対抗可能なユニットが開発されているのは事実だが、それを扱えるかは当人次第である。仮面ライダー達がのび太と共に救出作戦を遂行している裏では、連合軍部隊の陽動が大規模に行われたのである――









――こちらはキュアハートとキュアラブリー。スネ夫の護衛として随行し、宇宙戦艦大ヤマトを訪れていた。沖田十三からの贈り物を受け取るためだ。その贈り物とは『コスモシンデン』。コスモタイガーの末裔にあたる30世紀時点の最新鋭艦載機であり、前進翼機である。コスモタイガーの末裔なので、各所に名残りを見いだせる。コスモゼロの血も混じっているらしき箇所もある。30世紀型のコスモタービン装備なので、初期のコスモタイガーで問題にされた『恒星間宇宙船の艦載機としては、航続距離が短め』は解決されて久しく、オプション無しでのワープも可能である――

「沖田艦長、これを64Fへ?」

「イルミダスへの敗戦の歴史をを変えるためでもあるよ。イルミダスは堕落した地球連邦政府を跪かせたが、結果的に地球が23世紀の精神性を失っていた事を証明した。ゲッターエンペラーと我々はその歴史を変えるために動いているのでな」

「23世紀の地球連邦軍に提供が前提と?」

「そうだ。彼らに提供し、招来に現れる敵の脅威を啓蒙してくれればいい。そうすれば、政府も1000年以内に脅威が現れるのを認識するだろう」

コスモシンデンはその後、64Fでテスト飛行が行われた後、地球連邦軍の手に渡り、30世紀の技術が地球連邦を強化することになる。だが、それらの多くはデザリアム戦役には間に合わず、その次のボラー連邦戦役からとなる。拡大波動砲はその解析の過程で生まれた副産物である。ジオンなどの反連邦勢力の残党が求心力を失い始めたのは、空気税が生命維持装置の世代交代による刷新で廃止され始め、連邦が懐柔策を取ったためであるという最大の皮肉であり、ジオンはこの後、最後の戦争という破滅の選択に向かっていく。そして、連邦がサテライトキャノンとフラッシュシステムの開発に成功したのが、この頃である。ダイ・アナザー・デイは色んな意味で岐路だったわけである。

「サテライトキャノンの技術は貴方が?」

「いや、あれはキャプテンハーロックだ。この時期の技術ではエネルギーバイパスの問題が出るが、30世紀の技術であれば問題ない」

「700年分の先取りですか」

「そうだ。技術を発展させないことにはな」

三人に明らかにされる謎。30世紀の世界からの技術提供がなされ、地球連邦の技術をイルミダスに対抗可能なレベルに早期に引き上げる必要があるため、23世紀の世界へ技術を提供したのだと。元々、20世紀後半にスーパーXを造れる素地がある世界であったのを更に強化するわけだ。

「自衛隊にはスーパーXWを造らせている。日本もスーパーXVを大震災の時に使えなかったのを後悔したようだからな。2020年代に入った以上、後継機は用意せねばな」

日本はダイ・アナザー・デイでスーパーXVが活躍したことから、本来は『大震災の時に革新政権でなければ使えた』という後悔をしており、製造から24年近くになったスーパーXVの後継機を2020年に開発し始める。それが製造途中で景気が悪化し、完成を断念していたスーパーXV二号機の機体フレームなどを流用しつつも、未来世界の技術を用いて強化した改良型『スーパーXW』である。前型機の資材を多分に流用して建造されたため、2020年の7月末には完成してダイ・アナザー・デイに投入された。――


「自衛隊に技術を?」

「うむ。MOGERAやメカゴジラは我々が建造費を負担したよ。スーパーXWもだがね」

「そうか、20世紀後半の技術でブルーダイヤモンドコーティングが造れるとは思ってなかったけれど、貴方方の差し金ですか」

「そうだ。我々……アースフリートの遠大な戦略だよ」

沖田十三はスネ夫たちに『アースフリートの総意にもとづく行動であると明言した。20世紀中にレーザー砲、ブルーダイヤモンドコーティングなどが実用段階に急速に達した理由に合点がいったようだ。また、ジャパニウムではないが、通常のチタン合金より頑強である『NT-1』系合金という後世にロストテクノロジーとなる特殊合金がメカゴジラなどに使われていた理由も明かされた。この合金の『無重力環境での精錬』という方法はガンダニュウム合金やガンダリウムε、超合金ニューZα、スペースチタニウム、超硬化テクタイト板などの装甲材の精錬という形で23世紀以降に広く用いられ、地球連邦の外宇宙進出を支える原動力となり、地球連邦が太陽系連邦へ発展した理由ともなった。それを早める事が30世紀の地球連邦軍の意思である。

「イルミダスへの対抗ですか」

「そうだ。野比くんに伝えてくれ給え。君の遺志は30世紀でも生きていると」

のび太は後世に何を遺したのか?沖田十三からわずかながら示唆された。わかることは『友の危機には時間や空間も関係ない』という事だろう…。





――扶桑陸軍最後の制式レシプロ戦闘機であり、空軍最初期の主力機となったキ100。先行していたキ84がウィッチ支援機から主力戦闘機へ設計変更がなされたものの、量産開始時期がF-86戦闘機の完成と重なり、キ44の代替用にしか需要が見いだせず、少数生産に終わったのと対照的である。性能特性が紫電改の高高度型と被っていた上、B-36さえ登場が予測されたため、レシプロ機に求められたのは、そこそこの火力と機動力と数だったからだ。また、海軍航空隊は紫電改で雷電を含めた陸上配備機を置き換えるつもりであったが、紫電改が実質は艦上機扱いで使われ、B-29には雷電のほうが効果があった事、横須賀航空隊が史実のグダグダを大義名分に、防空活動以外は活動休止扱いにされたことで面目を潰されたため、一部の急進的ウィッチがクーデターを画策し、46年に実行した。だが、そのクーデターはウィッチが世間から疎まれるきっかけを作り、空軍の現場で海軍出身者が一部の例外を除き、主導権を握れなかった要因となる。ただし、横須賀航空隊にも言い分はあり、『1940年の初飛行とは言え、通常兵器のそれまでの普及速度で言えば、零戦は六年は戦えたはず』、『新鋭機は航続距離が短く、とても艦上機としての零戦の代替には……』と具申したという。実際には敵の主力はF6FとF4Uに切り替わっていたり、紫電改や雷電は欧州機の数倍の航続距離であった事実、海軍航空隊の防空への無理解が露呈するだけに終わり、空軍は昭和天皇の意向で『陸軍飛行戦隊が海軍基地航空隊を呑み込む』形での組織設立が裁可されるだけであった。――









――周囲に敵が多かった源田実が空軍の現場責任者に抜擢された一方で、海軍航空の重鎮であった大西瀧治郎が排除されたことへの不満はかなり大きかったが、神風特別攻撃隊の一件で日本側に決定的に嫌われていた大西瀧治郎は彼らの意向で閑職に回されるのは当初からの既定路線であった。実は大西は竹井の叔父(大西の妻の姉が竹井の母)であったため、坂本に尊敬されていた。その関係で軍籍抹消は免れたが、閑職での飼い殺しは決まっていた。こればかりは坂本と竹井の力でもどうにもできない『彼の罪と罰』であった――

「叔父様のことはこれで精一杯ね」

「私達でも、お前の叔父上の史実での行いや言動は庇いきれん。日本側は軍籍抹消をゴリ押ししていたが、現場に慕われている事、お前の身内だということで、せめての温情が裁可されただけでもマシだよ。クーデターはもはや避けられんがな」

「クーデターを起こせば、最悪、海軍航空隊自体の息の根が止められるというのに」

「それはないとする打算があるのさ。空母への離着艦は専門の訓練がいるし、日本に派遣されれば、その訓練も自前ではできんからな」

坂本はこの時点で翌年度に起こるクーデターの意図を見抜いていた。前世では未然に防ぐことをしなかった黒江に食ってかかったが、今回の歴史においては黒江と同じ立場にあった。また、日本の自衛隊の現場には、空自が空母航空団の任務さえも政治的都合で押し付けられる見込みなことにうんざりしている者がいるのを知っていたためだろう。日本では、『扶桑に攻撃型装備は持たせて、自分は運用費用を負担してやるだけで良い』派閥と『ある程度は自前で持つべき』派閥の対立が政治・官僚間で顕著になり、いずも型護衛艦の空母化も『ウィッチ運用ができ、なおかつF35Bを積める』仕様の策定だけで数年もかかる有様であった。この頃には、改革の暁には扶桑海軍組織から航空隊を外す急進的な案も出ていたが、対潜哨戒機を海自が有している事や、空母航空団の維持には専門訓練が必要であることが周知され、立ち消えとなった。その案がどこからか漏れた事が、海軍ウィッチのクーデターを促進させる要因となった。むしろ、クーデター後に働き盛りとされた中堅層を中央から追放したほうが後々に問題となるのだ。

「後は私が引き受ける。お前が空軍に行った後の事は徹子と私がどうにかするさ。それが私なりのアイツへの償いさ」


坂本は黒江への償いの機会をずっと待っていた。この時をおいてないと確信した彼女は空軍に入らず、海軍航空の再建に残りの軍人生活を費やす事を選ぶ。親友の若本もそれに付き合ったため、二人は後世に海軍航空の中興を起こした二羽烏として名を残す。竹井はプリキュア化(海藤みなみとしての記憶が蘇った)を起こした事もあり、ダイ・アナザー・デイ第三週を過ぎた頃には、空軍へ移籍が決定済みであった。だが、坂本の顔は晴れ晴れとしていた。前世以来の心残りを無くし、黒江への償いをする機会を得たからだろう。

「お前は家からは『解放された』かもしれんな」

「ええ。だけど、同時に世界そのものを守る使命を背負ったわ。ウィッチは本当なら一過性のもの。だけど、プリキュアは世界そのものから求められた使命だもの。記憶が戻った以上は逃げるわけにはいかないわ」

竹井は家の呪縛をプリキュア化で逃れられたためか、海藤みなみ名義での活動を増やし始めていた。この時も竹井醇子としての容姿ではなく、海藤みなみとしての容姿で坂本と会っていた。

「だから、その姿なのか」

「ええ。美緒、海軍の事は、あなたと徹子に託すわ。私にはやらなくてはならない事があるの」

「分かっている。お前とペリーヌが同じチームのプリキュアとは思わんかったぞ」

「錦はプリキュアの先輩だから、そこもややこしいのだけどね。さて、仮面ライダーとのび太さんが救出をする揺動をしなくては」

そこでキュアマーメイドに変身する。マーメイドの表情がどこか寂しそうな表情なのは、坂本と道が分かれたことから来るものだろう。

「道は違ったが、あの時の想いは忘れるなよ、『醇子』」

「ええ……ありがとう、美緒ちゃん」

キュアマーメイドは竹井醇子としての本音を言った。一瞬だけ少女期に戻ったように。プリンセスプリキュアとして、戦いに赴く彼女を見送る坂本。竹井がかつては自分の背中を追ってきたのを、今では自分が逆に戦士である彼女の背中を見送る立場になった事を踏まえての礼儀であると同時に、友としてあり続ける意思の表れ。かつて、黒江へできなかった事を今度の生こそは成し遂げる決意で…。





――こちらはキュアドリーム。ライダーマンによる本格的な治療が施され、意識が戻った時には地面に寝かされていた事に気づく――

「あれ……あたし……?」

「気がついたようだね」

「ら、ライダーマンさん!あ、あたし…いったい…」

「まだ動ける体ではない。今は我々とドラえもん君たちに任せるんだ」

ドリームが寝かされつつも、辺りを見回すと、仮面ライダーアマゾンが咆哮を挙げながら大切断を決め、ドラえもんが空気砲を放つのが見える。のび太は少年時代が嘘のような姿を見せていた。十字砲火をその身一つで突っ切り、スーパーレッドホーク(スターム・ルガー スーパーレッドホーク)を片手に、腰に電光丸(DX版)を差し、某大都会のもっこりスイーパーさながらの大立ち回りを演じる。

「すごい……相手もプロの軍人なのに、まるで相手にならない」

のび太の早打ちは文字通りに裏世界No.1を誇る。あのデューク東郷すらも上回る驚異的速度であり、相手がどんな達人であろうと、気づいた時には撃ち貫かれている。少年期の頃に片鱗があった、ここぞという時の『勇気』を発揮しているといっていい。青年のび太の戦う姿はドリームに自分の不甲斐なさを痛感させたが、同時に憧れも持った。

(のび太くんは……あたしが昔に持てなかったものを持ってる……あの記憶が確かなら……『ねだるな、勝ち取れ。さすれば与えられん』……か。やっと思い出した……誰の言葉だったか……。いつだって………)

のび太が戦う姿は、のぞみの前世以前の古い記憶を不意に呼び覚ました。そして、これ以後の彼女の行動指針に影響を与えていく。のぞみがマジンガーZEROに立ち向かう勇気を持てた一つのきっかけはのび太が自分を守るために、敢えて十字砲火に身を晒し、拳銃で戦っている勇姿を目撃したからであり、この時に前世以前の記憶が蘇り、その時も自分が大事な誰かを守るために命を張った事を思い出したからだった。







――立花響は回想していた。自分が黒江と本格的に出会うきっかけの出来事。後で未来から話を聞いた出来事――



――黒江が調と入れ代わっていた時期――

その日、小日向未来は観光名所のタワーに遊びに来ていたのだが、ふとした表紙に響とはぐれてしまった。そこにアルカ・ノイズの襲撃が起こってしまい、壁際に追い詰められてしまい、逃げ場を失ってしまうが……。

『ドリルプレッシャーパーーンチ!!』

その叫びと共に『ロケットパンチ』がノイズを貫き、消滅させる。そして、声がしたほうを振り向くと。

「あなたは……」

「間一髪だったな、お嬢ちゃん」

未知のシンフォギアを纏った装者がいた。(史実でも、この頃は調と未来は面識はない)見るからにあどけない印象で、目測で中学生くらいに見える。

「お、お嬢ちゃんっって……」

「走れ!」

「は、はいっ!」

黒江はとっさに未来の手を引いて走った。ちょうど、響が探していたのとは反対の方向に逃げた事になる。

「ま、待って!と、友達とはぐれ……」

「すまねぇが、今はそれどころでもないみたいだ!」

「え!?」

とっさに未来を壁に張り付かせ、自分も念の為に壁に体をつけて隠れる黒江。マリアたちを暗殺、もしくは捕縛するのために探していた米軍の特殊部隊に出くわしたのである。特殊部隊と素人目にも分かる格好であり、お世辞にも隠密任務向けの格好ではない。

「どわっ!ここは日本だろ!?なんで、グリーンベレーだか、デルタ・フォースだかが公然と動いてるんだっての!?あ、もしかして、連中……」

「自己解決しないで、私に説明して〜〜!」

「俺だってよくわからん!だが、狙いはこの手の格好の奴らだってのは確かだ。しゃーねー!この手の連中とやり合うのは演習以来だが……」

黒江は正面突破を選ぶ。お得意の格闘術などを駆使し、おそらくはマリアたちを探していたであろう米軍の特殊部隊とやりあった。(この時、黒江は史実での調がフロンティア事変当時には用いなかった『ヨーヨーのアームドギア』もノイズ対策で用いた。コン・バトラーVからのヒントだとは本人の段。後に、調本人もキュアミューズに教えられて使う)黒江は肘鉄で兵士一人を倒し、装備品を奪う。

「おいおい、ガバメントかよ。特殊部隊はSIGとか使うはずだろ?どうなってやがる」

と、愚痴りつつも百戦錬磨の軍人。ものの数秒で武器を使用可能にし、瞬時に敵の腕や足を撃ったりして動けなくさせる。

「このまま殺されるよりは俺についてきたほうが安全だ!お嬢ちゃん、俺から離れるなよ!」

「分かってるって!」

パニックになりつつも、黒江に必死についていく未来。同じ頃、響がシンフォギアを纏ってノイズを倒しながら必死に探しているが、ちょうど、その反対方向に逃げた事になる。黒江は状況に応じて戦法を変え、米軍特殊部隊を蹴散らし、なんとか外に出る。

「って、おいおい!?外も敵だらけか!」

「どうするの!?」

「今は逃げるが勝ちだ!バケモンはどうにかなっても、米軍の連中は目撃者を消しにかかるぞ!そうすれば、お嬢ちゃんの家族も巻き込まれる!」

「そ、そんな!?」

「しばらくは俺と一緒にいるしかないな……付き合わせるみたいで悪いが、家族や学校、友達ともしばらく連絡はできないぞ」

「そ、そんなぁ〜!」

「お嬢ちゃん、持ち合わせは?」

「10000円もないよぉ」

「俺は3000円もない。が、今は逃げるしかない」

「あ、あなたの名前をまだ…」

「黒江綾香。ロリな外見だが、一応は23だよ」

「私は小日向未来。よろしくお願いします」



黒江は未来を運ぶため、シュルシャガナの技でもある『非常Σ式・禁月輪』を使って移動を始める。元々、オートレーサーを趣味でしていた黒江なので、一輪車の要領で動かせるこの技は使い勝手が良かった。二人は中心市街地から離れた郊外までそのまま向かうことにした。未来はこうして、なし崩し的に事態に関わることになった。ただし、ギアの技で走行していたため、武装組織『フィーネ』に捕捉されてしまう。

「調は……、アタシが連れ戻すデス!!」

重大な『勘違い』をしたたままの切歌が独断で襲撃する。技を解き、『またお前か』と言わんばかりのげんなりした表情の黒江。未来のことはお姫様抱っこで抱えている。

「またお前か……。俺は別人ってんだろーが」

「別人なら、シュルシャガナのギアをどうして纏えるデスか!?そのギアはアタシと調の絆の象徴……お前が……お前なんかが纏っていいものじゃないデス!」

「やれやれ。威勢のいいこった。だが、お前。このお嬢ちゃんを巻き込むのか?」

「その人を使って、アタシを言いくるめようったって!」

「ま、待って!この人は……!」

「問答無用デェエエエエス!」

未来の制止すら意に介さず、目の前の人間の魂を刈り取ろうとした切歌。だが。イガリマの刃は見えない壁に阻まれ、弾かれる。

「!?」

「人の話をちゃんと聞けんのか、お前」

切歌は信じられないと言わんばかりにイガリマを再度振るうが、目の前の『調』の姿が揺らいだと思えば、刃が壁に当たったかのように動かせない。ギアの肩にある高機動バーニアも噴射するが、すぐに刃ごと弾かれて徒労に終わる。

「なんで……何で弾かれ……」

「フッ。目の前を見てみろ」

黒江は敢えて挑発する。切歌は目の前に透明な光の防壁が張られている事に気がつく。

「ひ、光の壁……!?」

「クリスタルウォール。お前の力じゃ突破できねぇよ」


自分一人なら真剣白刃取りでもするが、未来がいるため、クリスタルウォールを使った黒江。

「悪いな、先を急ぐんでな」

「待つデス!!アタシは……」

全く相手にされない切歌。『調』が自分を相手にしないで邪険に扱う目つきで見ることに切歌は正気を保てなかった。切歌の全身が黒く染まり、獣のような咆哮を挙げる。

「な、何…あれ……」

「理性がぶっ飛んだようだ。ああなると、こっちの言葉は耳に入らない。ドミネーション・ラングウェッジ!……止まれ!」

黒江は聖闘士としての拘束技を使い、暴走した切歌を動けなくする。切歌は指一本も動かせない事に気づいたのか、抵抗の意思の表れか、何度も咆哮する。相手の体を自分の意のままに操る山羊座の黄金聖闘士の邪道技。黒江が実践で使ったのはこの時が初めてであった。一見すると、ど偉そうな古い本で呪文をかけて拷問しているようにしか見えず、未来も思いっきり引いている。

「自分を殴れ!…かーらーの!ライトニング・ボルトのぉ!!」

切歌に自分で自分を殴らせて、ひるませつつ、黒江は未来を地面に下ろすと、切歌を正気に戻すために光速での拳であるライトニング・ボルトの一撃を加え、数十mは電撃ごと吹っ飛ばす。

「え、今の……パンチだったの?」

「技を切り替えた。電撃付きのパンチにだ。300万ボルトの電圧だから、ギアを着てても、しばらくはおねんねだ」

切歌が救出されたのは、マリアたちが追いついた時で、およそ数時間後。それまで切歌は当時の低出力のギア姿で伸びるハメになり、黒江はその間に非常Σ式・禁月輪で郊外のネット喫茶(個室つき)に潜り込む事に成功。未来を連れて、しばらくはネット喫茶を転々とすることにするのだった――



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