out side

 さて、霊夢の救出に向かった翔太達一行。しかし、それぞれ思惑が異なっている。
ネギと明日菜は翔太に証明したかった。自分達は戦えるんだと。彼に侮られているんだと思ったから――
シャークティと高音は翔太の考えを改めさせようとした。
彼の考えは2人から見たら正義とかけ離れている。このままではいけないと思った。
そこで自分達の戦いぶりを見せれば、考え方を改めると考えたのだ。
 それらの思惑は最初から頓挫した。というのも――
「たく、有象無象と……しつこい!」
「ぐぎゃあ!?」
 文句を言いながらも悪魔を斬り倒し、次の相手へと向かう翔太。その動きが速い。
「ぐおおぉぉ!」
「ちぃ!」
「が!?」
 爪を突き刺そうとする悪魔から身をかがめて避けると、コマのように回転しながら悪魔を斬り――
「ぐ、が!?」
 それでも攻撃しようとする悪魔に対し、回転を続けていた翔太は回し蹴りで突き飛ばし――
「おおぉ!」
「ぎゃあぁぁぁぁ!?」
 体勢を整えた直後に一気に間合いを詰め、振りかざした剣を一気に振り落として悪魔を切り裂く。
これを翔太はほぼ瞬間的にこなしているのだ。それこそ、ネギ達の目にも止まらぬ程に。
このことにネギ達は驚きよりも唖然とするしかない。
ネギと明日菜は翔太が戦っている所を見たことがあるが、あの時はアスラの凄さやスカアハ達の魔法攻撃の方に目が行っていた。
そのせいか翔太の戦いの印象が薄く、自分達よりもそれなりに強いとしか思えなかった。
それも今の翔太を見て吹き飛んでしまう。わかってしまった。自分達の力は翔太に届いていないことに。
 高音とシャークティの場合、翔太の強さもそうだが悪魔の強さに畏怖を感じている。
麻帆良には時折、不穏なことをするために来る者達がいる。その中には法的な組織に頼ることが出来ない者がいた。
犯罪に走った魔法使いや関東魔法協会を潰そうとする術者などがこれにあたる。
こういった者達を対処するのが高音やシャークティのような魔法先生と生徒の仕事だ。
そして、相手がそういった目的で来る以上、戦闘になることもある。当然、高音やシャークティはその経験はあった。
だが、ここにいる悪魔はそんな者達の比にならない。あまりにも強すぎたのだ。
今まで自分達のしてきたことがお遊びだと思えるくらいに――
「ねぇ、なんか見た目より強くなってない?」
「そういやそうだな……ま、なんとか戦えるからいいけど」
 アサルトライフルを撃ち終えてから話しかける理華に、翔太はため息を吐きつつ返事を返した。
そう、ここにいる悪魔は幻想郷の穴の周辺にいる悪魔達のはずだった。
そのはずなのにそれらよりも強く感じる。いや、間違いなく強かった。
このことに翔太は首を傾げるが、今は戦うことに集中しようとあっさりと考えるのをやめる。
実はある事態が起きようとしているとは知らずに――
 一方で話を聞いていた高音やシャークティは愕然とした。
話の意味はいまいち理解出来なかったが、あれだけの強さを持つ悪魔が翔太にしてみればなんとか出来る程度でしかないということに。
といっても、これは高音とシャークティの勘違いである。
翔太が言うなんとか戦えるというのは、今の体の状態での話であった。
今の翔太はアスラとの戦いでのダメージが抜け切れてない。その為、全力で戦うことが出来なかった。
その状態でも戦えたのは、この場にいる悪魔の強さが対処出来る範囲であったからだ。
確かに強くはなってはいるが、これはある意味翔太にとって幸運だったとも言える。
もし、これ以上強かった場合、翔太は足手まといになっている可能性もあったのだから。
まぁ、このことを知れば、高音とシャークティは別の意味で驚いていたかもしれないが。
 一方でエヴァは別な意味で驚きを隠せなかった。というのも――
「は、はは……なんだ、あれは……あれは……」
「確かになによあれって言いたくはなるわね」
 見上げながらもどこか震えているように見えるエヴァに、凜も呆れた様子でそれを見上げていた。
何を見ていたのか? 上空では今回の騒ぎに当てられた妖精達が集まっているのだが……その数は尋常でなかった。
明らかに数え切れないほどの数がいたのだが……レミリアはそれを意に介した様子も無く、次々と墜としていく。
スペルカードを使わない普通の弾幕……しかし、レミリアのような者ともなれば、それだけでも濃密な弾幕を放てる。
 弾幕ごっこ……この場に来るまでの間にエヴァはレミリアからそのことを聞かされていた。
その時は話半分で聞いていたのだが――
「ははは……なるほど、確かに弾幕だ……素晴らしい……あれこそ、私が求めていたものかもしれん!」
 などと、一転して明らかに興奮しているエヴァ。エヴァは感激していた。その攻撃方法では無く、華麗さに――
呆れるほどに放たれる無数の魔弾。だが、数による無粋さは感じられない。
なにせ、1つ1つの魔弾はどれもが別々の色であり、それによって鮮やかに見えた。
それに無作為に放たれるわけではなく、どこか法則性を感じる。それが幾何学的にも見えて、芸術性を感じさせていた。
そんな弾幕にエヴァは感銘を受けたのだ。それと同時にわかってしまう。今の自分ではレミリアに勝てないことに。
あの弾幕の前ではいかに従者がいようと意味を成さないだろう。詠唱を終える前に従者共々墜とされるのは目に見えている。
だが、悔しさはない。そう、今は勝てないだろう。しかし、自分も弾幕を覚えたらどうなるか?
「弾幕か……いずれ、私も……」
 ニヤリと笑みを浮かべる。そう、エヴァは弾幕を気に入ってしまったのだ。
だから、自分も出来るようになろうと決意してしまう。
元々、エヴァは力に対して強い探求心を持つ。レミリアの弾幕はその探求心を強く刺激してしまったのだ。
これがエヴァのチート化のきっかけとなるのだが……それはいずれ話すことになるかもしれない。
「く!」
「何をする気だ?」
 悔しそうな顔をしていたネギがいきなり杖を向けようとした時、スカアハは睨むように呼び止める。
何をしようとしていたかはわかる。わかるのだが――
「何をって……戦わないと――」
「やめておけ。今、お前が攻撃しようとした悪魔は魔法に対して耐性を持っている。
そのまま攻撃しようとすれば、返り討ちにあうだけ――」
「ぐおおぉぉぉぉ!!」
「あ、危ない!?」
 睨みながらも答えるネギに対し、スカアハは呆れた様子で話していた。
このことにネギはむっとするものの、その時を狙ったかのようにスカアハに悪魔が襲いかかる。
危ないと明日菜は叫ぶが――
「ぐぎゃあぁぁぁぁぁ!?」
「こういう奴もいるのでな。下手な事をすれば、怪我だけでは済まなくなるぞ」
 断末魔と共に襲いかかった悪魔は砕けてしまう。その光景をネギと明日菜は呆然と見るしか出来なかった。
わからなかった。何が起きたのか、まったく……気付けば、スカアハは呆れながらも両手に銃剣を持っていて――
そのことにネギと明日菜は何も言えず、ただ呆然とするしか出来ずにいたのだった。
 その一方、悪魔と戦う翔太は顔を引きつらせていた。というのも――
「なんでいる、パパラッチ?」
「パパラッチの意味はわかりませんが……私のことを言っているのでしたら、当然取材ですよ」
 引きつらせている顔を向けて問い掛ける翔太に、なぜかそこにいた文はカメラ片手ににこやかに答えていた。
まぁ、聞いた翔太も文がなぜここにいるのかはわかってはいた。わかっていたが――
「いや、手伝えよ」
「それじゃあ、取材が出来ないじゃないですか」
 顔を引きつらせたままの翔太のツッコミに、文は何を言ってるんだと言わんばかりに答えてしまう。
その一言が翔太の顔を更に引きつらせてしまったが――
そこに3体の悪魔が文に襲いかかる。当然、翔太はそれを見ていたが、慌てる様子が無い。というのも――
「あやや、いきなりはひどいですねぇ〜」
 すでにその場に文はいなかったのだから。
翔太が声が聞こえる方に顔を向けてみれば、そこにはカメラの代わりに葉団扇を持つ文が立っている。
これに戸惑ったのは襲いかかった悪魔達だ。いったい、いつの間にあそこに行ったというのか……わからずに戸惑うが――
「これはお返しです。竜巻『天孫降臨の道しるべ』!」
「「「「「ぐぎゃあああぁぁぁぁぁぁ!!?」」」」」
「出来るんなら、とっととやれよ」
 その間に文はスペルカードを発動させ、巨大な竜巻を発生させる。
それに襲いかかった悪魔達はもちろんのこと近くにいた悪魔達も呑み込み、ミキサーの如くすり潰していく。
この様子に翔太は呆れた様子でぼやいていたりするけど……
「あやつも人間では無いようだが――」
「文さんは烏天狗です。話に聞くと、かなり長く生きているようですが――」
「あら……それは凄いわね」
 そんな文を見ていたエヴァの疑問に刹那が答えると、メディアが感心した様子を見せていた。
長く生きたからどうなのか? と、思われる方もいると思う。だが、長い間存在し続けるというのは、それだけで神秘を持つのだ。
もちろん、どんな物でもというわけではない。だが、神秘を得た物がどんな力を持つのか? それを先程、文が見せたのである。
文は元々烏天狗ではあると同時に、長い間存在し続けた者でもある。故に神秘性を有していた。
そんな文だからこそ、あれほどの竜巻を操れたとも言える。
 まぁ、そんなこんなもあったが、翔太達はこの場にいる悪魔や妖精達の退治を終えようとしているのだった。


 in side

 さて、一通りの悪魔や妖精を倒したんで一旦休憩をすることになったんだが――
「いやぁ〜、お前は強いな」
「あんたらほどじゃないけど……」
 肩を叩く神奈子さんに呆れつつも答える。いや、だって……妖精だけじゃなく、悪魔にも無双してたんだよこの人。
諏訪子もなんか喜んでる様子でこっちを見てるが……こいつも無双してたのを見逃してない。
うん、神様ってやっぱり強いよね。
「どうだい? 早苗の婿になるつもりはないか? お前なら、任せられるんだけどな?」
「え!?」
「いや、いきなり言われても困るんだけど……」
 豪快に笑いながらそんなことを言い出す神奈子さん。ほら、早苗だって驚いてるじゃないか?
まぁ、冗談だろうと流すことにしたが……まぁ、神奈子さん達に顔を向けてたんで気付かなかった。
理華に美希、刹那に真名に仲魔達に睨まれていたことに……このことに気付いたら、なぜ?と思ったが……
それはそれとして――
「なぁ、あいつらはどうしたんだ?」
 思わずそんな疑問が出る。いや、だってね。ネギと明日菜に高音とシャークティさんが落ち込んでるように見えるんだって。
愛衣も高音を励まそうとしてるんだが……やはりというか、彼女も落ち込んでいるようにも見える。
ていうか、なんで落ち込んでるのさ? 状況がいまいち理解出来てないんだけど。
「すまない。ボクのミスだよ」
「へ?」
「いや、本当ならネギ君達を留めるべきだったんだ。でも、少しは経験させた方がいいと思ってね。
それで何も言わなかったんだけど――」
 いきなりのひと言に首を傾げたが、高畑さんはすまなそうにそんなことを言っていたけど……
ええと、どういうことなんでしょうか?
「まぁ、ネギと明日菜にはまだ早すぎたのだよ。2人が想像していた戦いとはあまりにもかけ離れていたからな。
高音とシャークティの場合は……ま、それはネギと明日菜と一緒に話しておくか」
 あんて、スカアハはため息混じりに言ってたけど。
けど、想像してたのとかけ離れた戦いって……どんなのを想像してたんだろうか?
「さて、お前達は翔太のことを勘違いしているようだから言っておくが……
翔太はお前達なんかとは比べようも無いくらいの戦いを経験してるし、実際死にかけたことだってある」
「……え?」
 スカアハの言葉に驚いたような顔を向けたのは高音である。
いや、ネギと明日菜にシャークティさんに愛衣も驚いてる……高畑さんに刀子さんもかい。
で、見られてる俺はというと、後頭部を掻いてるだけだけど。
「本当……かい?」
「戦いに関しては嘘じゃないよ。ボルテクス界じゃ、ほぼ毎日戦闘の連続だったからね。戦い慣れもするさ」
「ま、その分、死にかけたのは一度や二度ではないがな」
 なんか戸惑いがちに聞いてくる高畑さんに代わりに答えたのが真名で、それを補足するようにスカアハが呆れた様子で話した。
それを聞いてか、高畑さんが感心したような驚いたような顔をしてたけどね。
「なるほど……どこか、お前の戦いはおかしいと思ったが、そういうことか」
「どういうことよ?」
「なに、お前は悪魔の攻撃に対して恐れという物が無いように見えてな。
それがおかしいと思っていたが……何度も死にかけたせいで慣れてしまったのだろう。
だが、そのおかげで悪魔の動きを目を離さずに見れるようになったのだよ、お前は」
 いきなり変なことを言われたんで聞いてみたら、言い出したエヴァは呆れた様子で答えてくれたが……
まぁ、ただ怖がっても殺されるだけなんだけど……そういや、ここ最近悪魔の攻撃を怖いと思わなくなったような――
うん、なんか人としてダメだろうって気がするのは……気のせいじゃないよね?
「言っておくが、真似しようとするなよ? 翔太の場合は本当に気が遠くなるほど何度も戦い続けたことによって身に付けたものだ。
一日やそこらで身に付くようなものでは無い。それを覚えておけよ?」
 なんて、ネギに顔を向けつつ話していたエヴァだが、ネギはというとどこか悔しそうな顔をしている。
う〜ん、なんか言った方がいいのだろうか? でも、なんて言えばいいかね?
「あ〜……言っておくけど、俺も必死だからね? 死にたくないし」
 なんてことを言ってみたが……ネギ君の表情は変わらず。なぜだろうか? 掛け値無しに本音なんだけど?
「さてと……今のお前達の言葉は軽すぎる。それでは翔太どころか、他の者達も心動くことは無い」
「な!?」
「どういうことですか!?」
 で、いきなりそんなことを言い出すスカアハにシャークティさんは驚き、高音にいたっては怒鳴ってしまうが……
言葉が軽すぎる? どういうこっちゃ?
「お前達は自分達がしていることが正義だと思い込んでいることに気付いていない。
いや、こういった方がいいか……お前達は正義という物を勘違いし、軽んじてるんだ。
だから、お前達の言葉は軽すぎるのだよ」
「何ですって!?」
 真剣な表情のスカアハだが、シャークティさんは完全に怒ってる様子。
一方でエヴァは面白そうな顔をするが、逆にアーチャーは面白く無さそうな顔をしてるけど――
「それに関しては、このことが終わってから話そう。だが、今のうちにこのことだけは言っておく。
ある男はそれに気付かなかったために全てに失敗した。お前達も気付かねば、その男と同じような運命を辿るぞ?」
「え?」
 未だに真剣な表情で話すスカアハに、聞いていたシャークティは呆然とするけど……
ある男って誰だ? 正義に関係するといったら……アーチャーか? でも、失敗って何?
考えてみるが……うん、わからない。スカアハはなんのことを言ってるんだろうか?
なんてことを考えていたので、アーチャーが顔を歪めてたのには気付かなかったけど。
 けど、この答えが意外な形でわかることになるんだが……ま、それは後にしておこう。
ていうか、後どれだけ進めばいいんだろうか? なんか、不安になってきたのは……気のせいだといいなぁ……



 あとがき
というわけで、霊夢の救出に向かう翔太達一行。
しかしながら、ネギや明日菜に高音やシャークティなどの問題が発覚。
この後、どうなってしまうのか? なお、成長が見られないという意見ですが……
ハルナと朝倉に関してはちょいとお待ちをという感じです。その代わり、ある人達が……
次回ですが、ついに霊夢を発見。しかし、そこには4人のライダーとパワーアップしたあいつがいた。
更には霊夢も操られて……どうなる?といったお話です。

ところでこの話である悪魔の登場と翔太のパワーアップを考えてるのだが……やろうかな?(おい)



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