「眠ぃ……今、何時だ?」


あー……日の高さから見て昼前ってとこか。
昨日、根詰めて政務してたせいだな。
ま、非番だし誰にも文句は言われないだろ。


「取り敢えず体は起こすか」


寝っぱなしってのも体力使うし……
とは言え、今日どうすっかな。
予定はマジでないし、適当に本でも読むか?


「白石殿ー!」

「……何だぁ?」


扉の向こうから、多分、音々音の声だよな?
なんか急ぎみたいだけど……


「開けていいよ」

「いや、その……でありますな……開けていただけると嬉しいのであります」


いや、自分で開けろよ?
その位できるだろ?


「(……待ってても開きそうにないな)」


仕方ないか……
さて、どういった事情で開けられないのやら……


「どうし──マジでどうしたその荷物?」

「白石殿宛の文であります!」

「俺宛?」


星羅さんとかならまだ分かるぞ?
でも、音々音が両手で抱えるくらいの箱いっぱいの手紙って何だよ……


「と言うかさ、その箱を下に置いて開ければよかったんじゃね?」

「……………あ」


どっか抜けてるよなぁ、音々音って……
ま、そこまで口に出すつもりは無いけども。


「取り敢えずもらうよ、さすがに重いだろ?」

「ありがとうなのであります」


っと、結構重いな。
まぁこの時代ってのもあるか……
元いた世界と違って、紙での文ってのも結構価値があるし……


「んで、誰からだ……?」


取り敢えず適当に手に取って見て、と……
ん、これって涼州の富豪の名前じゃなかったか?
月さんとかの政務手伝う機会もあるから、ある程度は名前見れば分かるけど……


「どういった内容でありますか?」

「えっとだな……『──我が息子との縁談を──』……………はぁ?!」


ちょ、ちょっと待て!
え、縁談ってつまりは、結婚てことだよな?
……いや、重要なのはそこじゃねぇ!


「何で俺が“男”と結婚しなきゃならねぇんだよ!?」

「し、白石殿、落ち着いて──」

「落ち着けねぇよ、生憎と!」


ここの連中じゃ収まらず、とうとう外の連中まで俺を女扱いか?!
……あー、頭痛が……


「ひょっとして、この手紙って全部そういった類か?!」

「ねねは内容までは知らないのであります」

「……悪い、音々音に八つ当たりする理由ないよな」

「気にしなくていいのであります。さすがに、その内容の手紙を見れば驚かざるを得ないであります」


あんま気にしてないようで助かった。
とにかく、だ!
全文読む必要は特にない。
これだけの量だ、要点だけ読んだって文句ないだろ。


「そいや音々音。仕事とかは良いの?」

「自分の分は、すでに終わってるのであります。なんなら、ご助力するのでありますよ」

「そりゃ助かる。んじゃ、宛先はこの際どうでもいいから、要点ごとに仕分けていくか」

「承知したであります」


……ただ、読むのがマジで億劫なんだけどな……
この手紙の全部が全部、縁談に関してのモノだっても最悪いいよ……
ただ、これで全部の相手が男だったらマジで泣くぞ?











「なかなか壮観だな……」

「まさか、ほぼすべてが縁談に関する文とは思わなかったであります……」


大体9割くらいかな、それ関係の……
幸か不幸か、縁談の相手は男と女とが半々だった。
あとは個人的な手紙とかだったりだな。
ほんとに星羅さんから手紙が来てるとは思ってもみなかったけども……


「どうも星羅さん、近況はどうって心配してくれてるみたいだな」

「十常侍との一件もありましたから、尚のことでありましょうな」

「そうだな。今日の夜には書き終えておかないと、だな」


しっかしまぁ、星羅さんの以外がほぼ縁談関係の手紙だって言うのは呆れる。
自分の息子や娘を、そんな簡単に婿や嫁に出していいものなのか?
……ま、元いた世界でもそうゆうのはあったらしいから、全面的に批判は出来ないが……


「それで、白石殿?この書状、どうするでありますか?」

「俺としては、全部断っておきたいとこだよ」


結婚って言うのも勿論あるけど、一度も会ったことのない人だからって言うのも大きい。
もっと言えば、男と結婚する趣味もないからだが……


「とは言え、俺の独断で返事を決めていいのやら……」

「何故でありますか?」

「仮にも、俺は月さんに仕えてる身だからな。どっかの富豪や有権者とのつながりが強固なものになるっていうなら、俺の意思が無視されてもおかしくは無いだろ?」


でもまぁ、月さんはそういうのは気にしなさそうな部分もあるけどな?
だから、厳密に言えば、返事を書くにあたってほしいのは詠の意見の方だな。


「……それにしても、何故白石殿に、“息子”を差し出す内容の書状が半数近くもありますやら」

「簡単な理由よ」


音々音の質問に答えたのは、後ろから急に聞こえてきた声。
……タイミング良いな、ちょうど来てほしかったとこだ。


「開けっぱなしになってたから、入らせてもらったわよ?」

「それは良いけど、詠。理由を教えてもらえると、俺としては嬉しいんだけど?」

「ほんとに簡単よ?白石が十常侍のトコに潜入した時、女装させてったでしょ?」

「あぁ、なるべく忘れたい記憶だ」

「あの屋敷から逃げ出した女官とかが、“董卓の元にいる天の御遣いは女性”だって勘違いして言っただけのことよ」


簡単というか迷惑な話だ。


「ご愁傷様であります」

「ほんとにな……あ、詠。この手紙の返事だけど──」

「断りたいんでしょ?全部それでいいわよ?」


随分と簡単にOKくれたな……
問題とかないのか?


「白石が昼から、月の用事に付き合ってくれるって言うのが条件だけど」

「月さんの?問題ないけど、なんか重要なこと?」

「……厄介事、には違いないわ。詳しい話は後でちゃんとするから」

「んー、まぁ了解した」


厄介事って言われても、正直想像つかないよなぁ……
ま、後で説明してくれるってことだし、それでよしとしておくか。


「んじゃ、さっさと返事書き終えて──」

「白石殿……さすがにその量は厳しいのでは?」

「……言った手前恥ずかしいが、間違いないな」


でも、どうするかな?
詠の言う時間までにはまだ余裕あるし。
なんなら、出来る量だけでも返事書いておこうかと思ったが……


「(一つ一つの書状の文量がすごいことになってるし、面倒くさいなぁ……)」


適当に一個とって読んでみたけど、まぁあんまり読み心地のいいもんじゃない。
これなら、元の世界でもらったことのあるラブレターの方が数倍ましだよ……


「ハァ、手紙は用事が終わってからにするか」

「それが賢明ね。じゃ、ボクは戻る──」

「──ふと思ったのでありますが……」


なんだよ音々音?
なんでか知らんが、嫌な予感がひしひしとしてるんだけど?


「どうかしたの、ねね?」

「音々音?」

「いえ、もしもねねたちの中であれば、白石殿は誰を選ぶのかと……」


……………はぁ??


「な、何を急に言いだす?!」

「白石、そんなに大声出さなくてもいいじゃない」

「いや、普通出すだろ?!というか嫌でも出るだろ」


てか、何て話題出すんだよ!
ちょっとは離れようとか思わないか普通……


「それで?白石は誰が良いの?」

「おっそろしい質問してくるもんだな」


誰って言われてもだな……
この面子ってことは、月さんを始めとして、詠・音々音・恋・霞・律・ついでに羅々ってとこか?


「誰が良いって……選ぶ相手によっては、詠も音々音も怒るくせに」

「想像の範囲なら文句は言わないわよ?」

「ねねも同じであります」


逃げ道塞がれるの多いな俺……


「選ぶって言っても……てか、贅沢過ぎないか?」

「へ、へぇ?それなりに全員の評価は高いのね?」

「そりゃぁな。てか詠、何でちょっと動揺してんだ?」

「し、してないわよ!」


じゃあどもるなよ……


「では、恋人ないしは夫婦になった場合の想像図でも聞かせてほしいであります」

「ただただ俺は恥ずかしいだけじゃね?」


何の罰ゲームだこれ?


「では手始めに、羅々殿はどうでありますか?」

「羅々を……恋人と想定してみろってこと?」

「結構相性いいんじゃないの?なんだかんだで、あんたの副官って立ち位置も気にいってるみたいだし」


羅々、ねぇ……
ちょっと適当な部分も見えるし、言葉足らずな部分も多いよなぁ。
それに、ちょくちょくサボってるとこも見るし……


「(その割には、キメるところではビシッとやってくれるし……)」


相性も、詠が言ってたみたいに悪くは無いとは思うぞ?
でも、妻とか彼女って言うよりは──


「出来の悪い妹みたいな感覚ではあるかもな」

「あー、なんとなく分かるわ」

「同意出来てしまう自分が何とも……」

「でも、実際に恋人ってなると、結構甘えてきそうじゃないの?」

「今以上にか?それはそれで困るような気がしなくもないぞ?」


霞と同じように、よく甘えてくるしなぁ。
あんまし世間体とか気にしてない部分も似てる気がする。


「ま、そんなとこでいいか?」

「そうでありますな。では次は……霞殿、でありますかな?」

「霞か……」


言葉遣いが似通ってるって意味では、一番親近感はあるな。
ただ、アレが恋人か……
嫌ってわけじゃないけど、気苦労は耐えなさそうだな。


「振り回されそうな気がするな……」

「どういった意味で?」

「色んな意味で……楽しいんだろうけど、延々あの調子だと振り回されるとは思う」

「な、なんか……同意せざるを得ないわね」


所々大雑把だしな。
そりゃ、戦場なら頼りにさせてもらってるけど、それ以外の場所なら頼られそうなんだよな。
主に財布の面で……


「じゃ、次は律かしら?」


律……
先の二人に比べりゃ真面目な分、いいかもしれないけど。
その代わりに融通が効かない部分とか山ほどあるしなぁ……
違う方向に心労が溜まるな、絶対。


「喧嘩しつつも仲は良い……見たいな感じになるか、な?」

「喧嘩はするのでありますね……」

「律に限った話じゃないだろ?恋人とか夫婦って話になると、それまで以上に相手との距離は近くなるんだし、嫌でも譲れない考えとかがぶつかるし……」

「それが律の場合はより顕著ってこと?」

「だな。俺もどこかでは頑固になるだろうし」


自分の考えを頭ごなしに否定されりゃ、普通は口論とかに発展するもんな。
でも他のやつなら、それぞれの考えを妥協しながら、双方が納得できる考えを導き出せるだろうけど……
律は妥協とかしないタイプだし、自分にも他人にも……
短所に見られがちだけど、長所でもあるんじゃないかな?
ま、時と場合にはよるが……


「今でも、別に互いのことは嫌ってるわけじゃないし、それなりに円満にはなるとは思うぞ?」

「へぇ?律をそこまで買ってるとは思ってなかったわ」

「生憎、過小評価するのは嫌いなんだよ。特に、そんな評価をしてるって言う自分自身のことがね」

「白石らしいわね。それで、次は誰にする?」

「……てか、まだ続けるのか?」


もう三人分も答えたんだし、これで終ろうぜ?
真剣に考えてるとなかなか恥ずかしいんだからさぁ……


「この際であります。全員分考えてもいいのでは?」

「……なら、次は音々音でいくけど、いいんだな?」

「ね、ねねでありますか?!」


そりゃそうだろ……
自分で“全員分”って言ったんだろうが……


「……とは言ったものの、難しいな……」

「何が、でありますか?」

「いや、音々音だけじゃなくて、詠に関しても」

「ちょっ?!なんでボクまで?!」


この話題を盛り上げようとしてたのはどこのどいつだ?


「じゃあ、敢えて俺の方から聞くけど、俺は二人の一番になれるか?」

「「へ?」」

「……ま、“異性”の中ではなれるかもしれないけど、“人”の中だと難しいだろ?」


音々音は恋に・詠は月さんに、それぞれ心酔してるのはよく分かる。
その二人のどっちかと仮に恋人とかになっても、そこに心酔してる相手がいなかったらどうだ?


「別に俺は二人が嫌いだなんて言わないし、むしろ好きって言ってもいいくらいだけど……二人は俺を“一番好き”になるのには結構時間かかるだろ?」

「「…………………………」」

「黙るなって……」


ついでに言うと、顔を赤くすんな!
この話題振った奴と、話題を膨らました奴のくせに……


「そんなわけで、二人との恋人だの夫婦だのって想像図は正直難しい。なった場合は、そりゃそれぞれ相性は悪くないから、良い関係にはなるとは思うけども」

「……言われてみれば、って言うのもあるわね。否定できないし、ボクたちのはそれでいいわ」

「……………ね、ねねは、白石殿のこと嫌ってなどいないでありますよ?!」

「それはよく分かってるから大丈夫。んで、残ったのは月さんと恋だけど……」

「「……………(ゴクッ)」」

「……やめとこう」

「え?な、なんで?」


そんな身構えたやつに話せるかっての……
さっきも俺が言ったけど、今から話すのは二人にとっての“一番”の相手だしな。


「例え想像だったとしても、何かしら文句つけるのは目に見えてる」

「そ、そんなことは無いのであります!」

「動揺してる時点でもうダメ。ついでに言うと、ちょうど昼飯時だし、この話題はここまでってことで」

「聞けなくて得したのか損したのか……」

「なんだかモヤモヤするであります……」


なら最初っからこんな話題振るな……


「んじゃ、さっさと飯食って、月さんの用事に付き合えばいいんだな?」

「……すっかり忘れてたわ」

「おい」


くだらない……とは言わないが、こんな雑談で用件忘れるなよ。
時間つぶしにはなったとは思うけど……


「それで?何か必要なものとかあるか?」

「そこまで必要なものは無いわ。服装だけきっちりしててくれればいいし……ま、一応得物は持ってきて?」

「得物を?やっぱり護衛ってことでか?」

「厳密にはそうじゃないけど、念のためってこと」


要件が何なのかさっぱりわからん。
取り敢えず、飯は早めに済ませるか……
……何事もないよな?なぁ?!







後書き


ごめん、ねね……
結局この日常編も、君が主役じゃないんだ(オイ

あ、前後に分けた理由はぶっちゃけそこまで無いです(マテマテ
個人的にこういう形はやったことが無いので、練習がてらという感じです。
後編ではどうなることやら(汗
生温かい目で呼んで下されば本望です。



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