2500万Hit記念作品
機動戦士ガンダムSEED ASTRAYアフター
イライジャの最後?

 

C.E.80。
五年近く続いた戦争がカガリ・ユラ・アスハとラクス・クラインの二人によって終結してから約五年。
戦争がなくなっても傭兵部隊『サーペントテール』の依頼は無くならなかった。
戦争終結後に民間に流出した武器やモビルスーツで犯罪に走る者や、そのまま軍を脱走してしまった者たちが武装強盗になっていたりするからだ。
そんな折、サーペントテール……、いやイライジャ・キール個人に依頼が舞い込んだ。
それがイライジャの運命を決めるものだとは誰も気づかずに……。

依頼人は若い女性だった。

応接間で向き合う二人。
イライジャがその女性に既視感を感じ、過去の記憶を掘り起こす。
そして思い出した。
その女性は、かつてイライジャが受け、サーペントテールに入るきっかけとなった『庭の花を守って』という依頼をした資産家の娘だった。
あれから十年経ち、四〜五歳だった少女は、美しい女性になっていた。

「しかし……なぜ俺の居場所が判ったんだ?」
「この雑誌です」
それはかなり有名な写真週刊誌であった。
「ここのページにサーペントテールの特集がありまして……」
「なに!?」
慌てて付箋の付いたページを開くイライジャ。
そこにはロングから撮影したと思われるブルーフレームフォースやMSのモニター画像と思われるイライジャのザクファントムカスタム、果てはイライジャの顔が撮影されたものもあった。
「い、いつの間に……」
そう思って撮影者の名前を見るとそこには━━━━
「ジェスぅぅぅぅぅぅっ! お前かぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
━━━━よく知る『ジェス・リブル』の名前があった。

名前は有名になっても顔が売れてはいけないのが傭兵である。
何故なら顔がバレると普段の生活が出来なくなるからである。
ましてや一応脱走兵であるイライジャはザフトにバレると非常にマズいのである。

「はい、ジェスさんに問い合わせたところ、『サーペントテールから掲載許可は貰った』と……」
「何考えてんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
そう言って他のメンバーを見る。
全員がそっぽを向く中、劾だけがシニカルな笑みを浮かべ言い切った。
「問題ない。すべて予想の範囲内だ」
「って、問題が違うだろうがぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
劾の言葉に大声で叫んで……叫び疲れたのか、ソファーに座り込む。
「……だとしても何でここが……」
現在宿泊しているホテルは余程の情報網を駆使しないと探せないような場所なのだ。疑問は当然である。
「最初はジェスさんに尋ねたんですが『傭兵同士、カイトのほうが知ってるだろ』とマディガンさんを紹介されて……」
「あのヒゲ親父ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!」
過去にブースターウィザード製作後の任務でカイトに担がれ、自爆するコロニーからほうほうの体で脱出したこともあったイライジャはそのことをまだ根に持っているらしい。
「そうしたら今度は、『ジャンク屋の連絡網を使ったほうが早いだろう』とロウ・ギュールさんを紹介されました」
「ロウぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ! お前もかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
ブルーシリーズのカスタムやかつての愛機のジンカスタムなどで世話になっているが、「面白ければいい」が基本思考のロウにも怒りをぶつけざるを得ない。
「で、ロウさんが叢雲さんに連絡を取ったところ、ウェラーさんやアジャーさんも了解して頂きましたので……」
「リードぉぉぉぉぉっ! ロレッタぁぁぁぁぁぁぁっ! 劾ぃぃぃぃぃぃぃっ!」
すでに四面楚歌だった(笑)。
しかもたらいまわし状態(笑)。
怒りの余り、立ち上がって叫ぶイライジャ。
「……落ち着きましたか……?」
騒ぐイライジャを尻目に優雅にお茶を飲む女性。
「……ああ……。……すまない…五月蝿くしてしまった……」
息を切らせるほどに叫んだイライジャがソファーにへたり込む。
そんなイライジャに女性が優しく語り掛ける。
「……守れませんでしたね……」
ただそれだけ。だが女性の言葉はそれで十分通じた。
「……すまない……」
これだけで済むわけはないが依頼を完遂できなかったイライジャには他にどうしようもなかった。
「いいえ……。結局あのコロニーには戻ることはありませんでしたし、庭師のジョセフも解雇されたまま戻ってくることはありませんでしたから……」
落ち込むイライジャを擁護するように微笑む女性。
「そうか……。でも守れなかったことは事実だ……。あの時の報酬はまだ取ってある……。すっかり押し花になってしまったが……、今から取ってこよう」
そう言って立ち上がろうとするイライジャを止める女性。
「いえ、いいんです。あれは守ろうとしてくれた貴方への報酬です。叢雲さんからもその時の事を伺っております」
「劾……。余計なことを……。なら、次に依頼するときは格安……、いや、無報酬で引き受けよう。サーペントテールではなく、イライジャ・キール個人として」
イライジャの顔は何か心の重石が取れたような……そんな顔だった……。
「…では早速ですが、……改めて守って欲しいものがあります」
すでに依頼を持ってきていたからイライジャを指名したのだろう。女性は話を切り出した。
「あるものを守って欲しいのです」
「判った。引き受けよう」
何を守るのかも聞かずに了承するイライジャ。
「本当ですか!?」
その言葉に嬉しそうにする女性。
「ああ。二言は無い」
「有難うございます!」
そう言って頭を下げる女性。
「では、これから……」
「ああ」
そう言って立ち上がるイライジャ。
「不束者ですがよろしくお願いします」
「え?」
案内されるのかと思っていたイライジャは女性のセリフにぽかん、とする。
「こんなに快くお返事を頂けるとは思いませんでした。さあ、行きましょう」
立ち上がってイライジャの手を取る女性。
「い、行くってどこへ……」
困惑の表情のイライジャに微笑む女性。
「嫌ですわ、私の実家です」
「え?」
話の見えてこないイライジャの困惑は増すばかり。
「ですから、『私のこれからを守って欲しい』と依頼しようと思ったのですが……、すぐにお返事いただけるなんて(はぁと)」
「ちょっと待てぇぇぇぇぇっ!? それ絶対依頼と違う!!」
まあ、普通はプロポーズと言うだろう(爆笑)。
「さあ、早くお父様とお母様に紹介しないと……」
女性らしからぬ腕力で、一応……本当に『一応』だが、コーディネイターであるイライジャを引き摺っていく依頼者の女性(いや、すでに婚約者か?)。
「ちょっ、ちょっと待て!! 劾! ロレッタ! リード! 風花! 助けてくれ!」
遠巻きにして見ているサーペントテールの仲間に助けを求めるイライジャ。しかし……。
「『引き受ける』と言った以上、最後まで遣り通すのがプロだ」
と、劾は言い切った。
「ここまで追いかけてきたんだから邪険にしちゃダメじゃない」
さすがに女性の立場のロレッタ。
「人の話はきちんと最後まで聞くもんだ」
と、リードは酒瓶を傾けながら言う。
「良かったね〜! モテモテじゃん」
にやにや笑って完全にからかっている風花。
「お前ら全部敵だぁぁぁぁぁぁっ!!」(涙)
涙を流しながら引き摺られていくイライジャの脳裏にはドナドナが響いていたのだった……。

 

女性は次女だったため結婚を機に家を出る事になったが━━━━
その結婚式はロウ・ギュールやジェス・リブルといった関係の濃い者たちから、ロンド・ミナ・サハク、カナード・パルスといったそれほど関係の無い者たち、世界に平和をもたらすため暗躍しているセブンとイレブンのソキウスたちに加え、過去に共に戦ったスリー・ソキウスにグリーンフレームのトロヤにPMCのレオンズ、はては何故かオーブからカガリ・ユラ・アスハとアスラン・ザラ、プラントからラクス・クラインとキラ・ヤマトが訪れた。何でもロンドに誘われたらしい━━━━

勿論そのメンバーがそろってただで済むはずも無く……なぜかイライジャ一人VSその他全員という戦闘が勃発。
当然ながらイライジャはフルボッコにされた後、花嫁に完全に主導権を握られた状態での初夜を迎えることとなったのであった……。

 

その後イライジャがどうなったかはというと……。
「うぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
吠えて加速するイライジャのゲルググマーセナリー。
「最近、イライジャって気合入ってない?」
成長した風花が呆れたように言う。
「もうすぐ子供も生まれるらしいからなぁ……」
いつものように酒瓶を傾けながらリードが答える。
「人は子供を持つと強くなるものよ」
親としての先輩であるロレッタはイライジャの気合に納得していた。
そして共に出撃している劾はやはりシニカルな笑みを浮かべながら言い切った。
「ふっ、ミッションコンプリートだ」
待て!? ワケ判らんぞ!! 何が言いたいんだ劾!?

 

あとがき

ども、喜竹夏道です。
2500万Hit突破記念作品としてSEED ASTRAY 小説版のアフター作品を書いてみました。
SEED ASTRAYのアフターと言っても、実際はDESTINYやASTRAYS以降のお話しになります。
浮いた話の無い美形、イライジャにスポットを当ててみました。
ちなみにサブタイトルは『独身生活が終わったイライジャ』という意味だったりします(笑)。

今回オリジナルのMS『ゲルググマーセナリー』は『ゲルググ』が種運命で出てこなかったのでその後の世界で出てるかなと思って出してみました。
じつは「ギャンナイト』というものも考えたのですが……、色々迷ってこっちにしました。
種運命で『ゲルググ』というのは、眼堕さんの作品で『ゲルググヴェステージ』というのが出てきます。これでもいいかなと思ったんですけど、まんま使うのはどうかと思ってギャンにしようかとも思ったんですが……、やっぱ量産されなかった機体より、量産機のほうがイライジャには似合うと思って。
でも量産機だからってシビリアンアストレイは無いだろうし、ザクもそこまで使ってはいられないだろうし……。連合系でもいいけどウィンダム辺りだとこの頃には時代遅れだろうし……。
で、結局オリジナルの量産機にしてみました。
Zガンダムの機体からでも良かったんですけど、実は私はZガンダムを見たことがなく機体のイメージが湧かなかったのでこうなりました。ついでにZZも見た事が殆どありません。
問題ありだな、ガンダム書く身としては……。



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