それは…

必然だったのかもしれない…

偶然だったのかもしれない…

召還術と呼ばれる世界をつなぐ扉は…

時の紐すら手繰り寄せる…

これは、そんな世界の物語…





Summon Night 3
the Milky Way





第一章 「出会いは唐突に」



私はアティ…って唐突に言っても分からないですよね。

でも、私に関して説明する事は大してありません、自分で言うのもなんですけど身長も体重もスリーサイズも特別って言うわけじゃないし、

剣の腕はそこそこ、召還術が少し、燃える様な赤い髪は自慢かな…

仕事は元は軍に務めていたんですけど、初任務で失敗…

解雇されて無職の状態…応援してくれた村の人達の手前帰る訳にも行かず途方にくれていたの…

でも、捨てる神あればひろう神あり、少しいきさつがあって軍学校に入る子…

ベルフラウちゃんの家庭教師をする事になりました…

ベルフラウちゃんは帝国屈指の大貿易商マルティーニ家の子で、赤い帽子と金髪が印象的な少女、将来は美人になる事は確実そう…

でも、この子は少し問題児らしく、私の事も信用していないにたいです…初対面だから仕方ないんですけど…

前の家庭教師も追い出したらしいですし、先ずは信頼関係を築くのが命題と言う事ですね…

でも、軍でも勤まらなかった私が先生なんてきちんとこなせるのかしら…?



そういう訳で、帝都へと向かう道すがら仲良くなろうと思って、

帝都へと向かう船に乗って以来色々頑張ってみたんですけど、結果は今一つ芳しくないみたいです…

やっぱり彼女は私を使用人としか見てくれてないのかな…

ううっ、がんばらなきゃ…私!



私達が船乗って数日目の事、軍が何かを運んでいるのが漏れたらしく、海賊の襲撃にあったんです…

このままでは、海賊が客室まで来る事はほぼ確実だと思えたので、

震えるベルフラウちゃんに「守ってあげるから」と言って連れ出しました…

ベルフラウちゃんを連れてボートに向かい、直ぐに脱出できるようにしようとしたんですが…

思いの外海賊の進行が素早く逃げるのは難しそうだったので、甲板上にあがって海賊の目を引き付ける事にしました。

ベルフラウちゃん達を守ろうと私は必死で戦い敵の第一陣は何とか出来たんですが、リーダーらしき男達が現れて形成は逆転…

船縁に追い詰められる事に…


その時、突然に嵐が巻き起り…

船が傾ぎ船体が悲鳴を上げ…周りの人達も海へと落ちていきます…

そして、ベルフラウちゃんも船縁から投げ出され、海へと落ちていきました…

私は、ベルフラウちゃんの後を追って飛び込み助けようとしたんですが…

嵐の中で泳ぐ事もままならず、ベルフラウちゃんも見失い、意識を混濁させていったのです…


そんな…私は…こんな事にならない為に…もう死ぬ人を見ない為に軍を辞めたのに…

死なせない…こんな所で皆を救えないまま終われない…

私、約束したんだもの、あの子に…

守ってあげるってなのに…っ

ぐっ…もう、息、が…

ああ、私に…

私にもっと力があれば…

守ってあげられるだけの力を、持ってさえいたなら…

ごめんね…

ベルフラウちゃん…



力が欲しいか・・・?


え?


ならば我を手にせよ・・・生き延びたくば我を継承するのだ・・・


生き、延びる…


さあ、手を伸ばして掴み取れ!!


………っ!?

















・・・ざめよ


え…?


さあ、目覚めるのだ・・・


声…

わたしを呼んでいるの?

でも、誰が? どこから?


目を開いて・・・

立ち上がるのだ・・・


う、う…っ


我を継承せし者よ!


…!!


唐突に意識が浮かび上がり私は光の中に投げ出された…


「あ、れ… 夢…?」


視界に映るのはどこまでも青い海と、体をじりじりと焼く砂浜…

ここは…海岸線?


「えーっと…私、どうして浜辺で寝てたりするのかな?

 ううん、それ以前に…

 ここ、どこですか??」


私は周囲に人影を探すけど見当たらない…

この見覚えの無い景色の中途方にくれる私…

仕方ないので浜辺に座り込み思い出し作業に没頭する事にしました…


そうか、私は嵐に巻き込まれたんだっけ…それであの子を助けようとして海に!

そうだ! ベルフラウちゃんは!?

そう考えて周囲を見回していると、


「イヤあぁぁっ!!」


あの声は!

私は瞬間的に声のする方へと向かって走り出しました…

走ってたどり着いた先は流木や船の廃材が集まってる所…

そこには、ベルフラウちゃんとシルターンの火の召還獣が数十匹のはぐれ召還獣に囲まれている姿が見えます…

火の召還獣は必死にベルフラウちゃんを守っているみたいですけど、敵うとは思えません…

剣もサモナイト石も無くしてまともに戦えるとは思えない私だけど…

絶対に助けなくちゃ!

無手で飛び出す私にどこからか声が聞こえてきます。


武器なら・・・ある・・・


またこの声…幻聴じゃなかったの…


我を呼べ・・・我を、召還せよ・・・生き延びる為の力を欲するならば・・・我を抜 き放て!!


力…そう、あの子達を守る力が…欲しい!

私がそう思って手を空へとかざすと…

空中から剣が現れ…あれ?

剣が現れる筈の場所は何か空間に穴が開いた状態のまま固定され…

真っ黒な何かが出現しようとしていたんです…

もしかして…サプレスの悪魔?

違う…あれは…人間…でも、どうして…?

私がそう思っている内にも真っ黒なマントと顔の半分を覆う眼鏡の様なものをつけた人間は穴を通って現れる…

何事!?

私はパニックになっていました…唯でさえ変な剣を召還しなければいけなくなっていたのに…

召還してみたら、全く別の物が出てきただなんて(滝汗)


召還された男の人は何か体の動きを確認しているみたいです。

そして、召還された男の人はその半分眼鏡に隠れた顔で私に問いかけます…


「ここは、どこだ?」

「そういう事は、後にして下さい! あの子が危ないんです!」

「ん?」


そう言われて男の人は首を捻る…

そして、初めて気付いたように…


「あれは、何だ?」

「そんな事どっちでもいいですから! 助けないと!」


そう言って私が飛び出そうとするより早く、男の人は行動を開始した…

素早い…私も軍にいたから分かるけど、こんなに体を動かすのが上手い人間は見たことが無い…

召還獣達の攻撃を素手で弾き、或いは避け、確実に攻撃を裁きつつ同時に反撃を行い、はぐれ召還獣達を倒していく…

ほんの十秒ほどで数十体いたはぐれ召還獣達を撃退してしまいました…

本気で何者?


「よく分からんが、変わった動物みたいだな…木連式で相手が出来て良かったが…」


戸惑っているようだけど、考えてみれば当然、突然召還されたんだから…

どう見ても四界の召還獣では無さそうだし…

これは、少し説明しないと納得していただけないでしょう…

『説…明…?』

どこかで反応したみたいな気配がしたみたいですけど気のせい…ですよね?

でも、説明よりも前にしておく事がありました…


「どうも、助けてくれてありがとうございます! 私はアティ、貴方はどなたですか?」

「…アキトだ」

「アキト…うん、じゃあアキトさんと呼ばせて貰いますね」

「好きにしろ」

「状況説明は…」

「あっちが先だろ?」


そう言って、ベルフラウちゃんを指すアキトさん、

うっ、とっつきにくい人みたいですね…

何だか悲壮感のような物が漂っているし…

普通には近づきがたい人みたいですけど…

ベルフラウちゃんを助けてくれたし、きっと良い人ですよね?

服装のセンスは凄いけど…彼の世界では普通なのかもしれないし…

兎に角、今はベルフラウちゃんが先です、もっとも怪我とかはしてないみたいですけど…


「ベルフラウちゃん、大丈夫?」

「…」

「どうしたの?」

「この子が私をかばって…」


見るとそこにはシルターンの召喚獣が倒れていました

でも、特に怪我なんかは無いみたい…打ち身が少し…そんな所ですね…


「うん、打ち身が少しあるみたいだけど大丈夫、寝かせておけば治るわ」

「先生…」


ベルフラウちゃんはほっとした表情をしたかと思うと…

わたしの胸に飛び込み泣き始めた…


「うわぁぁぁん!!」


泣きじゃくるベルフラウちゃんと髪をなで慰める私…

そして、それをどこか懐かしそうな顔で見守るアキトさん…

ここから…全てが始まりました…

見知らぬ島で私たちを待っていた途方もない日々が…

だけど、私はまだその事を知りません…

泣きじゃくる生徒をなだめる事だけで精一杯で…

まだ…

知らなかったんです…







あとがき


すいません!

短編と言いつつ続いてしまいました(汗)

しかも、アキトは出てきただけだし…

次回にはきちんと活躍させますのでお許しを(滝汗)

第二章は一週間以内で出す予定です。

第三章はちょっと分かりませんが(爆)

しかし、ですます調の一人称って結構しんどい…

 

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