なんだか気弱でらしくないアルディラさんの感じに私は思わず声を上げました。



「アルディラさん!」

「は、はいっ!?」

「いくら融機人でも、半分は私たち人間と同じなんですから。無茶したら困ります。心配させないで」

「アティ……はい……」



最近はなんだかどこもかしこも少しづつおかしな状況になってきているような気がします。

私は相談したかった事をとりあえず保留にしておく事にしました。

夢遊病のようにも見えたアルディラさんのことも、何かある可能性が頭をよぎります。


気のせいだと思いたいのですが、ここのところどうにも引っかかる物が多い気がします。


何事もなければいいと思いながら、私は帰途につく事にしました。






Summon Night 3
the Milky Way




第七章 「心に届く言葉」第六節




結局アルディラさんに相談を持ちかける事は出来ず、私は海賊船のある浜辺で一人考えています。

私は何がやりたいのか、何故こうなったのか、本軸の所で引っかかっています。

やりたい事は当然平和的解決。

結局の所、島の利益のためにも、アキトさんの体のためにも、そして最終的には帝国軍のためにもいいはずです。

とはいっても、軍とは力を欲する組織、私だって一時期は所属していたんですから少しは知っています。



「軍事行動に出れば死者が出る……これだけは動かせない事実です」



そう、私だって戦争は見てきました、でも、結局の所結果的にどこが正義だとか、どこが得をしたかなんて瞬間的な事でしかなくて……。

最後に残るのはいつだって巻き込まれた人々の悲しみなんです。

そんなの……もう見たくないじゃないですか。


でも……アズリアの信念、私に曲げる事が出来るのでしょうか?



「……」

「先生!」

「ベルフラウ?」



いつの間にかベルフラウが近くにきていたみたいです。

相変わらず不機嫌そうな顔をしていますね。

この子の機嫌がいい時というのはかなり貴重ではないのかと思います。

まあ、考えてみれば私が信頼されていない証拠かもしれないですが……。



「いつまで不景気な顔してるつもりよ!

 いくら頭を使ったって、出てくる答えは貴女なりのものでしかないじゃないの……。

 貴方の気持ちが変わらないのなら、それを貫いていくしかないじゃない!」

「!?」





ベルフラウ……。

確かに単純な事ですよね。

行動して結果を出す以外それを証明する方法はない。

誰の言った言葉でしたっけ。

うん、確かにその通りなんです。



「バッカみたい! 私の小言は平気でききながしちゃえるくせに……。

 こんな単純な事で凹んじゃうなんて」

「ベルフラウ……」

「うじうじ頭で考えるなんて、貴方のやり方じゃないでしょ?

 いつもみたいに笑い飛ばして、さっさと決着をつけちゃいなさいよっ!」

「……。そうですね……」



ベルフラウの言うとおりです……。

結局私は自分の事を信じられなくなりかけていた、まだ行動していないのに。

失敗した時の不安に怯えていたんですね。



「私らしくないですね? 立ち止まって考えてばかりいるのは……」

「まったく……。これじゃあ、どっちが先生だかわからないですわよ……」



ありがとう……ベルフラウ。

貴方の先生になれてよかったです。

そうですよね、止まって考えているだけじゃ何も変わらない……。



「私、やっぱり自分のやり方で頑張ってみます!」



そう、止まって考えていても相手に伝わるわけじゃない。

結局、私の考えは伝わらなければ意味の無いものですし。

行動で示すしかないですよね。











俺は、いい岩場を見つけて釣りにいそしんでいる。

趣味と言うほどでもないが、このところ忙しかったせいもあって、少しのんびりしたいというのが本当だ。

アティの悩みの相談に乗ってやりたいのは山々だが、ベルフラウが話しかけていたようだから俺は時間を空けて行くほうがいいだろう。

もっとも、その時までに解決していればそれに越した事は無いのだが。



「あっ、ひいてるよ?」

「んっ? ああ、そうだな。少し離れてろよ?」

「うん」



ハサハが糸の引きを見つけて俺に言う、俺はサオを引きつつ魚の動きを見る。

案の定魚は糸を切るべく全力で泳ぎ始めた。

俺は魚の動きにあわせて釣竿を動かしつつ魚が疲れるのを待つ、かなりきつい。

これはもしやかなりの大物!?

鍛錬で培った重心を動かすテクニックが無ければ海の中に引き込まれていただろう。

一体どんな魚なんだ?

俺は必死で糸が切れないように、海にもっていかれ無いように踏ん張った。

かなり長い間攻防は続いたが、俺はなんとか持ちこたえた。

魚は泳ぎ疲れたのか徐々にその引きを失っていき、最終的には殆ど抵抗も出来ずつり上げられる。





「わあ、おおきいよ?」

「ああ、これなら晩飯に使えそうだな」



俺が釣ったのは黒鯛。南の島ではわりとポピュラーな魚ではある。

ただ、そのサイズは地球で見かけるものの数倍。

1m近いサイズを誇る超大物だ。

よく糸が切れなかったものだと思う。



「まあ、味が大味じゃなければいいんだが……」

「だいじょうぶ、だよ?」

「ハサハがそういうならきっとそうなんだろうな。さて、流石にこんな大物を釣り上げたら他のを釣っても入れる場所がないな」

「(コクリ)」



今までに無いほどに大きな戦果に少し気分が良くなっていた。

俺もなるほど単純だ。

ハサハと共に意気揚々と帰ろうとしたのだが、ふと一人の少年と目が合った。



「イスラか?」

「ああ、テンカワさんどうも」

「随分遠くまで出歩いているんだな」

「はい、今のうちに地理を把握しておかないと、これから島の中で生活していかないといけないわけですし」

「そうか……」



俺に笑顔を向けて話すイスラ。

だが、その表情は入院していた頃と比べてどこと無く影がさしているように見える。



「何か心配事でもあるのか?」

「心配事ですか……」



頭をかいてつくろっているが、独特のにおいを感じる。

それは、考えている事が言っている事と違うもの特有の芝居臭という奴だ。

イスラからは時々そういったものを感じる。

恐らくは記憶喪失という事自体何らかの理由によってついている嘘なのだろう。

しかし、今はそれ以上詮索する事も躊躇われた。

ある種の壊れやすさを抱えているように見えるからだ。



「記憶をなくしている今の僕は誰かに頼らないと生きていけないですから。

 早く自分で何でもできるようになりたいなって、それだけですよ」

「そうか、克己心旺盛なのは結構な事だ。だが病み上がりなんだろう? あまり無理しない事だ」

「そういう貴方も一緒に入院していたじゃないですか」

「まあな、だが俺は少しばかり人とは違うようだ」

「それはそうでしょうね……」

「んっ何か言ったか?」

「いえ、羨ましい事です」



イスラとはその後も話してはいたがもう特におかしな行動を取る様子は無かった。

ただ、挨拶を済ませ背中を見せたその瞬間一瞬ゾクリとした何かを感じた。

振り向いた時にはイスラはもうかなり離れていて確認は出来なかったが、なるほどただの漂流者ではなさそうだな。

何事も無ければいいが……。













「アキトさんつりをしてきたんですか?」

「ああ、短時間だった割にはいい獲物が取れた」

「はい?」



アキトさんは獲物を入れておく防水の袋から大きな黒鯛を取り出しました。

うわー、この島に来て結構になりますけどこんな大物始めてみますよ。



「凄いですねー! こんな大きいのどうやって取ったんですか?」

「まあ、普通に釣ったんだが」

「浅瀬でこんなのがいるなんて……」

「それは俺も不思議だ……」



確かにこの島は浅瀬にいろんな魚がいるのでたまに思いも寄らない獲物がかかったりしますが。

遠洋に出ないとこんな大物は釣れないと思うんですが……。

この島に常識は通用しませんね……。



「それで? 大分吹っ切れた顔をしているじゃないか」

「あっ、はい。結局私は私なりのやり方で私らしくやっていくしかないなって」

「それが一番だろうな……しかし、私らしく……か……」



アキトさんが自嘲気味に笑います。

多分何かを思い出しているんでしょう。

私はついアキトさんに聞きたくなりました、もしかしたら……もしかしたら今なら聞けるかも、そんな気がして。



「あの、アキトさん……」

「なんだ?」

「その……聞きたい事が……」

「アティ殿はおられるか!?」

「!?」



あまりにもタイミングぴったりというか……。

一体何なんですか、もう!

でも次に続く言葉を聞いて私も意識が向こうに向きます。



「我が名は帝国軍海戦隊所属第六部隊の一員ギャレ オ。

 隊長殿の命令に従い。ここに、宣戦布告の名代として参上した!」

「宣戦布告……」



アズリア……そうか、あの時の調査が終了して、作戦を練り終えたという事ですね。

でも……そんなに簡単に戦争なんてさせませんよ。

そう考えているうちにも、今の声で集まってきた海賊船のみんなが罵声を浴びせます。

そんな収拾がつかなさそうな感じを受けてかスカーレルさんが前に出ました。



「つまり、アンタたちはアタシらごとき海賊を相手に、戦争なんてしちゃうわけね?」



それも一つの挑発。

戦争という大義名分で人に対する軍への怒りでもあったかもしれません。



「侮辱は許さんぞ!」

「よせよ、スカーレル。とりあえずこいつらの口上は聞いてやろうぜ」

「はいはい……」



そこにカイルが割って入りどうにか落ち着きました。

でも、考えてみればアズリアの考えはよく分からないものがあります。

戦争をしかける、そんな権限は一部隊にはありません。

あくまで作戦、それ部隊の権限の限界。

でもおそらくアズリアはそうする事で私達に威圧をかけようとしている?



「……ゴホン。我が部隊は、後方にてすでに臨戦態勢にある、しかし……。

 賊といえど、弱者に対する一方的な攻撃は帝国の威信を損なうと隊長殿はお考えだ。

 よって、同時に降伏勧告を行う!

 降伏の意思あらば着服した剣を持参して本陣にまで来られよ。

 返答の意思なきと判断されし時はやむお得ず攻撃を開始する……。

 以上っ!! たしかに伝えたぞ!」



言いたいことだけ言うとギャレオと名乗った体格のいい軍人は去っていきます。

確かにたたき上げの軍人らしく実力、機転なども兼ね備えているように見えうけますが、あまり融通の利くタイプではなさそうですね。

でも、アズリアなら重用しそう、おそらく副長……。



「くっくっく……弱者、ときたか」

「カイル……」



あの言葉に侮辱を感じたらしくカイルは拳を震わせています。

もう止まれない、そういう風に自分を追い込んでいるのがわかる……。



「無駄よ、ああまで言われちゃあ、流石にアタシらも引っ込みつかないわ」

「ごめん、先生……あたしたち、やっぱね。海賊なのよ……」

「おい、先生よ……まさか、止める気じゃねえだろうな?」



スカーレルが、皆怒り高ぶっている。

でも、だからって私がはいそうですかなんて簡単に言うとでも思ったんですか?

だから私は笑顔で言ってやりました。



「はい、止めちゃいます」

「……ッ!!」



カイルは私に怒りのこもった視線を向けますが、それがどうしたんですか。

私だって決めた事を曲げるつもりなんてないですよ。



「今の言葉、私に対しての宣戦布告ですよ」

「!?」

「我慢して欲しいなんて無理な事は言いません、だけどその前に……。少しでいいですから、私に、彼女と話す時間をください」

「先生……」

「……わかった。ただし、これっきりだ。もし、話をしてもあんたの望んだ結果が出ない時は……。覚悟を、決めろや」

「はい……」



もちろん、分かり合える可能性があったとしてもそうしている間に終わってしまっては意味がないこと、私にも分かります。

だから、一度のチャンスでなんとしてもアズリアを止めなくちゃ……。

これが私の選べる唯一の道だから……。



「アティ、少しいいか?」

「えっええ……」



アキトさんが私を呼びます。

海賊のみんなはアキトさんの釣った黒鯛を料理して戦勝を祈願しようとか言ってましたしちょうど時間はある格好です。

アキトさんは海辺に私を誘い、言葉をつむぎます。



「お前が相手にしている帝国軍というものの資質を知りたい」

「はい?」

「戦争するにしても和平を結ぶにしても相手の情報がなければ難しいだろう?」

「つまり、一緒に考えてくれるという事ですか?」

「まあ、暇だからな」

「うふふ……♪」

「そら、そんな事よりあまり時間はないんだろう?」

「あっはい」



その通りではありますし、私としても他の人の考えを聞きたいという事もあったので思いつく限り帝国軍のことを話しました。

外から見て分かる事が中心でしたが、軍学校や短期間とはいえ従軍して分かった事も付け加えます。



「なるほど……」

「何かわかりましたか?」

「ああ、一つ分かった事がある。それは帝国軍という組織はあまりいい状況にない」

「え?」

「軍部というのは確かにどこでも悪い部分が多い、お役所仕事な上に権威主義で外からでは絶対変わらない」

「はあ……お役所って?」

「政府機関のことだ、それよりもつまり帝国軍は有利になるために色々な武器を欲している。

 つまりは聖王国とやらとの戦争が芳しくないという事だろう、

 新兵器がなければ展開を見込めないという事はつまり拮抗とは聞こえがいいが、不利に傾いているという事だな」

「ああ、そういうことですか……確かにアズリアがそういう護衛をしなければならなかったのも、頷けます」

「そういうことだ、勝つための兵器なら何でもいいんだろうが、問題はそれがお前の手にあるという事だろう」



なるほど、帝国軍は不利な状況を覆すための新兵器として剣を欲しているという事。

つまり、剣が無ければ戦争に負けるかもしれないという事になりますね。



「軍部なども常にそういうものを欲しているのだろうが、一部隊とはいえ何週間もこの島に張り付いたきりだからな」

「そうですね、彼女は失態を取り戻す事に躍起になっています。

 彼女達の船がどうなったのか分からないのですが、森に陣を張って船を省みもしていない感じです」

「それで、そういう状況にあるアズリアはお前の意見を聞けるわけが無い、それをどう解決するつもりだ?」

「はい、確かにアズリアは帝国に帰れば降格間違いないでしょう、でもこの島で一緒に暮らすならどうでしょうか?」

「ありえない」

「え?」

「昨日のお前の話を思い出してみれば分かる、アズリアとは弟や家を放り出していけるような性格か?」

「あっ、ああ……」



意外なところに落とし穴が……。

確かに、彼女は自分から引くことは出来ない。

でも、だからって私も諦めるつもりは無いですけど。



「アキトさんも無理だと思うんですか?」

「いや、以前に言った一つとあわせ、今思いついたものも合わせれば彼女らを撤退させる方法は3つある」

「え? 3つですか?」

「一つ目、彼女らが聖王国との戦局をひっくり返せる兵器を手に入れた場合。

 二つ目、部隊の指揮系統が崩れるほどの被害を受けた場合。

 三つ目、本国から帰還命令が来た場合。これは以前にも言ったな確か。

 アズリアという人物が堅物ならこの三つ以外にないだろう」

「それは……」

「なに、アズリアとやらにこの三つのうちどれかを信じさせることができれば撤退させられるという事だ」

「それはつまり、騙して撤退してもらうという事ですか?」

「そのとおりだな、それ以外では不可能に近いだろう」



アキトさんのいう事は分かります。

でも騙して撤退なんかさせても長期的に見ればまた同じ事態に陥る可能性があります。

だから……。



「まあ、好きなようにやって見るといい。俺はこうしたほうがいいのではないかという、案を示したに過ぎない」

「はい、ありがとうございます!」



アキトさんの心配、確かに受け取りました。

それでも私は正面から挑みます。

アズリアならきっと、最後に分かりあえる、そう信じているから……。


















そして、布告を貰った翌日、私達も頭数を揃えた格好でアズリアたちの陣地へと向かいます。

私達は海賊のほぼ全員、護人とその部下の人達等かなりの数ですが50人くらいと言う所でしょうか。

アズリアたちも国から増援を呼べるわけでもないですし、元々の彼女の部下達約40人です。

数の上ではこちらが優位ではありますが、集団戦闘なんてあまりした事の無い島の人達をあまり頼りすぎるわけにも行きません。

普段は海賊船から離れないカイルの部下達も来てくれていますが、質を言えばやはり帝国軍に分があると考えるべきですね。



「アティ」

「ごめんね、みんな。こんなことにつきあわせちゃって」

「カマワヌ……コレガ、ワレラノツトメダ……」

「それに、連中には大きな借りもあるしね」



よかった……いつもどおりのアルディラさんです。

アルディラさんが元気になってよかった、でも、アレは何だったんでしょう?

ファルゼンさんは大剣を地面に突き刺し悠然と構えています。

キュウマさんは偵察をしてくれているそうなので、近くにはいません。

ヤッファさんは後から来ると言っていましたが、どういう事なのでしょう。

来たくないというなら、来なくても非難する人がいるとは思えないんですが……。

そういえば、アキトさんもいませんね……どうしたのでしょう?



そんな事をつらつら考えているうちに帝国軍が陣を敷いている森まで来ていました。

数が多いとはいえ包囲できるほどでもありません、私達は正面から進んでいきます。

そして、森の手前まで来た時、帝国軍の陣は割れました。

陣内から人が出てくるのが分かります。

あれは……。



「きたか……」

「アズリア、私の話を聞いてください」

「話す事など、もはやあるまい」

「私の望みと、貴様の願いは矛盾するもの。両立する事など絶対にありえない。

 ならばどんな言葉を交わしたところで無意味であろうが!?」

「そんなことないわ!

 この島のことも……あの剣のことだって貴方はなにも知らないじゃないですか!」

「……!」

「私に話をさせて! 戦うのはそれからだって遅くは無いはずでしょう?」

「よかろう……そこまで言うのなら聞いてやろうではないか」






私はありったけの情報を引き出しアズリアに伝えます。

危険である事は承知しているつもりです。

でも、アズリアならこの危険な状況で手を取らないでいる事の不利だって分かってくれるはず。

そう思っての行動でした。

しかし……。



「なるほど……この島が召喚術の実験場だったとはな。どうりで、はぐればかりと出くわすわけだ」

「島のみんなは無駄な戦いを望んでなんかいません。私達が武器を納めれば共存だってできるはずです。だから……」

「ふふふ……っ、たしかに、無益な話ではなかったぞ。

 帝国にとってこの島を接収する利益ははかり知れん!」

「!?」

「無色の派閥でさえ扱いあぐねた魔剣とあらゆる世界へと続く召喚の門……。

 これらを帝国のものとしたならば、忌々しい旧王国の残党どもを駆逐する力となる!

 当然、その功績は今回の失態を補って余りあるものとなるだろうな」

「アズリア……貴方は……!?」



気付いていない?

この島から出るために試した事があるのは私達だけということ?

この島を出られなければ任務も何もないのに……。



「悪く思うなよ、これが、軍人の思考だ。国益や功績、そうした現実的尺度のなかでは、哀れみやいたわりはなんの意味もない!」

「そんな……っ」

「もう一度だけ言おう、速やかに降伏するのだ。

 剣を渡し、この島から立ち去るというのならお前達のことは見逃してやってもいい。

 それくらいの器量は私にもある……」

「何をいってももう、あきらめてはくれないんですね」

「くどい!!」



それでも、私はもう自分で自分を追い込むのも、自分の考えを自分で否定するのも意味が無い事に気付きました。

なら、私に残っている道はたった一つ、突き進むのみです。

絶対あきためたりなんかしません!



「私、やっぱり……あきらめたくない!!」

「!?」

「どれだけ大勢の人が信じているものでも、そのほうが上手なやり方でも……。

 私にはそれが正しいって思えないから!

 納得出来ません!!」

「な……っ」

「ごめんね、アズリア。私は、戦いも、降伏も、どちらも選びません。

 戦いから逃げたくてそうするんじゃないの、自分の信じるものを貫くために……。

 譲りたくないの!」

「ふざけるなッ!!」

「!」




怒りの声と共にアズリアは剣でなぎ払いに来ます。

私も腰の剣を抜き、剣を受けました。

アズリアの目は怒りにゆがんでいます。

どうやら彼女の心の奥の何かに火をつけたみたいですね……。



「いくら拒んだ所で私が向かっていけば貴様とて戦わざるをえまい!」

「私、信じていますから。貴方なら絶対分かってくれるって事。

 それに……私って、結構あきらめが悪いんです」

「黙れッ! 黙れ、黙れェェッ!!

 総員、攻撃開始だ! 今より、この者たちを帝国の敵とみなす!!」



もどかしくて溜まりません、何故言葉は全てを理解させる事もすることも出来ないのでしょう。


私はただ、争いたくないだけなのに……。










あとがき


戦いになる直前で終わってしまいましたw

次回で7章は終わりです。

戦闘は短めということになりますかね。

とはいえ、アティにスポットをだんだん当てていく上でアキトもそのままにしてしまう可能性がありますし。

バランスを取る上では戦闘パートは欠かせないともいえるんですがw

今後はカイルの成長なんかも少しづつ方向性を示していければいいかなーと思います。

とはいえ、女性キャラがいい子が多いので出番あげたいですしねw

バランスが難しそうだ(汗)


今回はりゅうきさんより3枚ものイラストを頂くことが出来ました!

いやもーりゅうきさんには足を向けて寝られませんよ!

それぞれ皆レベルの高いイラストですが、アキトの釣り絵には感動しました。

やっぱり、アキトのアウトドアって実は想像しづらい気もしますのでw

こうして、ヴィジュアル化していただけるとなると余計そう思うのですが、

今後も頑張ってアキトに色々させてみたいなーと思います!


今後もがんばっていきますね!

(他の作品をお待ちの方には申し訳ないですが、暫くはサモンナイトメインで行こうと思います)




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