動き出したS/炎【アギト】


「バイタルは安定してるわね。危険な反応もないし、心配ないわ」

シャマルが少女の身体をチェックすると、その結果を述べる。

「にしてもこの娘、一体どこから来たのやら。レリックを持っている上にこの身形、確実に面倒事の始まりだな」
「ゼロ。まるでこの娘のせいみたいに「勘違いするな」…何をですか?」

ゼロの言葉にリインフォースが質問する。

「寧ろこの娘のお蔭で、『欲望』の気配が近づいてくる」

嬉しそうな表情でそうゼロは言ったが。

「あの…『欲望』ってなんですか?」

スバルが聞いてきた。

「えっと…あの、その…」

ゼロの正体が魔人であることをフォワード陣に知られるのはまずいと感じたフェイトとなのはは動揺する。

「…構わん。この一件が済んだら教えてやる」
「「「ぜ、ゼロさん…!?」」」
(またバラす気ですね…)

この時隊長二人は今後のフォワードのゼロに対する接し方に色々と不安を覚えたのであった。





*****

十分後、少女はシャマルとリインフォースと一緒にヘリに乗った。

「それでは行くぞ貴様ら?」
「「「「はい!!」」」」

ゼロの呼び掛けに四人は大きく返事すると、待機モードのデバイスを取り出す。

【STANDBY】

「「「「セェーット!アーップ!!」」」」

四人はバリアジャケットを展開、しかしゼロは変身せず下水道の中に入っていく。

「あれ?ゼロさん変身しないんですか?」

エリオがそう聞くと、

「今は必要ない」

とだけゼロは返答した。





*****

同時刻、ルーテシアはあるビルの避雷針と思われるものの上に眼を瞑って佇んでいた。
するとルーテシアの横にウーノがモニターで話しかけてくる。

「ヘリに確保されたレリックとマテリアルは、妹たちが回収します。お嬢様は地下の方に」

するとルーテシアは眼を開けた。

「騎士ゼストとアギト様は?」
「別行動」
「御一人ですか?」
「一人じゃないよ」

ルーテシアはアクスレピオスから黒い楕円形の卵のようなものを出現させる。

「私にはガリューがいる」
「失礼しました。…協力が必要でしたらお申し付けください。最優先で実行します」
「うん」

ルーテシアの返事と共にモニターは閉じた。

「行こっか、ガリュー」

すると黒い卵は一瞬だけ輪郭を白く光らせる。
そしてルーテシアは魔法陣を展開して、

「探し物を、見つける為に」

その場から消えた。





*****

一方フォワード陣とゼロは下水道通路を歩きながらギンガと通信していた。
なお、通信しているのはゼロだ。

「初めまして、ギンガ陸曹」
「はい!まさか無限さんとお話できるなんて光栄です!」

実はギンガはイーヴィルのロードメモリを使った三っつのフォームの格闘戦を映像記録で見たことがあり、それ以降ゼロにはフェイトと同じくらいの憧れにも似た感情を抱いていた。

「合流ポイントは、南西のF‐94区画とする」
『F‐94……了解!』

そんな通信の間、

「ギンガさんって、スバルさんのお姉さんですよね?」
「そう!私のシューティングアーツの先生で、歳も階級も二つ上」
「はぁ〜」

こっちの与太話は置いといて、

「ギンガ、デバイスによる総合位置把握と独立通信…準備良いな?」
「はい!…ブリッツキャリバー、お願いね?」
『Yes,Sir!』

ギンガはバリアジャケットを展開する。
さらにギンガはこのような報告をゼロ達は勿論、ロングアーチやシャマルにもする。

「私が呼ばれた事故現場にはガジェットの残骸と壊れた生体ポッドがあったんです。丁度5・6歳の子供が入るくらいの…。近くになにか想いものを引きずったかのような跡があって、それを辿って行こうとした最中に、連絡を受けた次第です。…それにその生体ポッド、前に一度見たことがあるんです」

「…成程、何となく貴様の言いたいことが読めてきた。人造魔導師の、素体培養の道具だな」

ゼロは以前次元書庫で調べていた”強い魔法や戦闘力を生み出す方法”の数ある知識を瞬時に思い出した。

「恐らく…あくまでこれは私の推測なんですが、あの娘は人造魔導師の素材として造りだされた子供ではないかと」

人造魔導師の言葉にキャロ以外の三人、特にエリオは辛そうな顔をする。

「人造魔導師って…?」

だがキャロはその件に関する知識がなかったので質問する。

「人造魔導師というのは、優秀な魔導師の遺伝子を基にして造り上げた子供…あるいはクローン。
投薬・機械の埋め込みによって後天的に本来持つことのない強大な能力を持たせる。それが人造魔導師だ」

ゼロが淡々と説明すると、

「倫理的な問題は勿論のこと、今現在の技術じゃ、どうしたって色んな部分で無理が生じる。コストが合わない。だから、よっぽどどうかしている連中くらいしか手を出さない技術なんだけど」

ティアナが続けて説明した。
其の時、キャロのグローブ型デバイス・ケリュケイオンが、

『動体反応確認。ガジェットドローンです』
「来ます!小型ガジェット、六機!」
「…ほお〜、久々に生身での運動と行くか」

ガジェットが近づいてくる。
そんな状況でゼロは手袋を外すと、人間と大差ないその手を魔人の力で指が鋭利な刃と化した異形に変貌させたのだ。

「あらよッ!」

ーーガシャァーーーン!!ドカァーーーーーン!!――

「「「「…嘘…」」」」

四人は驚愕した。
なにせ生身のゼロが素手でガジェットを破壊したのだから。

「一機だけじゃ物足りんな」

というと、ゼロは残った五機もあっと言う間に超常的な身体能力でぶっ潰した。

「ふ〜、準備運動くらいにはなったな。キャロ、ケースの位置は?」
「あ…はい!あともう少しです!」

突然話しかけられてキャロは動揺しながらも答えた。
其の時、下水道の壁が何者かの攻撃で爆発したフォワード陣は敵襲と思って身構えたがゼロは違った。
爆煙が晴れると…。

「ギンガさん!」
「ギン姉!」

そこには左手に装着した白いリボルバーナックルのギアを軽く回転させるギンガの姿。

「皆、一緒にケースを探しましょう!他のガジェットは殆ど叩いてきたから」
「御苦労だった。良くやったな、ギンガ」
「は、はい!ありがとうございます!」

自分の憧れの存在であるゼロに褒められたのが相当嬉しかったのか、ギンガは張り切って返事をする。

「残りのガジェットは全部私は何とかしておいてやる。貴様らは別件の方を頼むぞ」

というとゼロは土煙りでも起きるんじゃないかってくらいのスピードで走りだし、彼の向かって言った方向からは爆音と爆炎の灯りが見えていた。

(あの人…冗談抜きで規格外だな…)

五人の考えは今まさに同調(シンクロ)していた。





*****

ゼロの活躍によって全く労せずに進路を確保できた五人と一匹は、下水道内でも結構広い場所に出てきた。

ゼロがそこらへんに座って休む中五人と一匹がケースを探していると…。

「ありました!!」

キャロがケースを見つけた。
一同はその吉報を聞いて安心するが、其の時奇妙な音が聞こえた。
まるで壁から別の壁へと瞬時に飛び移るかのような。

姿の見えぬそのものは、水や壁伝いにキャロの正面上空に出て、赤黒い魔力弾を発射するも、

――ザギーーーン!!――

「ぜ…ゼロさん」
「フン、私の手を煩わせるな」

ゼロが、魔人の手で魔力弾を粉砕消滅させた。

「…暗闇における最大の迷彩術か。…だが魔人(わたし)の目を欺むくには遠く及ばん」

その言葉に姿を消すのはもう無意味と感じたのか、擬態によるステルスが解くと、そこには赤く光る四っつの眼光にマフラー、人間大の体躯をした忍者の如き姿の人型召喚獣・ガリューの姿があった。

ガリューが姿を現すと、注意が逸らされていたケースをルーテシアが拾い上げる。
キャロはそれに気付いてルーテシアに近づくも、

「…邪魔…」

左手から放った魔力攻撃。キャロは咄嗟にシールドを張るも、耐えきれずに後ろに居たエリオごとで吹っ飛ばされてしまう。

スバルが蹴りをお見舞いしようとするもガリューは容易くそれを避ける。
だがその直後、ギンガはガリュー目掛けて拳を振り下ろしてガリューを足止めする。

「こら!そこの女の子!それって危険なものなんだよ。触っちゃダメ、こっちに渡して」
「無駄だ。こんなところにノコノコ現れる子供が普通なわけ無い。素直に渡すとは到底思えん」

スバルの説得にゼロは無駄と説く。
ルーテシアもその言葉通りスバルの説得を無視しようとするが、

「ごめんね、乱暴で。でもね、これ本当に危ないものなの」

ティアナが魔法で姿を消したうえで接近し、ダガーモードのクロスミラージュをルーテシアのすぐそこまでのところにまで近づける。

だが、

「いいか?…1・2…」

聞こえてきた少女の声、カウントが始まると、ルーテシアが目を閉じる。

「シュターレンゲホイル!!」

放たれた魔力弾は爆発を起こし、凄まじい閃光を引き起こした。
余りの光と炸裂音にゼロを除く一同は皆眼を耳をふさぐ。
そして、ルーテシアは閃光のおさまった直後、歩き出す。当然ティアナは停める為に銃口を向けるが、

【MANTIS】
【SCORPION】

「ガイアウィスパー!?」

ティアナはガイアメモリが発する記憶の声を聞いて、その方向に振り向くとカマキリの記憶の力を宿したマンティス・ドーパントが両腕に備え付けられた大鎌で、サソリの記憶を宿したスコーピオン・ドーパントは背中から伸びる触手先端の猛毒針でティアナに襲いかかろうとする。

【SONIC/KNIGHT】

――ガギーーーン!!――

『………!!』

マンティスの刃とスコーピオンの触手を止めたのはイーヴィル・ソニックナイト。

『ティアナ、大丈夫ですか?』
「り、リインフォースさん」

「ったくもう、あたし達に黙って勝手に出かけちゃったりするからだぞ。ルールーもガリューも。
…それにしてもあの変態医者の送りつけてきた奴らと一緒に来なきゃならないなんて、ツイてねえや」

先程の補助魔法を使ったのは体長僅か30cm程度の少女だった。

(融合騎…。リインや私の助手と同じ…)

「でも本当に心配したんだからな」
「アギト…」

融合騎の名前はアギトというらしい。

「ま、もう大丈夫だぞルールー。なにしろこのあたし!烈火の剣精!…アギト様が来たからな!」

周囲に花火を起こしながらアギトはそう言った。相当な自信だ。
そして、フォワードやギンガの視線がアギトに向けられると、

「オラオラァー!お前ら纏めて、かかって来いやァーーー!!」



次回、仮面ライダーイーヴィル

N再び/真【しょうたい】

「この『欲望』はもう、私の手中にある…」

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