・・・・俺は誰だ・・・・


・・・・俺は何者なんだ・・・・


全てと引き換えに手に入れた悪魔の身体。

人でいる事も、悪魔となる事もできなかった自分。


「メノラーは私にこそ相応しい。」

メノラーを求める魔人達を殺し。

「悲しまないで、私には力が無かっただけ。」

大切な人を殺し。

「行けよ、俺はひとりで居たいんだ。」

変わっていく友人を殺し。

「やはり君はあの時葬っておくべきだった。」

立ちはだかる神を殺し。

「愚かな、完全なる世界を望まず自由を望むというのか。」

そして、世界を殺した。


・・・・俺はどうすればいい・・・・


・・・・だれか・・・教えてくれ・・・・


体が赤いマガツヒの中に沈む。


・・・・俺は・・・・誰だ・・・・


誰も居ないマガツヒの泉に光る影が立つ。


体を揺らしながら言葉を発する。


・・・・自由という名の愚か者よ・・・・

・・・・今一度、貴様に戦いの場を与えよう・・・・

・・・・そこで貴様は何者かになるのだ・・・・

・・・・最後の試練・・・・

・・・・それが我が巫女の最後の願い・・・・

・・・・我はアラディア、全てを解き放つもの・・・・


影は消え、赤い泉にはただマガツヒが漂うのみ。





修羅から人へ〜プロローグ〜


『狭間のモノ』




赤い湖で目が覚める。


「・・・・・ここは・・・どこだ?」


辺りを見回すと赤い湖の端に白い巨人が磔にされている。

巨人からは大量のマガツヒ流れ出ている。


「異神なのか・・・いや・・・身体を持つ悪魔・・・俺と同じ・・・魔人か?」


悪魔には本来、固定の体というものは無い、強い思念そのものだからだ。

しかし、人が生きたまま悪魔の力を手に入れた者達は、身体を持った悪魔「魔人」となる。


「だが、この魔人には魂が無い。」


なぜ自分はここに居るのか。

なぜ白い魔人は磔にされているのか。

なぜ白い魔人には魂が無いのか。


「わからない、少し・・・歩こう・・・。」


体を湖の端に寄せ人工物と思しき通路を歩く。

・・・・体が重い・・・・頭もぼんやりする・・・・・思考がうまくまとまらない・・・・


「・・・ここは・・・どこだ。」








〜発令所〜



発令所に警報がけたたましく鳴り響く。


「セントラルドグマ最下層に侵入者です!」

「判別不能!使徒か人か判断がつきません!」

「マギは沈黙を保っています!」


オペレーターが侵入者の存在を告げる。

発令所が慌ただしく動き回る中、サングラスの男が口を開く。


「警報を止めろ、委員会には誤報だと伝えておけ。」

「この時期に使徒進入とはまずいぞ、碇。」

「かまわん、老人達には誤報と伝える。」

「そうか・・・赤木博士、状況は?」


初老の男が声をかける。


「セントラルドグマの侵入者ですが、人である確立が73%というのがマギ判断です。ATフィールドは観測されていません。」


サングラスの男は顔を上げ命令を下す。


「鎮圧部隊を20名配置、侵入者を捕らえろ。無理な場合は殲滅だ。」










〜セントラルドグマ最下層〜



暗いフロアに自らの装備を確認する男達がいる。


「これより侵入者を拿捕する、無理な場合は殲滅せよとの事だ。」

「「了解」」

「4名一組でチームを組む、私のチームはここに残る、状況を逐一報告せよ。」

「「了解」」

「では行け!」


黒い戦闘服を着た男達が暗く狭い通路を散り散りに走る。


「しかし隊長、侵入者はどうやってここに?」

「判らん、だが人ではない可能性もあるらしい。」









ザーーーザザッ


雑音を立てレシーバーが反応する。


「・・・・た・・長・・・こち・・チーム3!侵入者と遭遇!・・・・何処だ!何処にいる・・・ザザッ・はぁ・・はぁ・・・嘘だ!・・・ザッ・・・・ バ・・・化け物!・・・・い、嫌だ・・・死にたくない、死にたくっ・・・・・・・・」


ブツッという音を立てレシーバーが沈黙する。


「た、隊長・・・我がチーム以外が全滅しました。」



・・・カン・・・カン・・・



「バ、バカな!早すぎる一体何が!?」



・・・カン・・・カン・・・



誰かの歯が震えでカチカチと鳴り出す。



・・・カン・・・カン・・・



「・・・なんなんだよ・・・・あれ・・・」


暗闇に緑色の模様が浮かび上がり、次第に人型になり青年の姿をとり始める。

虚ろな目の青年は恐怖で固まる小隊の間まるで隊員が見えていないかのように通り抜ける。

隊長は震える身体を押さえつつ叫ぶ。


「き、貴様!止まって壁に手をつけろ!!」


その声に我に返った隊員達は銃を構える。


「と、止まれと言っている!」


しかし青年は止まることなく歩き続ける。


「かまわん!うっ、撃てーー!!」




ガガガガガガガガガガガガガガガガガガッカチッカチッ




息をするのも忘れて撃ち尽くした隊員達は暗闇の先を見続ける。

普通の人間ならとっくに致死量の銃弾を受けたのだ、生きてるはずなど無い。

しかし身体全体の震えは止まらない、それどころかますます震えは酷くなる。

幾多の戦場を渡ってきた隊長の頭に一つの言葉が木霊する。



逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ

逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ

逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろにげろニゲロ!アイツハ普通ジャナイ!!



今までにも何度も死ぬような目にあってきた、だが、今度は違う!

人の形をしているがあいつは人じゃない!

突然、意識が刈り取られるように途切れる。




自分が立っているのか、寝ているのか、そもそも自分は生きているのか、・・・・・分らない。

・・・何も見えない・・・何も聞こえない・・・何も感じられない・・・

まるで自分以外は誰も居ない、暗闇の中にただ一人取り残されたような感じだ。

声が響く。魂が震えるような声が。


・・・・愚かな・・・脆弱な者供が我が主に手を上げようとは・・・


白馬に乗ったい騎士が現れる。


・・・無知とは罪だ・・・・・・・・罪には罰を与えよう・・・・・


赤い馬に乗った騎士が現れる。


・・・・・・・・お前達には死という名の罰を・・・・・・・・・・


青白い馬に乗った騎士が現れる。


・・・その魂には永遠の飢えと渇きを与えよう・・・・・・・・・・


最後に黒い馬に乗った騎士が現れ、全ての騎士が語る。





「「「「我等、魔人の手によって!」」」」



最後の瞬間、男は途切れる意識の中で気付く。

ああ・・・・・そうだ・・・・・狩猟者は俺達じゃない・・・・・奴等だ・・・・・

そして・・・・・狩られるのは・・・・・・


その思考を最後に、男だったモノはその活動を止める。









〜発令所〜



「碇、制圧部隊との連絡が途絶えたそうだぞ。」

「・・・・・そうか。侵入者の情報は?」

「それが監視カメラの映像からは侵入者は一人だぞ。」

「一人だと?」

「全身に刺青を入れた男だそうです、これがその映像です。」

「冬月・・・・・それに会いにいくぞ。」

「ふむ、先に手を出したのは部隊の方か交渉の余地はあるか。」

「ああ、赤木博士も連れて行く。」

「わかった、赤木博士ドグマの入り口まで来てくれ。」

「分かりました。」








〜セントラルドグマ入り口〜



さっきの映像を見る限り彼がどうやって部隊を壊滅させたのかは判らないわね。

ただ、一瞬彼の影が増えた、そのことだけが気にかかるわ。

照明の所為か?銃の発砲の光の所為か?ただそのことだけが。

リツコは科学者としての疑問に没頭しつつ進入者を待つ。



コツ・・・コツ・・・コツ・・・



足音が聞こえてくると同時に身体が震える。

ゲンドウ達の方を見ると毅然と構えているように見えるが肘から下が震えている。

そうか、これは恐怖だ。

人間としての本能が恐れを感じているのだと冷静に判断する。

やがて足音は影を持ち、姿が露になっていく。


美しい。


リツコはただそう思った。

美しく、それでいて希薄。

彼とよく似た人を自分は知っている。


「綾波レイ」


姿形こそ違えど彼等はそこに存在していないかのように錯覚させるほど希薄で美しい。

やがて青年はリツコ達を無視して歩いていく。


「ま、まちたまえ、少し話をしたいんだが。」


我に返った冬月が慌てて声をかける。

青年は立ち止まり、こちらを振り返りもせずにただ立ちつくす。


「私は冬月コウゾウだ、君の名は?」


青年が初めて口を開く。


「・・・・カズヤだ・・・・」

「そうか、ではカズヤ君、キミはここがどこだか知っているかね?」

「・・・知らない・・・・気づいたら赤い泉に浮かんでた・・・・。」


ゲンドウがカズヤに問いかける。


「お前の目的は何だ?お前はどこに行こうというのだ?」


カズヤは上を向き、少し間をおいて答える。


「目的?・・・わからない、ただ・・・・ただ今は外に行きたい・・・・・光が見たい・・・・」


深い悲しみともとれる言い回しに、リツコは目の前の青年をもっと知りたいと言う欲求にかられた。


「司令、彼の処遇私に一任していただけませんか?必ずこちらに引き込んで見せます。」

「だが彼には謎が多すぎる、大丈夫かね?」

「おそらくは彼の望むものを与え敵に回りさえしなければよいかと。」

「わかった・・・・赤木博士、奴の事は君に一任しよう。」

「ありがとうございます。」


許可を取り青年に近づき声をかける。


「外に行くにはこっちよ、案内するわ。」


リツコが歩き出すと青年は無言のまま歩き出す。


「碇、よかったのか?老人達の回し者かも知れんぞ?」


ゲンドウはサングラスを上げ、


「問題ない。」


といってその場を去る。


「そうか?俺は問題は山積みだと思うがな。」


そう言ってゲンドウの後に続く。

そしてその場に誰も居なくなり残された闇に声が木霊する。








・・・・主よ・・・貴殿を約束の地に届けたぞ・・・・・



・・・・主よ・・・貴殿にはまた会う事になろうぞ・・・



・・・・主よ・・・貴殿はここで何者かになるのだ・・・



・・・・主よ・・・貴殿はその時まで気高く生きよ・・・







「「「「人か、悪魔か、終末の時にまた合おう」」」」



そして声と気配は消え、ただ闇が支配する。




感想

SSSさんご新規参入であります!

女神転生Vとエヴァンゲリオンのクロスのようです。


主人公のカズヤ君強そうだね。

感じからすれば、女神転生Vの世界 を滅ぼしてやってきたらしいですから…

では、これから徐々に人の感情なんかを取り戻していくと言う事で、弱くなっていく可能性もあると。

もしそうなれば、かなり異色の小説 になるでしょうね。

面白そうだから、早速一話を見てみる事にしようか。

三本連続投稿ですからね、少しずつ 感想を入れていかないと駄作家は潰れますしね。

ははは…そのとおりでやんす(汗)

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