第043話 シドニア編02 惑星ナイン戦
「まもなくウィンドウアウトでち」
10秒程でハイパースペースから通常空間に復帰する。
「ウィンドウアウト。到着でちぃ~。えっとこの恒星系は……ってまちゅたぁ~!!
ガウナ反応でち!!」
「へっ?振りきったんじゃ?」
「別のガウナでち!!第4、第6、第7惑星からしゅちゅげん!!数……5百超えてるでち」
「5百超えかよ……」
巨大なネメシスを同化占領できるガウナに、流石に1人で500体の対応は無謀とも思える。
まだ1体程度ならばカオルは挑もうと思っていたが手数が足らない。
「数……どんどん増えていくでちよ」
「はぁ?……相手にしてられるか!
別恒星系に逃げる。こんな恒星系で世界扉開けない。
ハイパードライブ起動」
「あいあいでち!!」
ハイパースペースウィンドウが開き…突入。
「しっかし……避難した先の恒星系でガウナとはなぁ」
「多分……スペースウィンドウに反応されたでちね」
改めてだが、ステルスあっても反応されるのは宇宙空間に痕跡がでるからでもある。
「次は?」
「さっきの恒星系はちかかったので~500光年とばすでち」
「……約2分半か…まぁ…そんだけ離れたら居ないよな」
ハイパースペースでのなにかやるには短すぎる時間…虚数空間からジュースを取り出して一息つく。
「ウィンドウアウトでちぃ~……ちゅてまちゅたぁ~ガウナ反応でち」
ガウナ反応が赤い点として投影され、瞬く間に百、三百どんどん増えていく…
「またかよ…ハイパードライブ起動!」
「あちゅたぁ~落ち着いて、ワープなら探知されないと思うでち」
「と、そうか……」
ハイパースペース航法ならば探知されるが、
センサーが小型過ぎて、結果時間あたりの移動距離が性能悪く最近使ってないワープを忘れていた。
「2つの恒星系からガウナか……適当な恒星間に座標セット」
「あいでち、ショートワープでいくでちよ」
「ワープ」
ルーロスは超空間へと入り込みすぐに通常空間に復帰、再び超空間へと入り…を繰り返し、
「到着でち、……付近1光年以内ガウナ反応無いでち」
20光年の距離をとった恒星間に停止した。
「しかし…あのガウナってなんなんだか…」
「なんでちかね~?」
「情報源に聞きに行きますか…」
実体化ルーロスぬいぐるみを抱いて虚数空間内へと入り込み…
「ちわぁっす」
「へっ?ど、どなたですか!?」
「ここにあの人いたか?」
「あ~、落ちついてください。まず自分は異世界軍の元帥、カオルともうします。
あなた方をここに救助したものです」
「えっ?…ここは何処なんですか?この外に出してください!!」
「この外に出したら永遠の迷子になりかねないのでまだ出せません。
まずここは私の中にある虚数空間世界です。
分かりにくいかと思いますのでポケットの中の世界で理解してください」
「訳のわからないのを突っ込んだら駄目そうね」
「……身体の中の世界?」
「ならば何故あいつがいるの?身体の中に潜り込む?わからねぇ」
「状況説明を進めさせてください。
ネメシスという巨大船はガウナに占拠されました。
え~と…そちらの方々から多分状況を聞いてると思いますが…」
手を示したのは特攻したパイロット達だ。
これに関して反論はでてなく、頷いてる者もいるので話を進める。
「救助したは良いですけど、虚数空間から外の実体空間は、小型の宇宙船内で、正直なところ、400名で勿論座り無したった状態ですが、
きつきつラッシュになるスペースしかありません。
きつきつラッシュは想像できないと思いますので、足先が地につかない程挟まれていると考えてください。
なので今しばらくはこの避難所で過ごしてください」
「そう…」
「うんなスペースしかないならなぁ」
「それで、救助してまだ説明もない状態で、あなた方に会いに来た理由は、
この世界とガウナについて教えてもらいたいからです」
「この世界?」
「実は異なる世界から私はきまして、異世界へ移動できるのですが、
その扉を開くのに惑星の大地や巨大物体…ネメシスのようなもので開く必要があります。
それで、ネメシス襲撃現場から超光速で近くの恒星系についたらガウナが現れたので、
別の500光年先の恒星系ににげましたが、またガウナが現れたのでにげて、
現在、恒星間に漂っている状態です」
「ちょっと理解できてないんだけど…」
特に光年距離移動とかだろう。
「とにかく、この世界とガウナについて教えて下さい」
強引に話を進める。
「わかったわ。まず奇居子ってのは人類を脅かす謎の殺害不能な外宇宙生命体の事です」
「えっ?殺害不能?」
「過去に核ミサイルを奇居子に数十発撃ち込んでも死にはせず、胞衣が再生したら再稼働開始しました」
「核ミサイル数十発程でも?」
それ以上の威力は勿論あるが、それでも1発4億℃の熱エネルギーを受け続けても殺害できないなら、一般常識的には殺害不能とも確かに思える。
「で、再稼働?」
「胞衣が核ミサイルで欠損したので再稼働まではかなりの時間がかかりました」
「エナ?」
「本体の周囲にある肉体な様なものと思ってください。
胞衣を変化させて様々な攻撃形態をとりますし、本体が露見すると再生速度がかなり落ちますが、基本的に非常に高い再生速度があります」
「本体って?」
「奇居子の本体ですね?
ほぼ丸い2m程な物体なのですが非常に強固で先ほども話しましたが、核ミサイルでも駄目でした」
「じゃあ、さっきのネメシス警護隊?の攻撃は無駄だったの?」
「本体を探しだして切り離し弾き飛ばすと胞衣の再生が遅くなります。暫く再生しません。
その間に胞衣を駆逐すれば本体を残して逃亡に成功し、過去に十数度逃亡に成功してます」
(使徒のコアの体内隠れバージョンなもんかな…)
ATフィールドに護られ通常兵器では破壊不可なコア、
核ミサイルでなく、放射能を出さずに核爆弾同等の熱エネルギーを発するN2爆弾でさえも、
あしどめできるだけだ。
勿論ATフィールドをこえ、接触押し込み爆破させればN2爆弾でもコアの破壊は可能だが、
ゼルエル戦時にシャッター1枚で防がれてしまい、更には肌の距離で爆発したにも関わらずゼルエルの身体は無傷であった。
「もっともとりつかる前にのはなしになりますが…
先の2回の加速で戦闘員に甚大な被害がでたのが作戦失敗の要因ですね。
因みに奇居子、胞衣と書きます」
「奇居子についてはわかりました。それでこの世界の歴史は?」
「どこから説明します?」
「……西暦1945年の第二次世界大戦やソビエト連邦崩壊はありました?」
「ソビエト連邦とやらはわからないですが、第二次世界大戦はありましたね」
「2001年3月のアメリカテロ事件は?」
「ありましたね」
「じゃあ…そのあたりから」
「今は西暦3394年で、かなり長くなりますけど?」
「……かいつまんでください」
「わかりました。
まずは……西暦2045年、スペースコロニー建設開始、人類の宇宙進出が開始されました。
西暦2080年、第三次世界大戦勃発するも、戦場指定戦争にて非戦闘員が死なない戦争と呼ばれました。
結果北朝鮮と呼ばれる国が韓国に併合されました。
その他に多数の国の併合が進み、世界は3大勢力圏化になります。
西暦2109年、深宇宙探査機が、太陽系外にて地球外生命体奇居子とのファーストコンタクト。
西暦2369年人類がヘイグス粒子の運用を実用化。
人類は無限のエネルギーを手にしました。
西暦2371年、衆合船が地球に接近して46体の奇居子が降下します。
奇居子駆逐を目的としながら、かねてから計画建造されている播種船により太陽系からの脱出を人類は開始。
2384年12月31日、奇居子により地球破壊。
2385年6月31日最後の播種船ネメシスが太陽系より出航します。
そして3394年今に至ります…」
……
「地球が真っ二つになるか……」
「滅んでたんでちね~」
「となると……生き残りの播種船の中に楔を打つのがこの世界では無難といえるかな」
少なくとも話を聞く限り世代交代型脱出船は600隻程は太陽系脱出に成功した。
先のネメシスのように滅んだのもあるが少なからずの数がまだ航行中だと思える。
「地球を中心とした半径5千光年にB1監視へんちぇい送るでちか?」
「そうだな…」
惑星探査型と違い、長距離センサー強化編成で、
いつもは定点監視衛星が来るまでの繋ぎではあるが、外縁部にてBETA監視任務につき、100光年の探査が可能な編成だ。
100光年程度?客車100両編成ならば1万光年問題ないんじゃね?と思うが、
キャーティアステルスの範囲制限がある。
纏わせる形であるが、重複するは駄目であくまでも1つの発生装置から発せられる範囲のみである。
27.5mの長さの中間客車サイズに全てのシステムは組み込まれている。
かといって車両サイズ限界まででなく、床下には運行に関わる機器もあり、通路も確保している為に高さ横幅ともそれなりのサイズだ。
なので、7客車+B1が基本であった。
ステルスシールド発生車、センサー車、長時間生活車2両、情報処理車、オペレーター車、近距離戦闘車で編成されている。
それで100光年程でも膨大な情報処理が必要になってくる。
まず1つの恒星系でも小惑星帯が殆どあるため、1km以上の天体が数十万~数千万、
で、かつ惑星内の1kmの物体も多数あるし、
それが100光年単位となると千~万の恒星系にもなるので、すぐに億以上の反応になる。
で、更にはだ、その反応が天体であるのか小惑星であるのか、彗星であるのか、宇宙母艦級であるのか、
はたまた未知の生命体や、未知なる勢力の艦なのかを現場にいかずに光年距離以上で判別しなければならない。
未知なる艦となると更に小さく100m以上~1km未満で数十倍以上になる。
アトランティスの深宇宙や長距離センサーは銀河サイズではあるが、
トランスポンダに似たようなのが無いと未確認物体のままで、精査する必要がある。なのでやはり近寄って来る程判別されるわけだ。
判別可能距離は大体3000光年程。
今現代も基本トランスポンダから発せられる信号で識別され、
発してないとunknownであり撃墜されても文句はいえやしない。
精査に必要な時間は5光年以内の近傍なら即時にわかるも、10光年以内は1分、~20光年は5分、~40光年は30分、~75光年は2時間、~100光年は6時間程要する。
「…2日以内に発見できなかったら最悪どっかの惑星上にて滅亡世界経由で世界扉ひらくしかないか…」
太陽系から脱出できたのは1隻10万人~20万人の、間とって15万人×600隻で、最大で1億未満…それがこの世界での地球人類の総数で、
更に減っているとは思われた。
「にちてもまちゅたぁ~、あの中の時は?」
ウラシマ効果について尋ねてきた。
光速に近づくにつれ時の流れは遅くなる。
回収し修繕して旗艦としてつかっているトリア号だが、
元の世界ではアトランティスから地球へと光速で向かっていて、
乗っていたエンシェント達が約1万年たっていても船内時間は12年で現役で生存していた。
光速の99.99993%の光速では内部が1秒の時を過ごすのに、13分と53.3…秒必要であって、
約833.3倍で周囲のスピードが動く。
光速を突破し、千倍速あたりからウラシマ効果は薄れてきて、時速光年速の世界になるとウラシマ効果はなくなる。
銀鉄等が通勤時に惑星や恒星間移動は一気に突破し、内部人員の寿命が長くならないのはフィールドで防いでもいるがその為なのが大きい。
通勤等でウラシマ効果受けたら正直困るだろう。
通勤電車で帰ったら寝ないで即出勤しても、無断欠勤が1出勤あたり7日付く。
更には光速付近では乗って発車したら直ぐに到着。
通勤者の睡眠は仕事場でとるの?っう事だ。
カオルは加速という魔法によりウラシマ効果に対応はしている。
因みにGPS衛星でも時間の遅れはあり、内蔵時計を毎秒100億分の4.45秒早めて地上との補正を行っている。
「ネメシスが健在の時は加速使わずにいたよ。
多分…ヘイグス機関に秘密がありそうだな」
ネメシスがウラシマ効果にとらわれたらガウナの動きに対応できてないだろう。
99.99993%時には船体の動きは周囲と同様にしても、入力動作に必要な時間、判断等が周りの約833.3倍。
つまりだ…回避運動開始に人力では最低1時間位はかかってしまう話で……
相手が同じ光速あたりならまだしも、相対し相手が亜光速50%あたりならば容易に機動において負けてしまう結果になる。
相対してなく追従ならば逃げ切れるが…ウラシマ効果にとらわれたら動きが鈍く生存できなくなるのはわかりきってる話だろう。
奇居子もウラシマ効果に囚われている徴候はない。
ヘイグス粒子が奇居子のエネルギー源という話であり、その効果であろう。
……
「見っかったでちよ!!」
「予想より今なを存在している播種船少なめか?」
「かもしれないでちね……」
「まぁいいか、向かってくれ」
「了解でち、ワープドライブ始動、突入でち」
…………
「ワープアウトでち」
(ほう……)
「この恒星系にも奇居子反応あるでちね」
映像出され第七惑星の方に巨大な奇居子反応、第九惑星にもある。
「それなのにあの船はこの恒星系に向かってるん?気がついてない?」
「それは無さそうでちが……あの船に倒す手段あるんでちかね?」
「ん~、なのかな?」
「あっ、まちゅたぁ~、第9惑星近傍に動体反応ありでち」
空間投影されたのは…
「四角錐状の槍頭のような…まぁ、銛ととりあえず命名して…あれは船から?」
「でちね、惑星軌道をスイングバイする軌道とってるでち、で、奇居子がそれを追跡してるでち、
加速し振りきるつもりでちかね?」
「かもな」
「でも、このままだと前方に別の結構でかい奇居子がいるんでちが突っ込むんでちかね?」
「無人索敵機なんだろ?使い捨てのやり方「有人機でちよ」へっ?有人?」
空間投影されてる銛の内部へと…
「4名がいるでちよ」
「戦術機か?」
気がついてない様だが、やっと気がついたか、ビームを1機が撃ち、奇居子が反応する。
銛は加速停止し、銛から戦術機が分離反転。
残った中央部が前方奇居子に突き刺さり……
分離した戦術機は反転しつつもそれまでの勢いを相殺しつつ離脱しなければならない。
1機が奇居子につかまり大破。
逃れた機体を更に追跡しようというのか…惑星から次々と奇居子が飛び出してくる。
すると戦術機3機が互いに接近しつつ…何をしようというのか?集まるが…
奇居子から生体ビームを撃ち出してきた。
1機被弾、操縦席貫通したのか生体反応消滅。
更にもう1機被弾、生体反応はありが推力消失。
奇居子が被弾した機体に近寄ってきて触手にて捕縛、大きく口をあけて捕食しようと……
無事な機体からの狙撃銃らしきので1発で奇居子が飛散し破壊。
「ほう…倒せるなんだかの手段がある船なのか」
「みたいでちね」
被弾した機体を抱え……
抱えた状態で惑星重力からの脱出には容易ではない筈だ。
惑星重力が1Gの場合、機体重量が2倍になると、
単純に必要推力は2の2乗で4倍になる。
多分だが背中の装甲が大気圏突入用の筏となるのだろう…
2機は大気圏に突入していく…
(あの二人助けて、恩を売って安全な楔位置を確保、堂々と活動するか…)
「ルーロス、救助しにいくよ」
「あいあいでち~」
第9惑星へと向かい始める。
「しっかし…どんだけ奇居子がいるんだか…」
大気圏突入した救助対象にむかって更に奇居子活発化し追跡に入ってく。
追い付かれまいと狙撃に入るが…浮島にかるく接触、撃っていた狙撃銃が衝撃で脱落した。
すると奇居子がたかり始め…
「あっ、救助対象機、燃料やら刀やら投棄したでちね」
「ん?刀も?…燃料は可燃だから不時着時に危険だからわかるが…」
「じゃないみたいでちね」
「どういう事?」
あんだけ救助対象の2機を追跡していた百を超える奇居子だが投棄した物にたかって、救助対象の2機には目をくれなくなった。
「何か強く引かれるものを使っているんでちね」
「だが、奇居子は人を襲ってたぞ」
「反応レベル違いかもでちね~、人が1だとするちょ、燃料や武器は100とか~」
「あ~…かもな。あの倒せる武器だから優先に処理する…つうことかな」
翼を広げ滑空体制に入った救助対象機。
「にしても冷たいんでちね」
「何が冷たい?」
「救助隊さしのべないんでちから」
「あ~…そうかもなぁ」
「あっ、前言撤回でち、救助隊でた…えっ?奇居子が?」
「ん?」
「あの船から奇居子が出てきて…戦術機と手を取り合ってる」
「ほう?」
「ただてち、あの奇居子…体内に人がいるでちよ」
「体内に人が?食べられてるじゃなく?」
「空間があっちぇ…まるで操縦しているような感じでち」
「となると……制御されてる奇居子?」
「でちね…とりあえず味方奇居子と呼ぶでち」
「あの2機よりは先行できるよな?」
「大丈夫でち……っと、救助対象機、浮島に不時着みたいでちね」
映像が切り替わり無事にパイロット2名が出て、何も隠れる箇所がない小さな島といった方が良いだろう。
そこから身を隠す箇所を探しに行こうというのか、周囲を見回している。
カオルは森の中へと…
(どう接触するかだよなぁ…)
できるだけ好印象を与えたい…と考えながら追跡はしているが、気になったのは、
(しっかし、あの奇居子を破壊する威力…どうだしてるんだ?)
高出力な威力でなら確かに本体を破壊する事は可能であろう…
だがあの戦術機もどきは全長20m程、40mもない。
したがって携行できる武器弾薬にもサイズ制限的なものもあり、
連発できる実体弾タイプで弾倉も狙撃銃の本体内に挿入の形となると…
口径は20mmが良いところだろう。
20mm程度の質量であるなら、速度にて破壊エネルギーを補わなければならない。
光速戦闘可能な機体から打ち出された弾は元の機体が1光速の速度であればプラス分の威力があるが、
相対速度が0戦闘になる場合…捕食するのに破壊してはもともこもないため、奇居子も後進して相対速度0化を目指している。
なので相対速度0戦闘になりやすく、したがって完全に銃器自体の速度になる。
相対速度0戦闘でならば誘導兵器も機動力がとれるだろう……
で考えられる実弾銃としてはレールガンがあげられるが、21世紀初頭の実験型レールガンは秒速2km超えの速度でしかない…
約36世紀相当の銀英伝の艦載型レールガン砲弾型は、
120mm質量15kgの弾を秒速6万kmと300万倍近く、光の20%の弾速をほこり当たれば約1kmの旗艦クラスをも撃沈できる充分な威力があるが、
それでも銀英伝レベルの光秒間距離の大規模艦隊戦においては近接レンジ専用兵器と位置付けられていた。
理由はビーム兵器より遅く、末端誘導が不可…戦艦主砲が1分後着弾の距離を、
到達まで約5分かかるわけで、そんな先の未来予測位置に発砲して当たるのを期待するのが無謀であろう。
銀英伝クラスとは思えないが、最低限小型のレールガン、初速1.5万km程度以上だとは思える。
でなければ硬い本体貫通は難しいだろう…
「まちゅた~、救助機惑星に接近、いい動きしてるでちよ~」
「ほう…どんな?」
「接近してくる奇居子30匹を遠距離からさっきの狙撃銃と、味方奇居子ですぐに殲滅したでち」
遠距離狙撃銃で1機あたり15匹殲滅はかなり高性能と操縦技術があるといえよう。
遠距離狙撃銃は反動があった…そのまま撃つには何もない宙間ではスラスターを吹かして軸線を元に戻さなければならず、
それが即連射できない理由のひとつだが、反動先に体制をあわせて射撃し短い時間で殲滅できたという。
まさにエース的な動きだ。
「まもなく大気圏突入するでち」
救助対象者は天盤に隠れるのはあきらめたのか下を覗きこんだ後に、
岩盤を支えている太い枝をつたって降りていこうと……
何か器具で岩盤に打ち込むとするするっと降りていく。
「えっ?どこにもっていた…?」
まず固定器具だがボルトやハーケンが現代人には想像できよう。
ハーケンは岩の隙間にいれるタイプで1本ででも一応支えきるが、滑って落下時に何本も抜けて、で止まれば御の字だ。とめきれなかったら滑落で……
ボルトは岩に打ち込んで、金属が潰れて返しのように穴の中に広がりがっちりと食い込むタイプで、10tとか25tとかを支える。
が、ボルト芯からのはネジ止め式なので、
ネジの操作やザイル切断での滑落の危険性が一応あるが、主流ともいえる。
で、ザイルだが50mの9.5mmザイルで2.9kg、回収しながら山をのぼっていくわけだが、
登攀スタイルで50mだと首から反対側の脇腹まで結構邪魔になるが、それが一番シンプルといえよう。
それ以上の長さは邪魔になるので基本的になく、
複数になると…運搬に支障が出る形で、複数人で身体に巻き付け運ぶか、
束ねたザイル束を引き上げる等の行為が必要になる。
ところが50mところでなく、もっと長い距離を二人は垂直に素早く降りていく…
もっと細い紐をスペーススーツ内に内蔵していたといえよう。
そして降下の場合ヘリボーン強襲を思い浮かべよう。
まずは人間の体重をゆっくり降下させるならばザイルをからませてザイルの摩擦でおりるので、素手で可能だ。
だが素早くとなると…ザイルをからませてのが使えず、専用器具がなければ支持している手のひらは摩擦熱でやられてしまう。
それでも火傷防止にグローブはあった方がよい。
専用器具もなしにどうやって素早く降りてるのやら……
230mもある巨木を難なく降り岩盤を支える森の中へと入っていったのと、ルーロスが墜落現場付近へと到達するのはほぼ一緒であった。
「まちゅたぁ~…流石に森の中には入れないでち」
「自分単独でいくしかないか…じゃあサポートと監視よろしく」
「あいでちぃ」
『あっ!!』
「ん?」
『いい動きしていた救助機なんでちが、撃たれたでちね』
「撃墜された?どっちが?」
『戦術機のほうでちね…本体の大部分と搭乗員は無事みたいでちね。
一部の兵装が破損でち』
「えっ?その奇居子のビームの出力弱いん?」
救助対象の同型機は別奇居子のビーム1発でバイタルパート部分の操縦席を貫らぬかれていた。
『いや、かなりの強度あるみたいでち、だから撃たれても無事だったんでちね~
あと個体名判明でち。
味方奇居子がつむぎ機、救助機パイロットがたにかぜ、以後たにかぜ機でち。
救助対象機がしなとせ機、たかしま機でち。
撃った奇居子はベニスズメとよばれてるでちね』
通信傍受で判明したんだろう。
『で、あの戦術機みたいなのは○○式もりとって呼ばれているみたいでち。
あれ自体は高性能実験機なようでちね~
で、船の名前がシドニアでち』
情報をきいてると救助対象の2名が森の中で不活動状態のガウナと遭遇、
ガウナが動き出した為に逃げにたところで発見できた。
『申し訳ありません。隊長。武器もヘイグス粒子も棄てて、生き残るのに成功したと思ってました』
無線を拾って聞いている。
『いや、アイツは追ってきた奇居子ではない。俺がうっかり近づいてしまうまで、こっちに気がついてなかった。
謝らなければならないのは、こっちの方だ』
『何をしてるんですか?』
『ただの準備だよ。生きたまま食われるのはやだだからな』
『こっちに来ます。逃げましょう』
『群れの方もきっとここに向かっている。もう無理だ。逃げ場などないさ』
『ねぇ、立ってください。んっくぅぅ…隊長早く』
『ぁぁぁぁ』
ガウナに再び見つかり逃げ出した。
(今なら…かな?)
「こんにちは」
『えっ?誰ぁ?』
『はぁ、はぁ、奇居子??』
「ガウナや怪しい者ではないです。あなた方を救助にきた異世界の能力者です。
とりあえず、今、余裕はないですよね?」
『み、みて、わかるでしょ!!』
『ど、どうにか、してくれるのか?』
「じゃ、救助します」
と二人を虚数空間の中の避難所に引き込む。
『うわぁぁってて…』
『とと…』
女性は家具に躓きこけ、男性はなんとかかわして止まれた。
人間直ぐには止まれない。
全力疾走の筋肉収縮状態での位相は、その力方向性のまま発揮されるといえよう。
『ここは….?』
『え、確か…』
「自分の体内の安全なスペースと思ってください」
『はぁぁ?』
「とりあえずまだ余裕ないので、その画面で自分の視覚がみれますよ。
あと空気ありますんでメット外しても大丈夫です」
避難所の二人はメットを外し…
カオルはガウナの追跡から飛んで逃れていく…
「ルーロス!」
『あいでち』
カオルの飛行方向にルーロスが回り込み、機内に入って離脱。
ルーロス内に二人を出して、
「ルーロスの機内です。もう安心ですね」
「まちゅたー、救助機は?」
「ん?」
「あっ長道!!」
ガウナをかわしつつかなりもといた大地へと接近しつつあるたにかぜ機、
「ねぇ!私達が無事だと連絡して!!」
「ルーロス」
「あいでち、接続でち話してください」
「長道!」
『えっ!?この声は科戸瀬か!?どっから?』
「そちら余裕無さそうなので、結論からだけど、無事に保護した。
こちらは安全だ。あとで状況は説明する。とりあえず離脱を」
『……科戸瀬、大丈夫なんだな?』
「うん。あと隊長さんも無事だから」
『わかった』
たにかぜ機の軌道が変わり離脱しはじめた。
「ルーロス」
「離脱でちね」
「えっと、君の名は?」
「渚カオル、別の世界においての軍の最高司令官をしてます」
「これは失礼しました」
「いや、いいですよ。とりあえずカオルで」
「カオル殿、この船か?は奇居子から見つからないので?」
「論より証拠ですね。ルーロス」
「あいでち」
奇居子の目前を通行し…
「確かに…なんでだ?」
「まっ、未知なるステルスが使われてる事で…」
『生存者発見、別の機体が救助してます』
『谷風、どういった事?説明して』
傍受中の通信にこちらの事が発せられたので、
「ルーロス」「あいでち」
「初めまして、渚カオルというものです。こちらで2名を保護しました」
通信に割り込んだ。
『渚カオルさん?』
『緑川司令補、その機体の搭乗者です。どう通信に割り込んでるのか不明ですが…』
『……二人は無事なのですね?』
「ええ、」「緑川司令補、こちらは無事です」「同じく無事です」
『わかりました』
『緑川司令補、つむぎは?』
『つむぎは無事よ』
『こちら融合個体つむぎ、紅雀と交戦中、直ぐにかたをつけますわ』
『谷風、つむぎと合流して』
『了解!!』
『それで、渚カオルさん。
そちらの機体について説明お願いします』
「小型宇宙船、ルーロス改といいまして、奇居子からは認識されない隠蔽技術をもち、
星系内航行、惑星内航行、星系間超空間能力がありますね」
『宇宙船ですか…対奇居子戦闘能力は?』
「異世界から来たので、まだ一当たりしてなく不明です。
ですが多分…同時的には難しいですが1体ずつ程度とかなら…殺れるとおもいますね」
『まだ戦闘はされてないのですね?
奇居子の排除はカビなしでは難しいのですけど』
「あの固いやつですね?多分いけますね」
『谷風機、通信途絶!』
『状況は!!』
『落下地点の周囲に多数の奇居子反応がありますが、
ガ数に阻まれ通信できません!!』
「あっ、ヤバい状況になったみたいだな…
たにかぜ機は…包囲してる奇居子に対して連続射撃を開始してますね。
奇居子数は…約250」
『そちらで状況わかるんですか?』
「ええ、こちらからも援護してみます」
『わかりました。お願いします』
「ルーロス、アウト」
「じゃあっと…」
ルーロスの内面に接触、右側を同化しはじめ…
「えっ?」
「カオル殿なにを…?」
「まぁ、こういった異能力を持ってます」
ルーロスの外殻にてラミエルの加粒子砲を形成…
「ルーロス、照準とトリガー任せた」
「あいでち~、てぇ!!」
加粒子砲から放たれた光線が奇居子本体を貫き…
貫かれた奇居子は分解してった。
「うそ…カビなしで殺害できるって……」
「結構な出力はいるけどね。で、そのカビってなに?」
次射を放ちながら問う。
「カビっていうのは、固い奇居子本体との接触で拒絶反応を引き起こす物質で、
カビの発見により、通常兵器が効かない奇居子を倒すことができるようになったんです。
ただ、生産は不可能で貴重なものでしたが、
最近人工カビの生産に成功して使い捨て的使用が可能になり、
それが弾体加速装置の弾に使われて、遠距離戦が可能になりました」
「それがあれ?」
「はい」
たにかぜ機の弾体加速装置はセミオート式で1秒間に3~4発放っている…
「胞衣だけ貫けば良いいのか…ならば弾初速秒速3万kmとか要らないから、反動もさほどかからないか…
それに弾数もかなりあるよな」
次々と奇居子を殺害していくが…残り5体で弾薬が切れた模様。
「弾切れ?長道逃げて!!」
しかし…残り4体…たにかぜ機はとどまって最接近してきた奇居子に対して左手から得物を一閃し、奇居子が分解。
「なにあれ…」
「あれは…小刀だろ?」
「刀ですか?」
残り2体…加速し次の奇居子を切りつけ殺害。
横から来ていた最後の1体を加粒子砲で射殺。
「カビサシ以外で近接できる武器はなかった筈です。
ただカビサシも使われているカビが胞衣に定着する性質をもつので、胞衣をはがして本体露出が前提です。
でないと胞衣に刺さったまま取られてしまう話になります。
先程の後弾芯につかわれている人工カビですが、カビ程強度はなくもろいです。
感触でいえばおにぎり程度でしょうか…
胞衣を貫く強度のある物質が必要で前弾芯に別の強素材が使われて、本体でつぶれて人工カビが接触する形になります」
後弾芯が実弾でいえば火薬、前弾芯が弾芯、レールガン構造なので加速薬の火薬が必要ないので、可能な話だ。
「なのでああいった胞衣ごと本体を断ち切る、かつ強度のあるカビがついていると思う刀は知らないです」
「そうなん?」
「はい。あんな便利な武器があれば欲しいですね…
あっ、でも長道の様に触手掻い潜って一刀両断は難しいか」
『谷風、進路上の奇居子を排除しつつ、つむぎと合流して!』
『了解!』
「あっ、まちゅたー……」
「ん?げっ……」
つぐみの喉元にベニスズメの鋭利な硬い触手が突き刺さっている。
つぐみが優勢にたっていたはずだが……
「優勢だと油断してたら一瞬の出来事でち」
実際ベニスズメはほぼ半壊状態といえる外見であったが、そこから伸びた触手につぐみは貫かれていた。
『つぐみのヘイグス粒子量が急激に減少していきます』
『つむぎ離れなさい!!』
「生きて…いる…か…」
喉をつかれてもつむぎの手は反応して生きている。
『紅天蛾のヘイグス粒子量急上昇』
「まちゅたー…近すぎて撃てないよう…」
『つむぎ!そいつから離れて!!』
「……」
ベニスズメからつむぎは近すぎる。本体を貫く威力の加粒子砲がベニスズメに命中すれば、
威力ありすぎて被害を被る。
中の人物も無事ではないだろう…
援護できずにいると自力でつぐみが辛うじて触手を切断。
吸収されなくなったが、エネルギー源吸われたのかふらついている。
一方ベニスズメは半壊だった胞衣を再生…いや…外観が変わっている。
右腕から撃ち出したパイルがつむぎを貫き更にその力が減衰することなくつむぎももってかれ、浮島を支える石柱に串刺しになった。
ベニスズメは短棒サイズの鋭い針を両腕から十数本はやし、
水平前方向につきだすと…
針を撃ち出しつむぎの身体につきささる。
更にはやし…
「ルーロス、加粒子砲!」
「あいでち…てぇ!!」
つぐみへの追撃防ぐついでに撃破をねらうも…
「げっ?よけたぁぁ?」
不可視の箇所からの光弾、発射から命中まで0.002秒の世界であり、
エネルギーチャージが見れない分常識的に0.002秒は回避不能といえるが…それをベニスズメは避けた…
「まぐれだ!!もう一射!」
再びチャージした加粒子砲から放たれる光弾…
ベニスズメは再び横移動で光弾を避け、
避けられた光弾は浮島へと突き刺さり大爆発を起こす。
「なろっ……ステルス解除!!こちらに引き付けろ!!ベニスズメのターゲットをつぐみから外せ!」
つぐみを追撃しそうになったのでベニスズメから見える様に可視化。
「あいでち!」
ベニスズメは多分こちらを見つけ…引き続き避け続けるが、どっちを攻撃しようか悩んでいるのか…
「ルーロス、あと何門制御できる?」
「3門でち」
ルーロスの言葉通りに更に加粒子砲を形成しつつ…
これで秒間1.3発は撃てる。
「データー受信。まちゅたー、あれヤバいやつでち」
「ヤバいって?」
連射開始し、こちらにベニスズメが向かい始めたあたりでヤバい発言。
「60機以上のもりとをおとちている機体だって…」
「……浸食もあるよな…近接戦は避け距離を保とう」
ベニスズメは、嫌がらせ的加粒子砲の連射に完全に急接近姿勢をとってきてる。
こちらも後進し距離を保ちつつ次々と狙撃する。
致命的一撃を避けつつ近寄れない…ベニスズメにとってはウゼェ!!とおもってるだろう。
そんなさなか…横からベニスズメに強烈なタックルかます存在が…たにかぜ機が突撃してきた。
「ステルス起動、タイミング見計らってゼロ距離射撃試みる」
「了解でち」
たにかぜ機とベニスズメが接触状態な為、射撃はできなくなった。
不意討ちからのゼロ距離なら流石に避けれはしないだろう……
「あっ」
たにかぜ機がほぼゼロ距からヘイグス粒子砲…頭部に発射装置があるビーム兵器を直撃させようとしたが、
ベニスズメが頭部先端部を殴って発射方向をそらした。
その直後、今度はベニスズメからヘイグス粒子砲が発射され、
大爆発がおこる。
「ヘイグス干渉爆発!!」
「ヘイグス干渉爆発?」
「ヘイグス砲同士が交差や発射直後などで干渉おこると爆発してしまうのです。
十八式等は致命的になりますが…」
たにかぜ機は…フレームは大丈夫の模様だが、頭部内部機構、砲門やカメラなどがいかれたようだ。
ベニスズメはいったんはなれるもこちらを警戒してか…直ぐに背後から接触、
たにかぜ機は刀を出すも両腕が触手や手で押さえられていた。
『谷風!エナが機体内部に侵入しているわ』
頭部のいかれた箇所から内部機構へと触手が侵入、胞衣液みたいなものを送り込んで浸食していく…
『谷風!紅天蛾が正面にきたわ!』
通信直後、ベニスズメ下半身が吹き飛ばされ、本体が露出した。
「滑空砲かぁ!!」
機体を押さえつけている力が解放された。チャンスと思ったが……
「何をしている、本体を破壊しろ!」
「操縦桿押さえつけられてるでち」
操縦席壁面の隙間から胞衣触手が内部に侵入…
『谷風機操縦席に胞衣が侵入しました』
『これは…紅天蛾が胞衣で再現した、星白シズカ』
『中は…すごく不味いわよ』
「長道!聞こえる?機体の頸部気密シャッター閉じれば胞衣の侵入経路を遮断できるはず!!」
『いざな』
「頭部を切り離すしかないよ!」
『長道の心拍数上昇!機体の電源おとされました』
「まずいよ!」
「俺が行く、ルーロス」
ルーロスとの同化をとき、たにかぜ機に再接近、
機外に出てたにかぜ機と同化…
(これか…)
予備電源を起動、頸部気密シャッターを閉じて頭部を分離させた。
拘束の解けたたにかぜは、機体を操作、ベニスズメの本体をカビ針でさした。
胞状分解してくベニスズメ…
カオルは同化を解除してルーロス機内へともどった。
『つむぎ』
たきかぜ機はまだ串刺しのままであるつむぎの元へと向かう。
「まちゅたー……惑星全土から奇居子が向かってきてるでよ」
「数は?」
「最終計測数12054匹でち」
「1万超えるか……」
「1万って…絶対無理な数じゃない」
「地上にいた不活性奇居子も全員かちゅどうかいちして、これいじょうはふえないでちけどね」
「現時点は惑星外からの援軍でないと増えないのが朗報か」
「谷風!!早く離脱してくれ」
たにかぜ機はつむぎに到達し身体中心部の串を慎重に抜いている最中だ。
「因みに…たにかぜ機のあの銃の残弾0だろ?予備弾倉は機体にある?」
「僕の知ってる限り、弾体加速装置の予備弾倉は衛人にはつけるスペースが設計されてません」
「十八式の後だしな…十九式は最近だがそれにもないしな…」
「弾薬なしか…他の遠距離射撃兵器は?」
「……ありません」
「つむぎはああいった状態だから…となると…君らにした通りに回収離脱かな…
ただ…勝手にすると混乱するよな…」
『谷風機、融合個体つむぎを確保』
たにかぜ機はとりあえず浮島へと向かっている。
『谷風機付近に多数のガウナ反応!』
「シドニアもやっと気がついたか」
『全方位から接近!到達まで8分です!』
『艦長!隼風によるガウナ掃討作戦を具申します』
『どういう事だ?』
『谷風達を囮としてガウナの大群を地上の一ヶ所に集め、一機も失わずに惑星ナインを制圧します』
『谷風達を囮にする?』
『これはあくまで掃討作戦です』
『いいだろう、やってみろ』
『囮は殺られてしまっては意味がありません。必ず守り抜いて…
カオルさん聞こえてます?』
「聞いてるよ」
『カオルさんには隼風到達まで谷風達への援護射撃をお願いします』
「わかった…ルーロス」
「あいでち、さっそく撃つでち」
たにかぜ達に向かっている奇居子への射撃が開始された。
「さて…討伐隊到着までどんだけ到達を送らすことができるかだな…」
かっこよく答えたものの、現状ではたにかぜ機らを虚数空間に引き込み離脱する未来しかみえてない。
ルーロスは4門で秒間1.3発、10秒間で13匹、1分間で78匹、7分30秒後までに585匹しか処理できず、
その数では8分32秒後に残弾0のたにかぜ機に高密度帯の奇居子が到達してしまう。
小刀やカビ針など近接武器のみで1秒間辺り10匹以上殺到する高密度の奇居子を対処できるかと言えば…
感覚的に赤い格好した自身に跳ねようと突撃してくる闘牛…1秒間10匹以上を、
レイピアなど武器無しでかわし続けられるかの話になる。
正直言って離脱しなければかわす隙間の無い圧迫死しか見えてこない。
攻撃するから隙間は空くだろう?と意見があると思う。
平行方向からくる闘牛と、
上下方向から殺到するゾンビカラスの違いで、
反撃不可の縛りを設定しても良いレベルと想像してもらいたい。
惑星ナイン残存奇居子数12051匹、囮たるたにかぜ、つむぎ到達まで……あと7分30秒。
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