Release 0シルフェニアRiverside Hole

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■15 / 3階層)  ★"蒼天編"3話
□投稿者/ サム -(2004/11/07(Sun) 02:54:47)
     ◇ 三話 『小さな変化』前編 ◆


    ここ最近,どうやらまた武装グループの活動が活発になりつつあるみたい。
    今朝のニュースでも軍との小競り合いが起こったらしい。規模は小さく構成員の半数検挙されたのが幸いだろうか。武装グループと軍の交戦区域がこの近辺だと言うことが少々不安の種だが,今なら軍,警察が多く出入りしているからまずは安心と思っても良いだろう。

    私は寮の食堂でニュースを見ながらご飯をぱくついていた。
    エルリスも同席しているが,ぽけーっとニュースを眺めるばかりで食が進んでいない。このままだと授業にまで遅れる可能性が出てくる。

    「ほらほらエル。とっととくっちめー飯なんてさ。早くしないと授業に間に合わないよ」
    「ぁ。ごめん、またぼーっとしてた」

    我に返ったらしいエルは,よくわからない言い訳をしつつ食事を再開・私もお茶をすする。
    ついでになんとなく,ニュースのことを口に出した。

    「いや、しかし物騒になったもね。」
    「そだねー」
    「またテロか〜。リヴァイアサンの連中かね?」
    「ん…、海竜王とは別の小規模のグループかな」
    「…へ〜。そなんだ。」

    私の言うリヴァイアサンとは,王国北国境付近を中心に活動しているEX集団の武装集団で,付近では最大の勢力。
    しかしエルはやけにはっきりと違うと断言した。
    そんな言葉に相槌を打ちながら,私は時計を見る。

    12:45分。
    授業開始20分前だ。
    午後は座学が2コマ続いてその後3時間の軍事教練が入る。
    今日は普通の武器を使った戦闘訓練になっているからエルも普通に混じることができるはずだ。
    む、どうやらエルの食事が終わったみたい。

    ガタガタと椅子をならして私は立ち上がる。

    「…よし、後半日がんばろっか!」
    「おー」

    かわいらしく右手でグーを掲げているエル。
    かわいい、確かにかわいいが…!

    「箸は置いときなさいな」
    「自分でもそう思った」

    頬を染めながらそう返すエルも、なかなかに可愛いと思ってしまった。


     ▽   △


    何とか午後の座学には間に合い,私は居眠りをしつつ恙無く授業を終える。
    戦闘訓練は他学科の連中と合同で行うもので,私はランダムに組まれた対戦相手を容赦無く叩きのめしながら日ごろのストレスを晴らす。ああ なんて素晴らしい哉 実習講座。

    エルも戦闘訓練だけならば相当強い。
    基本の剣の構えは様になっているし,他の武器でもなんでもいけるのだろうと思う。
    下手すると,私より強いのかもしれない。
    …しかし,実戦を想定した,魔法も使用する演習ともなるとエルはほとんど役に立たなくなってしまう。
    エルリス・ハーネットは魔法を駆動できないのだ。

    語弊があるかもしれない。
    駆動できないのは起動式が複雑な――魔導機構を組み込んだもの。

    エル曰く,

    「なんでこんなのに魔力を通せるの??」

    だそうだ。

    生活に必要な最低限の簡易起動式(スイッチ)は扱えるものの,それ駆動式の集合体,魔導機構ともなるとどうしても動かせない。
    機械音痴と似たようなもの,とは本人の言だが…私には別の原因があるように思えてならない。

    現代の戦闘において,魔法は必要不可欠な戦力であることは歴史から見ても現在の状況を見ても明白な事実だ。
    使える・使えないは戦いにおいて明確な生死を決定する直接的な要因になりうる。

    故に,エルは学院の教員連中からコースを変えないか,と再三の忠告を受ける状況になる。
    実は私もその教授方の意見には賛成している。
    無論,私はエルが好きだし親友とも思っている。
    彼女が何を思って戦技科に席を置くのかは判らないが…いずれ決定的な分かれ道に行き当たることになると確信もしている。
    私とエルの進むだろう道は,きっと違う方向なのだろうから。

    しかし、まぁそれは少し置いておく事にしても,エルはこの現代社会で生きていくには結構困難が伴うのではないか,とも思っている。
    いわゆる部分的身体障害…とでも言えば良いだろうか?
    その負担をなるべく少なくできるよう,できうる限り私はエルと行動する事にしていたりする。
    このことは無論内緒。


     ▽   △


    今日も一日無事終わった。
    シャワーも浴びたしご飯も食べた。
    後は寝るだけ。
    エルとは部屋が隣同士なのでお互いの部屋の前で別れる。

    「明日こそ,ちゃんと起きんのよ?」
    「ん、がんばる。」

    出会った次の日から何度も繰り返してきたこのやり取り。
    爽やかに笑うエルに,私は信用度0の笑顔で返す。
    明日も起こさにゃならんのか,と思わないでもないが…エルの寝顔を見れるのは正直役得と思っているのでまぁかまわないかって気にもなる。発想がオヤジ化してる気がする…花も恥らう18歳の乙女がこれか
    …エルにお休みを言って部屋に入ろう。

    「んじゃおやすみ」
    「おやすみねー」

    ぽやぽやしてて愛いやつめ、なんて…やはりオヤジ的発想をしてしまうほどエルは極悪に可愛い挨拶で部屋に入っていった。
    そんじゃ、私も寝ることにしましょうか――。





    >>続く
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