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■241 / inTopicNo.1)  『魔』なりし者 第一話
  
□投稿者/ RX -(2005/12/02(Fri) 00:14:10)
    2005/12/02(Fri) 00:33:25 編集(投稿者)

    「セイヤァァァァ!!」

    男の叫び声が、森の中に響き渡る。

    グギャァァァァァァ!!

    男の剣がデーモンの腹部を切り裂き苦悶の叫びをあげる悶える。

    そんな事はお構いなしに、男は手に持っていた剣でデーモンの首を切り払った。

    ボトッ、と音がして首が転がっていく。

    数回転がった後その首は何かに当たってその場に止まった。

    その何か、それはまだ年端も行かない少年だった。

    「はぁ・・・はぁ・・・、っく!!」

    さっきまで戦っていた男は、数回息を整えるとその少年の下へ歩み寄った。

    「怪我は無かったか?坊主。」

    男は、剣についた血を振り払いながら今できる精一杯の優しい声でそう言った。

    「・・・・・・。」

    少年は、顔はしっかりと男のほうを向けたにもかかわらず何も喋らない。

    「ん?どうした、まさか言葉が喋れないわけではねぇだろ?」

    男は、剣を鞘に戻しながら少年に向けて言った。

    「・・・ん・・・。」

    少年はコクコクと頭を動かして男の問いに答えようとしている。

    その姿を勘違いした男は、

    「だろ?だったら喋ってくれよ、おっさん一人で喋って悲しいぞ?」

    そういいながら、大げさに肩を落す仕草をする

    それを見て少年は慌てたように精一杯何かを伝えようとする。

    「ん!・・アウ・・んんん!!」

    手足をばたつかせたり、ぴょんぴょん飛び跳ねたりしながら何かを伝えようとする

    ここまで来て、ようやく男は

    「・・・もしかして、マジで喋れねぇの?」

    「ん。」

    どうやら意味は伝わったようだ。

    男は、唖然としたがとにかくこの場所を離れようと思って辺りを見回した。

    そこには、デーモンの死体や何人かの男の死体が散乱していた。

    (なんだか厄介ごとに巻き込まれたような気がするぞ・・・。)

    男・・・いや、バニッシュはそう思いながら今から2時間前を思った。


    −−−−−2時間前−−−−−


    バニッシュは、アヴァロン帝国北部の港町パルセンに届け物の依頼を受け向かっていた。

    その途中、街道に壊れた馬車を発見した。

    何者かの襲撃を受けたらしく、辺りには血や馬の死骸が落ちていたりした。

    その後は森の中に続いているのを見つけてしまったので、このまま放置するのも

    後味が悪いと思ったのでその後をつけていくことにした。

    後をつけている途中、何人かの人間が死んでいるのを発見して

    大事になりかけているのを確信した。

    (こんな街に近い街道で、魔族・・・恐らくデーモンが襲ってくるなんて・・・。)

    一つの死体は、体に三本の切り傷が縦に走っておりその傷は深く肉体をえぐっていた。

    後の死体は、何か魔法を食らったのだろう肉がこげる匂いがしていた。

    (とりあえず、俺式で悪いが冥福を祈ってるぜ。)

    バニッシュは、死体に向かって胸に手を当てて祈った。

    この祈り方はとある部族の祈り方で、バニッシュが気に入っている祈りかただ。

    数秒祈ったあと、更に後をつけようと走り始めたら前方から男の悲鳴が聞こえてきた。

    バニッシュは、悲鳴を聞くとその方向へ向かって全速力で駆けて行った・・・。


    バニッシュがその場所にたどり着くと、そこには無数の人間の死体と

    傷つきながらも戦士風の男に止めを刺しているデーモンの姿があった。

    そのデーモンは、手が鉤爪のようになっており背中から羽が生えて

    顔は、醜悪にゆがんでおり頭には角が生えていた。

    (!!、デーモンの中位種だって!?)

    思わず、そう叫んでしまいそうになったバニッシュだった。

    それもそのはず、下位種のレッサーデーモンだって

    普通に勝つには数人でなければ難しい。

    中位種のデーモンに至っては達人に近いレベルの集団で戦って

    ようやく勝てるレベルである。

    バニッシュは、自分の力にそこそこの自信があったが、

    たった一人で中位種のデーモンに勝てると思うほど自惚れてはいない。

    死んでいる人には悪いがとっとと逃げようと思って回れ右をしようと思ったら

    自分の視界の端に、少年がいるのを見つけてしまった。

    (何故こんなところにガキが!?)

    少年は、ガクガク震えながらデーモンを見ている、目に涙を浮かべながら。

    あれでは、まともに動く事も出来ない。

    それにデーモンも少年を殺そうと歩み寄っていく、

    この時、すでにバニッシュの頭の中に逃げると言う言葉は無かった・・・・。

    「うおぉぉぉぉぉぉ!!」

    腰にさしてあった愛用のブロードソードを抜き雄叫びを上げながら突撃した。

    完璧に少年のほうに気を向けていたデーモンは回避するのが遅れてしまい

    上段からの一撃を太ももに受けてしまった。

    グギャァ!!

    叫びながらも、バニッシュに向かって鉤爪を振り回す。

    その一撃を、剣で受け流しながら傷つけた太ももに前蹴りを当てる。

    苦痛に気がそがれた瞬間に再度、大きく剣を振りかぶって斬り付けようとするが、

    「!!」

    何かを察知して、転がりながらその場を離れるその一瞬後

    ゴバァァァァ!!と、デーモンの口から炎が吹き荒れた!!

    あの炎をまともに食らっていれば楽に死ねるであろうことは間違いなしの一撃だった。

    グルルルルル・・・

    デーモンは低く唸り声を上げながらこちらを睨んでいる、

    (参ったねぇ、行動を抑えたのはいいがこれじゃあ迂闊に近づけねぇよ・・。)

    バニッシュは、剣を右手にもって左手で何かをいじりながら勝つ方法を考えている。

    デーモンの方は、傷から緑色の血が噴出している。

    かなりの激痛のはずだがバニッシュから注意はそらしてはいない。

    流れる時、バニッシュは腰を深く落してにじり寄っていく。

    そして、左手に持っていた転がった時に拾った石を顔に向かって投げつける!

    ヒュンっと音を立てて飛んでくる石を片手で振り払うデーモン。

    が、次の瞬間もう片方の足にダガーが突き刺さる!!

    グギャ!?

    何が起こったのか分からず痛みに気をそらしたその瞬間を逃さずに

    一気に間合いを詰めて、渾身の一撃を振るう!!

    「セイヤァァァァ!!」

    −−−−−−−−−−−−−

    (よくあんな方法で勝てたと思うよな自分・・・、

     まぁ、ずいぶんと弱ってたから助かったような物だな・・・。)

    ほんの数分前の出来事だったが本当に運が良かったとバニッシュは思っている。

    もし、あれが完全な状態だったら負けていたのは自分だと断言できる。

    そう思い返しながら、目の前の少年に話し掛ける。

    「あーーー、まぁしょうがねぇな、俺はバニッシュって言う冒険者だ。

     お前の名前は・・・ってわかんねぇよなぁ。喋れないんだし・・・。」

    そういって少年の頭をくしゃくしゃと撫でる、それをくすぐったそうにしている少年。

    「うーーん、親とか何でここにいたとか解るか?」

    そう問い掛けると、難しい顔になるが少し立つとなきそうな顔になってしまい

    「ア・・アウウ・・。」

    と、首を横に振る。

    それを見たバニッシュは、少し考えた後明るく振舞って

    「ああ、気にすんな。お前が悪いんじゃあなさそうだしな。

     それにガキは笑ってるもんだぞ!?・・・こんな風にな。」

    そういって、指で口の端をにっこりするように持ち上げる。

    「ああふひははひ。」

    少年が涙顔になりながら笑おうとする、が痛いようでじたばたし始める。

    「お、すまんな。」

    と言って、指を離し腰に手をそえながら

    「それじゃあ、お前は・・・・いや、お前って言うのもなんか嫌だな・・・。」

    何かしようと思ったようだが、少年の事をなんと呼ぶかで悩み始める。

    ああでもない、こうでもない・・・と四苦八苦しながらやがて・・・。

    「よし、お前は名前が無いからナナシと呼ぼう!!」

    と言って、少年・・・いやナナシを指差した・・・・・・・・・。



    この出会いが一つの幕開けとなる・・・・のかもしれない・・・。



引用返信/返信 削除キー/
■246 / inTopicNo.2)  『魔』なりし者 第二話@
□投稿者/ RX -(2005/12/21(Wed) 23:45:34)
    2005/12/21(Wed) 23:46:24 編集(投稿者)
    2005/12/21(Wed) 23:46:19 編集(投稿者)

    第二話 パルセンにて@


    余り人気の無い街道をバニッシュは歩いていた、
    その後ろにはナナシが一生懸命追いつこうとがんばっている。
    そのことに気がついたバニッシュは、少しゆっくりと歩き

    「あぁ、すまねぇな。」

    と言って、ナナシの頭をクシャクシャと撫でる。

    「少し考え事をしていたんだ。」

    バニッシュの考えている事とは、昨日の事である。

    昨日・・・あの事件の後始末をしていた時に気がついたことがあった
    街が近いのにデーモンが単独で表れるのは稀である。
    しかも、馬車が壊されていたと言う事は中身に何か用が会ったのかもしれない。
    それを馬車の護衛達がもって森の中に逃げたが追いつかれ殺されたのは考えやすい。

    しかし、それではあのデーモンが求めていたような物が何も無い。

    気の毒なようだが、死体が何か持っているかも調べてみたが
    路銀や他愛の無い物ばかりだった。
    とすると、一体何が目的でデーモンは馬車を襲ったのだろう?
    あの場所でデーモンが求める物、それは・・・・・・

    「ナナシか?」

    思わずそう呟いてしまった、

    「ん?」

    ナナシがこっちを向いて何か用かと目で訴えてくる。

    「あぁ、いやなんでもない。」

    そういって、頭の中でまさかなと思う。

    きっと、何か用があって森の中へ入ってしまったんだろう。
    そして、あの事件に遭遇してしまったんだろう、
    と、かってに解釈をしておく事にした。

    (何しろ、男の子かと思ってたら女の子だったからな・・・。)

    そう思い、今日の朝方を思い出した。

    −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

    あの後、死体を埋葬していたら日がくれてしまったのでバニッシュは
    小川の近くで一晩野宿をした。
    その翌日、汚れたままだった自分の服や顔、ナナシを少しでも洗う事にした。

    「おい、ナナシ。川でちょっと洗うぞついて来い。」

    そう言って、川の側まできて顔を洗った。
    水は透き通り、晩夏の水は冷たくすがすがしい気分にしてくれる。
    隣にナナシがきて同じように洗おうとしている。
    その時バニッシュは、
    (服も結構ぼろぼろだし、体も泥が結構ついているな・・・、幸い浅いしな。)
    と思い、

    「ナナシ、泥が結構ついてるから洗って来いよ。」

    と言って、服を脱がせ始めた・・・。

    「ん?・・・・・・Oh!My God!!」

    −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

    (俺は悪くないさ、何しろよくわかんなかったんだからな・・・。)
    そう思い、自己弁護をしているバニッシュだった。
    (だいたい、ナナシも反発してくれればいいのになぁ。)
    とか何とか考えていると、ふと思ったことが有る。

    ナナシが、何か秘密を持っているのではないのだろうか?と。

    服を脱がせようとした時に反発しなかったのは慣れているか
    それとも、常識的なことを学ばされていないのではないか。

    ナナシが『何か』関係しているとしたら?
    あの馬車にはナナシが乗っていたのでは?
    護衛が守っていたのは物ではなくナナシなのではないか?
    デーモンは、ナナシを狙っていたのではないか?

    そういえば、普通人を殺す時は抵抗力の少ない者から殺すのが一般的だったような、
    中級デーモンにもなれば知能はかなり高く人間に擬態する事も可能である。
    そのデーモンが恐らくあの中で一番弱い存在であるナナシを先に殺さなかったのには
    何か分けがあるのではないだろうか?

    (・・・・まさかな・・・・)

    そう思い、ナナシを見る。
    ナナシは、まだ小さい。歳は10歳前後だろうか?と思う。
    そんな子が、『何か』に関わっているなどと考えたくは無い。
    子供は元気に笑ってるのが一番だと思う。
    (ナナシも普通の子供だろう、考えすぎか。)

    クシャクシャと頭をもう一度撫でる、

    「ん〜〜。」

    ナナシはうれしそうに目を細める、そしてニコニコと笑う。

    (ま、パルセンについたら教会か孤児院に預けるとするか。
     俺の仕事の報告ついでに、教会に掛け合って保護してもらおう。)

    そんな事を考えながら、小高い丘を登りきると海からであろういい風と潮の匂いがした。
    そして、大きな街が見え始めた。

    「お、ようやくついたな。あれがパルセンだぞ。」

    そういって、街に向かって歩いていった・・・。





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■251 / inTopicNo.3)   『魔』なりし者 第二話A
□投稿者/ RX -(2006/01/10(Tue) 21:11:21)
    2006/01/10(Tue) 21:11:50 編集(投稿者)

    第二話 パルセンにてA

    |港町パルセンは、アヴァロン帝国北方に位置して第二の帝都と呼ばれるほど大きい街
    |だ。                                    
    |港からはヴァルフダリス共和国や東方諸国連合に行き来する大型商船や客船が   
    |ずらりと並んでいる。                            
    |また、冬になるとオーロラを見ることができ、南方からわざわざ見に来る人もいる。

    ガイガイワヤワヤ

    といった擬音が似合う大通りをバニッシュは歩いている。
    横ではナナシがバニッシュの袖をつかんではぐれないように必死になっている。
    そのまま歩いていき街の中央広場付近に着くとバニッシュは立ち止まった。
    (あーっと、教会はどこだ?)
    きょろきょろと見回しては見るが、それらしい建物は見当たらない。
    「教会なんてのは街のど真ん中にあると思ったんだがなぁ。・・・仕方ない。」
    そう言うと、ナナシを広場の花壇の側にあるベンチに座らせた。
    「ちょっと待っててくれよ?」
    と、ナナシに向かって言って自分は近くにいる人物に聞き込みに行った。


    「あの、すまないけど場所を教えてくれないか?」
    できるだけ綺麗な敬語を使ったつもりで俺は近くにいた人に聞いてみた。
    俺が話し掛けたのは現地民であろう恰幅のいいおばちゃんだ。
    「あら?結構いい男じゃない。何でも聞いとくれよ。」
    がはは、と威勢良く大きな声で笑っているおばちゃんだったが
    「有難う。教会を探してるんだが・・・?」
    俺が教会を探していると聞くと笑い声が止まった、そして、
    「・・・、あんたの探してる教会ってのは、どっちだい?」
    と俺の身なりや格好をじろじろ見ながら聞いてきた。
    「どっちって・・・、教会だよ。二つもあるのかいここの町は?」
    といって、俺は首をかしげた。
    (確か、依頼者の話では教会としか言わなかった、
             二つもあるなんて言って無かったよな?)
    仕方なく俺は、じろじろとこっちを見てくるおばちゃんに
    バックパックから依頼書を取り出して確認させる事にした。
    「ほら、この名前の人の方の教会だよ。
         ジェラルド=カスター神父って読むんだよな・・・、コレ?」
    自分で呼んどいてちょこっと不安になったりもしたが・・・。
    おばちゃんは名前を聞くとまたがははと笑い始めた。
    「ははは、すまなかったよ。カスター神父のほうだったのかい。」
    そう言って、背中をバンバンと叩いてきた。痛いんすけど・・・。
    「そうかぁ、カスター神父のほうかい・・・。よし、私が案内したげるから着いてきな!」
    そういうとくるっと背を向けて西のほうへ歩き始めた。
    「ちょっ、ちょっと待ってくれ!連れを呼んでくるから・・・っておお!?」
    そう言ってナナシを迎えに行こうとしたら後ろにナナシがいた。


    「なな、おおおお前何時から居たんだ?」
    俺がそういうと、先に行ってたおばちゃんが戻ってきて
    「何時からって、最初からあんたの後ろにいたよ?」
    と言って来た、はぁと溜息をつく俺
    「ちゃんと座ってろって言ったろ?」
    と、しゃがんで目線を合わせて少し怒った感じで言う。
    「あ・・、うう・・・」
    するとナナシは目に涙を浮かべて何度も頭を下げてくる、
    (参ったな、そこまで怒っちゃいないんだがな・・・。)
    「何いってんだい!あんたが悪いんだろうに!!」
    と、いきなりおばちゃんが怒ってきた。何故に?
    「知らない街で一人ぼっちにされちゃあ可哀想だし、不安に決まってるじゃないか!!」
    俺に向かって指を突きつけながら大きな声で怒鳴ってくるおばちゃん。
    (ああ、道行く人が何事かと俺を見ている・・・・。)
    「聞いてるのかい!!とにかくその子は何も悪くないよ!!」
    何故におばちゃんに怒られるのかはわからないが確かにナナシは悪くないと思い
    ナナシに向かって謝り始める俺。
    「そうだな、確かに俺が悪かった・・・。それに本当は全然怒ってなんかいないからな?」
    と言って、ナナシの頭をクシャクシャと撫でて、目じりに溜まった涙をふき取る俺。
    「な、悪いのは俺だから元気出せよ?」
    そう言って最後にぽんぽんと頭に手を乗せて立ち上がりおばちゃんに礼を言う。
    「なに、気にすることは無いさ。色々辛いんだろうけど子供に当たっちゃダメだよ。」
    と、またがははと笑うおばちゃん。
    確かにそうだなと思い深く頷く俺。
    「うんうん、こんなおばちゃんの言う事だけど・・・。」
    と言って、俺の背中をまたバンバンと叩いてくる。
    「頑張りなよ、お父さん。」

     ・・・・俺そんなに老けてますか?おばちゃん・・・・。




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■265 / inTopicNo.4)   『魔』なりし者 第二話B
□投稿者/ RX -(2006/04/16(Sun) 22:37:02)
    そこは寂れた寂しい場所だった。
    教会らしい形にはなっているが壁や窓は朽ち果てている部分もある。
    しかし、そんな教会のすぐそばには真新しい建物が建っている。
    その新しい建物を指差しながらおばちゃんは

    「神父様は自分のところに孤児を集めてる人でねぇ。
         孤児院を作るために教会のお布施を使っちまってね・・・。
             ああ、お布施といっても大司教個人の物だよ?」

    そこまでおばちゃんは言うとはぁ、とため息をついている。
    ため息をついているが、その顔は晴れやかである。

    「ま、それが元で破門とまではいかないが
               あっちの教会には居られなくなってねぇ。
          それで、廃屋寸前のこの家を教会に改造して使ってるんだよ。」

    (そのほうが神父らしいんじゃあないのか?)

    俺がそう思ったとき、教会の扉が開いて中から子供たちが数人駆け出してきた。
    子供たちはみずぼらしい格好をしているが顔は生き生きと輝いている。

    「あ、おばちゃん!!今日もお菓子くれるのぉ?」

    と言っておばちゃんの周りを走り回っている。

    「ああ、すまないね、今日は違うんだよ。神父様は今いるかい?」

    子供の頭を撫でながら話をしているおばちゃん。


    ふと、自分の服の裾が引っ張られているのに気づく。

    「ん?」

    見れば、ナナシが俺の服を強く掴んでいる。
    ナナシは俺の服の裾を掴んで離さない。
    この孤児院においていこうかと考えていた俺だが、
    俺になついているナナシをこのままおいていくのはかわいそうに思えたてきた。


    「そうかい、ありがとうよ。
        ・・・ちょいと、お前さん?中に居るそうだから渡してきなよ。」

    子供たちとの会話が終わったおばちゃんが俺に話しかけてくる。
    その後、ナナシのほうに目をやり

    「この子はどうするんだい?一緒に連れて行くのかい?
               ・・・何なら私が見ててあげようか?」

    そういわれ少し考える。
    もしここにナナシを置いていくのであれば神父との交渉にナナシは連れて行かないほうがやりやすい、
    しかし一方的過ぎるような気もしてくる。
    そんなことを考えていると俺の服を掴むナナシの手がいっそう強く握られた。

    「・・・・・・。」

    ナナシは俺の目をじっと見つめている、

    「ナナシ・・・・。」

    黒い瞳は瞬きもせずにじっと俺を見続けている。
    その瞳は感情を映し出していないように見える。
    しかし、俺の服の裾を握っているナナシの手は感情を表している。

    「・・・一緒に連れて行きますよ。」

    俺はそう答えるとナナシの手を強く握った。

    「・・・そうかい。ま、この子を泣かせるような真似はするんじゃないよ?」

    そういっておばちゃん手をひらひらと振って去っていった。


    なかなかカッコいい去り方だと思った・・・。

引用返信/返信 削除キー/
■269 / inTopicNo.5)   『魔』なりし者 第二話C
□投稿者/ RX -(2006/05/13(Sat) 23:25:39)
    教会の中に入ると外見どおり中は寂れていた。
    古ぼけた机やオルガン
    ところどころ破けている絨毯
    しかし、そんな状態なのに一種の爽快感がある空間だった。

    その中央、大きな十字架の下で神父服を着た大柄な男性がひざまずいている。
    時折彼のつぶやく言葉が聞こえる。

    「偉大なる神々よ。われら許されざる子らに大いなる祝福を・・・」

    近づくと神に熱心に祈っているようだ。
    邪魔するのも悪いと思い終わるまで待つことにする。

    「おお、偉大なる母よ。
       恵まれぬ我等に祝福を。
        特に孤児たちに、いや主に孤児たちに、っていうか孤児たちに。
         金持ちには神の怒りを!!
          ついでに我が教会にもっと祝福を!!」

    (は?)

    思わず口が開いて目を大きく開いてしまう。
    ・・・こいつほんとに神父か?

    「おお、全能なる神よ!!
      私に髪とお金と嫁を下され!!」

    最後の方は涙ながらに絶叫している。

    (・・・どうやら入る場所を間違えたようだ。)

    くるりと反転しナナシを引き連れて出口めざしてGO!!

    「おや?なにかごようですか?」

    反転した俺の眼前にさっきの神父の分厚い胸板が飛び込み、

    「のわぁ!!いつの間に回りこみやがった!?」

    と、思わず大声で叫んでしまった。
    その俺の質問に神父はやけに高い笑い声で

    「HAHAHA、神への愛と歳の功かな?」

    と、のたまいやがった。

    (・・・いけないこいつは変人だ、
             それもとてつもなく!!)

    さっさと依頼を片付けてナナシとともにここから去ろうと思った
    (流石にこの変人にナナシを預ける気にはなれなかった。)

    「いやぁ、ここにカスター神父が居られると聞いて来たのですが・・・、
             どうやら不在のヨウデスネ?。」

    一縷の望みにかけてこの変人が神父ではないことに賭けて聞いてみる。
    が、

    「おや?カスターは私ですが?」

    にこにこ笑いながらそう問いかけてくる自称カスター、

    「神は死んだ・・・。」

    俺は思わずそうつぶやいてがっくりとひざを落とした。



    「失敬な!!髪は死んでませんぞ!!」


    ・・・・・・馬鹿め。



    〜後書きという名の文章〜
    今回から後書きを取り付けてみることにしました♪

    ようやくここまで書き上げれました。
    書き上げたといってもすごく短いです・・・(汗
    しかもまだ二話の途中・・・(汗汗
    ・・・とりあえず、待ってくれていた人有難う(居るのか?)

    まだまだ、仕事や新生活に慣れていないので更新が
    不定期でしかも遅くなってしまいます。
    ほんとに申し訳ないです。
    しかし、これからもがんばって逝きたいのでがんばらせてもらいます。

    以上RXでした。

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