Release 0シルフェニアRiverside Hole

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■3 / inTopicNo.1)  なんだか分からないSS
  
□投稿者/ 犬 -(2004/11/05(Fri) 14:41:47)
    2004/11/05(Fri) 14:44:01 編集(投稿者)

    誰が主人公で結局何なのかワケわかんねぇSSです。
    魔法バトル混在。こんな感じかなぁという試し書き(本家規定容量オーバーとも言う)。
    引き立て役のザコであるハズの主人公が目立ちまくり。ハーネット姉妹影薄い( ̄□ ̄;)!!
    最後が「からくり」のジョージみたくなっちまったのは失敗。
    魔法その他に関しての説明が中心になるように書いてますので、参考になれば幸い。
    ※世界地図と魔法遣いの境遇については妄想。


    ・・・・・・・・・・




    簡単なはずだったんだ。

    3日ほど張り込んで掛かった獲物は、たった2人でのん気に歩いてやがる芋娘。
    ハ、芋かどうかなんざ見ただけで分かったさ、なにせ髪も瞳も青いし、黒いタイトアンダーに白の薄衣だけなんて軽装で歩いてやがんだ、あのクソ寒い氷の海の田舎モンに決まってる。
    だから、簡単なはずだったんだ。
    あんなド田舎のヤツが魔法なんざ使えるわけがねぇ。使えても護身なんざ出来るわけがねェ。
    だってそうだろ?
    スノウなんて極北出身なら十中八九、属性は氷だ。つーかあのクソ寒い中じゃ氷の性質じゃなきゃ俺なら絶対暮らしていけねェ。
    で、あの娘はパッと見じゃ媒介を持ってなかった。媒介は装飾品だし霧散するマナを留めるモンだから目に見える場所に付けるモンだ。
    だから、田舎モンだし媒介も持ってねェから、魔法使えねェって考えたんだ。
    そうだろ?
    氷の属性なんて、俺に言わせれば汎用性がねェ属性ランクのトップランカーだ。極冠地方のクソ寒い場所ぐらいでしか使えねェ。
    いや、そうでなくったって魔法を使えるヤツならどんなヘタレでも自分の属性の媒介は絶対持つモンだ。これは掟に近い常識だ。
    だから、媒介を持ってねェこの小娘は魔法を使えねェはずだったんだ。
    だからよ、お人好しの学者を騙して奪った高ェ媒介使って、ちょいと魔法見せて脅してやって、金目のモン奪ってひん剥いてオシマイ。
    魔法を生業にするにゃそこそこの俺だがよ、それでもフツーのヤツよりよっぽどエーテル高ぇし制御出来るし媒介もあるし、そんじょそこらのヤツに負けるはずもねェんだ。
    そう、負けるハズがなかったんだ。

    それが、何だコレはよ。

    「セリスちゃん見て、強盗さん!これでわたしたちも遂に立派な旅芸人入りね!」

    「姉さん、わたしたち芸人じゃ………それに襲われたからって立派じゃないと思う」

    ありえねェ。ふざけてる。何がふざけてるって―――

    「くそっ!」

    エーテル出力を臨界まで上げる、細心の注意を払ってエーテルを制御。媒介から魔力を抽出して構成式の元に再構成。
    右腕に構成式が浮かび上がる。構成式は炎弾式。当たれば相当の火傷を起こす中位の式だ。
    双子らしい芋娘の姉が俺のエーテルを察知してエーテルを制御し始めるが、遅ェ。
    魔法遣い同士の戦いは読み合いだ、特にエーテルで劣る奴ァ、常に相手の一歩先を行かねェと何にも出来やしねェ。
    その点、この小娘は戦い慣れしてねェ。俺に劣るくせに今頃制御し始めちゃあなァ。
    俺は余裕で再構成を完了、全工程で3秒ほど、炎熱の砲弾を手加減無しで撃ち出す。


    が。

    あっさりと氷の壁に阻まれる。双子らしい芋娘の姉の方の魔法だ。

    「――――嘘だろ」

    信じられねェ。ありえねェ。ふざけてる。何がふざけてるって―――そう、魔力だ。
    ここは草ッ原のド真ん中だ。あるとしたら土か風か草木しかねェ。そりゃあ水だってあるだろうから氷だって無理じゃあねェが、高が知れてる。
    それに、あの小娘のエーテルは感覚的・構成速度的に言って俺より低いんだ、そこら辺から氷の魔力を集めてくるなんざ絶対無理だ。
    水を集めて氷に変換するなんてのもあのエーテルじゃ難しいだろう。体内の魔力使うにしたって一回ちょこっとだけが限度だ。



    でも、あの小娘は魔法を使いやがった。媒介も使わずに。何度も。俺に勝る速度で。しかも、氷のだ。



    「―――ありえねェ」

    そして今、俺は俺の渾身のエーテルで造り上げた魔法を悉く防がれている。
    しかも、俺はエーテルを使いまくって息が上がってきてるってのに、俺以上のエーテルを消費してるはずのあの小娘は余裕もいいトコだ。
    つーか、俺にエーテルで劣るクセになんで俺より速ェんだ?
    俺の持つ媒介はかなりの高純度、これに勝る媒介なんてそうはねェし、あってもエーテル差を覆せるほどのモンとは思えねェ。
    それに、そもそもあの小娘は媒介なんざ持ってねェ。
    なら、それにあの構成速度なら、体内の魔力を使ってるとしか思えねェが魔力の体内備蓄量なんて雀の涙、俺でもマッチ程度の火が出せりゃ上々だ。
    だが、なんだありゃ、あの氷壁はあの小娘よりデケェじゃねェか。
    ハ、どういうことだ?
    ありえねェ。ありえねェ。ありえねェ。
    常識を超えてる理論を超えてる人知を超えてる――――!

    「さて、強盗さん」

    圧倒するようなエーテルも何も感じねェ双子の小娘共の姉は、心底穏やかな口調で、まるでイタズラした子どもを叱るみてェに話しかけてきた。

    「貴方、ベルナルド・マイヤーは五日前の17日に雨の海沿いの街プラトーで、魔科学者ニール・パーカー宅から火の媒介を強奪した。相違無いですか?」

    ―――ああ、なんだ。そういうことか。
    こいつらは俺に狙われたんじゃなくて、俺を狙ってたわけか。引っ掛かったのは俺の方だ。
    クソ、だから追剥だの盗賊だの言わずに強盗って言ったのか。

    「間違いねェよ。ハッ、上手く逃げ遂せたと思ったんだがな………世知辛い世の中だよなァ」

    俺は悪態吐きながら地面を蹴る。
    本当に、こんな小娘に追いかけられるなんて、世の中マジで上手くいかねェもんだなァ。
    あークソッ、どうせ追っかけられるんなら、好かれて追っかけられてェってのに。

    「わたしたちが頼まれたのは媒介の奪還だけです、捕縛までは頼まれてません」

    「じゃあ、返せば見逃してくれるってか?」

    「と言うより、女の子二人じゃ男の人運べませんから」

    小娘は温和に微笑んだ。
    交渉のつもりかクソッタレ。ガキのクセしてなかなか肝が座ってやがる。

    「………チ、しょうがねェな」

    舌打ちして媒介を外しながら、妹の方へゆっくりと歩く。
    あぁ、しょうがねェ。
    真っ向勝負じゃ勝てそうにもねェ。

    「俺も捕まりたかねェからな。ホレ、あー………エリスちゃんだっけか?」

    「セリスです」

    「おう悪ィ、セリスちゃん。渡しゃいいんだろ?ホラよ、返すから逃がしてくれよ」

    媒介を持った右手を差し出す。
    姉妹揃って警戒するように見てたが、信用したのか妹がおずおずと媒介を受け取ろうと手を伸ばす。
    ハッ、肝座ってるクセに経験が足りねェというか甘ェというか。田舎モンだけあって人が好いなァ。

    「――――あっ!?」

    やっぱ小娘は小娘、気づくにゃ数瞬遅ェし筋力もねェ。
    俺は差し出された手を掴んで一気に引き寄せ、後ろに回って手首を捻り上げる。

    「セリスちゃ―――」

    「オイオイ待て待て。言わねェと分かんねェか?」

    姉が動く前にナイフを取り出し、姉にナイフを見せつける。本来すぐ殺せる首筋に付けるのがセオリーだが、まァいい。
    なんだかんだで姉の構成速度は俺に僅かに勝る程度、少なくとも姉が魔法を構成するより俺の腕の方が圧倒的に早ェ。

    「将来考えると勿体無ェがな。交渉だ、せっかくの綺麗な顔に傷残し」



    その瞬間。

    世界が、凍った気がした。




    「――――ゥッ!?」

    瞬間的に感じた、それだけで気絶しそうになるほど超越的なエーテルの奔流。
    最悪なまでの悪寒。魂まで凍りついてしまうほどの、真実、氷のような殺気。
    ゼロコンマの一瞬の怯みは死を確定するほどに遅すぎたらしく、気づいた時には、俺の右腕は凍っていた。

    「あ――――、が―――!?」

    俺の右腕の周りが凍って、動きを封じたわけじゃねェ。
    信じられないことに、指先から肩口に至る右腕そのものが凍っていやがった。

    「姉さん!」

    妹が叫ぶ。
    見ると、姉が頼りない足取りでフラフラしていて、ついにはフラッと倒れ―――

    「姉さんっ!!」

    俺の手から離れた妹が姉の方に駆け寄る。
    まさか―――姉がやった、のか。
    この距離で妹を傷つけずに俺の右腕だけ?一瞬で?生体の凍結なんていう難式を?
    まさか――――チィ、ともかく、よく分からねェが姉は御しきれねェバケモノらしい、甘ェのはこっちだったか―――!

    「ぐ―――!」

    エーテル出力を臨界へ、媒介より魔力を抽出、再構成、枯渇寸前までエーテルを放出し続け右腕を急速解凍。
    激痛のせいで散漫になった集中力のせいで制御が乱れる。右腕のいたる箇所が火傷と凍傷と壊死―――でも動く!
    俺は姉を助け起こしている妹の所へ走り、ナイフを―――

    ヒュゥッ!

    ―――振り下ろす前に、俺のこめかみ辺りの髪を切り裂き、音を空気を切り裂き、何か速すぎて見えねェものが通り過ぎて行った。

    「―――は?」

    「動かないで」

    妹は人差し指で俺を狙うかのように指し、言い放った。
    が、ハイソウデスカと止まるわけがねェ。
    俺は躊躇いもせずに右腕を―――

    ゴギャッ

    ―――腕が、ヤベェ方向にひん曲がった。

    「――――」

    ハハ、狂わんばかりに痛ェのに、悲鳴すら出ねェ。
    それも当然。
    なんせ今俺の目の前にいる妹のエーテルが、そりゃあもう信じられねェくらい馬鹿デケェ。

    「――――」

    ハ、どうしてこんな馬鹿デカイエーテルに今の今まで―――いや、あァ、デカ過ぎて感覚が麻痺して気づかなかっただけか。
    今自分の周囲にある魔力を、属性も式も全て無視して全魔力、エーテルに物言わせて強制的に固めて撃ち出す。確かに理論的にゃ可能だが、俺でも小虫に傷一つ付けられやしねェ。

    「てめぇ――――姉もそうだが、てめぇ本当に人間か――――?」

    妹はきゅっと唇を噛んで、俺を睨んだ。小虫すら慈しみそうな目のクセに、どこか死神のようなオッド・アイ。

    俺は青ざめるほどのエーテルに圧倒されて頭がクリアになったせいか、周りがよく見えるようになった。
    そうして見れば、俺の周りの地面は拳大の穴だらけだった。
    どうやら、エーテルがデカ過ぎて狙いが正確じゃねェらしい、数撃ちゃ当たる論理でやってくれたようだ。
    まったく、腕に当たったからまだマシだったが、当たり所が悪けりゃ即死だぞ?

    「動かないでください」

    妹はそう言い放った。
    ふと、ああやって人差し指を向けてるのが、静かの海の最新魔科学品の銃ってヤツに似てるなァなんて思った。
    しかし、妹はよく見りゃ腕は震えてるし顔は真っ青だ。それに、やっぱり綺麗な目ェしてる。ハ、この娘は人を殺せねェ。

    「――――オーケオーケ、分かりましたよお嬢さん」

    だが、妹思い姉思いの姉妹パワーにこれ以上立ち向かう気にゃならなかった。
    この娘は殺せねェが、だからといって引き鉄を引けねェわけじゃねェだろう。
    姉がヤバけりゃ絶対に引きやがる目だ。死ぬ死なないはその後の話。こういう手合いは相手にしたくねェ。

    俺は数歩下がって両手を、あァ右腕は半分死んでるから左腕だけ上げ、媒介を妹の足元に投げる。
    妹はさっきの件もあって目線を逸らさなかったが、媒介のない俺にもはや反撃の余地がないと思ったのか、媒介を拾い上げる。

    「――――ッカアァァ、痛ってぇ…………」

    マヒしてた激痛がぶり返してきて、俺は立ってられなくて座りこんだ。
    右腕を見る。火傷に凍傷に壊死に粉砕骨折。よくもまァやってくれたもんだ。右腕が死んでもおかしくはなかったな。
    ったく、こっちァ相手が芋臭いまでに純朴そうな可愛い娘ってコトで出来るだけ傷つけないように加減してたんだが。ふん、相手が悪かったな。

    妹は少し後ろめたいのか、まだ警戒してるのか、半々といった感じでこっちをちらちら見ながら、姉を介抱していた。

    「あー、大丈夫だ。今さら襲ったりしねェし、傷もそうヤベェもんでもねェ。それに、治療はわりと得意なんだ」

    虚勢を張ってみる。実際、ベッドルームならともかく今さら襲うつもりは毛頭ねェ。
    あと、確かに治療のイロハは心得てるが、正直、この右腕は当分使いものにならねェ。
    ヤベェなァ、逃亡生活にこれはいけねェ。

    「それより、姉さんは大丈夫か?」

    「あ、はい。………大丈夫だと思います」

    大丈夫じゃねェな。察するに………病気か、それに近いモンだな。
    よく分かんねェがこの姉妹はワケありだな。なるほど、極北の人間が雨の海まで出てきたのはそれが理由か。
    大方、嵐の大洋か静かの海に行く船に乗る条件として、あのドケチの学者に頼まれたってトコか。
    ったく、こんな腕の細ェ女の子二人に頼むなよあの腐れ野郎。

    「あの…………」

    妹が話しかけてきた。

    「どうして、こんなことを…………?」

    自然に、笑ってしまった。
    どォでもいいだろうに。それに、さっきまで何してたよ俺?
    あァ、まァ聞かれた以上は答えるもんだな。えーと、こんなことってアレか、媒介パクって追剥みたいなマネのことか。

    「そうだな………嬢ちゃんらは田舎で育ったんだろうから分かんねェかも知れねェが、
    都市部じゃあエーテルが高けりゃ魔法遣いであることを強要されんだよ、社会からな。
    おかげで他になりてェもんになれやしねェし、魔法遣いはほとんどボランティアの便利屋家業、万年貧困生活さ。
    それに、エーテルが高くても使えばバテるってのにヤツらは気にかけもしねェ。分かるか?魔法遣いってのは都市じゃ実質最下層の人間なのさ。
    ………最近、魔科学も発展してきたしな。街で暮らす分にゃ魔法遣いは不要な時代だ。教会が必死こいて平均的な魔法を超える魔科学は禁忌ってしてるが時間の問題、
    今はもう魔法遣いが尊敬と畏怖を集めることは無ェ」

    「だから………ですか?」

    「まァ、そうだな。俺だってやりたいことはあった。せっかくのエーテルって天賦の才を身勝手に使われるのもご免だ。
    だから、なんとか路銀稼いで、俺のコト誰も知らねェ遠い街に行ってエーテルひた隠しにすればってな」

    俺は立ち上がる。
    路銀は既に稼いである。他の街で生きるにあたってもう少し稼ぎたかったが仕方がねェ。

    「嬢ちゃんらもワケありだろ。気をつけろよ。人間ってのは色々あるからな。みんながみんな良い人じゃねェ。心底救えねェような腐ったヤツだってマジでいやがる」

    俺は背を向ける。
    あァ、しっかし、こんだけ器量の良さそうな娘なんだ、写真くらい撮っときたかったなァ。

    「あー………名前、ちゃんと教えといてもらえるか?」

    背を向けといて正解だったな。照れくせェ。つーか右腕の痛み堪えるのそろそろ限界だ。顔に出る。

    「………わたしはセリス・ハーネット。姉はエルリスです」

    「了解、覚えとくよ」

    「あの…………ベルナルド・マイヤーさん」

    歩き出そうとすると、また声をかけてきた。
    振り向かずになんだ、と言う。

    「あなたがしたかったことって…………」

    「また会ったら教えるよ」

    夢の段階で話すのは俺の主義じゃねェ。
    俺は根性で右腕を上げて振りつつ、歩いてく。

    「じゃあな、セリスちゃん。エルリス姉ちゃんと仲良くな」




    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



    しっかし。

    あァ、さて、どうするか。
    言っちまった以上、今度会うまでに形にしとかねェと俺自身に対してもカッコがつかねェ。
    とりあえず、そうすぐには会わねェような遠い街でも行ってみるか。

    右腕がヤバイが、まぁ大丈夫だろう。
    アレで女の子二人で旅してんだろうに、俺がへばってちゃそれこそカッコつかねェ。

    それにしても…………どうやら俺、セリスちゃんの目にやられちまったらしい。
    …………結婚してェ。
    そうだな、また会えて、俺が夢形にしてたらプロポーズでもすっかなァ。
    運命論者じゃねェけど、この広ェ世界でまた会えたらさすがに運命だろ。
    あ、ヤベ、俄然やる気出てきた。
    よし、世界に俺の名前轟かせてやる。

    そん時ゃ会いに来てくれよ。…………なぁ?



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