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龍虎刀-りゅうことう- 序章
作者:近衛刀   2009/01/19(月) 00:59公開   ID:IWJ666aX6Pw
-序章-
我は剣聖 棟刀采トウトウサイ。弟子達よ、聴くが良い。

風貌 老いてなお光る二つの眼光

我が奥義は一子相伝いっしそうでんなり。
故に現在才ある二人にはどちらにしか奥義は継承できぬ。

交互に目配せし見据える二人に言い放つ

両家はお互いにどちらかの継承者を討ちてその者の家宝刀を奪うべし。
討ち方に制限なし。
どちらかが2つの家宝刀をそろえたときに我が奥義を授けよう。
また当代で雌雄しゆうを決せぬ時は次家督かとく継承者がコレを続けるべし。
これは未来永劫続く戦いであり、決して―――


チュンチュン
本日は元旦。
その日一番に見た夢を初夢と言い、古来より『一富士いちふじ 二鷹にたか 三茄子さんなすび』は吉兆の前触れであると噂されてきた。

「・・・なんのこちゃ」

しかしどうも自分の初夢はへんな爺さんの一子相伝いっしそうでん殺人拳らしい。

「2XXX年 世はまさに世紀末の真只中であった・・・てか?」

なんのこっちゃ。
そう思うこの時代、世はまさに平和を謳歌しつつ某国のミサイル実験などに怯える何とも言いがたい時の流れの中にあるわけだが―――


寝巻きのまま階段をトットットと降りて、玄関の扉を開けると
瞬間、ヒューと冷たい風が一陣、家の中に吸い込まれたような感覚が冬真っ只中である事を切実に物語っていた。


―――そんな事をいくら考えても仕方がなく、日々移り変わる社会事情の波は政治家を肥やし、市民を締め付けるのが常である訳だ。

だが今日ほど、そんな殺伐とした考えが『無粋ぶすい』以外のなにものでもない日は無いのだろう。
なんと言っても今日は元日だ。
寒さの中に清々しさありて、何ともいえぬ高揚感。
お年玉。
お雑煮。
正月以降残ると絶対に困る御節おせち料理。
その全てが今日という特別であり、来年までは絶対にありえない年明けの日なのだと言うことを感じさせてくれる。ビバ日本の正月!




「・・・なんのこっちゃ」

感慨などは塵ほども無く、玄関から郵便ポストへ足早に直行する。
清々しさとか高揚感とか正直言ってどうでもいいくらい寒いのだ。

それにこの時期は高校進学に伴うレポートやら事前学力診断(宿題のようなモノ)のプリント数十枚。新聞は朝刊だけだし、テレビは特別番組でガチガチ。
初売りは2日からで、唯一嬉しい臨時収入のお年玉も、あと何回もらえることやら・・・。と案外冷めた感想しか浮かばねぇ。
残りは年賀状と、それに金魚のフンみたいにくっついてくるお年玉抽選ぐらいか。
まぁソレもココ最近のIT企業が頑張っているおかげで、ドンドン減退傾向な訳なのだが・・・。


郵便ポストを開けると輪ゴムで止められたはがきの束が二つ、その存在感を誇示していた。
(IT企業の企み討ち取ったりってか? まぁそれより、今年こそは無いように願わねば・・・)
あえて心の中で願いながらソレを掴み取って家の中へ引き返す。

「ほれ今年の年賀状。」

乱暴に食卓の上に投げると母親の声がキッチンより聞こえる。

「あらあら〜毎年毎年、お正月だけは早起きねぇ〜」

「どうしても目が覚めるんだから仕方ねぇよ。それより親父は?」

「さぁ。まだ寝ているんじゃないのぉ?昨日もぉ遅くまでテレビ見ていたしぃ・・・なんだったけぇホラぁ!」

「世界をめぐる 今日の名刀・秘刀―4時間丸まる耐久レース―?」

食卓の上にあるTV番組情報雑誌にはご丁寧にも赤のマジックでデカデカと丸で囲まれていた。

「そう、それよぉ〜!」

「でもこれ今朝の3時からだよ?徹夜したのか・・・若いなオヤジ。」

「お正月だし、いいんじゃないのぉ〜?」

とキッチンから出てきた母親はそこで作っていたのであろうお雑煮を運び、おせち料理が入っている重箱の前に並べた。

気品ある動きで並べる母。その姿はまるで神話に伝わる女神が―――

「あらあら、ありがとう。でもそんな説明書きしてもぉ〜、お年玉は去年と同じだからねぇ〜♪」

――――ちっ!

並べ終わると母親はそのままイスに座り、年賀状を確認していく。
それが合図だったのか湯気がたつお雑煮を食べるため母親の向かいに座った。

「あらあら!」

なにが『あらあら!』なのか頬に手を当ててニヤニヤしている。

「ほぉら〜刀磨にぃ〜また例の姉妹から来てるわよぉ〜。」

「誰だって?」

「ほらぁ龍美ちゃんと、虎子ちゃんよぉ〜」

「やっぱりか・・・『ほら』と言われても会った事ないし。母さんもないだろ?」

「でもでもーこれだけ毎年送ってくるなら脈ありって事よねぇ〜?どっちがお母さんの娘になるんだろねぇ〜?」


『うふふふふ』と遠い未来を夢見る母をよそに、息子は無視して餅をほおばる。


「あのなぁ、脈とか、娘とか、そんなことある訳ないだろ?」

「ぶーぶー。どうしてよぉ〜?」

「母さん。お願いだから名前だけでなくて、良ぉく年賀状全体を見てくれ。」

母親は『ブーブー』と言っていたが、その2枚は読まずに内容がわかる。
毎年毎年、字が上手くなっていくこと以外内容が全く変わらないからだ。



その年賀状には

1枚目【天誅殺 怨敵『九条刀磨くじょうとうま』死すべし 時雨 龍美しぐれ たつみ】(達筆)

2枚目【えーとあの、その氏んで下さい。 時雨 虎子しぐれ とらこ】(毎年へんな漢字変換 及び へんな豚(?)のイラスト入り)

と当たり前のように書かれていた。


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■作者からのメッセージ
コチラの方では初めましての方が多いと思われる近衛刀です。
元々未熟ながら小説を書いていたサイトからイラストに転職したのですが、機会があったので未公開の作品をチマチマと書き進めてみようかなと思いました。
小説は少々ブランクがありますが、お手柔らかに宜しくお願いします。

>>黒い鳩様
イラストはのめり込み過ぎて一回辺りの時間が多いので
これからのことを考えると『小説のほうが続けられるかな?』という思惑から再度挑戦しだしました(^^;
私も現代の舞台からの非日常・非常識などへの移行がキーになるとおもっていますのでこれからを生温かく見守ってやってください///

>>193様
お褒めの言葉を頂いて少し安心いたしましたw
感想がいただけるよう頑張りす☆
ただやはり他の方々の練磨された文章力や、表現力に比べると
自分の未熟な部分が突出してしまいますので
自身が納得いくまで頑張りたいと思います(^^;

感想・コメントありがとうございました♪
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